閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

たけのこ

2009-04-26 16:41:25 | 日々
竹かんむりに旬と書く。
文字通り、いまが旬の、たけのこ。
雨が降った後の竹やぶのそばにニョキニョキと出てきた。

心得のある人は、何十センチも伸びたのは相手にしない。
地面からかろうじて頭の先だけのぞかせたのを探しあてて掘る。
そして掘りたてをすぐさま茹でれば、あくもなくまろやかで美味しい。
うっかり見過ごすと、これが一夜にしてあっと驚く背丈になってしまう。

「ふしぎなたけのこ」(松野正子作・瀬川康男絵 福音館書店)は、
子どもの頃に、好きだった絵本のひとつ。
たけのこ掘りに行った少年たろが、
ぐんぐんのびるたけのこのてっぺんにしがみつき、降りるに降りられず…。

村人たちが救出に駆けつけ、たけのこを切り倒すと
山から海まで道ができた、というのだから、
いったい全長何キロメートルのたけのこか。
荒唐無稽には違いないが、たけのこの伸びる早さとエネルギーは
まさにこういう感じなのだ。
そして、たけのこ料理に海のもの(わかめとか鰹節とか)を合わせるのも、
なるほど、こういう由来だったのか、と思わず納得してしまうくらい、
祝宴の場面が実感にあふれて美味しそうである。


ツクシは決してスギナにならないが、たけのこは竹になる。
で、どこまでがたけのこで、どこからを竹と呼ぶのか、というと、
その境目はきわめてあいまいでよくわからない。
かなり高く高く伸びても、いつまでもたけのこのふりをしている。
竹やぶの中にそういうのを見かけると微笑ましい。
それが、ある日突然、「竹です」ときっぱり名乗るのだ。
見れば、たけのこっぽい面影をかすかに残してはいるものの、
もう立派な青竹である。

あ、ほんとだ。ははは。いつのまに。

なぜか照れ笑いなどして、見上げる。
頭をなでてやったのが遠い昔のことのようだ。

コメント
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