絵本の新刊です。
『プテラノドンのそらとぶいちにち』(絵・鈴木まもる 偕成社)
『トリケラトプスのなんでもないいちにち』『ティラノサウルスのはらぺこないちにち』につづく恐竜シリーズ、3作目です。
前の2冊についての記事はこちら→ きょうりゅう絵本2冊
今回の主役は、翼竜(分類上「恐竜」ではない)プテラノドン。
海辺の崖をねぐらに、魚を食べて暮らしています。
主役の他に、こんなのも出てくるし…
こーんなのも出てくる。
制作にまつわる話は、偕成社のウェブマガジンで、描いた人と共にいろいろ語っておりますので、そちらをごらんください。
作家が語る「わたしの新刊」
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以下、補足として。
(長いです。恐竜に興味のない方はとばしてね)
(1)
シリーズ3冊でとりあげた生物は、「白亜紀後期に、現在の北米大陸で暮らしていた」という条件で選んでいます。
なぜかというと、ティラノサウルスとトリケラトプスという二大人気恐竜(?)がそこに含まれるから。
したがって、時代の違うアパトサウルスやステゴサウルス(ジュラ紀後期)、地域の違うヴェロキラプトル(東アジア)などは、ざんねんながら登場しておりません。
ただ、白亜紀といっても、約1億4500万年前から6600万年前と、とてつもなく長いのです。「後期」だけでも3350万年もの幅があり、それがさらに年代順に6つに分けられている。
ティラノサウルスとトリケラトプスの化石は、どちらもそのうちの一番最後の(=新しい)時代の地層から発見されています。
しかし、プテラノドンの化石がみつかっているのは、そのひとつ前の地層。
ということから、「ティラノやトリケラたちの時代には、プテラノドンはすでにいなかった」とする説が、現在のところ有力なのだそうです。
これは、ちょっと困りましたけれど、これまで化石が出ていないというだけで、「いなかった」とは言い切れない。状態の良い化石になって残るというのがそもそも稀有なことであるし、地球上をすべてくまなく掘り返して調べたわけではないし、ね。
できるだけ事実に即して、とはいっても、科学本ではないので、あまり細かくこだわるとかえって変になると考え、ざっくり「白亜紀後期」の範囲内ならOK、ということにさせていただきました。
(2)
上に関連して。
本書16~17ページ、プテラノドンがさまざまな種類の恐竜たち(たぶん100匹以上いる!)を見下ろしながら飛ぶシーンがありますが、これも「ざっくり」です。
実際にこれらすべてが同時に同じ場所でこんなふうに暮らしていた、という意味ではありませんし、大きさなども図鑑にあるようなデータを正確に反映して描かれているわけではありません。ねんのためお断りしておきます。
(3)
その「恐竜100匹」の場面ですけど、最初わたしは、ここに描かれるのは3~4種くらいのつもりで、絵に合わせて本文に「くさをたべているトリケラトプス」などと入れるはずでした。が、描く人が「いろんなのをいっぱい描きたい!」と言って、出来上がってみたらこういうことに。
お子さんに読んであげるとき、「これはなんていうきょうりゅう? これは? これは?」とひとつひとつ聞かれたら困るだろうと思ったので、全部に名前を入れてあります。
絵の邪魔にならないように、小さい字で入れましたので、もちろん無視していただいてもかまいません。「パキケファロサウルス」か「バキケファロサウルス」かわかんないようなときは、ルーペがあると便利です。
(4)
28~29ページの、プテラノドンが崖から無事に飛び立つ場面。
下にいる恐竜たち(肉食)は、文章には何も書いてありませんが、「逃げられた! ざんねん~!」とくやしがってじたばたしている設定です。
ところがね、最初からここまでずーっと読んでくると、彼らが「とべた、とべた!」と喜んで手を叩いているように…見えてきません?
そうすると、ここまでプテラを追いかけてきた連中が、じつは背後から見守り応援していた、というふうにも思えてくるではないですか。
これは、校正の段階で、絵に文章がのって、ページをめくり、声に出して読んで、はじめてわかったこと。原稿ができてからそこまで、一度も気づかず、完全に想定外だったので、びっくりしました。
こちらの意図せぬ解釈ができてしまう、というのは、文章担当として、だめであります。
わたしは変な(人間の価値観に寄りすぎた)擬人化は好きでないので、「こわもてだけどじつは心優しいティラノサウルス」とか「プテラのがんばる姿に感動して味方になったドロマエオサウルス」みたいな話は書けません。
前の2冊でも書いたように、草食動物は草を食べ、肉食動物は肉を食べる。そこには良いも悪いもなく、「食べる」=「生きる」という基本があるだけ。プテラは魚をとって食べるけど、地面に落ちていたらティラノのごはんになってしまう。それが一番自然なこと。
でも、もしかしたら、この絵を見て「みんなおうえんしてたんだね」「よかったねって、わらってるんだね」と感じてくれるお子さんがいるかもしれない。それはそれで、すごく素敵なことじゃないかと思ったのです。
そういうわけで、文も絵も、あえて直さずそのままにしました。
このシーンの解釈は、読む人によって、あるいは、読んでもらう人によって、2通りあり、どちらも正しい。
そういうことにいたしましょう。
「ボクこれ知ってる。ときどき池にくるやつでしょ?」
(うん、あれは本名アオサギだけどね…)
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東京は吉祥寺のクレヨンハウスさんで、サイン本30冊置いてくださるそうです。
このシリーズは扉絵が見開きで入っているので、どこにサインをするか迷うんですけど。
途中で思いついて、10冊ほどはプテラバージョンのサインにしました。当たった方はラッキーかも。
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