香典袋


D810 + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM

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今日はヘトヘトになった。
朝から目一杯仕事をして、夕刻から仕事関係の通夜に出かけた。
葬儀場は関東の郊外にあり、車でかなり走ったところだ。

あまり早く着いても面倒なので、時間を調整しながら行った。
仕事で付き合いのある人の親が亡くなったのだが、家族とは面識がない。
当然会場でも周りには知り合いはいないので、早く到着してその中で立っていても仕方がないのだ。
出来れば程よい時間に行って、さっと焼香を済ませて帰りたい。

斎場は本当に何もない田舎にあった。
周りは工業団地と畑で、土曜日の夜ということもあり、人気はなく真っ暗である。
ナビを頼りに細いクネクネ道を通って、やっと辿り着いた。

駐車場に車を停めて、中で時間が来るのを待つ。
そろそろと思い、会社で用意してもらった香典袋を封筒から出した。
「あっ」
香典袋を見てビックリした。
「御霊前」と書かれた短冊が無くなっている。
当然会社名と僕の名前も無い。

細長い短冊が一枚挟んであり、そこに名前を書くタイプの香典袋だったのだ。
それなりの額を包んだので、少しいいやつをコンビニで買ってきた。
ところが挟んであった短冊が、するりと抜けてどこかに落ちてしまったらしい。

これでは本当にただの折りたたんだ紙袋である。
何の表記もない袋に、銀色の帯が上を向いて結んである。
袋に直接書けないかと思ったが、紙質が立派で立体的な模様が入っており、インクを弾いてしまう。

えらいことだ。
こんなのっぺらぼうの袋を受付で出すわけにいかないぞ。
シートの隙間や足元を探したが、短冊はどこにもない。
会社で封筒に入れる時に、抜け落ちたのかもしれない。

時計を見る。
もうお経が始まる。
どうしよう・・と思ったが、とにかくコンビニを探して、新しい香典袋を買って入れ替えるしかない。

車を駐車場から出した。
そのまま道に出たが、とにかく田舎道で真っ暗である。
畑の中を走る道は、どんどん細くなっていく。
車同士がすれ違うのも難儀する狭さである。

周りを見て、とにかく灯りのある方に車を向けた。
畑の中は行き止まりも多く、2、3回Uターンして、右に行ったり左に行ったりした。
10分ほど走って、やっと小さなコンビニらしき店舗をみつけた。
行ってみるとチェーン店ではなく、〇〇ストアという聞いたことのない名前のお店だった。

地元の個人経営のスーパーのようだ。
黒いネクタイのまま飛び込んだ。
野菜や飲み物を主体にしているが、日用雑貨もあり、扱っているものはコンビニに近い。
文房具のエリアに、安っぽい印刷の御霊前の袋があった。
それと油性のマジックペンを買った。

車の中で社名と自分の名前を書いた。
狭くて暗い中で、体をねじりながらなので上手く書けない。
本当にへたくそな、殴り書きのような文字になってしまった。

不本意だが仕方がない。
急いで斎場に戻ろうとしたが、何しろ焦って行き当たりばったりで走ってしまったので道がわからない。
再度ナビに入力して、迷路のような道を通って斎場に戻った。

すでに通夜が始まり、30分以上経過していた。
ロビーには参列者は誰もおらず、一人だけ座っている受付で袋を出した。
いかにも慌てて書いたのがわかる汚い文字で、何とも恥ずかしかった。

焼香は終わり近くまで進んでおり、一番最後の列にぎりぎり間に合った。
それにしても後味の悪いお通夜であった。
家に帰りつく頃には、疲れてげっそりしていた。
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