弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

間違いだらけのクルマ選び

2006-03-05 00:07:40 | 趣味・読書
徳大寺有恒さんの「間違いだらけのクルマ選び」が最初に発行されたのは1976年です。
今では想像もつかないでしょうが、そのころの国産乗用車の大部分は、「外見の見てくれを重視し、そのためには車内の居住性や前方・後方視界は二の次」「走る・曲がる・止まるの基本性能が十分に発達していない」という状況でした。自動車雑誌は存在し、新車の批評がそこに掲載されるのですが、そもそもそれらの雑誌は自動車会社からの広告収入で成り立っており、ライターもそられ雑誌との契約で生活していましたから、ズバッと本質を指摘する評論が存在しなかったのです。ユーザーも、自動車とはそんなものだと思いこまされていたのでしょう。
そこにこの本が登場し、当時の国産車をめった切りにしました。
本を読む限り、なるほどと納得させられることばかりです。その後、我が家でクルマを選ぶ必要が生じるたびに、その年の「間違いだらけ・・」を購入し、クルマ選びの指針にしていました。

その後の国産車の動向を見ていると、各社とも一斉に「車内居住性を重視し、外から見ると小さいが乗り込むとゆったりとしている」「走る・曲がる・止まるの基本性能重視」方向に舵を切ったように思われます。国産車はいいクルマばかりになりました。このように国産車が進歩してきた背景として、やはり「間違いだらけ・・」の及ぼした影響が大きかったものと想像しています。
しかしその結果、どのクルマも似たような外観を持つに至りました。76年当時のクルマは、見ただけで車種を言い当てることができましたが、最近のクルマは区別がつきません。

76年発行の最初の版は、記念すべき本として保管し、その後必要に応じて購入した各年度版は処分していました。ところがある年、各年度版を捨てるつもりが初年度版を捨ててしまったのです。返す返すも残念なことをしました。

今般、「間違いだらけ・・」の最終版が発行され、最初の版からの歴史を掲載しているということだったので、購入してみました。残念なことに、最初の版の「めった切り」はほとんど採用されていませんでした。今になって昔の悪評をほじくり出してもしょうがないという考えでしょうか。
最終版 間違いだらけのクルマ選び
徳大寺 有恒
草思社

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わずかに、本の中に挟まれた折り込み解説に、当時の片鱗が見えました。
日産バイオレットについて「こんなクルマでも買ってくれるユーザーがいるのだから、ただ感心するばかりだ」ということです。たしかに、その当時のバイオレットは、流線型に見せるために後方視界が悪いクルマでした。バイオレットを所有している友人がおり、気の毒になりました。

コメント
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