大彗星メモリアル Vol.2は「百武彗星(1996B2)」です。
それはまさに想像を絶する巨大ほうき星でした。
あのような巨大彗星が突如我々の前に姿を現すとは誰が想像したでしょう…。
時は1996年3月25日…、その夜何が起きたのか、記憶の糸を紡いでいくことにしましょう。
それは、いつものように夕食を終えてまったりとしている時でした。プルルと鳴る電話を取ると、県北に住む父からです。「お~い、百武彗星が明るくなってるらしいぞ~、さっきNHKのニュースでやってたぞ~、仙台でも見えるんじゃないか~。」
「…あっ、そう、じゃ~見てみるよ。」と気のない返事をして電話を切ったあと、(百武彗星…そうか今日は地球最接近の日か、予想以上に明るくなっているのかな?と言っても仙台では見えないだろうな…、)などと思ったが、わざわざ電話をかけてきた父のことを思い、一応外に出て見てみることにした。当時は仙台駅東口から徒歩3分のところに住んでいたので、星を見る環境としては、間違いなく県内ワースト1の場所です。
とりあえず外に出て北の空を見ると…、「えっ…、なんだ…、わわ!」
北の空を見上げた瞬間、ぼうっと光る彗星のコマが目に飛び込んできました。
何ということでしょう。車の往来と雑踏の雑音が響いている空に彗星が浮かんでいます。
とりあえず急いでカメラを持ち出して撮影した写真が下の2枚です。
百武彗星ファースト・ショット

3月25日撮影時刻不明、CanonEF 使用レンズ不明(たぶん望遠)
百武彗星セカンド・ショット

3月25日撮影時刻不明、CanonEF 使用レンズ不明(たぶん標準?)
これはすごいことです。仙台駅から徒歩3分のところでこれほど見えるのですから暗いところに行けば尾が見えるはずです。急いで出かける準備です。カメラと三脚と双眼鏡を車に積み込んですぐ出発です。観測場所は運転しながら考えましょう。
天気はよくありません。フロントガラスに雨粒が落ちてきています。
晴れることを願いつつ、一路とにかく光害を避けるために山の方へ…、
まずは仙台と大和町にまたがる宮床ダムでどの程度見えるかチェックです。
宮床ダム公園駐車場らしきところで車を降りて夜空を見上げると…、
う~ん、残念、雲があります。雲の切れ間から星は見えますが、仙台駅前で見たぼうっと
光る彗星のコマは雲の中のようです…。しか~し、うまい具合に雲が流れています。
しばらく待てば、彗星が姿を現すかもしれません…と思った瞬間でした。
舞台の幕が開くように雲が横にスライドして、ここですよ…と言わんばかりの登場の仕方で百武彗星がその姿を現しました。
「えっ…」
見えた瞬間全身に鳥肌が立ちました。冗談抜きで本当に全身が鳥肌になりました。
「な、なんなんだー、これがほうき星かー、」度肝を抜かれるとはこのことで…
満月の何倍も大きい頭部から上にすっと伸びた尾がどこまでも伸びています。
天頂を超え、かみのけ座を通り越し、おとめ座の方まで伸びているように見えます。
「ありえない…、」「どこまで伸びているんだ…」何ども指を伸ばして尾の行き着く先を確認したのを覚えています。
「科学的知識のない昔の人がこのほうき星を見たら、恐れるのは無理もない…、」
それはそれは想像を絶する巨大彗星でした。

1996年3月25日 11時30分頃撮影 CANON EF FD50mm F1.4 露出不明(たぶん30秒)
この彗星がどれほど巨大だったかを写真で伝えるのは難しいですが、
比較のため2枚の写真を並べて見ました。
この写真は同じカメラで、同じレンズで、同じ露出で撮影したものです。
上が1976年のウェスト彗星、下が20年後の1996年に出現した百武彗星です。


さて、宮床ダムをあとにしたその後は、とにかく暗い場所に行こうとして、今考えるとちょっとしたプチパニック状態でした。小野田町まで行き、彗星の大きさが分かるようになんとか地上物を入れようとして、かろうじて電線が写りこんだ意味のない写真を撮り、さらに暗い所へと車を走らせました。(電線が写る場所を苦労して探したのを今でもよく覚えています。(笑))
百武彗星at小野田町

1996年3月26日 1時40分頃撮影 CANON EF FD50mm F1.4 露出不明(たぶん30秒)
百武彗星at小野田町~その2~

1996年3月26日 2時00分頃撮影 CANON EF FD50mm F1.4 露出不明(たぶん30秒)
小野田町を出発して、さらに暗いところを求めてあてもなく走り続けること数十分、勾配がきつくなり、道もダートコースになってきました。山の中腹です。ふむ、ここなら光害のない真っ暗な空で百武彗星を見られるぞ、と車を降りたとき信じられない事がおきました。
「バタン!」と車のドアを閉めた瞬間、車が消えたのです。
「えっ…、」不思議なことに何も見えません…、星はおろか、伸ばした手の指先すら見えません。いや手を近づけても何も見えないのです。全くの闇です。次の瞬間ものすごい恐怖が襲ってきました。どうやら空が曇天で星あかりがなく、街明かりも山の木々でシャットアウトされたため真っ暗になったようです。このような完璧な闇は初体験です。
左手をいくら伸ばしても車に触れることができず、すり足で左に少しずつ寄って自分の車を手探りで探しました。今でこそ笑えますが、車にタッチできたときは心底ホッとしました。
冷静さを取り戻したあとは、先ほどの電線の下の場所に戻って、双眼鏡で百武彗星を
じっくり見ました。エメラルドグリーンにキラキラ光る百武彗星はとてもキレイでした。
上記写真を撮ったとき、撮影時刻の記録はしていませんでした。そこでステラナビゲーターを使って、星の位置からおよその撮影時刻を特定しました。そのデータを下記にメモしておきます。
1996年3月25日 11時30分

1996年3月26日 1時40分

1996年3月26日 2時00分

百武彗星は翌日3月26日の夜にも見に行きました。
1996年3月27日 1時20分

百武彗星は彗星本体としては決して巨大な彗星ではありませんが、地球に0.1AUまで近づいたこと、近日点通過前なのに地球近傍で核の小分裂(崩壊?)が起きたことの偶然が重なってメモリアルな彗星になりました。百武彗星を2夜連続で見ることができたのは、とてもラッキーな出来事でした。雲を晴らしてくれた天気の神様と電話をくれた父に感謝です。
それはまさに想像を絶する巨大ほうき星でした。
あのような巨大彗星が突如我々の前に姿を現すとは誰が想像したでしょう…。
時は1996年3月25日…、その夜何が起きたのか、記憶の糸を紡いでいくことにしましょう。
それは、いつものように夕食を終えてまったりとしている時でした。プルルと鳴る電話を取ると、県北に住む父からです。「お~い、百武彗星が明るくなってるらしいぞ~、さっきNHKのニュースでやってたぞ~、仙台でも見えるんじゃないか~。」
「…あっ、そう、じゃ~見てみるよ。」と気のない返事をして電話を切ったあと、(百武彗星…そうか今日は地球最接近の日か、予想以上に明るくなっているのかな?と言っても仙台では見えないだろうな…、)などと思ったが、わざわざ電話をかけてきた父のことを思い、一応外に出て見てみることにした。当時は仙台駅東口から徒歩3分のところに住んでいたので、星を見る環境としては、間違いなく県内ワースト1の場所です。
とりあえず外に出て北の空を見ると…、「えっ…、なんだ…、わわ!」
北の空を見上げた瞬間、ぼうっと光る彗星のコマが目に飛び込んできました。
何ということでしょう。車の往来と雑踏の雑音が響いている空に彗星が浮かんでいます。
とりあえず急いでカメラを持ち出して撮影した写真が下の2枚です。
百武彗星ファースト・ショット

3月25日撮影時刻不明、CanonEF 使用レンズ不明(たぶん望遠)
百武彗星セカンド・ショット

3月25日撮影時刻不明、CanonEF 使用レンズ不明(たぶん標準?)
これはすごいことです。仙台駅から徒歩3分のところでこれほど見えるのですから暗いところに行けば尾が見えるはずです。急いで出かける準備です。カメラと三脚と双眼鏡を車に積み込んですぐ出発です。観測場所は運転しながら考えましょう。
天気はよくありません。フロントガラスに雨粒が落ちてきています。
晴れることを願いつつ、一路とにかく光害を避けるために山の方へ…、
まずは仙台と大和町にまたがる宮床ダムでどの程度見えるかチェックです。
宮床ダム公園駐車場らしきところで車を降りて夜空を見上げると…、
う~ん、残念、雲があります。雲の切れ間から星は見えますが、仙台駅前で見たぼうっと
光る彗星のコマは雲の中のようです…。しか~し、うまい具合に雲が流れています。
しばらく待てば、彗星が姿を現すかもしれません…と思った瞬間でした。
舞台の幕が開くように雲が横にスライドして、ここですよ…と言わんばかりの登場の仕方で百武彗星がその姿を現しました。
「えっ…」
見えた瞬間全身に鳥肌が立ちました。冗談抜きで本当に全身が鳥肌になりました。
「な、なんなんだー、これがほうき星かー、」度肝を抜かれるとはこのことで…
満月の何倍も大きい頭部から上にすっと伸びた尾がどこまでも伸びています。
天頂を超え、かみのけ座を通り越し、おとめ座の方まで伸びているように見えます。
「ありえない…、」「どこまで伸びているんだ…」何ども指を伸ばして尾の行き着く先を確認したのを覚えています。
「科学的知識のない昔の人がこのほうき星を見たら、恐れるのは無理もない…、」
それはそれは想像を絶する巨大彗星でした。

1996年3月25日 11時30分頃撮影 CANON EF FD50mm F1.4 露出不明(たぶん30秒)
この彗星がどれほど巨大だったかを写真で伝えるのは難しいですが、
比較のため2枚の写真を並べて見ました。
この写真は同じカメラで、同じレンズで、同じ露出で撮影したものです。
上が1976年のウェスト彗星、下が20年後の1996年に出現した百武彗星です。


さて、宮床ダムをあとにしたその後は、とにかく暗い場所に行こうとして、今考えるとちょっとしたプチパニック状態でした。小野田町まで行き、彗星の大きさが分かるようになんとか地上物を入れようとして、かろうじて電線が写りこんだ意味のない写真を撮り、さらに暗い所へと車を走らせました。(電線が写る場所を苦労して探したのを今でもよく覚えています。(笑))
百武彗星at小野田町

1996年3月26日 1時40分頃撮影 CANON EF FD50mm F1.4 露出不明(たぶん30秒)
百武彗星at小野田町~その2~

1996年3月26日 2時00分頃撮影 CANON EF FD50mm F1.4 露出不明(たぶん30秒)
小野田町を出発して、さらに暗いところを求めてあてもなく走り続けること数十分、勾配がきつくなり、道もダートコースになってきました。山の中腹です。ふむ、ここなら光害のない真っ暗な空で百武彗星を見られるぞ、と車を降りたとき信じられない事がおきました。
「バタン!」と車のドアを閉めた瞬間、車が消えたのです。
「えっ…、」不思議なことに何も見えません…、星はおろか、伸ばした手の指先すら見えません。いや手を近づけても何も見えないのです。全くの闇です。次の瞬間ものすごい恐怖が襲ってきました。どうやら空が曇天で星あかりがなく、街明かりも山の木々でシャットアウトされたため真っ暗になったようです。このような完璧な闇は初体験です。
左手をいくら伸ばしても車に触れることができず、すり足で左に少しずつ寄って自分の車を手探りで探しました。今でこそ笑えますが、車にタッチできたときは心底ホッとしました。
冷静さを取り戻したあとは、先ほどの電線の下の場所に戻って、双眼鏡で百武彗星を
じっくり見ました。エメラルドグリーンにキラキラ光る百武彗星はとてもキレイでした。
上記写真を撮ったとき、撮影時刻の記録はしていませんでした。そこでステラナビゲーターを使って、星の位置からおよその撮影時刻を特定しました。そのデータを下記にメモしておきます。
1996年3月25日 11時30分

1996年3月26日 1時40分

1996年3月26日 2時00分

百武彗星は翌日3月26日の夜にも見に行きました。
1996年3月27日 1時20分

百武彗星は彗星本体としては決して巨大な彗星ではありませんが、地球に0.1AUまで近づいたこと、近日点通過前なのに地球近傍で核の小分裂(崩壊?)が起きたことの偶然が重なってメモリアルな彗星になりました。百武彗星を2夜連続で見ることができたのは、とてもラッキーな出来事でした。雲を晴らしてくれた天気の神様と電話をくれた父に感謝です。