2022年3月16日 23時36分、福島県沖を震源とする大きな地震が発生した。
今回の地震は2011年東北沖地震(東日本大震災)以降に発生した地震としては最大の揺れだった。今回の地震について東北大学災害科学国際研究所は昨年2021年2月13日に起きた地震(M7.3)と震源がほぼ同じ双子地震だったと分析している。
1年間というスパンで発生した双子地震としても特異性があるが、23時34分に発生したM6.1の地震の2分後にM7.3の本震が起きた連続地震だったことも含めてかなり特殊な地震だと感じている。
なので今回の地震についてその時なにが起こったのか記憶が薄れる前にメモしておこうと思う。
時は 2022年3月16日23時30分、リビングでまったりとテレビを見ていた時だった。ドドドッ…という初期微動がやって来た。
2011年の大震災以降、宮城県に住む多くの人は初期微動でその後の地震の大きさが分かる特殊能力を身に付けている。わが家ではこの初期微動でリビングに留まって様子をみるか、リビングからウッドデッキに出るかを判断しているのだが、23時34分の初期微動はウッドデッキに避難すべき振動だった。
妻とウッドデッキでこれ以上揺れが大きくならないようにと願いながら様子をうかがっていると、かなり強い揺れだったがピークは過ぎて揺れが収まってきた。東京に住む娘から「地震大丈夫?」とラインが入ったのでリビングに戻って、「大丈夫(送信時刻23:36)」と送信ボタンを押した瞬間だった。
ドドドドドドドドッーと再び初期微動が来た。やばい! 妻と2人でウッドデッキに脱兎のごとく駆け出してウッドデッキに出た瞬間、ドドドッ、ガーッ、という大地震特有の大音響と同時にリビングに置いてきたスマホとテレビから緊急地震速報が鳴り響いた。
強い揺れに必死で耐えているとき青白いフラッシュが東の空と南東の空の低いところで立て続けに光った。これは仙台駅から撮影された大震災発生時の映像でも見られるモノだが、肉眼でその瞬間を見たのは初めてだった。
その直後、揺れは収まるどころかさらに強くなった。肩を掴んで揺すぶられるような激しい揺れ、家が小刻みにジャンプして見える凄まじい縦揺れ、家の中からは様々なモノが倒れ落下する音が連続して聞こえてくる。
激しい横揺れだけでなく強い縦揺れを含めた3次元の揺れに家が崩れるかも…と恐怖を感じた。ひょっとしたら大震災より強い揺れかも…と感じたが揺れている時間は大震災の時よりはるかに短かった。
娘に「もっと強いの来た」と送ったラインの送信時刻が23時38分だったので強く揺れていた時間は1分程度だったと思う。ちなみに東日本大震災の時は強い揺れが3分以上続いていた。→3.11強震記録波形
今回の地震(M7.4 最大震度6強)と昨年2月13日の地震(M7.3 最大震度6強)は震源地も規模もほぼ同じ双子地震だったようだが気象庁の推計震度分布図をみると今回の方が広い範囲で大きく揺れていることが分かる。( ↓ クリックで拡大)
こちらは防災科学技術研究所が公開している仙台の強震記録波形
記録開始時刻23:36:48 最大加速度330.7gal 計測震度5.3 震央距離92km
上段が南北方向、中段が東西方向、下段が上下方向の加速度を表しています。
今回の地震では宮城県の川﨑で1232.7galという2016年の熊本地震に匹敵する加速度が記録されていますが、震度は地震の最大加速度と地震波の周期で決まるので加速度が高いからといって必ずしも大きな震度になるということはないそうです。詳しくはこちらを→気象庁 震度と加速度
*参考資料
・日本で震度7を記録した地震の最大加速度は以下のとおり
1995年 兵庫県南部地震: 891gal
2004年 新潟県中越地震:2516gal
2011年 東北地方太平洋沖地震:2933gal(築館:計測震度6.6)
2016年 熊本地震前震:1580gal
2016年 熊本地震本震:1362gal
2018年 北海道胆振東部地震:1796gal
・世界最大加速度 岩手・宮城内陸地震:4022gal 2008年6月14日 M7.2
→計測地点(一関西:計測震度6.3、震央距離3km、震源深さ8km)
・2011年3月11日 M9.0:1807gal(仙台:計測震度6.3、震央距離170km)
・2011年4月 7日 M7.2 :1084gal(仙台:計測震度6.2、震央距離87km)
・2021年2月13日 M7.3 :215gal(仙台:計測震度4.9、震央距離90km)
・2022年3月16日 M7.4 :330gal(仙台:計測震度5.3、震央距離92km)
・重力加速度1G≒980gal
東北大学災害国際研究所の災害緊急調査報告によると今回の地震は2021年2月13日の福島県沖の地震(M7.3)の余震の1つであり、震源の位置と深さ(57km)から沈み込んだ太平洋プレート上部で発生したいわゆる「スラブ内地震」とのこと。
*スラブ内地震:東北地方の地下に沈み込んだ太平洋プレート内で発生した地震
*プレート間地震:太平洋プレートと日本列島が乗っているプレートの境界がずれて発生する地震
今回の地震も昨年の地震も広い意味で捉えると3.11後の継続的な余震活動のひとつということらしいが、宮城県沖で3.11以降に起きたマグニチュード7クラスの余震(2011年M7.2、2021年M7.3、2022年M7.4)活動域をつなぎ合わせると下図のように空白域が現われてくる。
このことから、断層構造が連続していればという仮定での話だが、未破壊域を震源とするスラブ内地震が今後発生する可能性があると東北大学災害国際研究所は警鐘をならしている。
そうならないことを願うばかりであるが日本に住んでいる以上地震は避けることのできない自然現象である。備えあれば憂いなしというが、地球規模の自然災害に対しては人間はまったくもって無力であり、ましてや家や家財等を傷つけないようにすることは不可能である。大事なことはいかにして身の安全を確保するか、その一言に尽きる。
関連リンク
災害緊急調査 令和4年(2022年)3月福島県沖地震特設ページ(東北大学災害国際研究所)
・2022年3月16日の福島県沖の地震について(遠田 晋次 教授)
・令和4年福島県沖地震 東北沖地震以降に続発した3つのM7スラブ内地震とその意味
(遠田 晋次 教授 陸域地震学・火山学研究分野)
・地震動について 大野 晋 准教授(地震工学研究分野)
・現地調査報告 柴山 明寛 准教授(災害文化アーカイブ研究分野)
森口 周二 准教授(計算安全工学研究分野)
大野 晋 准教授(地震工学研究分野)
佐藤 健 教授(防災教育実践学分野)
宮城県の地震活動の特徴(政府 地震調査研究推進本部)
今回の地震は2011年東北沖地震(東日本大震災)以降に発生した地震としては最大の揺れだった。今回の地震について東北大学災害科学国際研究所は昨年2021年2月13日に起きた地震(M7.3)と震源がほぼ同じ双子地震だったと分析している。
1年間というスパンで発生した双子地震としても特異性があるが、23時34分に発生したM6.1の地震の2分後にM7.3の本震が起きた連続地震だったことも含めてかなり特殊な地震だと感じている。
なので今回の地震についてその時なにが起こったのか記憶が薄れる前にメモしておこうと思う。
時は 2022年3月16日23時30分、リビングでまったりとテレビを見ていた時だった。ドドドッ…という初期微動がやって来た。
2011年の大震災以降、宮城県に住む多くの人は初期微動でその後の地震の大きさが分かる特殊能力を身に付けている。わが家ではこの初期微動でリビングに留まって様子をみるか、リビングからウッドデッキに出るかを判断しているのだが、23時34分の初期微動はウッドデッキに避難すべき振動だった。
妻とウッドデッキでこれ以上揺れが大きくならないようにと願いながら様子をうかがっていると、かなり強い揺れだったがピークは過ぎて揺れが収まってきた。東京に住む娘から「地震大丈夫?」とラインが入ったのでリビングに戻って、「大丈夫(送信時刻23:36)」と送信ボタンを押した瞬間だった。
ドドドドドドドドッーと再び初期微動が来た。やばい! 妻と2人でウッドデッキに脱兎のごとく駆け出してウッドデッキに出た瞬間、ドドドッ、ガーッ、という大地震特有の大音響と同時にリビングに置いてきたスマホとテレビから緊急地震速報が鳴り響いた。
強い揺れに必死で耐えているとき青白いフラッシュが東の空と南東の空の低いところで立て続けに光った。これは仙台駅から撮影された大震災発生時の映像でも見られるモノだが、肉眼でその瞬間を見たのは初めてだった。
その直後、揺れは収まるどころかさらに強くなった。肩を掴んで揺すぶられるような激しい揺れ、家が小刻みにジャンプして見える凄まじい縦揺れ、家の中からは様々なモノが倒れ落下する音が連続して聞こえてくる。
激しい横揺れだけでなく強い縦揺れを含めた3次元の揺れに家が崩れるかも…と恐怖を感じた。ひょっとしたら大震災より強い揺れかも…と感じたが揺れている時間は大震災の時よりはるかに短かった。
娘に「もっと強いの来た」と送ったラインの送信時刻が23時38分だったので強く揺れていた時間は1分程度だったと思う。ちなみに東日本大震災の時は強い揺れが3分以上続いていた。→3.11強震記録波形
今回の地震(M7.4 最大震度6強)と昨年2月13日の地震(M7.3 最大震度6強)は震源地も規模もほぼ同じ双子地震だったようだが気象庁の推計震度分布図をみると今回の方が広い範囲で大きく揺れていることが分かる。( ↓ クリックで拡大)
こちらは防災科学技術研究所が公開している仙台の強震記録波形
記録開始時刻23:36:48 最大加速度330.7gal 計測震度5.3 震央距離92km
上段が南北方向、中段が東西方向、下段が上下方向の加速度を表しています。
今回の地震では宮城県の川﨑で1232.7galという2016年の熊本地震に匹敵する加速度が記録されていますが、震度は地震の最大加速度と地震波の周期で決まるので加速度が高いからといって必ずしも大きな震度になるということはないそうです。詳しくはこちらを→気象庁 震度と加速度
*参考資料
・日本で震度7を記録した地震の最大加速度は以下のとおり
1995年 兵庫県南部地震: 891gal
2004年 新潟県中越地震:2516gal
2011年 東北地方太平洋沖地震:2933gal(築館:計測震度6.6)
2016年 熊本地震前震:1580gal
2016年 熊本地震本震:1362gal
2018年 北海道胆振東部地震:1796gal
・世界最大加速度 岩手・宮城内陸地震:4022gal 2008年6月14日 M7.2
→計測地点(一関西:計測震度6.3、震央距離3km、震源深さ8km)
・2011年3月11日 M9.0:1807gal(仙台:計測震度6.3、震央距離170km)
・2011年4月 7日 M7.2 :1084gal(仙台:計測震度6.2、震央距離87km)
・2021年2月13日 M7.3 :215gal(仙台:計測震度4.9、震央距離90km)
・2022年3月16日 M7.4 :330gal(仙台:計測震度5.3、震央距離92km)
・重力加速度1G≒980gal
東北大学災害国際研究所の災害緊急調査報告によると今回の地震は2021年2月13日の福島県沖の地震(M7.3)の余震の1つであり、震源の位置と深さ(57km)から沈み込んだ太平洋プレート上部で発生したいわゆる「スラブ内地震」とのこと。
*スラブ内地震:東北地方の地下に沈み込んだ太平洋プレート内で発生した地震
*プレート間地震:太平洋プレートと日本列島が乗っているプレートの境界がずれて発生する地震
今回の地震も昨年の地震も広い意味で捉えると3.11後の継続的な余震活動のひとつということらしいが、宮城県沖で3.11以降に起きたマグニチュード7クラスの余震(2011年M7.2、2021年M7.3、2022年M7.4)活動域をつなぎ合わせると下図のように空白域が現われてくる。
このことから、断層構造が連続していればという仮定での話だが、未破壊域を震源とするスラブ内地震が今後発生する可能性があると東北大学災害国際研究所は警鐘をならしている。
そうならないことを願うばかりであるが日本に住んでいる以上地震は避けることのできない自然現象である。備えあれば憂いなしというが、地球規模の自然災害に対しては人間はまったくもって無力であり、ましてや家や家財等を傷つけないようにすることは不可能である。大事なことはいかにして身の安全を確保するか、その一言に尽きる。
関連リンク
災害緊急調査 令和4年(2022年)3月福島県沖地震特設ページ(東北大学災害国際研究所)
・2022年3月16日の福島県沖の地震について(遠田 晋次 教授)
・令和4年福島県沖地震 東北沖地震以降に続発した3つのM7スラブ内地震とその意味
(遠田 晋次 教授 陸域地震学・火山学研究分野)
・地震動について 大野 晋 准教授(地震工学研究分野)
・現地調査報告 柴山 明寛 准教授(災害文化アーカイブ研究分野)
森口 周二 准教授(計算安全工学研究分野)
大野 晋 准教授(地震工学研究分野)
佐藤 健 教授(防災教育実践学分野)
宮城県の地震活動の特徴(政府 地震調査研究推進本部)