閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

樹上の茶室

2008-06-30 10:33:03 | 日々

ヤマガラやシジュウカラのヒナが巣立ち、
しばらくはいっしょうけんめい親についてまわっているが、
やがて独り立ちして、ピーピーいう姿も見なくなる。
親鳥のほうは「2回目」の子育てに入ったらしい。

猫の抜け毛をベランダに出しておくと、
目ざとくみつけて拾いに来る。
「ここによくある」と覚えているのか、ないときは
電線にとまって「ないの?」と首をかしげている。

ととっ…というかすかな音に気づくと、
身体を動かさないように気をつけて横目で見る。
ガラス越しに、ほんの1メートルのところ。
シジュウカラの奥さんだ。
正確にはどちらかわからないが、奥さんのように思える。
自分の頭より大きな毛玉を大急ぎでこしらえてくわえていく。
旦那さんは少し離れたところにいて、周囲に目を配りつつ、
奥さんのお買い物が済むのを待っているようだ。

毛玉は軽いが、小さい鳥だからそれでも大荷物のようで、
風が強い日に途中で落としてしまうこともある。
ふわふわと空中を漂っていくところへ、別の奥さんが飛んできて、
すばやく横取りしてしまったのを見たこともある。
野山にケモノはいろいろいるが、うちのは飼い猫で柔らかく、
巣材としてはカシミアなみの高級品だ。
ミルクティー色の茶々姫のは、すぐなくなる。
黒っぽいのは、あまり人気がないのか、残っている。


大きく茂った山桜の葉の間を、メジロが1羽、
ちらちら、ちらちらと、せわしなく動き回っている。
メジロは猫の毛を拾いに来ない。
巣の中には、細い細い植物繊維をきれいに敷きつめている。
シジュウカラのように巣箱ではないオープンな巣だから、
湿ると重くなって乾きにくい毛のおふとんでなく、
さらっと風通しの良い素材にしてあるのかもしれない。
蚊帳、花ござ、すだれ…そんな和風のおうちだ。
こぢんまりと、外側には緑の苔をあしらい、お茶室かとも思うが、
子育て中は風流どころではなさそうだ。

 

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化石は踊る

2008-06-28 10:21:05 | 日々

カセキサイで、とTVのアナウンサーが言う。
わたしの耳がそれを拾い、反射的に「化石祭」と変換する。
いや、そんなはずはないか、と見たら、
事故のトラックが「過積載」だったというニュースだ。
その画面をぼんやり眺めながら、
どこかでおこなわれている「化石祭」のことを考える。
いったいどんなお祭りなのか。
ギリシアの遺跡のような乾いた白っぽい風景が浮かぶ。
サンサーンスの「動物の謝肉祭」第12曲。
木琴の奏でる軽快なメロディにのって、
アンモナイトや三葉虫や骨だけの恐竜がからころ踊っているらしい。

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ほたる

2008-06-26 14:04:30 | 日々

ほたる。
家のそばの川岸の、アジサイの咲いているあたり。
1ぴきだけ、はっきり緑に光って、すうと飛んで、消えました。

毎年、ほたるは1ぴきか2ひきか3びきくらい見られます。
たいてい雨の降る前の、すこし蒸し暑いような夜。
川が小さくて、雨が降ると川底の砂が全部流れてしまうから、
これくらいしか繁殖できないのでしょう。
ほたるを保護して増やす試みは各地でなされていますが、
ほたるの前に、まず餌になる貝を増やすこと、
その前に、貝が増えるような環境の川にすることが難しいのです。

わたしが小さい頃は、夜店で、ほたる、売っていました。
大きなかごにたくさんたくさん入っていて、何匹って言うと、
小さいかごに、草の葉と一緒に入れてくれる。
夜店のはずれの暗いところで、おばあさんが売っていた。

元気がなくなったほたるを、ときどき、おばあさんは、
てのひらにすくって、ほいっと口の中に入れる。
こうするとまた元気になるのだとおばあさんは言う。
おばあさんが口を開けると、まっくらな中に、
小さいほたるが、ぽう、ぽうと光っている。
という光景を、はっきり見た記憶があるのだけれど、
思い返すと、どうもあやしい。
あれは夢だったような気もする。
夢だとすれば、ひどくあざやかな不思議な夢だ。

買ってもらって帰ると、布団を敷いた部屋の中に放して、
電灯を消して、眠りにつくまで、その光を眺めました。
おとなのほたるは、餌を食べません。
飛んで、光る、それだけの短い寿命です。
だから、せいぜい霧吹きで湿らせてやる程度で、
飼うことはできません。
ひととき楽しんだら、弱らないうちにと、
窓を開けて放してやるのでした。
どこへ飛んでいっただろう、あのほたるたち、みんな。

 

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聞きなし(ホトトギス)

2008-06-24 10:21:18 | 日々

またきたよ
わたってきたよ
またきたよ
わたってきたよ
ほととぎす ほととぎす ほととぎす

(たどたどしくスタカート気味に、
最後はディミヌエンドで)

ホトトギスは巣を作らず、托卵といって、
他の鳥の巣にこっそり卵を産んで立ち去ってしまいます。
うまれたヒナは、大きな図体で義兄弟を押しのけ、
ひとりっ子として育ちます。
預けられた鳥にしてみれば大いに迷惑なので、
(頼まれて育ててあげるわけではありません。
自分の巣にある卵は自分のだと信じてしまうのね)
この鳴き声を聞くと「うわー、また来たー、やだなー」と思うかも。
最後に名乗っていちおう「スミマセン」と言ってるようだけど。


西隣の施設にあるツバメの巣をMと見に行ったら、
間近のやぶでウグイスが鳴きました。
「あ、うちの子だ」と思わず言ってしまいました。
「よー、こっちを見ろっ」って横柄な鳴き方の特徴が、
うちのそばで鳴いてる奴と同じだったもの。
1羽のオスが沢沿いにテリトリーを持っていて、
両岸を行ったり来たりして鳴いているのだな、
ということがわかりました。
ヒトの土地は川が境界になることが多いですが、
鳥の場合は必ずしもそうではありませんね。

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雨あがり

2008-06-22 09:51:19 | お知らせ(いろいろ)

「星占師のいた街」の中の1篇です。
「ものがたり12か月」(偕成社)というアンソロジーの
「夏ものがたり」の巻に収録していただきました。
(野上さん、いつもありがとうございます)

これを書いたのは23歳のときで、いま読んでみると、
頭から布団かぶりたくなっちゃうくらい下手なのですが、
じつはその4年前から、当時住んでいた町のタウン情報紙に
童話の連載を持っていたのでした。
信じられない。
しかも、タウン紙は予算がなくてイラストを頼めないというので、
あつかましくそれも自分で描いていたという…
われながら、なんというか、うん、いい度胸じゃないか(笑)
いえ、原稿料は1円もいただかなかったと思いますが…。

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雨の日

2008-06-21 13:56:04 | 日々

大雨洪水警報が出ていたので、
買い物に行くはずだったがとりやめ、
がらんとした冷蔵庫の中のお掃除をする。
雨はすこし小降りになったが、川の水音が高い。
昨夜、びしょぬれで「お仕事」から帰ってきた真鈴は、
きょうはひたすら寝ている。
すもも、茶々の姿も見えず。たぶん押し入れの奥。

描いていただいている絵本のラフが届く。
うふふ、こんどは黒猫の絵本だよ、さんちゃん。
冬までにはできるかな。たのしみたのしみ。


読んでいる本と、これから読む本。

「Spook Country」
やっと半分まで来た。
4~5ページごとに主人公が変わるうえ、
あまりにスローペースで読んでいるため、
なかなか全体像が把握できない。
新宿伊勢丹上空の巨大イカを見てみたい。

「Rebecca」
新訳が出ていたので読んでみる気になったが、
読者レビューがあまりかんばしくないので迷う。
他人の評価を鵜呑みにするのもどうかと思うけれど、
原書なら文句のつけようがない。
手触りの柔らかい、デザインも素敵なペーパーバック。
ヒチコックの映画は、最初のほうのホテルのレストランで
ヒロインが炒り卵を食べるシーンしか記憶にないのです。

「モンテ・クリスト伯」(岩波文庫)
7巻もあるとは知らなかった! とりあえず1巻目。
「毒の話」(中公新書)に出てきて興味を持ったので。
これって順路が逆だろうか?

聴いている音楽。

「Nuages Du Monde」Delerium
「Beneath The Surface」Balligomingo
インターネットでCDを買うと、同系列のものが
おすすめ商品としてずらずら並ぶ。
最近まんまとその手に乗せられているような気が…。
「Orbital Period」B.O.C.
こういうふうに略しちゃっていいのかなウルファちゃん?

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つかのまの平和

2008-06-19 17:20:22 | 日々

あれほどおおぜいいらした「けむけむさんたち」が、
おひとりも見あたらない。
気にせず外を歩けるようになった。
めでたし。

もしかすると、彼らはいなくなったのではなく、
どこぞでひそかに「変身中」なのかもしれない。
いや、じつはほとんど確実にそうなんだけれど、
それは考えてもしかたないので、つとめて考えないことにする。
とりあえず目の前にいなければ「いない」ということにしておこう。

備えあれば憂いなしとよく言うが、
憂えるタイプの人は、いくら備えても、
むしろ備えれば備えるほどに憂えてしまうもので、
無駄だから何も考えないほうが良い。

何事か起こるまでは呑気に笑って暮らし、
起こったときは迅速に柔軟かつ前向きに対処する…
そういう人になりたいものである。

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スーパー羊飼い

2008-06-16 09:04:43 | 日々

1階が駐車場で、2階が売り場になっているスーパー。
いつも階段で上がり、帰りは荷物が重いので、
カートごとエレベーターで降りてくる。

ある日、エレベーターがなかなかやってこない。
ようやくドアが開いたら、中にはカートが30台ほど詰まっていた。
駐車場から回収されて戻ってきたカートである。
いつもは店員さんが一緒に乗ってきてガラガラと降ろすのだが、
この日は人手が足りないのか、誰も降ろす人がいない。

わたしの前に3人の奥さんが、それぞれ山盛りの荷物と共に
エレベーターを待っていたが、これでは乗ることができない。
「あ…」と言っているうちにドアが閉じた。
一番近くにいた人がボタンを押したので、閉じたドアが開く。
しかし中には依然としてカートが詰まったままである。

そりゃあそうでしょう。マジックの箱じゃないですからね。
一度閉じたくらいで消えやしませんよ。

3人の奥さんたちは、ただ呆然としている。
どうするべきか判断がつかないらしい。
ふたたびドアが閉まりそうだ。
わたしは入っていき、カートを列ごと押して外に出した。
すごく重いかと思ったらそうでもない。
押せばまとまっておとなしく動く。
なんとなく羊の群れを扱っているようだ。
「すみませーん!」
途中で店員さんがとんできた。
この作業は2人でやると早い。
あっというまにエレベーターは空っぽになった。


じつは一度やってみたかったのですね。
いっぱい重ねたカートをひとりで動かす、というのを。
駐車場で用済みになったカートが、きちんと置き場に戻されず、
あっちこっちに斜めになって放置されているのを目にすると、
あれとあれをまとめてあっちに重ねて…とつい考えてしまうくらい。
でも客がそれをやると、店員さんにはかえって迷惑だろうと思い、
これまで自粛していました。
いやあ、面白いなあ、これ。
パートの羊飼いみたいなカート回収専門のお仕事ってないかしらん。


ショッピングカートのすぐれた点は、
車輪がついていて、しかも、重ねられる、というところ。
すこし昔のカートは斜めや横への移動が困難で、
狭い売り場でうまく押すにはそれなりのコツが要ったが、
最近のは、よちよち歩きの子が押しても軽くなめらかに動く。
4つの車輪のそれぞれが、前後左右に自在に動く。
乗用車もこうだったらいいのに。

乗用車がすべてショッピングカート並みの性能になり、
駐車場では重ねておけて場所をとらず、
燃料は地球に有り余っているもの(二酸化炭素とか?)でまかなえ、
ぶつかってもお互い「あ、すみません」で済むようになるんだったら、
わたしはぜひ長生きしてそれに乗ってみたいと思うのですが。

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聞きなし(サンコウチョウ)

2008-06-15 09:56:13 | 日々

サンコウチョウは森林の鳥です。
「月・日・星・ホイホイホイ」と鳴く、
と鳥の本によく書いてあります。
だから漢字で書くと三光鳥。

最近、ときどき声だけ聞こえます。
オスは尾が長くて美しい姿のはずですが、まだ目撃できません。
一か所で一声か二声鳴くと、すぐ移動してしまうらしい。
特徴のあるさえずりは、実際に聞くとこんな感じ。
「月ッ? 日ィ星? ふいッふいッふいッふいッ」

この「ふいッふいッ」のところがリズミカルで、
なんとも楽しげな、心を誘うような音色です。
これで呼びかけられると「はいはい」と返事をしたくなる。
ヒトでさえそうなのだから、サンコウチョウの女の子なら
すぐに飛んで行っちゃうに違いありません。



tactさん。地震の被害がなくてよかったです!
Rさん。みてますよ、
YouTube。
アカネちゃん。実習お疲れさまでした。

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2008-06-10 08:40:52 | 日々

台所に立っている。
背後に小さいテーブルがあり、配膳台として使っているが、
ここはさんちゃんの「待合席」でもある。
おなかがすくと、いつもここに座っている。
他の猫のように、足元にきてにゃあにゃあ催促したりせず、
黙って殿様のように座っているだけなので、
こちらも「ちょっと待ってね」と言ったきり忘れてしまうこともある。
忘れられたさんちゃんは、すうっとどこかへ行ってしまうこともあるし、
その場で丸まって寝てしまうこともある。

たまにはコロッケでも作ろうと、早めに下ごしらえをしていた。
例によって背後にさんちゃんの気配がある。
冷蔵庫をあけたり、流し台の下の戸棚をあけたり、
動くたびに視野の隅に黒い重量感のあるものがちらちらする。
あいにく作っているものがコロッケなので、
さんちゃんにゴハンを出してやることができない。
しばらくして、ようやく手があいたので「さて」と振り向いた。
テーブルの上にいたのは、さんちゃんではなかった。
黒い大きな…中華鍋であった。
「あ。ごめん」
笑いながら中華鍋にあやまってしまったわたし。


その1時間後。コロッケを揚げながら、
ふと何かが変だと気づく。
コロッケが三角だ。
成形段階で手がおにぎりと間違えたようだ。

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