弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

新・拒絶理由通知との対話

2006-08-15 00:01:12 | 知的財産権
「“拒絶理由通知との対話”という名著がある」という話をよく耳にしましたが、すでに絶版ということで、今まで実際に目にしたことはありませんでした。

「弁理」屋むだばなしさんのブログで、改訂版が発行されるという話を知り、さっそく注文してみました。こちらのページから、メールやFAXで注文できます。
370ページにも達する分厚い本であり、まだ途中までしか読んでいません。
新・拒絶理由通知との対話―特許出願
稲葉 慶和
エイバックズーム

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8月5日付け日経新聞朝刊に、この本の広告が大きく掲載されていたのにはびっくりしました。

はじめて拒絶理由通知を受け取って、うろたえている人や審査官に対して怒っている人、などを対象とした語り口で話は進んでいきます。
著者が特許庁出身であることから、拒絶理由通知を受けた出願人・発明者が特許庁に対してどのような反応を示すのか、「こんな人もいます」ということでその実態が紹介されます。我々実務家としては、このような生々しい実態には興味があります。
しかし著者の目的は、このようなさまざまな反応を示す人々に対し、本人が不利益を被らないように対応の指南をすることにあります。

そうは言うものの、3800円という価格にしろ、370ページという分厚さにしろ、1回だけ出願して初めて拒絶理由通知をもらった、という本人出願の発明者が買える本ではないですね。もちろんそのような人が読んでも十分に役に立ちますが。

この本はあくまで、実務家としてこれから実務能力を磨いていこうという人たちに最も有益な本だと思います。一方、私のように年数だけはベテランの部類に入った実務家にとっても、随所に新しい発見があります。

おもしろいと思った箇所をピックアップしてみると(特29条関係)・・・

「『拒絶理由通知なんて慣れっこだ』というのも困ります。慣れすぎて、対応がおざなりになってしまうおそれが、たぶんにあります。人は、いくらかは怒ったほうがいい」

「審査官は引用文献の参照ページや行を示さないことが多い。しかしあまりこまかに特定すると、出願人はそこだけしか参照しない、という人はよくあるんです」

「出願人が本願発明と認識している発明に対し、クレームが広すぎることに気付かない人が多い。出願人はAという発明をした。しかし審査官がクレームを読むとAともBとも読める。もしも、思いもかけぬヘンな引用例Bがついていたら、それこそが審査官からのシグナルかもしれません。」
「出願人はどうしても、範囲が限定された実施例そのものを本願発明として、それと引用例とを比べてしまいがちです。」

ぜい肉の多い意見書
「引用例との対比とは無関係に、自慢話や苦労話が延々と書かれている。審査官は、そんなことはいいから、肝心の引用例との要件や効果の違いを早く知りたい。ところが、それがいつら読んでも書いてない。」
「念のため、特許庁にご足労願ってお話を聞くと、その方は、実は、引用例をまるで読んでおられない、ということも少なくない。」
などなど
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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Pecan)
2006-08-29 01:29:41
タイムリーな情報をありがとうございました。

早速入手しましたが、大変よさそうです。
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Unknown (特許男(壱))
2006-08-15 19:24:09
そうですねー。

早速購入しようと思い、エーバックズームに問い合わせたら、只今増刷中とのことで来週以降の発送になるとのことでした。早くみ・た・い・・・。



ありがとうございます。お互いに頑張りましょ~!
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いらっしゃい (ボンゴレ)
2006-08-15 17:23:25
特許男(壱)さん、いらっしゃい。



今回は発明協会などの出版社ではないので、書店で購入しづらいのが難点ですね。



特許男(壱)さんのブログも拝見しています。これからもご活躍を期待しています。
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Unknown (特許男(壱))
2006-08-15 15:24:43
こんにちは、特許男(壱)です。



なるほど、従前が315頁がだったので、2割ほどボリュームアップして+1100円ということですね。自分も購入してみようと思います。いずれにせよ、専門的で難しい書籍が多い中、このような”読み手に優しい”&”実務に役立つ”本がバージョンアップして再販されるのはありがたいことです。



ちなみに旧版ですが、2,700円の定価に対して中古本で5,000円の値がついたみたいです(アマゾンのがマーケットプレイス)。知財関係の書籍で倍近いプレミアが付くっていうのも珍しいですね。
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