晴れ時々スターウォッチング

昔の出来事もたま~に紹介

4月28日の中国宇宙ステーション

2024年04月30日 | CSS(中国宇宙ステーション)
4月28に撮影した中国宇宙ステーションの記録です。

 今回は最大仰角が70°の好条件パスでしたが通過時刻が日没の30分後(太陽高度-7.9°)だったので、準備しているときにピント合わせをする星はまったく見えず途方に暮れること十数分…

 日没直後にシリウスは見えましたが高度はわずかに22°です。30cmドブをシリウスの見える場所まで移動させてとりあえずピント合わせをしましたが、ほぼ横倒しの状態なのでこの状態でピントを合わせてもドブを起こした時点でピントは若干ずれます。

 そもそもドブを水平状態することは御法度なのでしたくなかったのですが背に腹は代えられません。ま、今日はボケボケでもしょうが無いなぁ~と思いつつ、通過10分前にアルクトゥールスがかすかに見えたので急いでピントの位置を確認です。

 思ったとおりわずかですがズレていました。今日の気流は春になったとは言え全然良くないのでこの程度のズレは気にする必要は無いかもですがこのような微調整が奏効することがあるので大事です。

 前回の撮影ではわずかに露出オーバーだったの今回はゲインを240に下げての撮影です。ふむ、空の透明度は湿度が高いのか高層雲があるのかよく分かりませんがモヤモヤしている感じがしますね~。ゲイン240では露出アンダーになる懸念もありますがこのままGOです!

 
 で、結果は露出アンダーでした…トホホ、ま、気を取り直して画像処理です。今回もコンポジットはAS!3でお気楽スタックしてその後はステライメージで画像処理を行いました。

 現在、中国宇宙ステーションには4月25日にリフトオフした神舟18号が地球側のポートにドッキングしています。まもなくアンドックする神舟17号は前方のポートにドックしていますが、ラッキーなことに今回の撮影ではその様子を確認することができました。


 ↓ 最大仰角通過前は逆光でかなり暗かったのですが、画像処理後は前方のポートにドッキングしている神舟17号と後部にドッキングしている天舟7号が浮かび上がりました。

19時03分39秒(6枚コンポジット) 高度59° 距離431km

2024/4/28 19m03h39s  30cmDob+PL25mm+UV/IRcut+ASI290MC  Shutter=0.881ms Gain=240 (40%)



19時03分46秒(4枚コンポジット)  高度63° 距離417km

2024/4/28 19m03h46s  30cmDob+PL25mm+UV/IRcut+ASI290MC  Shutter=0.881ms Gain=240 (40%)


 ↓ 地球側のポートにドッキングしている神舟18号を真下から見ているアングルです。心眼で見ると神舟18号の底部の円形が分かるかも?

19時03分48秒(10枚コンポジット)  高度64° 距離414km

2024/4/28 19m03h48s  30cmDob+PL25mm+UV/IRcut+ASI290MC  Shutter=0.881ms Gain=240 (40%)


 ↓ 最大仰角を過ぎると順光になって明るさがグンと増しました。やはり高層雲があるようで全体的にぼやけた画像となっています。

19時03分56秒(10枚コンポジット)  高度68° 距離406km

2024/4/28 19m03h56s  30cmDob+PL25mm+UV/IRcut+ASI290MC  Shutter=0.881ms Gain=240 (40%)


 ↓ 太陽電池パネルにも光が当たってその存在が分かるようになりました。宇宙ステーションらしい姿を捉えた本日のベストフォトですね。

19時04分14秒(5枚コンポジット)  高度68° 距離418km

2024/4/28 19m04h14s  30cmDob+PL25mm+UV/IRcut+ASI290MC  Shutter=0.881ms Gain=240 (40%)


 ↓ こちらは1枚画像ですが神舟18号がはっきり写った奇跡の1枚です。

19時04分23秒(1枚画像)  高度63° 距離438km

2024/4/28 19m04h23s  30cmDob+PL25mm+UV/IRcut+ASI290MC  Shutter=0.881ms Gain=240 (40%)


 ↓ かなり遠ざかっていますがこのコースは最後まで明るいのでそれなりに写すことができます。かすかですが神舟18号が地球側ポートにドッキングしている様子が分かります。

19時04分43秒(3枚コンポジット) 高度50° 距離510km

2024/4/28 19m04h43s  30cmDob+PL25mm+UV/IRcut+ASI290MC  Shutter=0.881ms Gain=240 (40%)


 ↓ さすがにこの距離になると最後部にドッキングしている天舟7号が一体化して分からなくなります。大気分散による色ズレも顕著になっています。

19時04分51秒(3枚コンポジット) 高度45° 距離546km

2024/4/28 19m04h51s  30cmDob+PL25mm+UV/IRcut+ASI290MC  Shutter=0.881ms Gain=240 (40%)

 4月も下旬になったのでそろそろ気流が良くなったと思っていたのですが直前のWindy高層気流予報ではぜんぜん良くなかったので、今年はまだ冬と春の気流のせめぎ合いが起きているようです。

 今年は1~2週間ほど季節が早く進んでいるように思っていたのですが上層の気流は落ち着くのがいつもより遅い感じがします。例年より晴天率が悪い感じもしますが気流が落ち着く前に長雨のシーズンに入るのだけは避けてほしいですね。



〈通過図〉

〈イベントデータ〉



アポロ11号着陸地点・静かの海

2024年04月19日 | 
アポロの月面着陸地点を拡大撮影するとどこまで写るのだろう?という疑問を解決すべく新たなミッション「アポロの月面着陸地点を探れ!」を始めました~

 第一弾はアポロ11号着陸地点・静かの海です。着陸地点の撮影は月面の起伏がよく分かる太陽高度が低い日(日の出直後または日没直前)が適しているのでステラナビで調べてみると撮影条件の良い日は3月30日と4月15日の二日間でした。

 残念ながら3月30日は天気が悪かったので撮影は出来ずじまいでしたが、4月15日は天候に恵まれたので撮影することができました。

アポロ11号着陸地点・静かの海 西部

2024/4/15 18h13m17s μ210+PL25mm+ASI174MM+IR-Pass Filter 685mm Duration=30s Shutter=4.362ms Gain=386 (96%) 75% of 5165frames

 望遠鏡で見る静かの海は起伏の無いなだらかな地形ですが、実際は小さなクレーターだらけだったので手動操縦で着陸船を降下させていたアームストロングが着陸できる平地を見つけたのは燃料切れ寸前(着陸完了後の残燃料は20秒分)だったというエピソードがあります。

 では、Google map moonを使って正確な着陸地点を探っていきましょう。

こちらはチャンドラヤーン2号が撮影した月面に残っているアポロ11号の下降部です。


Google map moon にも着陸船下降部が写っています。余談ですがアームストロング船長は着陸船イーグル号が月面上空60mまで降下したときにクレーター(Little West crater)の真上だと気付いたので、さらに着陸船を進めてその先で見つけた平地にピンポイントで着陸させています。


上の画像から少し引いて見ると…こんな感じです。中央にある大きなクレーター(West Crater)はフットボールのフィールドぐらいの大きさで着陸船イーグル号はこの上空300mを通過しています。


さらに引くとこんな感じ、アポロ11号宇宙飛行士の名前を冠したクレーターはまだ見えません。


ここまで引くと、アポロ11号宇宙飛行士の名前のクレーターが見えてきます。



さらに引いて惑星カメラで撮影した画角に合わせるとこんな感じ…


こちらはGoogle moon map と撮影画像の比較図です。(惑星カメラ撮影画像はこちら→photo


 今回の撮影ではシーイングがそこそこ良かったのでゴーストクレーター・ラモントのリンクルリッジもキレイに写っていますが、夏の気流にはほど遠いものだったので、夏場の良シーイング時に再度アポロ11号着陸地点の撮影にチャレンジしてみることにしましょう。

2024/4/15 18h28m28s μ210+PL25mm+ASI174MM+IR-Pass Filter 685mm Duration=30s Shutter=76.10ms Gain=251 (62%) 75% of 395frames
*リンクルリッジ(しわ状の尾根)で囲まれたラモントは起伏が乏しく、太陽高度が5°以下にならないとその全体像が見えないことからゴーストクレーターと呼ばれている。


〈アポロ11号関連・YouTube〉

アポロ11号着陸動画(動力降下開始からタッチダウンまでの16mmフィルム・ムービー)

↑ 見どころ:動力降下中に何度も表示されるシミュレーション訓練では見たことの無いプログラムアラームに翻弄される中で着陸中止か続行かを決定する緊迫した交信が記録されています。5分08秒にマスケリンWクレーター上空を通過する様子、11分57秒付近でフットボールフィールド大のウエスト・クレーター(Crater West)上空を通過する様子、12分35秒過ぎから見える最後のクレーターであるリトル・ウエスト・クレーター(Little West Crater)を飛び越えてランディングポイントの平地に着陸する様子は必見です。



アポロ11号着陸動画・完全版

↑ 16mmフィルム・ムービーだけでなく、地上管制官の様子、月着陸船の姿勢と高度が同時に表示されているので状況がよく分かる動画です。これを見ればアポロ11号の着陸の様子が手に取るように分かる完全版の名にふさわしい完璧なムービーです。(←ほめすぎ!)


火星と土星の大接近(4/11)

2024年04月13日 | 火星
やばいやばい、寝過ごした! 03時30分にアラームをセットしたのに無意識の自分がかってに止めていた。 しかも、スヌーズも鳴ったはずだがそれも気付かれぬようにひそかに止めている。

 う~む、どうやら、カラダをコントロールする脳は本日の火星と土星の接近には興味がないようだ。観望に出かけないよう仕向けているとしか思えない。そんな脳に反旗を翻して支度をすること5分…

 望遠レンズと三脚とヘッドランプを手にして車に乗り込んだのは、まもなく04時になろうとする頃、火星と土星の出は03時45分頃なのですでに東の空に見えているはずだ。

 双眼鏡を忘れたことを車の中で気がついたが戻る時間は無い。朝日がよく見えるいつもの場所に着いたのは04時10分を過ぎた頃、車を降りてさっそく東の空を見渡すと、はて、星が一つも見えません。

 低空に雲があるのか、透明度が悪いのか、それとも薄明が進んだのだろうか、プラネアプリで火星と土星の方向を確認して見渡すもさっぱり見えません。ここで車のトランク下部に常備している簡易双眼鏡を取り出して見たのですが… やっぱり見えません。

 で、最後の手段、デジカメの高感度撮影で火星と木星の捜索です。数カット撮影して確認すると… ありました! 想定していたポイントより東寄りに位置していたようです。

 
火星と土星の大接近(撮影時高度 6°、太陽高度 -9°、航海薄明)

2024/4/11 04h18m17s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f150mm ISO2500 f5.6 1/3sec

 撮影時の火星と土星の角距離は26′30″です。最も接近する時刻は05時34分で離角は26′25″なのでラッキーなことにほぼMAXの接近距離で観望することが出来ました。

角距離 26分30秒(満月の直径の90%の大きさ)まで接近した火星と土星

2024/4/11 04h20m52s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f150mm ISO5000 f5.6 1/1.6sec

 火星までの距離は、3億750万kmですが、土星は15億7500万kmの遠方にあります。こんなに距離の差がある惑星が同じ方向に見えるというのは、考えて見るとミラクルな出来事ですね。オドロキ~

2024/4/11 04h21m50s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f500mm ISO5000 f6 1/3sec

 まだ高度が低いので望遠鏡で見ることはむずかしいですが、もし見えたとしたら南半球を地球に向けた火星と環が細くなった土星が上図のように見えるはずです。実際に観望できるのはあと1か月後ですかね~。

市民薄明の空で輝く火星と土星

2024/4/11 04h27m17s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f150mm ISO5000 f5.6 1/13sec


 青味が濃くなった空を背景に並ぶ火星と土星は肉眼では見えませんでしたが、双眼鏡で見るとキラキラと輝いて想像以上にキレイな星景でした。超感動~!

本日のベストフォト!

2024/4/11 04h30m07s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f170mm ISO5000 f5.6 1/13sec

 04時30分を過ぎると双眼鏡でも火星が見えなくなり土星だけが見えていました。火星と土星の光度差は0.1等級しかありませんが視直径の違い(火星- 4".6、土星- 15".8)ですかね~。


本日のラストフォト(土星高度 9°、太陽高度 -6°、日の出 31分前)

2024/4/11 04h35m19s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f150mm ISO5000 f5.6 1/15sec

 終わってみれば観望時間はわずかに20分間… 起きる時間がもう少し遅かったら見逃していたのでギリセーフでした。ふう、今日はなんとか間に合いましたが、無意識の自分(カラダをコントロールする影の首謀者 = 脳!?)との攻防は今後も続きそうですね。



二日月と12P/ポン・ブルックス彗星の接近 観望記録(4/10)

2024年04月12日 | 彗星
4月10日は2024年見たい天体現象「月と惑星の接近(1月~4月編)」で紹介した「二日月と木星、天王星、12P/ポン・ブルックス彗星の接近」の日です。

 ここ数日天気が良くなかったのですがタイミング良く移動性高気圧がやって来て快晴となり、日中は満開の桜見日和となりました。(船岡城址公園から見た一目千本桜→ photo1photo2photo3

 夕方も雲ひとつない快晴となって二日月と木星がマジックアワーの紺空を背景にキレイに見えました。今宵の月は二日月と言っても月齢が1.7で、輝面比は0.04もあります。日没の10分後には肉眼ではっきり見えました。

二日月(月齢1.7)と木星の接近

2024/4/10 18h52m54s D810A AS-F NIKKOR 24mm-70mm F2.8 ED AR  f70mm F4.5 ISO1250 1/6sec

 12Pポン・ブルックス彗星はやや暗くなったのか眼視ではまったく見えません。もっとも薄明が終わって夜空になる時刻が19時41分なので薄明中の空での観望です。12P/ポン・ブルックス彗星の明るさは4.3等なので肉眼彗星といってもこの時間に見ることは叶わない願いですね。

 カメラが12P/ポン・ブルックス彗星を捉えたのは日没から1時間を過ぎた頃… 画像ではかすかに尾が上に伸びているのが分かります。

木星と12P/ポン・ブルックス彗星、二日月の接近

2024/4/10 19h23m15s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f150mm ISO4000 f5 4sec


 そうそう、天王星のコトを忘れていました。そもそ今宵は「二日月と木星、天王星、12P/ポン・ブルックス彗星の接近」の日でした。天王星を入れて撮り直した写真がこちらです。

「二日月と木星、天王星、12P/ポン・ブルックス彗星の接近」

2024/4/10 19h24m28s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f150mm ISO8000 f5 1.6sec

 こちらは2秒露出の画像を7枚コンポジットした「二日月と12P/ポン・ブルックス彗星の接近フォト」です。コンポジットは「加算平均(σクリッピング」にしたので人工衛星の光跡が消えていい具合になりました。彗星と地球照のツーショットはなかなかレアな現象ですね。

「二日月と12P/ポン・ブルックス彗星の接近」

2024/4/10 19h29m03s~19h29m52s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f440mm ISO8000 f6 2sec × 7


 19時30分を過ぎると画角に山並みが入るようになりました。天文薄明が終わるのは19時41分です。その時刻までまだ10分もありますが月高度は4°で 12P/ポン・ブルックス彗星の高度は5°しかありません。月が赤みを帯びて眠そうな顔をしてきたのでそろそろ撮影会も終了です。

2024/4/10 19h35m03s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f150mm ISO6400 f5.6 3sec

 日没後の西空はとにかく人工天体がひっきりなしに横切るので最後に広角にしてどのくらい人工衛星が写っているのかカウントしてみました。

 結果はスターリンク衛星が14基、ワンウエブ衛星が1基でした。(OneWeb衛星:一般ユーザーではなく企業や政府、既存の通信会社向けに通信衛星サービスを行っているOneWeb社の衛星)

 まだ天文薄明中なのでこの数ですがステラナビでシミュレーションするとこの3倍以上の数の人工衛星がうごめいて、じっと見ていると車(衛星?)酔いになりそうです。笑

2024/4/10 19h43m28s D810A AS-F NIKKOR 24mm-70mm F2.8 ED f55mm F2.8 ISO6400 1.6sec

 彗星がだいぶ太陽に近づいてきたので12P/ポン・ブルックスの観望は今回が最後になりそうです。次の回帰は71年後の2095年の9月頃です。遠い未来ですが宇宙の時間を考えるとあっという間です。

 次の回帰時に12P/ポン・ブルックス彗星が見る地球はどのような世界になっているのでしょう。火星に人類が進出しているか気になるところです。

〈12P/ポン・ブルックス彗星データ〉


 軌道図を見ると12P/ポン・ブルックス彗星が太陽のムコウガワの遠いところにいるのが分かりますね。


12P/ポン・ブルックス彗星 観望記録(4/5)

2024年04月07日 | 彗星
12P/ポン・ブルックス彗星の観望記録です。

 観望に出かけた4月5日の天気はやや黄砂の影響が残る空でしたが雲量は0~1程度で良好といえるお天気でした。今回の観望撮影グッズは望遠レンズ3本とセレストロンMAK90の小望遠鏡と双眼鏡です。

 MAK90はF13.9なので彗星の観望には適していません。赤道儀のアライメントを取るための望遠鏡です。遠征用の赤道儀は20年近く前に買ったケンコーSEⅡですがSky-WatcherのSynScan Wi-Fiアダプターを差し込むとSynScan Proアプリで自動導入ができるので最近はスマホでお気楽導入を楽しんでいます。

 さて、空がだいぶ暗くなってきました。木星が見えてから写真を撮り始めましたが、カメラが 12Pを捉えたのは日没から50分後の18時53分でした。

本日の12P/ポン・ブルックス彗星ファーストショット

2024/4/5 18h53m01s D810A AS-F NIKKOR 24mm-70mm F2.8 ED AR  f50mm F2.8 ISO1600 1/1.6sec

 19時を過ぎた頃から北極星が見え始めました。ではここで赤道儀の極軸を合わせて、木星でワンスターアライメントをかけます。この日の木星の視直径は33.9秒です。かなり遠くなりましたね~。

 で、木星を望遠鏡の視野の中心に入れてアライメント成功です。SynScan Proアプリは今見える彗星を明るい順にリストアップしてくれるので便利です。一番上にある12Pをポチッと押して導入です。

 12Pは木星の近くにあるので望遠鏡は少しだけ動いてすぐに止まりました。さあ撮影です。ここでMAK90を外して望遠レンズを載せるのですがその前にMAK90で12Pが見えるか覗いてみましょう。

 …と軽い気持ちで覗いてみたのですが超ビックリです。なんと視野のど真ん中に緑色のほうき星の頭部がくっきり見えます。え、F13.9なのにこんなに明るく見えるの? 驚きは明るさだけではありません。予想を超える大きさです。

 先ほどの木星と比べると中心の真円上の核っぽいところの直径は木星の2倍(推定60秒越え)あって、その下には半円状のコマがクッキリ見えて上の方はコマが伸びて薄くなっています。

 アウトバースとして3等級台に入ったというのは確かなようですね。下記の写真でもさんかく座のアルファ星(3.42等)と同じくらいの明るさに写っています。

2024/4/5 19h14m07s D810A AS-F NIKKOR 24mm-70mm F2.8 ED AR f70mm F4.5 ISO1600 8sec

 では、ここからは撮影した写真をご覧ください。これは300mm望遠レンズで撮影した1枚画像の12P/ポン・ブルックス彗星です。露出は30秒です。

2024/4/5 19h12m40s Nikon D90  Zoom-NIKKOR*ED 50-300mm  f300mm ISO2500 f4.5 30sec


 こちらは同じ300mmレンズで撮影した1枚画像ですがややトリミングしてあります。MAK90で見たときは頭部がこの写真のように見えました。

2024/4/5 19h15m45s Nikon D90  Zoom-NIKKOR*ED 50-300mm  f300mm ISO2500 f4.5 30sec(トリミング)


 ここからは11枚コンポジットした画像です。

2024/4/05 19h18m40s~19h25m11s  30sec×11(330秒) D90  Zoom-NIKKOR*ED f300mm f4.5 ISO2500

 さらに強調して画像処理をかけてみました。

2024/4/05 19h18m40s~19h25m11s  30sec×11(330秒) D90  Zoom-NIKKOR*ED f300mm f4.5 ISO2500

 さらにガリガリに処理をかけるとイカの足のような尾が浮かんできました。

2024/4/05 19h18m40s~19h25m11s  30sec×11(330秒) D90  Zoom-NIKKOR*ED f300mm f4.5 ISO2500

 破綻寸前の限界まで強調してみると。ふむ、かなりダイナミックな尾を伸ばしているようです。

2024/4/05 19h18m40s~19h25m11s  30sec×11(330秒) D90  Zoom-NIKKOR*ED f300mm f4.5 ISO2500


 あっという間に時間は過ぎて、19時18分には12Pの高度が10°を切ってしまいました。ここからは沈みゆく12Pの写真です。大気減光でテイルも薄くなっています。

2024/4/5 19h36m41s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f150mm ISO10000 f5 15sec

 高度が7°になりました。山の端が近づいてきます。

2024/4/5 19h39m39s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f150mm ISO10000 f5 15sec


 これは1枚画像ですが高度6°でこれだけ尾が写るのはなかなかの大物と言えますね。

2024/4/5 19h41m42s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f200mm ISO12800 f5.3 30sec(トリミング)

 地球と彗星の位置が良かったらグレートコメットとして見えたのかな~と妄想してしまいます。

2024/4/5 19h45m18s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f200mm ISO12800 f5.3 30sec

 気になるので次回の回帰、2095年9月の接近をステラナビでシミュレートしてみたら地心距離は1.46AUで、位置は太陽のムコウガワで… 今回とまったく同じような感じでした。

2024/4/5 19h46m10s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f150mm ISO12800 f5 30sec

 いや、尾の見え方は今回の回帰の方がいい感じがするのでむしろラッキーだったのかな、12Pの近日点通過は4月21日です。条件は厳しくなりますがもうしばらくは観望できるのでチャンスを見てウオッチングしてみることにしましょう。


12P/ポン・ブルックス彗星 撮影記録(4/2)

2024年04月04日 | 彗星
4月2日にプチ遠征して12P/Pons-Brooks 彗星を撮影してきました~。

 12Pは初観望なのでどのように見えるか興味津々でしたが当日は黄砂がひどく透明度はよくありませんでした。なので双眼鏡で見ても…え、これなの? という感じでした。

 撮影時の高度は13°なので仕方ないと言えば仕方ないのですが、彗星までの距離が1.6AUもあるのですからこれでも見えてる方ですかね~。

 で、本日の撮影システムは20cm反射望遠鏡です。彗星の尾の全体像を捉えることはできませんが頭部から伸びるダストテイルがどのように出ているかを撮影するのが目的です。

 こちらは20秒露出を5枚コンポジットした画像です。4月2日時点での彗星の高度は4.4等級なので頭部はかなり明るく写っていますがダストテイルはかなり淡い感じがします。

12P/Pons-Brooks彗星(周期71年)

2024/4/2 19h08m30s~ 20sec×5  総露出時間100秒 D810A  ISO1600

こちらは画像処理をガリガリに行ってダストテイルをあぶり出した12P/ポン・ブルックス彗星です。なかなか複雑な形のダストテイルが出ているようですね。

2024/4/2 19h08m30s~ 20sec×6  総露出時間120秒 D810A  ISO1600

 今後、撮影条件は日に日に厳しくなっていきますが天気のいい日に再度プチ遠征して今度は望遠レンズを使って彗星の全体像の撮影することにしましょう。





国際宇宙ステーションのデブリが民家に直撃!?

2024年04月03日 | 宇宙開発
3月8日に大気圏再突入したHTV-9暴露パレット(EP BATTERY)の一部が燃え尽きずに落下してフロリダ州の民家に直撃したのでは…と話題になっています。

 フロリダ州ネープルズ在住のオテロさんの家に正体不明の物体が落下したのはアメリカ東部標準時刻3月8日の午後2時34分(19:34 UTC)のこと。

 当時オテロさんは不在だったがセキュリティカメラが衝撃音を記録していたため落下時刻は午後2時34分だったことが確認されている。この物体は屋根を貫通し、天上を突き破り、床に穴を開けて床下にまで達していた。

 はたして、この落下物がHTV-9暴露パレット(EP BATTERY)の一部なのか、コトの顛末を時系列で見ていくことにしましょう。

 落下直前の予測では再突入予想時刻が3月8日20時09分(UTC)±1時間、落下場所はこのラインの中のどこかとなっていたが…


 最終的に米国宇宙指令軍が発表した予想落下時刻は3月8日19時30分(UTC)で、場所はメキシコとグアテマラの国境付近だった。

 のちに米国宇宙指令軍がEP BATTERY大気圏突入時刻が19時29分(UTC)、東部標準時刻では2時29分だったと発表しているので予測は驚くほど正確だった…ということがわかりますね。

 大気圏突入時刻はほぼ予測どおりだったのですが、大気圏突入場所が当初の予測よりやや北東寄りでメキシコのカンクンとキューバの間のメキシコ湾だったそうです。

 そのため、もし燃え尽きない部分があったときは落下物がフォート・マイヤーズに達したのではと考えられていました。(注:NASAは燃え尽きるため落下物は無いと発表していたが、ESAはいくつかの破片が落下する可能性があると予測していた)

 オテロさんの家に正体不明の物体が落下したのはHTV-9暴露パレット(EP BATTERY)が大気圏に再突入した5分後で、オテロさんの家がフォート・マイヤーズの南に位置するネープルズだったことを考えると落下物はHTV-9暴露パレット(EP BATTERY)の一部である可能性は十分ありますね。

 現在、NASAがこの物体を回収して分析を行っているそうなので、近日中になにか発表があるかもしれません。それを待つことにしましょう。

 さて、ここで気になる話題ですが、訴訟大国アメリカでは家を破損させた賠償責任はどこにあるのかが議論されているようです。落下物はISSのデブリだから当然NASAでしょう…と思いがちですが、

 落下物がEP BATTERYの一部であれば米国NASAに賠償責任があるが、HTV-9暴露パレットの一部であったらJAXAなので日本が賠償責任を負う…と言う話になっているようです。いやいや…

 そもそもEP BATTERYをHTV-9号機「こうのとり」に載せずに放出して無制御デブリなってしまった原因はロシアのソユーズロケットのトラブルによるものだから暴露パレットの一部だとしてもISSは国際共同開発なので日本だけが責任を負うのはおかしいですよね。

 ま、議論するのはいいですけど、まずは、この正体不明の物体がISSのデブリなのか、それとも航空機の落下物なのか、はたまたUFOの破片なのか、それを解明するのが先決ですよね。

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