晴れ時々スターウォッチング

昔の出来事もたま~に紹介

2023年に見える細~い月(有明の月)

2022年11月30日 | 「見たい天体現象」
 2023年見たい天体現象の第2弾「来年見える細~い有明の月」で~す。
↓ 有明けの月は9月25日に輝面比0.01の撮影に成功したのでアーカイブを更新しました。

月齢28.4 輝面比0.01 (新月24時間39分前)撮影高度8°(日の出29分前)

2021.11.4 5:36:41 SIGMA150-600mm f5-6.3 f600mm ISO2000   f7.1  1/160sec


月齢28.5 輝面比0.01 (新月25時間33分前)撮影高度4°(日の出33分前)←NEW

2022.9.25 4:52:45 SIGMA150-600mm f5-6.3 f600mm ISO1000   f9  1/40sec


月齢28.4 輝面比0.02(新月27時間21分前)撮影高度8°(日の出33分前)

2013.12.2 6:01:21 BORG60 Powermate2× ISO400 1/2sec


月齢28.4 輝面比0.02(新月28時間18分前)撮影高度4°(日の出40分前)

2016.1.9 6:13:40 BORG60 Powermate2× ISO800 1/5sec


月齢28.1 輝面比0.03(新月40時間33分前)撮影高度12°(日の出26分前)

2020.11.4 5:50:34 BORG60 Powermate2× ISO640 1/20sec


 さて、来年見える細~い有明の月データは下記のとおりです。
輝面比は太陽出の時刻で比較してあります。

2023年新月前日  月出 太陽出 月高度   新月まで  輝面比 月齢
  1月21日(土) 06:27 06:49 2.435°  23時間04分 0.0144 28.5
  2月19日(日) 05:55 06:22 3.577°  33時間44分 0.0300 28.0
  3月21日(火) 05:34 05:39 0.237°  20時間44分 0.0106 28.6
  4月19日(水) 04:27 04:55 4.731°  32時間18分 0.0230 28.1
  5月19日(金) 03:50 04:22 5.014°  20時間31分 0.0082 28.6
  6月17日(土) 02:59 04:11 11.593°  33時間26分 0.0197 28.1
  7月17日(月) 03:20 04:25 9.635°  23時間07分 0.0087 28.6
  8月15日(火) 03:12 04:49 15.942°  37時間49分 0.0223 28.1
  9月14日(木) 04:07 05:16 12.026°  29時間24分 0.0136 28.4
  10月14日(土) 04:56 05:43 8.013°  21時間12分 0.0075 28.8
  11月12日(日) 04:47 06:13 14.063°  36時間14分 0.0241 28.1
  12月12日(火) 05:53 06:42 6.749°  25時間50分 0.0142 28.5
 

 ふむ、ふむ、2023年の究極に細い有明け月は10月14日(輝面比0.75%)のようですね。有明の月は月齢を見ても細さが分かりにくいのでランキングで表すと下のようになります。ご参照を~

〈2023年細い有明の月ランキング〉*条件的にキビシイ観望不可日は除いてあります。
 第1位 10月14日(土)輝面比0.75% 新月21時間12分前(日出時刻)太陽離角 9゚10'
 第2位 5月19日(金)輝面比0.82% 新月20時間31分前(日出時刻)太陽離角 9゚51'
 第3位 7月17日(月)輝面比0.87% 新月23時間07分前(日出時刻)太陽離角 10゚49'
 第4位 9月14日(木)輝面比1.3% 新月29時間24分前(日出時刻)太陽離角 13゚02'
 第5位 12月12日(火)輝面比1.4% 新月25時間50分前(日出時刻)太陽離角 13゚31'

 これまで新月まで24時間を切る有明の月は撮影したことがないのでランキングのベスト3に入っている10/14、5/19、7/17のどれかは撮りたいですね。といってもすべては天気の神様しだいですが、天気予報に惑わされることなく準備だけはしっかりしておくことにしましょう。

 「新月の日に月を撮影しよう!(有明け月編)」は条件が悪いので該当なしです。
次回の見たい天体現象は「月面X」を予定していま~す。

11月27日夜の火星(最接近4日前)

2022年11月29日 | 火星
11月27日夜に撮影した火星です。
 この日は高気圧にすっぽり覆われて一晩中いい天気となりましたが、この高気圧が西からやってくる移動性高気圧ではなく北から降りてきた高気圧だったからなのかアルベド模様はボケボケでした。

 星の瞬きはそれほど大きくなかったので期待したのですが冬の気流は質が違うのでしょうかね~。撮影は22時から0時30分まで続けましたが気流は良くも悪くもならずずっと同じ状態でした。

 どの動画もボケボケで画像処理をしてもみな同じような感じでしたが、比較的良かったのがこちらの画像です。これでも本日のベストフォトなんです。トホホ…

本日のベストフォト 23時54分(JST)撮影

光度-1.8等 視直径17.2″ 輝面比0.993 CM=121° De=-3.1° LS=345°
Duration=180s Shutter=10.48ms Gain=210(35%) Autostakkert3 25% of 12201


 こちらはRGB調整をして好みの色合いにした火星画像です。(^^ゞ


 11月27日から視直径が今回の接近で最大となる17.2″になりました~。光度は-1.8等、南中時の高度は76°です。これほど明るい火星がほぼ真上に見えるのは、2037年11月(光度-2.1等、高度72°)までないのでしっかり見ておきたいですね。(注:次回の接近2025年1月は高度76°まで高くなるが光度は-1.4等と暗くなる)


〈参考資料:火星最接近時の地球までの距離、視直径、光度、高度、星座〉
2022年12月1日、8,145万km、17.2秒、-1.8等、76°、おうし座
2025年1月12日、9,608万km、14.6秒、-1.4等、76°、かに座
2027年2月20日、1億142万km、13.8秒、-1.2等、67°、しし座
2029年3月29日、9,682万km、14.5秒、-1.3等、53°、おとめ座
2031年5月12日、8,278万km、16.9秒、-1.7等、36°、てんびん座
2033年7月5日、6,328万km、22.1秒、-2.5等、23°、いて座
2035年9月11日、5,691万km、24.6秒、-2.8等、44°、みずがめ座
2037年11月12日、7,395万km、19.0秒、-2.1等、72°、おうし座

〈11月27日夜の天気図〉







ミステリアスな青いオーロラ出現~その正体は?

2022年11月27日 | Weblog
  2022年11月3日、G1クラスの地磁気嵐が発生した夜、これまで誰も見たことのない青いリボン状のオーロラが北欧の空に現われました。その正体は何か?そのナゾが明らかになったようです。 

 以下、2022年11月4日付けSpaceweather.comの記事より
11月3日の夜、スウェーデン在住の多くのスカイ・ウオッチャーが地磁気嵐で乱舞するオーロラの下で輝く青いリボン状のオーロラを目撃した。

 そのオーロラはスウェーデンのアビスコ国立公園から世界中にオーロラの映像を配信しているLight Over Laplandのディレクターであるチャド・ブラックリーさんに「私はかつてこのようなオーロラを一度も見たことが無い」と言わせるほどの奇妙なものであった。

 Light Over Laplandでツアーガイドをしているミシェル・サッチさんはこのオーロラをビデオで録画。目撃者によると青いオーロラは現地時間の17時15分に急速に肉眼で見えるようになり、30分後には地平線へと沈んでいったという。青いオーロラは大きく形を変えることはなく、乱舞する緑色のオーロラの手前にあるように見えたと目撃者は話している。(videomovie

 ボストン大学の宇宙物理学者、西村俊さんはこの動画を見て「これがオーロラだとすると、とても奇妙なことだ。オーロラアークが他のオーロラアークを乱すことなく交差することはないので、オーロラ物理学の観点からは説明しがたい現象だ。」と述べている。

では、これがオーロラではないとするとこの現象はどう説明すればよいのだろうか?

The blue ribbon over Lake Tornetrask. Photo credit: Claudio Comi

 その可能性の一つとして考えられているのがミサイル発射だ。10月下旬以降、ロシアはバレンツ海で原子力ミサイル巡洋艦「Peter the Great」でICBM発射演習を実施しており、ロケットの排気がこれと似た現象を発生させることは過去にも何回かあったので、それが原因ではないかと考えられている。

 しかし、不思議なことにそのミサイルを目撃したという人が今のところ一人も現われていない。青いオーロラを目撃した人たちは声をそろえて「オーロラ出現の前に空を横切るものは何も無かった」と述べている。

 今もって青いオーロラは謎のままです。複数の場所から撮影された写真でオーロラの高さが分かるので、青いオーロラの写真を撮った方はぜひご連絡ください。もちろんミサイルを見たという人の報告も待っています。11月4日付けSpaceweather.com

ふ~むふむ、青いオーロラとはこれまたずいぶん神秘的な現象ですが、どーもこれはオーロラではないようですね~。スカイウオッチャーのみなさんはやれエイリアンだとか、やれワームホールだとか盛り上がっているようですが、謎は謎のままでこのまま解決することはないのだろうなぁ~。と思っていたら11月15日付けのSpaceweather.comに続報が載っていました。

 しかもタイトルが「ロシアのロケットはなぜ青いオーロラを発生させるのか」となっていて、記事の内容が「発生原因はロシアのロケットだった!」ではなく、ロシアのロケットが青いオーロラを発生させるメカニズムに関する内容でした~。あれれ?いつの間に解決してたの?

 以下、2022年11月15日付けSpaceweather.comの記事より

 2022年11月3日にスウェーデンとノルウェーで目撃された夜空を横切る奇妙なへび状の青いオーロラは、色も動きもオーロラ物理学の法則に反するものでした、事実、それはオーロラではありませんでした。専門家たちはこの青いオーロラが目撃された時間と北海でロシアの潜水艦がICBMを発射した時間が一致していることにすぐに気づきました。

  ロシアのロケットが青いオーロラを発生させることを世に知らしめたのは2009年12月9日の夜にノルウェーで発生した「巨大な螺旋状の模様が突然空に浮かび上がる現象」です。(関連ブログ→blog


 ブルーオーロラは2017年10月26日にも現われました。このときは、モスクワの北800kmのプレセツク宇宙センターからカムチャツカのクラ試験場に向かって発射されたICBMトポルによるものだと考えられています。

The blue exhaust of a Russian rocket on Oct. 26, 2017. Credit: Alexey Yakovlev of Strezhevoy, Russia

 2016年に発表された論文「ロシアのランチャーの運用中に観察された例外的な光学現象」は、そのようなロケットがどのように青い光を生成するかを説明しています。「固体燃料の主な燃焼生成物は酸化アルミニウムAl2O3です。高温では、一酸化アルミニウムAlOの形成も起こります。AlOは気体状態で存在します。これらの分子による太陽光の共鳴散乱は、ロケットのガスダストトレイルのターコイズ色に対応する波長領域4374〜5424 Ǻの発光を引き起こします。」と論文には記載されています。

 これで謎は解決されたのでしょうか?いや私たちは調査をやめたわけではありません。北欧に住むスカイウオッチャーのみなさんはブルーオーロラを目撃したときはぜひ写真を投稿してください。
11月4日付けSpaceweather.com 

ふ~むふむ、論文によると固体推進剤燃焼生成物に含まれる金属アルミニウムと大気中の酸素との相互作用によって一酸化アルミニウム雲が発生するとありますね~。古くは1977年9月20日のボストーク打ち上げの時も目撃されたとあるので、人知れず昔から発生していた現象のようです。

 ロケットブースター「ボストーク」の打ち上げ1977年9月20日
1977年9月20日の早朝、旧ソ連領土の広大な北西部地域とフィンランドの隣接地域で、膨大な数の目撃者の間で混乱を引き起こした驚くべき光学現象が観察された。ペトロザヴォーツクの住民の多くがこの珍しい現象を目撃した。(ソビエト新聞ニュース記事「未知の現象」より)

「ロケット打ち上げ中に出現する最もカラフルで大規模な現象は、高度100kmを超える上層大気で観察できる。これらの効果は、ロケットエンジンの排気によって生成されたガスダスト雲の分散粒子による太陽光の散乱に関連している。これらの高度では、大気中に自然起源のエアロゾルが存在しないため、これらの現象の自然な類似性は知られていない。」と論文にありますが、

 これは基本的にロケット打上げ時に発生する「夜光雲」と同じメカニズムのように感じますが、どうなのでしょう? ICBMやポラリスは打上げ仰角がロケットより低いことや機動性が高いことでロケットの打上げ時に発生する夜光雲と形状が違うのかもしれませんね。

 それにしてもこの神秘的なブルーオーロラの原因がICBMやポラリスミサイルの発射というのは何とも興ざめな話ですね。


11月26日未明の火星(最接近まであと5日!)

2022年11月26日 | 火星
11/25は移動性高気圧の通過で秋晴れのような天気になりました~。
 で、23時30分から02時まで火星を撮影したのですが、ブログにアップするとなぜか画質の劣化が激しくて残念な火星になってしまいました。同じ劣化でもツイッターの方がまだ見られる感じですね~。
(←ツイッターマークをクリックするとジャンプしますのでご参照を)

本日のベストフォト 01時00分(JST)撮影
光度-1.8等 視直径17.1″ 輝面比0.99 CM=155° De=-2.6° LS=344°

Duration=180s Shutter=10.48ms Gain=204 (34%) Autostakkert3 25% of 17118


本日のラストフォト 01時54分(JST)撮影

Duration=180s Shutter=10.98ms Gain=208 (34%) Autostakkert3 25% of 16378


↓ こちらは23時30分から02時まで撮影した画像をつないだGIFアニメです。
撮影間隔の調整や色合わせはいつものように一切していませ~ん。 (^^ゞ 



↓ こちらは良質な画像3枚をセレクトしてつないだGIFアニメです。
こちらの方が2時間30分間の火星自転の様子が分かりますね。


 さて、いよいよ火星最接近まであと5日です。仙台ではこの先は昨夜みたいな秋っぽい天気は来なさそうなのでちょっと期待薄ですが、少しでもいい気流を見付けて撮影を試みることにしましょう。

 昨夜は長時間に渡って天気が良かったので、今まで気になっていた「火星撮影における最適なシャッタースピードは何か」を探るテスト撮影と検証もしてみました。

 結論としては、個人的な見解ですが「フレームレートと同じシャッタースピードが最適」という結果になりました。

 惑星カメラにはフレームレート限界値がありますが、実質はPCの性能とROIの大きさでフレームレート値が変わるのでいつも同じというものではありません。

 昨夜はシャッタースピードを4ms~20msの間で変えて試してみましたが、10msの時の解像度がベストでした。撮影データを見ると昨夜の撮影のフレームレートはFPS(avg.)=90~95です。

 フレームレートは1秒間の撮影枚数なので90カットとすると1枚当りの撮影時間は約0.01秒(10ms)になります。フレームレートと同じ(正確には少しだけ速い)シャッタースピードにすれば入ってくる光を一番効率よく取得できることは当然ですが、これが画質も良くなるというエビデンスはないのでたまたまかもしれません。

 シャッタースピードを速くすればするほど撮影枚数は稼げるのでスタック時に有利と思っていましたが、速いシャッタースピードが必ずしも適正値ではないなぁと以前から感じていたので、今回の結果は納得することでもありました。この仮説は他の惑星でも通ずるのか気象条件で変わるのかについては今後さらにテストを重ねることにしましょう。(たぶん来年になると思いますが…)

火星最接近は12月1日ですが11月30日~12月5日が視直径17.2″(輝面比1.00)なのでその期間に晴れるといいですね。(火星の衝は12/8なので視直径がやや小さくなりますが輝面比1.00は12/15頃まで続きます。)

〈昨夜から今朝にかけての天気図〉
11月25日21時の天気図

11月26日03時の天気図


2023年に見える細~い月(月齢1)

2022年11月24日 | 「見たい天体現象」
2022年も残すところあと1か月あまり、みなさん今年も年末が来ましたよ~。

 …ということで、年末恒例の「来年見たい天体現象」シリーズの始まりで~す。
で、第1弾は、新月の翌日に見える儚くも神秘的なお月様「来年見える細~い月(月齢1)」です。

 2022年は2回ほど撮影に成功したので月齢1前後のお月さまアーカイブを更新しました。残念ながら月齢0.9の月は撮影できませんでしたが、月齢1.1は初記録なのでご覧ください。

新月から21時間17分後の月(月齢0.9)撮影時高度 3.1°(日没14分後)日没時月高度9.2°

2010年4月15日 18時46分  f100mm F6.0 D50 ISO800 1/4(トリミング)

新月から25時間14分後の月(月齢1.0)撮影時高度 3.0°(日没40分後)日没時月高度9.4°

2016年12月30日 17時06分  SE200N 直焦点 D90 ISO400 1/13

新月から25時間29分後の月(月齢1.0)撮影時高度 2.6°(日没32分後)日没時月高度7.6° NEW

2022年8月28日 18時46分 D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f550mm ISO1250 F9 1/40sec

新月から27時間12分後の月(月齢1.1)撮影時高度 3.0°(日没35分後)日没時月高度10.2° NEW

2022年4月2日 18時36分 D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f600mm ISO1250 F8 1/10sec


新月から31時間13分後の月(月齢1.3)撮影時高度 9.5°(日没21分後)日没時月高度13.5°

2009年2月26日17時48分 SE200N 直焦点 D70 ISO200 1/10

 アーカイブを見ると月齢1.2がありませんが、実は2022年には月齢1.2の月を見る機会が一度もありませんでした。不思議な感じがしますがその年によって偏りがあるのでたまたまそうだったようです。

 では、2023年の「月齢1前後の超スリムなお月さまが条件よく見える日データ」を見てみましょう。2023年 新月翌日の日没時刻(仙台市)・日没時月齢・日没時月高度は下記のとおりです。


 ふむふむ、来年は月齢0.9が1回だけありますが日没時の月高度が1.6°なので観望は不可ですね~。月齢1.0は2回あるので、これが来年見られる一番細い新月翌日の月となりますね。
 
 月齢1.2は2回ほどありますがどちらも日没時の月高度が10°以上あるのでキレイに見えることでしょう。来年新月翌日の細~い月を見るチャンスは4回しかないというのは例年に比べるとかなり少ない感じがします。ぜひ晴れてほしいですね。

 さて、こちらは番外企画「新月の日に月を撮影しよう!(夕月編)」の基本データです。
2023年はチャンスが3回あるようです。

*最近インターネット上で惑星カメラを使用して日中に太陽を遮蔽して新月直後の月を撮影した写真を見かけます。それも一つの方法ですが、危険が伴いますので、晴れスタ的には日没後に見える月の限界を極めたいと考えています。今のところは… (^^ゞ


ISS超拡大眼視ミッション season2「3rdトライアル編 」

2022年11月23日 | ISS(国際宇宙ステーション)
2022年11月23日 プレスリリース

「11月17日に、ISS超拡大眼視ミッションを実施した」
「お!博士、お久しぶりですね~。お元気でしたか?」
 (*今回は昨今の事情を考慮してオンラインで取材している。)
「博士、ずいぶん、ご無沙汰だったので、このイベントやめたのかと案じてました~」
「何度も言うようだが、これはイベントではない。最終目標が…」

「あ、そのくだりはいいです~。それより、前回のプレスリリースは2021年11月23日だったのでピッタリ1年ぶりですね。これは七夕みたいに年中行事的な日取りにしたということですか~。(笑)」

「このミッションの最終ステージは倍率200倍でISSを目視することである。今回はそのプレ・ステージとなる187倍でシステムを検証する重要なトライアルだ。」

「あ、ハイ、そうなんですね~、えーと、それで、結果はどうでしたか~。」
「この世の出来事すべてのことに価値があり、どんなことにも無駄ということはない。」

「あれ~、ひょっとして成果なしの、いわゆるシッパイですか~。」
「いや、今回は…… ……」

「ん!? 博士! もしも~し、 音声が届いていませんよ~。 もしも~し…」
「……」


音声が途切れたようなので博士に代わって報告しよう!

 今回のコースは下図のように南西方向から垂直に上昇する眼視ミッションにはこれ以上ないほどの最適なコースである。今回、倍率を187倍に引き上げたことで前回のトライアル125倍(視野角0.48°、28.8′)からさらに視野が狭くなり、視野角0.32°(19.2′)となる。

 数値的には大差ないように思えるが、このシステムで木星を導入したときにその視野の狭さと見かけ上の木星の大きさに、これで手動追尾できるのか?という思いが電光石火のごとく頭にささってきた。



 試しに上空を飛ぶ夜間飛行のジェット機を追尾してみたが、これは、でかい!… それもそのはず、1万メートル上空の飛行機を187倍で見るということは50~60mまで近づいてジェット機を見るのと同じである。400km上空のISSでは、計算上だが2.2kmの距離から秒速7kmで移動する大きさ100mの飛行体を見るということになる。

 この狭視野でISS追尾を成功させるには、いかにして早く低高度でISSを視野に入れるかということに尽きる。あとは垂直上昇であれば、なんとか追尾できる… とこの時は思っていたのだが、

 さて、時間です。ISSがまもなく地平線上に現われます。実際に見えるのは高度が10度に達するころなので、あと2分ほどあります。では、30cmドブを高度10°付近まで下げようと、望遠鏡に手をかけたとき、あろうことか双眼装置に左手がぶつかってしまった! 

 なんたる不覚! 木星でチェックしたところファインダーと望遠鏡視野に誤差が生じています。あちゃ~、やってしもうた… もう修正の時間はありません。ISSがまもなく見えます。なんとかファインダーのズレを脳内修正して3度目の待ち伏せで導入成功!高度は20度付近… 

 高度20度付近でのISSまでの距離は約1000kmです。見えているのは闇夜の動物の目のように光るオレンジ色の2つの光点、たぶん太陽電池パネルです。よし、このまま追尾すれば…と思ったのですが、高度が上がるにつれて移動速度が加速度的に速くなり、まだ高度が30度にも達していない時点で追い切れなくなってロスト!

 あちゃ~、再導入を何度しても双眼装置視野に入ってきません… やはりファインダーのズレで正確さを欠いています。2度ほど視野内にISSが入りましたが流星のような速さで視野を飛びだしていきました。

 格闘すること約1分… ISSは高度60度で地球の影に入り、追尾不能となりました。ふう~、…ということで今回はどのように見えたかを記録した「まとめ図」はなしです。記録用にセットしていたカメラもタイムラプスの不具合で動いてなかったので画像は何もありません。以上で~す。(^^ゞ

〈今回のシステム〉
・WHITEY DOB 30 + Powermate2× + 双眼装置 + EF16mm、倍率187倍


〈過去ブログ〉
ISS超拡大眼視ミッション・シーズン2「2ndトライアル編 」 2021.11.23
ISS超拡大眼視ミッション・シーズン2 「リボーン編 」 2021.10.11


〈追記〉
「後日、博士に話を聞いたところ、今回のトライアルを通して新しい補助システムのアイデアが浮かんだとつぶやいていました。」
「博士のことなので、たぶんハイテクではなくローテクなシロモノだとは思いますが、なにかおもしろい装置を出してくるかもしれませんね。気がかりなのは、シーズン2に入るまで新しいアイデアを10年ほど暖めていたので、そこだけはスピードアップしてほしいですね。博士の次のプレスリリースを楽しみながら待つことにしましょう!」


火星リム部に発生するリンギングに関する一考察

2022年11月21日 | 火星
 こちらは11月9日未明に撮影した火星ですが… 

 画像をよく見ると、火星の左側に実際には存在しない帯状の疑似模様(The Mars Edge-Rind Artefact)が現われていることが分かります。これは光学的回析現象のエアリーディスクが画像処理で強調されることで現われる現象でエッジ・アーティファクトやリンギングと呼ばれています。

 この現象は、輝度差がはっきりしている岩石型惑星のエッジや月クレータの縁などで見られますが、ガス惑星のエッジでは輝度差がなめらかなので現われることはありません。

11月9日 1時40分撮影 光度 -1.4等 視直径 15.9" 輝面比 0.95

2022/11/8 16h40m(UT)  CM 317° De 0° LS 335°
Duration=180s Shutter=9.717ms Gain=234 (39%) Autostakkert3 25% of 10182
*CM=中央経度 De=中央緯度 Ls=惑心太陽黄経


〈参考資料ー10月19日ブログの観望記録より〉


↑ 10月19日のブログの観望記録にあるように眼視では火星と宇宙の境界がはっきり見えるので、なんとかこの疑似模様を消したいのだが、これがそう簡単ではない。そもそもこれは光学的回析現象で必ず現われるものなので、ウエーブレット処理を軽めにかけると目立たなくなるが、無くなるものではないようです。



 上記のように、おもな原因は3つほど考えられていますが、望遠鏡の開口部による回析現象ということは撮影した動画にはすでに現われている…と言えます。ということで、11月19日に撮影した動画を目を皿にして注視したところ、ふむふむ… たしかに、エッジ面にリンギングっぽい揺れが見えます。


11月19日22時28分に撮影した火星動画~火星の左側をご覧ください。



↑上記動画の解説です。↓




リンギングを軽減するには動画撮影時にリンギングを無くせばいいのですが… そんなことはできないよなぁ~と思ったとき、ふと、一つのアイデアが浮かびました。現在、惑星撮影用の望遠鏡μ210にはわずかですが光軸ズレが生じているので、調整しなければ…と思っていたのですが、これを利用すればリンギングを相殺できるのでは…と思って実際にやってみました~。以下そのレポートです。

 具体的な方法としては、火星のエッジ面と光軸ズレの方向がほぼ同じだったのでカメラを180°回転させて撮影するだけです。これでリンギングのブレがわずかですが軽減されるはずです。


 で、撮影した動画がこちらです。↓


惑星カメラを180°回転させて撮影した動画


↑ カメラを180°回転させたので上が南極で右側がエッジ面になります。






こちらはカメラを180°回転させて撮影した火星を画像処理したものです。
依然としてリンギングは発生してますが、若干軽減されたようにも見えます。
撮影日時:11月20日0時55分(上が南極、下が北極)


2022/11/19 15h52m(UT)  CM 171° De -2° LS 343°
Duration=180s Shutter=11.71ms Gain=225 (37%) Autostakkert3 25% of 15368


↓ 雰囲気で合わせているのでテキトーですが、一応RGB補正をした火星です。 (^^ゞ 

RGB補正をして北極の雲を本来のブルー色に調整した画像を見ると、リンギングと雲の色は全く違うことが分かります。撮影時の光度は-1.6等、視直径は16.8″です。だいぶ大きくなりましたね。





30cmドブソニアンで木星を撮影(その2)

2022年11月12日 | 木星
11月2日に30cmドブ(f1,500mm)に惑星カメラを入れて追尾なしの固定撮影で木星を撮りましたが今回はその第2弾、Powermate2×を入れて焦点距離を2倍(f3,000mm)にする実験的撮影です。

 Powermate2×を入れるとASI290MCの画角は 0.11° × 0.06° 対角0.12° になりますが、これはISSをカラー撮影するときのシステムなので一番お世話になっているなじみ深い画角です。(笑)

 で、実際に撮ってみると撮影時間約12秒間で992frame取得することできました。それを50%スタックさせたのがこちらの画像です。拡大率が2倍になった分、気流の影響を受けていることが分かります。

2022/11/9 18h34m14s(JST)  CMI=326.0° CMII=327.9° CMIII=270.1°
WHYTEY DOB 300 +Powermate2× + ASI290MC 
Duration=12s Shutter=3.491ms Gain=234 (39%) Autostakkert3 50% of 992

 こちらは同じ動画を75%スタックした画像、やや解像度が上がった感じがしますがこれが限界でした。イマイチですね。気流の悪さもありますが思ったほどの解像度ではありませんでした。



 こちらはPowermate2×を外して焦点距離1500mmで撮影した木星です。こちらの方が模様は細かいところまで抽出できているようです。結局のところスタック枚数が多い方がいいということですかね~。

2022/11/9 18h40m14s(JST) CMI=329.7° CMII=331.6° CMIII=273.8°
WHYTEY DOB 300 + ASI290MC Diameter=46.52" Magnitude=-2.75
Duration=38s Shutter=1.000ms Gain=246 (41%) Autostakkert3 75% of 2632


11月9日18時40分のガリレオ衛星(f1,500mm)トリミング画像


土星の衛星も撮影してみました。(f1,500mm)トリミングなし

2022/11/9 19h05m42s(JST) Diameter=16.94" Magnitude=0.76
DOB 30cm + ASI290MC Shutter=86.93ms Gain=487 (81%) Autostakkert3 75% of 488


こちらは 確認できた衛星画像に適正露出で撮影した土星をはめ込んだもの

 左下の二つの星はどちらも恒星です。土星の衛星ではありません。

 今回のテスト撮影を見る限りでは、Powermate2×を入れると気流の影響を受けてダメダメ画像でしたが、夏場の好気流で撮影すればもう少しは解像度が上がると思うので、来年の夏にもう一度試していみることにしましょう。



11月8日未明の火星(撮影&観望記録)

2022年11月11日 | 火星
11月8日の火星観望記録です。

 それほど気流が良くなかったので300倍で見た火星はヘラス盆地と大シルチスのみが見えて、気流が止まったときに子午線湾の方に続いているアルベド地形が見える状態でした。

11月8日 0時20分撮影 光度 -1.4等 視直径 15.8" 輝面比 0.95

2022/11/7 15h20m(UT)  CM 305° De 0° LS 334°
Duration=120s Shutter=9.094ms Gain=241 (40%) Autostakkert3 25% of 13186
*CM=中央経度 De=中央緯度 Ls=惑心太陽黄経



11月8日 0時29分撮影

2022/11/7 15h29m(UT)  CM 308° De 0° LS 334°
Duration=120s Shutter=9.717ms Gain=234 (39%) Autostakkert3 25% of 12344


11月8日 0時42分撮影


2022/11/7 15h42m(UT)  CM 311° De 0° LS 334°
Duration=120s Shutter=9.717ms Gain=234 (39%) Autostakkert3 25% of 18515

 この日は気流改善の見込みが見られなかったの3ショットで撮影は終了としたのですが、今あらためてみるとそこそこ模様が出ているのでもう少し撮影してもよかったかも…と思ってしまいました。


11月9日のISS(カラー撮影)

2022年11月10日 | ISS(国際宇宙ステーション)
11月9日早朝のISS撮影記録です。



 11月6日と8日に引き続き今月3回目となるISS撮影です。6日と8日は通過時間に雲が湧き出て思うように撮影できませんでしたが、二度あることは三度あるで今回もご多分にもれず通過直前に雲がおいでになりました。ハイ… (_ _)

 今回のイベントはぎょしゃ座(仰角51°)で地球の影から出て南西方向で最大仰角64°を迎え南東へ向かうというコースです。このコースは追尾しやすくISSの太陽電池パネルやISS下面を照らす太陽光の具合もいいのできれいに写すことができます。天気が良ければ…



 11月6日と8日も雲がありましたが、今回はそれを上回る雲量でした。トホホ…  で、星が見えるのはオリオン座とおおいぬ座の間だけでソコだけがぽっかりと穴が空いたようになっています。

 なので、ISSが地球の影から出るところは見えず火星を過ぎた辺りから撮影を開始したのですが、ファインダーの中のISSは雲で明滅をしている状態で、一瞬だけ雲が無い瞬間がありましたがその直後に雲に入り全く見えなくなりました。

 ↓ こちらがPIPPでセンタリングした動画のフルバージョンです。たったの7秒なのでお見逃しなく~。


 明るく写っているところが雲の無いところですが、写っていたのはコマ数にして24フレームだけでした。その中から揺らぎの少ないフレームを1枚選んで画像処理したのが下の画像です。


 ↓ こちらは2枚コンポジットしたものですが、2枚では1枚画像とたいした違いはないですね。コンポジットできる画像が他に無いか探したのですが気流による揺れが激しくほかにはありませんでした。


 まー、11月の気流なので揺れが少ないコマが2コマでも撮れただけでラッキーだったと言えますね。(ポジティブ・シンキング!)

 こちらは雲が無いところで写した24フレームのループGIFアニメです。



若田宇宙飛行士が搭乗しているISSの現在の様子はこんな感じです。




 シグナス補給船は11月9日19時20分(日本時間)にドッキングしたので撮影したISSには写っていませんが、今回のシグナスにソーラーアレイの一つが展開しないトラブルがあったようです。

 NASAはリフトオフの6時間後に2つのソーラーアレイのうちの1つが展開に失敗したと発表。状況評価後、ランデブーが安全であると判断して11月9日にロボットアームで捕獲したようです。

 今回のシグナス補給船は、物理学者でありアメリカ人初の女性アストロノーツである故サリーライド宇宙飛行士に敬意を表して名前が付けられています。シグナス補給船は1月までドッキング予定です。

 あ、撮影データを書き忘れていました。
今回のシステムは、30cmドブ+Powermate2×+ASI290MC+UV/IR cut Filter で、露出は Shutter=0.932ms Gain=290 (48%) でした。