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晴れ時々スターウォッチング

昔の出来事もたま~に紹介

スターリンク衛星(G12-21)撮影記録 3/14

2025年03月15日 | 宇宙開発
3月13日11時35分(JST)にリフトオフしたスターリンク衛星の3月14日通過撮影記録です。

2025/3/14 19h07m55s D810A NIKON 28mm f/2.8 ISO3200 F6.3 1sec

 スターリンク衛星(G12-21)が3月14日19時08分頃に仙台上空を好条件で、しかも木星近傍を通過することに気付いたのは通過のわずか40分前… なぜかいつもギリギリの時間です。 (^^ゞ


 こりゃ~木星面を通過するかも…と思って準備したのですがけっこう離れていました。ざんねん~

2025/3/14 19h07m43s~ 19h08m25s D810A NIKON 28mm f/2.8 ISO3200 F6.3 1sec

 いちおう μ210に惑星カメラを取り付けて録画はしておいたのですが写っていませんでした。

 μ210+ADC+Apollo-C(UV/IRcut) Shutter=1.096ms Gain=370 (77%) Duration=180s 

 ま、結果はともあれ、最近のスターリンクは必ず前列と後列に分かれて通過して行きます。この理由としてはタイプの違う衛星がそれぞれグループで飛行している…ということのようです。

 前列はv2 mini というフツーのタイプで、後列はダイレクトに携帯電話と通信ができる機能を備えたv2-mini DTC(direct-to-cellular) という衛星のようです。

 どちらもソーラアレイの大きさは同じですが、busと呼ばれる本体の大きさが違うようです。


 こちらは1月2日に拡大撮影した複数のスターリンク衛星にソーラアレイ間の幅が違うものがあったので比べるとこうなるのかな…という比較図です。が、勝手な推測なので合ってるかは不明です。(^^ゞ

 ちなみにネーミングがミニ(mini)となっている理由ですが、スターリンク衛星はそもそもstarshipで打上げることを前提として設計されているので本来のスターリンクはもっとデカい図体をしています。

 それがstarshipの開発の遅れで打上げることができなくなったので、とりあえずファルコン9で打上げられるようにスケールダウンしたタイプがv2 mini というわけです。

 starshipでリフトオフするスターリンク衛星の大きさは、ノーマルタイプの starship-1 v2 が重さ2000kg 、ソーラアレイ 20.2m×6.36m×2 256.94㎡、バス 6.4m×2.7m×1 17.28㎡とかなりの大きさです。

 ダイレクト携帯電話通信ができるstarship-1 v2 with DtCはソーラアレイは同じ大きさですが、バスの大きさが 10.1m×2.7m×1 27.27㎡ のようです。

 このstarship-1のデモバージョン衛星はスターシップの7回目の試験飛行(1/16)と8回目の試験飛行(3/3)で搭載されていたのですが、いずれも爆発したため地球軌道の周回はまだできてない状態です。

 スターシップが実用段階に入ると打上げるスターリンク衛星は現行の約1.7倍の大きさのstarship-1 v2 バージョンとなるので銀河鉄道の見え方も変わってくるかもですね。

月着陸船 IM-2 Athena は何を見た?

2025年03月13日 | 宇宙開発
月面南極への着陸を試みた月着陸船 IM-2 Athena が2025年3月6日17時28分50秒(UTC)に月面に到達(月の表面重力検出で確認)した。着陸プロセス中に連絡が一時的に途絶えるトラブルが発生したことから月面到着後にデータを精査したところクレーターの中で横倒しになっていることが確認された。

 太陽光の当たらないクレーターで横倒しになったため十分な電力生成ができず、3月7日 06:15( UTC)にバッテリーが尽きて機能が停止、ミッション終了となった。取得データは限定的だが月南極に到達したことはアルテミス計画に繋がる大きな成果だ。IM-2 Athena は何を見たか軌跡をたどってみよう。


〈南極エリア上空を飛行するIM-2 Athenaが見た月面〉
 3月7日にインテュイティブ・マシーンズ社のXで「アテナが予定着陸地点であるモンス・ムートン付近の南極地域上空を撮影した画像シーケンス」が公開された。
 
 公開された動画はアムンゼン・クレーターを真上からしかも至近距離で画面いっぱいに写す所から始まる。IM-2 Athena がファウスティーニ、シューメーカー上を高速で通過し、真円のシャックルトン・クレーターから月面の夜側へと飛行する様子はアルテミス計画宇宙飛行士が見る眺めそのものだ。

 ダイジェスト版GIFアニメ(クレーター解説付)photo1.2.3.4.5

 φ(.. ) 動画11秒後に写る月面夜側の地平線上が赤緑青色に光っていることが気になる。月面は大気がないので日の出前の太陽光が散乱して回り込むことはないはずだがアポロ宇宙飛行士が地平線近くのレゴリス粒子が散乱して見える「Linar Horizon Grow(月の地平線の輝き)」を報告している。カメラの形式と撮影状況が不明なので確定はできないが「Linar Horizon Grow(月の地平線の輝き)」を捉えたものだとしたら貴重な映像だ。

太陽光による電力生成を失ったIM-2 Athenaが月面上で作動した時間はわずかに12時間46分だったができる限りの観測を行いデータを地球に送信している。データは分析中と思われるがいち早く公開されたのがクレーターの中で横倒しになったAthena と地球のツーショット画像だ!

〈直径20mのクレーター(南緯 84.7906° , 東経 29.1957° ) に着地した IM-2 Athena が見た月世界〉


 アテナが横倒しになった場所は予定していたランディング・ポイントから250mほど離れた直径20mほどのクレーターの中だった。横倒しになったプロセスは不明だが、着地後もスラスターが噴射し続けていたことから片足がクレーターの縁に乗った状態でホバリング静止していたのではと考えられている。
 
 20秒間噴射を続けたスラスターを停止した際に機体が横倒しになったということなのだろうか。いずれにせよ着地点が予定された場所から250mほど離れたことや着陸時刻が予定より80秒ほど早かったことから着陸シーケンス時に何らかのトラブルが発生していたことは確かだろう。

〈ステラナビゲーターで再現した着陸地点から見た地球と太陽の位置〉 

 着地した時刻の太陽は東北東の方位、高度1.8°付近にある。約2週間続く月面上の昼が始まる朝だったことが分かる。地球は北北西方向、高度は12~13°に見えていたことだろう。この時刻の太陽と地球の離角は約89°なので地球を正面に見ると右手方向に太陽が見えていたことになる。

〈レベル補正で見えたクレーターの内側〉photo1.2

 オリジナル画像をレベル補正したところ、クレーター内部にある小石と内壁が浮かび上がってきた。カメラのダイナミックレンジには限界があるが人間の目は究極のダイナミックレンジを持っているので月面に降り立った宇宙飛行士はクレーター内壁も地球も適正露出で見ることができるだろう。

 地球の左下にはさそり座のアンタレスがあるはずなので画像処理をかけてみたが抽出することはできなかった。アポロ宇宙飛行士も証言していたが空が暗くても昼間の月面上で星を見ることはできないというのは揺るぎない事実のようだ。

 φ(.. ) 余談だが太陽光も地球反射光も届かない月の裏側で見た夜空の星の多さは言葉では表すことができない凄さがあったとアポロ宇宙飛行士が証言している。ISSでは地球の夜側に入っても都市の明かりがあるので完璧な夜空を見ることはできない。近い将来に日本人宇宙飛行士も月に向かうのでこの究極の星空レポートを日本語で聞ける日が来ることを期待したい。

〈IM-2 Athena が見るはずだった月面上の皆既日蝕〉

 すでにミッションを終了しているので叶わないことであるが3月14日に月面上で見える皆既日蝕(地球上では皆既月食)を観測することになっていた。これまで月面上で皆既日蝕の観測に成功したのは1967年のサーベイヤー3号のみである。

 面積比で太陽の4倍もある地球が太陽を隠すと(面積比が違うのでダイヤモンドリングは発生しないように思うが)どのように見えるのか興味津々だ。3月2日に月面着陸に成功した Firefly Aerospace社のBlue Ghostが日蝕観測を行う予定なのでそちらの公式発表を待ちたい。

〈IM-2 Athena が月面南極へ降下中に見た景色〉

 上記画像はNASAの月面探査機ルナ・リコネッサンス・オービター(LRO)が3月7日16:54:21(UT)に撮影したIM-2 Athena の着陸エリア(白枠内)である。月面南極は起伏が激しいので太陽高度2°では太陽光の当たっていないところの方が遙かに多いことが見て取れる。

 まるでスポットライトを当てたように見えるランディング・ポイントに向かって降下していくことは感情を持たないマシーンのIM-2 Athenaでも不安だったのでは…と思うほどだ。着陸地点の起伏が容易に認識できる月面上の日の出時に着陸することはアポロ時代からのセオリーではあるが月面南極に限ってはリスクが多すぎるように思える。

IM-2 Athena 着陸5時間前に撮影した月面南極地域(着陸予定地点は部分的にしか太陽光が当たっていない)

2025/3/6 21h56m μ210+ASI174MM+ZWO IR850 Filter Shutter=8.042ms Gain=218 (54%) 25% of 3704frames トリミング

IM-2 Athena 着陸19時間後に撮影した月面南極地域(着陸地点はまだ日陰の部分が多い)


2025/3/7 21h54m μ210+ASI174MM+ZWO IR850 Filter Shutter=5.446ms Gain=243 (60%) 25% of 5464frames トリミング

IM-2 Athenaの正確な着陸地点はLROが撮影した画像を元にNASAが公開している。

*クレーターのアルファベットはLROの画像とQuickMapを照合するために付記したものでオリジナル画像には記入されてない

IM-2 Athena着陸地点QuickMap→惑星カメラ撮影画像 photo1.2.3.4.5.6.7


〈日本の民間企業・株式会社ダイモンが開発した月面探査車YAOKIが見た景色〉

 IM-2 Athenaが横倒し状態だったため月面探査車YAOKIが月面を走行することはできなかったがクレーターの中から撮影ミッションを実施しそのデータを受信することに成功した。

 日本の民間企業として初めて月面に到達し稼働した月面探査車YAOKIが撮影した画像を見るとクレーターの中で横倒しになったAthena と地球のツーショット画像と同じようにクレーターの中からクレーターの縁を撮影したアングルであることが分かる。

 今回 YAOKIはその名のとおり「七転びYAOKI」を実現して暗いクレーターの中から月面を撮影することに成功した。株式会社ダイモンは後継機を月面へ届ける計画があるようなのでアルテミス計画に繋がるミッションを今後も実施して日本の子どもたちの持つ夢を大きく膨らませて実現してほしい。

 さて、2回連続で月面南極に探査機を到達させたインテュイティブ・マシーンズ社は今後の計画として、2026年に3号機・IM-3を月面ライナー・ガンマに探査機を送り込むことを予定している。こちらもかなりの野心的な計画だ。

 4号機となるIM-4は、まだ詳しいミッション内容は未定だが月面南極に探査機を送る計画となっている。ぜひ3度目の正直となって南極でフルミッションを完遂することを期待したい。

〈関連ブログ〉
月面南極への着陸に挑む「IM-2/Athena」 2025.2.13
月面南極 撮影記録 2024.5.2

月面南極への着陸に挑む「IM-2/Athena」

2025年02月13日 | 宇宙開発
2024年2月22日にアメリカ宇宙船としてはアポロ17号以来となる月面着陸ミッションIM-1(民間としては世界初)を成功させたインテュイティブ・マシーンズ社(Intuitive Machines, Inc.)が、月面着陸2号機IM-2/Athenaの打上げ準備を進めている。


 予定どおり準備が進めば2月26日から4日間のローンチ・ウィンドウ期間中にリフトオフとなる。着陸地点は月面南極の「Mons Mouton region」をターゲットとしている。

 IM-2ミッションの主目的は、NASAが商用ペイロードサービス(CLPS)として搭載を委託しているPRIME-1(Polar Resources Ice Mining Experiment-1)を用いて水の氷の存在と量を明らかにすることである。

 またNASAは2つめの商用ペイロードサービスとして搭載している小型衛星「Lunar Trailblazer」を100kmの極軌道に放出して月の水の量、位置、形態(水酸基、H2O、または氷)を測定およびマッピングして緯度と表面組成との相関関係を調査する。

 ほかにも、中性子分光計を用いて水の指標である水素を探すためのドローン「マイクロ・ノヴァ・ホッパー」も搭載しており、着陸後に近くにあるマーストン・クレーターの永久影領域(PSR)までホップさせて調査する計画がある。


 以上がNASAが委託した搭載物だが、IM-2には民間企業対象のデリバリーサービスペイロードがあるのでNASA以外の観測機器も搭載されている。

 米国コロラド州アーバダに本社を置く民間宇宙企業 Lunar Outpost社は、マサチューセッツ工科大学(MIT) が開発した RESOURCE カメラを搭載した月面車「移動式自律型探査プラットフォーム(MAPP)ローバー」で3D 画像を撮影および月面サンプルを採集する予定である。

 MAPPの屋根の上ではマッチ箱ほどの大きさの小型ローバー「AstroAnt(MIT)」が走行しながら非接触で温度測定を行うというユニークな計画もある。

 IM-2にはもう1台、月面探査車が搭載されている。それが東京に本社を置くDymon Co., Ltd.が開発した月面ローバー「YAOKI」だ。IM-2に Maid inJapan の月面探査車が搭載されていることに注目したい。

↑ Intuitive Machines、Nova-C(IM^2/Athena)への最終統合の様子

 株式会社ダイモンのHPによるとYAOKIのタイヤを支える部分に使用するステンレスの特製(桂川精螺製作所)YAOKIねじの製作に大田区立多摩川小学校の3年生児童が参加しているとのこと、小学生が製作したネジを装着した月面探査車が月面南極を走行する夢のような話…すばらしいです!

 IM-2/Athena はリフトオフ後、最短で7日後に月面南極に到達する予定です。月面探査車「YAOKI」の月面到着を地球から見守ることにしましょう!

さてさて、日本の月面探査といえば… そうです!2025年1月15日にリフトオフした HAKUTO-R Mission 2 がどこを飛行しているのか、その経過を見てみましょう。


 ふむふむ、現在はSuccess4まで順調に進んでいるようですね。月面到着はリフトオフ4~5か月後だそうです。

 で、あまり話題になっていないのですが、HAKUTO-Rを打上げたFalcon 9 ロケットには、もう1機の月着陸船が搭載されていました。それが Firefly Aerospace社が設計・製造した着陸船「Blue Ghost(ブルーゴースト)」です。

 詳しいミッション内容はFirefly AerospaceのWebページを参照してもらうことにして(笑)気になる着陸予定地ですが、危機の海のラトレイユ山の近く(Mare Crisium near Mons Latreille)だそうです。月面到着は3月2日です。間もなくですのでこちらも推移を見守ることにしましょう。

スターリンク衛星(G12-6)撮影記録 1/2

2025年01月03日 | 宇宙開発
1月2日に通過したスターリンク衛星(G12-6)の拡大撮影記録です。

・撮影日時:2025年1月2日17時18分
・撮影機材:ドブ30cm+アイピースOr18mm+拡大撮影アダプター+Apollo-C(UV/IRcut)
・露出:Shutter=0.952ms、Gain=460 (95%)
・イベントデータ:最大仰角81°、距離272km、光度 2.1等
・画像処理(PIPP-TIFF切出し→ステライメージ-コンポジット→ステライメージ-画像処理)



2025/1/2 17h19m05s DOB30 + PL25mmmm + 拡大撮影アダプター+ Apollo-C(UV/IRcut)
Shutter=0.952ms Gain=460 (95%) 10imageコンポジット


SER Playerスクリーンショットとコンポジット画像~その1~


~その2~


~その3~


~その4~


通過図とイベントデータ





スターリンク衛星(G12-2)撮影記録 12/24

2024年12月26日 | 宇宙開発
12月23日14時35分(JST)にリフトオフしたスターリンク衛星の撮影記録です。

 仙台上空を通過したのはリフトオフから27時間後の12月24日17時20分頃… 最大仰角は66°の好条件だったので拡大撮影の準備もしていたのだが小雪がちらつく天気で雲も多くかったので12/2のようなクリアな画像は撮れずじまいでした。

 リフトオフ27時間後のスターリンク衛星(G12-2)

2024/12/24 17h24m20s D810A NIKON 28mm f/2.8 ISO10000 F2.8 1/3sec

薄雲越しのスターリンク衛星

2024/12/24 17h24m26s DOB30 + Or18mm + 拡大撮影アダプター+ Apollo-C(UV/IRcut) 
Shutter=0.912ms Gain=396 (82%) 


ステライメージでレベルをあり得ないほど上げてもこの程度の画像でした

2024/12/24 17h24m40s DOB30 + Or18mm + 拡大撮影アダプター+ Apollo-C(UV/IRcut) 
Shutter=0.912ms Gain=396 (82%) 

ま、このような天気だったのでスターリンクブルー色をとらえただけでラッキーと言えますね。

2024/12/24 17h24m40s DOB30 + Or18mm + 拡大撮影アダプター+ Apollo-C(UV/IRcut) 
Shutter=0.912ms Gain=396 (82%) 


こちらは17時23分23秒から17時24分43秒までの画像を繋いだGIFアニメです。

本日の通過図とイベントデータ





NASAがISS乗員に宇宙船内避難を指示

2024年06月28日 | 宇宙開発
ISSに影響を及ぼす可能性のあるスペースデブリが確認されたためISS乗員が一時的ですが宇宙船内避難を実施したようです。

φ(.. ) 宇宙船内避難とは、スペースデブリ衝突などの危険性が迫ったときにISSから速やかに離脱できるようにソユーズやドラゴンに乗船してアンドックできる状態で待機することです。

 これまでも、ISS近傍を数cm程度のスペースデブリが通過する時に同じような措置をとったことは何度かありましたが、今回は対象となったスペースデブリの数が100個以上だったとのこと… わぉ!

 いったい何が起きたの!? 

 このデブリについて「国防総省第11戦闘司令部(USSPACECOM)」が 6/27.20:39(JST)に X で声明を発表しています。この声明と複数の情報によると…

 運用を終えたロシアのRESURS-P1衛星(39186)が6月27日02時(日本時間)に100を超えるデブリを発生、RESURS-P1衛星は350km × 363km × 97° の極軌道を周回中でデブリ・クラウド(破片雲)の広がりと個数については調査継続中とのこと。

 ISS乗員の一時避難は1時間で解除となったようですが、確認されたデブリは180個まで増えているそうです。RESURS-P1衛星の軌道高度が350kmと比較的低軌道だったのでデブリが他の衛星に衝突する危険性は少ないようですが、

 これがISSやCSSの運営高度400km付近でデブリを放出していたら、デブリの衝突が連鎖的に起きるケスラーシンドローム(Kessler Syndrome)が発生していた可能性があります。それはまさに映画「ゼロ・グラビティー」のワンシーンそのものの地獄絵図です。おそろしい~

 RESURS-P1は、高解像度(最大解像度1.0m)の画像を取得できるロシアの商用地球観測衛星で、長さが 7.93m x 2.72 m、重さが6,570 kg もあるのでかなりの重量級です。

 運用を終えたRESURS-P1は本来なら2024年末ごろに大気圏へ再突入して廃棄されることになっていたようですが、今回のデブリ放出で制御不能となってしまったら、またしてもどこに落ちるの?問題が発生してしまいます。

 今のところロスコスモスからの公式発表等はありませんが、今回のデブリ放出はロシアの衛星撃墜実験(ASAT)ではなくバッテリーの爆発などの突発的なトラブルが原因とみられています。

 デブリの解析が進むことでデブり個数がさらに増える可能性もあるので、他衛星への影響も含めてRESURS-P1衛星の今後の情報を待つことにしましょう。
 

スターリンク衛星(11904)観望記録 5/11

2024年05月13日 | 宇宙開発
5月11日19時38分頃、ウミヘビ座のヒュドラ様が「俺さまの下を勝手に通るんじゃね~よ!」とにらみをきかせる中、スターリンク御一行様が涼しげな顔色で通過して行きました~。

2024/5/11 19h38m36s D810A NIKON28mm f2.8 ISO1600 2.5sec

今回のスターリンク衛星11904は5月10日13時30分(JST)にヴァンデンバーグ空軍基地からFalcon 9で打上げられた機体である。5月11日の通過はリフトオフから30時間ほど過ぎているのでいい具合にばらけて銀河鉄道状の隊列となっていた。

 眼視では、通過時の明るさが3.5等級だったので棒状につながった光が妖しく光るゴースト列車のように見えたが双眼鏡では20機の衛星が一直線になって飛行している様子がよく見えた。

 機体の間隔は等間隔ではなく、4番目と5番目、12番目と13番目、16番目と17番目が近接して飛行していた。双眼鏡では白色に見えたが撮影した画像ではスターリンク衛星特有のブルー色に写っている。

 最近、星空を撮影するとこのスターリンクブルー色で写る衛星が多くなっている。しかし、すべてのスターリンク衛星がブルー色に写るわけではない。その違いはどこにあるのだろう。

2024/5/4 19h53m22s D810A NIKON VR24-70mm f/2.8 ISO2500 f24mm F2.8 5sec(トリミング)

 太陽電池パネルを展開した状態のスターリンク衛星は公式には公開されていない。何かヒミツがあるのだろうか? 意外と謎が多いスターリンク衛星… 拡大撮影の対象としては実におもしろい衛星だ。

国際宇宙ステーションのデブリが民家に直撃!?

2024年04月03日 | 宇宙開発
3月8日に大気圏再突入したHTV-9暴露パレット(EP BATTERY)の一部が燃え尽きずに落下してフロリダ州の民家に直撃したのでは…と話題になっています。

 フロリダ州ネープルズ在住のオテロさんの家に正体不明の物体が落下したのはアメリカ東部標準時刻3月8日の午後2時34分(19:34 UTC)のこと。

 当時オテロさんは不在だったがセキュリティカメラが衝撃音を記録していたため落下時刻は午後2時34分だったことが確認されている。この物体は屋根を貫通し、天上を突き破り、床に穴を開けて床下にまで達していた。

 はたして、この落下物がHTV-9暴露パレット(EP BATTERY)の一部なのか、コトの顛末を時系列で見ていくことにしましょう。

 落下直前の予測では再突入予想時刻が3月8日20時09分(UTC)±1時間、落下場所はこのラインの中のどこかとなっていたが…


 最終的に米国宇宙指令軍が発表した予想落下時刻は3月8日19時30分(UTC)で、場所はメキシコとグアテマラの国境付近だった。

 のちに米国宇宙指令軍がEP BATTERY大気圏突入時刻が19時29分(UTC)、東部標準時刻では2時29分だったと発表しているので予測は驚くほど正確だった…ということがわかりますね。

 大気圏突入時刻はほぼ予測どおりだったのですが、大気圏突入場所が当初の予測よりやや北東寄りでメキシコのカンクンとキューバの間のメキシコ湾だったそうです。

 そのため、もし燃え尽きない部分があったときは落下物がフォート・マイヤーズに達したのではと考えられていました。(注:NASAは燃え尽きるため落下物は無いと発表していたが、ESAはいくつかの破片が落下する可能性があると予測していた)

 オテロさんの家に正体不明の物体が落下したのはHTV-9暴露パレット(EP BATTERY)が大気圏に再突入した5分後で、オテロさんの家がフォート・マイヤーズの南に位置するネープルズだったことを考えると落下物はHTV-9暴露パレット(EP BATTERY)の一部である可能性は十分ありますね。

 現在、NASAがこの物体を回収して分析を行っているそうなので、近日中になにか発表があるかもしれません。それを待つことにしましょう。

 さて、ここで気になる話題ですが、訴訟大国アメリカでは家を破損させた賠償責任はどこにあるのかが議論されているようです。落下物はISSのデブリだから当然NASAでしょう…と思いがちですが、

 落下物がEP BATTERYの一部であれば米国NASAに賠償責任があるが、HTV-9暴露パレットの一部であったらJAXAなので日本が賠償責任を負う…と言う話になっているようです。いやいや…

 そもそもEP BATTERYをHTV-9号機「こうのとり」に載せずに放出して無制御デブリなってしまった原因はロシアのソユーズロケットのトラブルによるものだから暴露パレットの一部だとしてもISSは国際共同開発なので日本だけが責任を負うのはおかしいですよね。

 ま、議論するのはいいですけど、まずは、この正体不明の物体がISSのデブリなのか、それとも航空機の落下物なのか、はたまたUFOの破片なのか、それを解明するのが先決ですよね。

〈関連ブログ〉
こうのとり9号機 暴露パレット まもなく大気圏再突入!  2024年3月9日
3月19日 ISS & HTV-9 EP Battery Pallet  2021年3月20日
HTV-9 EP BATTERY パレット 撮影記録 2021年3月17日

 

こうのとり9号機 暴露パレット まもなく大気圏再突入!

2024年03月09日 | 宇宙開発
こうのとり9号機 暴露パレット (EP BATTERY)がまもなく大気圏に再突入するようです。

 こうのとり9号機(HTV-9)の暴露パレットは本来HTV-9に載せて大気圏に突入させるものですが、2018年10月11日のソユーズMS-10打ち上げ失敗でクルーがISSに到着しなかったため、その影響を受けてHTV-7号機が暴露パレットを積まないまま(photo)大気圏に突入。そこからズレが生じてこうのとり8号機がHTV-7暴露パレットを搭載して大気圏に再突入することになり…

〈HTV-7暴露パレットを搭載したこうのとり8号機を放出する様子〉

 こうのとりの最終号機である9号機がHTV-8の暴露パレットを搭載して大気圏へ突入したためHTV-9暴露パレットはISSに取り残されてしまいました。

 こうして母船である「こうのとり」に戻ることのできなかったHTV-9暴露パレットは2021年3月12日に単独でリリースされましたが、制御用のスラスターを搭載してないので大気圏突入は自然まかせとなり、カテゴリー上はISSデブリとなりました。そのHTV-9暴露パレットが本日大気圏へ再突入します。

〈ISSからリリースされるHTV-9暴露パレット〉


〈リリース7日後に地上から撮影したHTV-9暴露パレット〉


〈HTV-9暴露パレットの大きさ比較写真〉*大きさを比較するため同サイズで切り出した画像を合成した写真です。


 
最新情報によるとHTV-9暴露パレットは遅くとも3月9日17:30(JST)までには落下するようです。

 
好条件通過があれば見たいところですが、直近の日本上空通過は14時39分頃のみのようです。



 HTV-9暴露パレット(EP BATTERY)は大きさはそれほどではないのですが、重量があるので数個の破片が地上に到達するのでは…という予測があります。海上で大気圏突入が行われることを願うばかりですね。


SLIMの着陸地点 拡大撮影(2/18)

2024年02月20日 | 宇宙開発
SLIMが月面着陸の目標地点としていたSHIOLIクレーターの撮影に成功しました~photo

 え~?これ、ホントにSHIOLIクレーターなの?…それはあなたの思い込みじゃありませんか~? と思いのあなた!…そのとおりです!これだけでは分かりません。何事も確かめることが大事です。

 ということで、これはホントにSHIOLIクレーターなのか?の検証とSLIMの着陸地点の特定を行います。では、はじめましょう! ヒアウィゴ~

〈SLIM着陸地点の特定〉
 まずは着陸地点の特定を行います。

 JAXAの資料「小型月着陸実証機(SLIM)月面着陸の結果について」の「推定されている着陸地点」を見ると着陸地点はSHIOLIクレーターのすぐ近くだったことが分かります。

 ↓ これをもう少し引きの画像に落とし込むとこの位置になります。


 ↓ さらに元のオリジナル画像でプロットするとココになります。

 これでSLIM着陸地点の特定ができました。では次にこの画像とGoogle Moonの写真と実際に撮影した写真を比べてSHIOLIクレータがホンモノか確かめてみましょう。

〈SHIOLIクレーターの検証〉(拡大図

 SELENE/JAXAの画像からGoogleMoonのSHIOLIクレーターの位置は合っていることが分かります。それに対応した画角で切りだした撮影画像を見るとSHIOLIクレーターで間違いないことが分かりますね。

 SHIOLIクレーターは真上から太陽光が当たったときに光条が見えるタイプのようなので1月30日に撮影した時は写らなかったようですね。↓

2024/1/31 0h14m(JST) μ210 NIKON Plan4× ASI290MM Shutter=4.864ms Gain=385 (64%) 30sec トリミング

 今回は冬の気流の中での撮影だったので夏場の好気流で撮影すればさらに高解像度のSHIOLIクレーターが撮れるかもですね。梅雨明け後の好気流時に再度チャレンジすることにしましょう。


〈冬の気流の中で撮影したSHIOLIクレーターの元動画〉


〈関連ブログ〉
SLIMの着陸地点 拡大撮影(1/31)