
2021年10月4日 プレスリリース

「本日、ISS超拡大眼視ミッションを再開した!」

「おー 博士、久しぶりですね! え!? このイベント続いていたんですか?」

「イベントではない。ミッションである。今回は満を持しての新兵器投入だ。」

「えっ、新兵器ってなんですか?」

「ズバリ正立プリズムだ!」

「ぷっ、博士~、笑わせないでください。今は令和ですよ。アマチュアレベルでISSの
自動追尾ができる時代ですよ。博士は過去から来たタイムトラベラーですか~」

「実はこの構想は10年前からあった。しか~し、拡大撮影ミッションも
あったのでなかなか機会を持てず今日になってしまった…」

「え、10年前!?、そんな昔から考えてたんですか~?」

「そう、あれは今から12年前… ワシが超拡大眼視ミッションを始めた頃は
望遠鏡を使ってISSを肉眼で見る人はワシ意外にはおらず…」

「もちろんです。だいたい企画がクレージーですし、見る必要性も無いですよね~
あれ?… 博士、視線が遠くに行ってますよ。」

「…つまり、何を言いたいかというと、ズバリ、ワシが世界で初めて望遠鏡を使って
生のISSを見た人間であるということだ!」

(おっ、急にマウントを取りに来たぞ、ここは話題を戻さねば…)

「あの~それで、今回のミッションはどのようなものですか?」

「おお、いい質問だ。ではまず、これまでの眼視ミッションの歴史を振り返っておこう!」

「博士~、それ必要ですか?」

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エピソード1を見る〉ISSを見よう 2009.9.7
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エピソード2を見る〉ISS超拡大眼視ミッション 2009.9.24
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エピソード3を見る〉ISS超拡大眼視ミッション ~再開編~ 2010.1.24
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エピソード4を見る〉ISS超拡大眼視4thミッション 2010.1.25
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エピソード5を見る〉ISS超拡大眼視5thミッション 2010.4.29
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エピソード6を見る〉ISS超拡大眼視6thミッション 2010.8.6

「博士~とりあえず見ました~。ギブアップ宣言から11年がたったんですね~」

「何度も言うようだがあれはギブアップ宣言ではない。そもそも…」

「あー、博士、分かりました~。それで今回はどうだったんですか~?」

「おお、今回は、なかなか面白い結果になったぞ!」
さて、結果報告のまえに今回導入した正立プリズムについて説明しよう。

博士が言っていた正立プリズムはこれである。

Kasai ELS正立双眼装置

ELS正立双眼装置は「正立像」&「必要光路長ゼロ」という優れもののの双眼装置である。特徴としては、光路分割光学系に通常のビームスプリッタープリズムではなく、精密に研磨されたナイフエッジ光路分割ミラーを採用しているため左右の色調差や明度差が僅少で、更にプリズム使用に起因する諸収差の発生もコントラスト低下も無い極めて明瞭な双眼イメージを得ることができる(Kasai Trading Web ページより。)これを使うことにより望遠鏡での追尾を容易にし、さらに両眼で見ることができるためISSの詳細を広い視野で確認することができる。

アイピースはEXTRA-FLAT 16mm/60° アイレリーフ18mm を使用。30cmドブ(D305mm f1500mm)と組み合わせることで倍率93倍、実視界0.64°(38.7′)を得ることができる。
そして今回のコースだが、昇り始めから影に入る高度74°まで垂直に上昇するこれ以上の好条件は無いと言えるベストコースである。超拡大眼視ミッションには最適な待ちに待った極上のコースだ。
本日のイベントデータ


天候は雲量0、下記予報図にあるようにシーイングはまあまあだが透明度は悪くない。直前にISSとほぼ同じ視直径の木星で双眼装置の左右の光軸調整と視野内でのISSの大きさをイメージしてすべての準備は整った。

まもなく時間です… 今回のコースでの通過時刻と高度、直距離は下記のとおり。
・18:54:39 10° 1492km
・18:55:50 20° 1019km
・18:56:30 30° 769km
・18:56:56 40° 623km
・18:57:15 50° 532km
・18:57:29 60° 479km
・18:57:41 70° 446km
・18:57:47 75° 435km(影に入る)

さて、そろそろです。待つ時間は長く感じます… おっ、来ました! 屋根の上にISSがいます。では深呼吸をしてファインダー導入開始です。センターサークルを進行コース上に置いて…すぐ双眼装置を覗いて待ち伏せ作戦開始です。
おおー、導入成功です! 高度は約25° 推定距離は800km、動きはかなり遅いです。あー形が見えます。左右の太陽電池パドルがオレンジ色でその間のラジエターパネルと居住棟が同化して金色の円盤状に見えます。が、かなり小さいですね~。正立プリズムのおかげでスムーズに追尾できてるので、このまま気を緩めずに追尾続行です。
徐々に大きくなってきました。左右の太陽電池パドルが2本ずつに分離して櫛状にはっきり見えます。居住棟付近は明るすぎて分離できません。やはりF5では明るすぎるのかも…と思った瞬間、視野内のゴーストを追尾してしまいロストです! しまった! 邪念は禁物です。視線を夜空に戻して再導入です。ISSは高度50°付近にいます。大丈夫再導入できる…と自分に言い聞かせて、一度目は入らず…二度目の導入で… 入りました! 追尾再開です。
高度が60°を超えて直距離が400km台に入りました。見かけ上の移動速度はMAXです。手ぶれを最小限に抑えながら追尾してISSの動きが止まった瞬間の映像を脳内に記憶させます。左右の太陽電池パドルは格子状でかなり細部まで見えました。しかし居住棟付近の明るさは増すばかりで結局ラジエターパネルと居住棟を分離することは出来ませんでした。地球の影に入り暗くなり始めてから約3秒後には見えなくなりました。まぶしすぎたという反省点はありますが手応えはありました。F5でまぶしすぎるのは想定内ですので次回は減光するよう光学装置に手を加えてチャレンジしたいと思います。
今回のまとめで~す。


眼視イメージは望遠鏡視野内でのISSの大きさを表しています。右は実際に見えた様子の再現図です。
〈WHITEY DOB30とアイピースの組み合わせφ(..)メモ〉
焦点距離1,500mm F5
☆PL25mm(52°) 60倍 52°÷60倍=0.86°(51.6′) ← 1st.2ndミッション
☆EF-16mm(60°) 93倍 60°÷93倍=0.64°(38.7′)←

7thミッション(今回)
☆HC12mm(42°) 125倍 42°÷125倍=0.33°(20.1′) ← 5thミッション
・PL10mm(52°)150倍 52°÷150倍=0.34°(20.4′)
・Ph5mm(60°) 300倍 60°÷300倍=0.20°(12.0′)
合成焦点距離3,000mm(powermate2× 使用) F10
☆WA32mm(70°) 93倍 70°÷93倍=0.75°(45.0′) ← 4thミッション
・Ph25mm(60°) 120倍 60°÷120倍=0.50°(30.0′)
・PL25mm(52°) 120倍 52°÷120倍=0.43°(25.8′) ← 3rdミッション
・EF-16mm(60°) +レデューサー(0.66×) 125倍 60°÷125倍=0.48°(28.8′)
・EF-16mm(60°) 187倍 60°÷187倍=0.32°(19.2′)
・Ph15mm(60°) 200倍 60°÷200倍=0.30°(18.0′)← 6thミッション
☆はISSを確認できたミッション