偕成社の乗り物絵本シリーズ、9冊目ができました。
『おはよう!しゅうしゅうしゃ』
はい、今回の主役は、ごみ収集車です。
救急車と共に、以前からリクエストいただいていたのですが、
なかなかできなくて…
待っててくれたお子さんも、大きくなっちゃいましたよね。
ごめんねー。
できなかった理由は、いくつかあります。
最大の問題は、「よくわからなかった」ということ。
そもそも、乗り物絵本をつくりはじめたきっかけというのが、
「たまたま、うちに小さい男の子がいたから」
という、きわめて個人的なもので、いつも見ていた路線バスとか、
うちに来る宅配便とか、子どもが好きな「はたらくくるま」を、
そのまんま絵本にしていっただけ、なのでした。
ところがですねえ、うちには、収集車がこない!のですよ。
集落からはずれた山の中なので。
生ごみは、埋める、でしょ。
その他のごみは、週1~2回、車に積んで収集場所まで持ってく、でしょ。
家の前にやってくるごみ収集車を、親子で眺めるという体験ができなかった。
だから、小さい子が、収集車のどこに、なぜ、どんなふうにひかれるのか、
想像は出来ても、実感としてつかめないのです。
というわけで、だんだん後回しになりまして、
『みんなで!いえをたてる』 ができて、
『でんしゃがきた』 ができて、
「じゃあ、いよいよ次は収集車ですね!」と編集Cさんに促されて、
う~ん、そうね、と言ってるうちに、ふっと浮かんできたのが、
早朝の、まだ誰もいないビル街。
斜めに縞模様になってさしこむ朝の光の中に、
スローモ-ションであらわれる収集車。
という、リドリー・スコット映画のオープニングみたいな光景。
ふむ。そこから始まるんだったら、わるくないかも。
と、自分に動機ができたら、あとはとんとんと進みました。
苦労したところは
(って、聞かれることが多いので、先に答えちゃおう)
まず、呼び名です。
「ごみしゅうしゅうしゃ」って、タイトルとしては長すぎるでしょう。
「しゅうしゅうしゃ」? 「せいそうしゃ」?
図鑑には、どっちもあり、どっちが正しいのかわからない。
なんだか、国土交通省では「塵芥車」っていうのが正式らしい。
「破砕車」「集塵車」もあるみたい。
「パッカー車」と呼んでいる自治体もあるんだって。
パッカーって何? ごみをぎゅうっとパックしちゃうから?
とか、とか。
(ちなみにパッカー車の語源は、違いました)
もうひとつは、車の形式や色も、ごみの出し方や集め方も、
自治体によって違いが大きいということ。
子どもたちは、それぞれいつも見ている自分の町のを
「収集車」として認識しているはず。
しかし、絵本ではどれか一種類しか描けませんから、
「これ、シューシューシャじゃないよ」
と言われたらおしまいなので…
どうしたら「普遍化」できるか、というのが考えどころでした。
(この点は、本が出てみないとわかりません。どきどき)
あとは、ほんとに苦労したのは、例によって「描いた人」。
「どこかで会ったような人」とか「前にも見たような店」とか、
本筋以外も楽しんでいただけましたらうれしいです。
以下、余談。
ごみ収集のシステムについて調べた中で、最近は繁華街などで
深夜に収集するサービスもふえつつあることを知りました。
人々の安眠をさまたげないよう、特に低騒音の車を使って、
バックブザーや機械の作動音も極力ひかえるように、
働く人たちも声のかわりに手やライトで合図をし合うなど、
じつにきめこまかい配慮がされていて、非常に感心しました。
豪雪地帯では、ごみは「除雪車が来てから出す」
というきまりになっているそうです。
考えてみりゃあたりまえのことですが、
なるほど! そうだよね…と、こんなところも感心しました。
わが家では、空きビン空き缶ダンボール粗大ごみの類は、
年に数回、軽トラックで清掃センターに直接持っていきます。
分別が複雑でいつも迷いますが、係の人は、ぱっぱっと見て
「はい、それはここね、それはあっち」とてきぱき教えてくれて、
スポーツインストラクターみたいな雰囲気で、
それはもう、ほんとにプロ!っていう感じ。
かっこいいです。
一度、折れたり錆びたりした縫い針の捨て方がわからなくて、
小さい容器に入れて持って行ったら、まだふたを開けもしないのに、
「針はこっちですよ」と声をかけられたのには驚きました。
どうして針ってわかったんだろう?
収集作業をする人も、燃やすごみの中に缶やガラスが混じっていると、
袋に手をかけた瞬間にわかったりするそうです。
どんな職種でも、経験を積み、専門の知識や技術を身につけた人は
かっこいいなあと思います。
昔は、収集車が移動するとき、作業員さんが後部に
ひょいとつかまって乗っていくという光景がよく見られ、
子どもは「あ、いいなー」なんて思ったものでしたが、
今では見かけなくなりました。
禁止になったのかな。一般車両で真似したら危険ですしね。
絵にするには、ちょっとよかったんだけど、残念。
どんな人でも、どんな生活をしていても、ごみは必ず出るもので、
税金払ってるんだから、持ってってくれるのは当然でしょ、
と思ってる人は多いかもしれないけれど、そうとは限らない。
ごみは処理してほしい、処理場は作らないでほしい、というのは
いまや国内だけでなく地球規模の難題になりつつあります。
イタリアのナポリでは、ごみ事業をすべてマフィアが仕切っており、
利権をめぐるトラブルから収集がストップし、町にごみがあふれて
えらいことになっている…というニュースを見た記憶がありますが、
あれはその後どうなったでしょうか。
おっ、クレちゃん、絵本初登場!
(まだ小さかったのね、描いたときは…笑)
POPは偕成社のウェブサイトからダウンロードできま~す。