閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

しゃべる機械

2009-04-30 13:56:16 | 日々
道端に自動販売機を見かけて車を停める。
コインを入れると、
「こんにちはっ!」
と若い女性の声で明るく挨拶された。
ちょっとたじろぎながら、選んでボタンを押すと、
ペットボトルが「どったん」と落ちてきたあとに、
「ありがとうございました! 午後もがんばってください!」

あ、はい、ドウモ、と口の中で呟きながら
ボトルを拾い上げ車に戻る。
音声を発する機械はすでに珍しくもないが、
(うちの電話機も「ファックスを送信するには…」とか
「用件を1件再生します…」などとよくしゃべります)
「がんばってください」と言われたのは初めてだ。
かつては抑揚のない、いかにも機械的な声だったのに、
ずいぶんと感情のこもったリアルな声を出すようになったものだ。
コンビニの店員さんだってこれほどは愛想良くない。

「午後も…」っていうことは(昼休みにあたる時間帯だった)
つまり時刻に合わせて違うせりふをしゃべるのだな。
朝だったら「おはようございます!」で、
深夜だったら「遅くまでお疲れさま」とか?
全部で何パターンくらいあって、いつ切り替わるんだろう。
たとえば午前3時だったら、深夜版なのか早朝版なのか…
そういうことまで気になり始める。

同時に、こういう道路わきに設置された自販機というのは、
「働く男性」にターゲットを絞っているのだ、と気づく。
よく見てこなかったが、入っている商品のラインナップにも、
おそらくそれなりの工夫がこらされているに違いない。
なんとも芸の細かいことである。
お客の「顔」を認識する自販機も開発されたそうだから、
そのうち相手を見て声を変えるようになるかもしれない。

わたしが買ったのは500ミリリットルの「水」なのだが、
それを売るために使われた知恵と技術、
かけられた手間ひまとエネルギーは、想像を絶する。

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でじたる

2009-04-28 11:37:22 | 日々
地デジ、地デジと略して呼ぶのが耳障りで、
(そもそもそれが「何」だかまったく理解できていないし)
キャンペーンも広告もすべて頭の上を素通りしていたが、
すでに95%の家がそれを受信できるようになった、
というようなことをニュースで言っていた。

山間部の我が家では、携帯もラジオもTVも電波状態が良くない。
だからどうせまだ先のことなんでしょう、と勝手に考えていたのだが、
95%という具体的な数字を見たら、ふと気になり始めたので、
TVのマニュアルをひっぱりだし、チャンネル設定とやらを…。

あらまあ。
映ってますよ、地上デジタル放送。
アナログよりはるかにくっきり、色あざやかに。
へええ、映るんだ。知らなかった…。

しかし、これを録画するには、どうするんだろう。
うちのDVDレコーダーはTVより6~7年古く、
(つまりようやく「使い慣れてきた」ところ)
そういうものには対応していない、ような気がするんだけど。
DVDのマニュアルも見たがよくわからない。
(どっちの器械も買ってきたのはMですが、「TVを見る」以外のことは
自分でしない人なので、聞いてもぜんぜん駄目…)

もしかしたら、アナログ放送が終了する前に、DVDレコーダーを
買い替えなきゃいけないんじゃないかなあ。
そうすると、いまハードディスクに入ってる録画はどうなるのかなあ。
だいいち、この裏側のイカスミスパゲティ的な配線は、
はずしたら最後、絶対に元に戻せないんだけどなあ。

えーっと。

(考え中、ではない。処理能力を超えたため思考が停止しました)
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たけのこ

2009-04-26 16:41:25 | 日々
竹かんむりに旬と書く。
文字通り、いまが旬の、たけのこ。
雨が降った後の竹やぶのそばにニョキニョキと出てきた。

心得のある人は、何十センチも伸びたのは相手にしない。
地面からかろうじて頭の先だけのぞかせたのを探しあてて掘る。
そして掘りたてをすぐさま茹でれば、あくもなくまろやかで美味しい。
うっかり見過ごすと、これが一夜にしてあっと驚く背丈になってしまう。

「ふしぎなたけのこ」(松野正子作・瀬川康男絵 福音館書店)は、
子どもの頃に、好きだった絵本のひとつ。
たけのこ掘りに行った少年たろが、
ぐんぐんのびるたけのこのてっぺんにしがみつき、降りるに降りられず…。

村人たちが救出に駆けつけ、たけのこを切り倒すと
山から海まで道ができた、というのだから、
いったい全長何キロメートルのたけのこか。
荒唐無稽には違いないが、たけのこの伸びる早さとエネルギーは
まさにこういう感じなのだ。
そして、たけのこ料理に海のもの(わかめとか鰹節とか)を合わせるのも、
なるほど、こういう由来だったのか、と思わず納得してしまうくらい、
祝宴の場面が実感にあふれて美味しそうである。


ツクシは決してスギナにならないが、たけのこは竹になる。
で、どこまでがたけのこで、どこからを竹と呼ぶのか、というと、
その境目はきわめてあいまいでよくわからない。
かなり高く高く伸びても、いつまでもたけのこのふりをしている。
竹やぶの中にそういうのを見かけると微笑ましい。
それが、ある日突然、「竹です」ときっぱり名乗るのだ。
見れば、たけのこっぽい面影をかすかに残してはいるものの、
もう立派な青竹である。

あ、ほんとだ。ははは。いつのまに。

なぜか照れ笑いなどして、見上げる。
頭をなでてやったのが遠い昔のことのようだ。

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ここではない、どこか

2009-04-24 10:22:27 | 木苺通信

 

いつだって、遠くへ遠くへ行きたがるんだ。

  「銀色たんぽぽの夢」(『木苺通信』)より

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「ポロポロゆうびん」

2009-04-23 13:47:43 | お知らせ(新刊)


今年の新刊の1冊目。
「ポロポロゆうびん」(あかね書房)
ちょっと絵本っぽい体裁の幼年童話です。

 ある日、とむくんに手紙がきました。
 ポロポロ島にいる動物学者のおじさんからです。
 返事を出そうとして、とむくんが郵便局へ行くと…?

ご記憶の方もいらっしゃるかもしれませんが、
元ネタは、昨年2月頃にこのブログで書いた「SAL便」です。
国際郵便で、船便と航空便を併用する方式なんですけど、
「船便と航空便とサル便がありますが」
って言われれば、それはとうぜん
「船か・飛行機か・猿か」
の選択だと思っちゃいますよ、ねえ?

ジャングルとか、そのあたりは、Mが行ったニューギニアの話を
参考にさせてもらいました。

絵は、こばようこさん。
「とむくん」を生き生きと楽しく描いてくださいました。
おサルも可愛いですよ。

ポロポロゆうびん
竹下文子・作
こば ようこ・絵
あかね書房
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美しい塵芥

2009-04-22 13:22:53 | 日々
玄関の階段の前に、大量の桜の花びらが吹き溜まっている。
散って日がたつので、ほんのり赤みをおびた褐色になっている。
独特の柔らかい色合いだ。
桜で染物をすればこういう色になるのかもしれないと思う。

花が散ったあとに、つづいて赤い萼と花柄の部分が落ちた。
大きめのピンクの八重桜の花びらも飛んできて混ざっている。
それに、青い小さい葉っぱが、ほんの少し。
青紫のパンジーの枯れ花がひとつふたつ。
それらの色の配合が絶妙で、なんとも美しいものに見える。


小堀杏奴さんの随筆集『静かな日々』の中に
「洗濯」という短い一文がある。
大きなたらいに井戸水を汲んで洗濯をしている。
白い下着類の中に1枚ピンクのブラウスが混じっている。
その上に石鹸水の薄い灰色がかかり、一筋射しこむ陽の光が美しい。
筆者はそれを見てルーヴルで見た絵を思い出す。
ヴェラスケスの描いた金髪の幼い王女。
その灰色の衣装と、淡いピンクのレース飾り…。

この本を初めて読んだのはおそらく小学高学年のときだが、
このくだりで「はたと膝を打つ」ような共感をおぼえた。
何かを見て、何かを感じる。
そのアンテナの向きや受信機の感度が
たまたま自分とよく似ている人がいるのだ。
自分の親よりずっと年長の人であることなど当時は知らず、
(ヴェラスケスの絵だって絵葉書でしか見たことがないのに)
「ああ、そうそう!」とうなずき、わたしは嬉しかった。

本の奥付は昭和29年となっている。父が自分の本棚から
女の子にも読めそうなものを抜き出してくれたのだろう。
今でも折にふれ思い出すことがある。
たとえば玄関前の桜の花をほうきで掃きながら。
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高猫の木登り

2009-04-21 14:00:56 | 日々
かずこさんがお留守のあいだ、ときどき見回りがてら
お散歩(運動、運動!)に、お隣の家まで長い階段を
とことこ歩いて上がります。
階段ぞいに花の咲く木や草がたくさん植えられていて、
いまはナルコユリがひっそり並んで花をつけています。
(ナルコユリじゃなくアマドコロだっけ?
区別がなかなか覚えられない)

この日は珍しいことに、すももが階段の上までついてきました。
ところが、ちょうど真鈴も「後追いモード」だったらしく、
にゃーにゃーと別ルートで上がってきて、ばったり鉢合わせ。
決して仲が良いとはいえない2匹、
距離をとって知らんぷりしながらも、ライバル意識むき出しです。
真鈴があっちの木に登ってみせれば、すももは負けじとこっちの木に…
という木登り合戦でアピール、アピール。

遠くで5時のチャイムが聞こえたので、
さあそろそろ帰るよォ、と、階段を下りはじめると、
いち早く先頭きって駆け下りたすもも嬢さんが、
その勢いのまま、下の柿の木にダダダッと…
一気に登ったまでは良かったのですが、
それが、ちょっとこれまで見たことのない高さで。

おーい?

大丈夫かーい?

「すももが、降りられないみたい」
畑にいたMを呼ぶと「えー? どこ?」と見にきましたが、
「あーほんとだ。これはしょうがないね」
と、笑ってそのまま帰ってしまった。

すももは木の上にちょこんと鳥かモモンガのようにとまり、
こっちを見て「にゃーお。にゃーお。にゃーお」と鳴いています。
その姿がずいぶん小さく心細げに見えます。が、
「すももー、なんとかがんばって自分で降りるんだよー」
と、わたしも真鈴を抱えて、さっさと帰ってきてしまう。

薄情なようですが、ハシゴをかけるなど、下で騒げば騒ぐほど
降りられなくなるのが猫というもので。
とくに、すもも嬢さんのようにプライド高く神経質な猫は、
みっともないずり落ち方を見られるくらいなら降りないほうがまし!
とカタクナに樹上に居座る可能性も大ありなので。
まあ、万一落ちたとしても、下はコンクリートじゃなく
枯葉のたくさん積もった土で柔らかいからね。

案の定、しばらくしたら「うにゃん」と何食わぬ顔で
帰宅した嬢さんでありました。
よしよし。
(写真、撮りそこなった。ざんねん)

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ビデオ

2009-04-19 13:53:14 | 日々
先日のカセットテープは、無事にCDにおさまり、ひと安心。
でも、じつは、まだ他にもあるのでした。
カセットより厄介な「ビデオテープ」ってものが。
こちらもビデオデッキはとっくに使えません。
それに、再保存の作業はかなり大変そうで…
手をつけられないまま棚で埃をかぶっています。

うちで撮ったビデオはないのですが、
Mが過去に出演したTV番組の録画などなど。
(わたしが映ってるのも1本あったかな。とてもローカルなケーブルTV…)
あと、某ロックバンドの「グレイテスト・ヒッツ」2本組、とかは、
DVDで買い直すのもいまさらな感じだけど、ちょいと惜しいなあ。
(かなり思い切った買い物だったのよ、当時としては!)
そうそう、アニメ版「わたしおてつだいねこ」なんていう
レアなものもありました。

このアニメは、Mの絵を元に東映動画が作った15分くらいの短篇です。
ストーリーは「わたしおてつだいねこ」の途中に
「はしれおてつだいねこ」をはさんだような感じ。
図書館や学校に貸し出すためのフィルム映画、だったのかな?
20年くらい前なので、製作の経緯なども、すでに記憶があいまい…
たしか市販されてなかったからビデオでもらったような気がするけれど。
主題歌と挿入歌が小坂明子さんの作曲で、
それがとても可愛いかったのでした。

作詞はわたしなんですが、楽譜も何もなくて、
自分でもあまりちゃんと覚えていません。
保存状態が良いとはいえず、ビデオはもう再生不能かも。
せめて曲の部分だけでも、記念にとっておきたかったなー。

(写真はブルーベリーの花。ドウダンツツジによく似ている)
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トカゲの謎

2009-04-17 09:21:37 | 

Mが何やら図鑑をにらんで、
「えー」とか「うー」とか「まいったなー」とか呟いている。
しばらくしたら、わたしのところへきて「話があるんだけど」と言う。
以下は、その話。

先日、アトリエのドアを開けたら、ナニモノカが
ささささっと床を横切って机の下に消えた。
どうも気になるので、あれこれどけて捕獲したところ、
トカゲであった。

トカゲはこのあたりには普通にいるし、猫もよくとってくる。
でも、アトリエは窓にもドアにも隙間がないうえ、
猫は立ち入り禁止になってるので、トカゲが入る可能性は低い。
しかも、よく見ると、見たことのない種類なのである。
で、爬虫類図鑑を取り寄せ、すみずみまで調べたところ、なんと、

このトカゲは日本には生息していないはず!

…なのであった。

えーと、ここからあとはあまり詳しく書けないのですが、
つまり、その、ついてきちゃったらしいのですよ。
おそらく先月の旅先の「どこか」から、荷物にまぎれこんで。
だとすると、すでに1か月間、こっそりと居候していたわけ。
密入国だか、密輸入だか、不法滞在だか知らないけど、
まずいんじゃないかなあ、これ。

とりあえず、ケースに保護されています。
地味な色だけど、つぶらな黒い目で、まあ可愛いといえなくもない。
尻尾の先まで20センチくらいかな。
でも、図鑑には45センチになると書いてあります。
しかも20年くらい生きることがあるらしい。
どうするのっ。

(画像はMによるフィクションです。
実在する国や動物とは一切関係がありません)

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八重桜など

2009-04-16 16:58:17 | 日々
ひさしぶりにたっぷりの雨が降った翌朝、
窓を開けたら、昨日までは桜の散っていた景色が、
あっと驚くような新緑に変わっていた。

八重桜は今が見ごろ。
濃い色のつぼみが次々にひらいていく。
薄紙でこしらえた花のようだ。
八重桜が咲くたび、犬のポケのことを思い出す。
この木の下に犬小屋があったからだ。
八重桜は、花びらが散ってしまわず、花のままぽたぽたと落ちる。
毎年、ピンクの花にとり囲まれ、照れくさそうな犬であった。

池の向こうでは、ドウダンツツジも花盛り。
鈴蘭のような小さい白い花をびっしりとつけている。
のんたが死んだ翌日に植えた木だ。
のんちゃんは、いちど事故で死にかけて生き返った猫で、
後遺症と持病を抱え、それでも8歳まで生きた。
あれからもう8年が過ぎ、子どもの両手におさまるポットの苗木は、
いつのまにか大人の背ほどにもなった。
花の頃も良いし、秋の紅葉も深いワイン色に染まって美しい。


ほぼ一週間ぶりに、真鈴お嬢様がご帰宅。
例によって「にゃああああ! にゃああああ!」と
遠くから大声で鳴きながら走ってきて、
ゴハンを食べ、ぽんと膝にのってごろごろ甘え、
ボールのように丸まって熟睡。
いつからかフーテンの寅のような猫になってしまったが、
野生的なのかといえば、全然そんなことはない。
外泊中も身だしなみには気を配っているらしく、
抱き上げればふんわり、ふんわりの真鈴ちゃんである。

冬眠していたカメさんをのぞきに行ったら、
1匹がひょこりと顔を出して目をぱちくりさせていたので、
あとの2匹もついでに叩き起こす。
ぬるいお風呂にいれたあと、水槽を掃除し、日光浴させてやる。
いつも心配だが、今年もちゃんと生きていた。
よかった。

さてさて、カメさんも起きたことだし…と呟いて
帽子をかぶり畑に出かける。
巨大化してジャングルのようになった花咲か大根を
片っ端からえいやっと抜いていく。
今年はカリフォルニアポピーに代わって
「冬知らずカレンジュラ」とかいう小型のキンセンカが
雑草のようにそこらじゅうで咲いている。
初物のアスパラガス5本、今夜のおかず。
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