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晴れ時々スターウォッチング

昔の出来事もたま~に紹介

3月23日の火星

2025年03月31日 | 火星
3月23日に撮影した火星の記録です。

 撮影時の視直径は8".8とだいぶ小さくなりました。気流はそれほど良くなかったのですがキムメリア人の海とチェレニーの海が分離して見える程度のアルベド模様は抽出できたようです。

火星の自転(撮影時刻19時36分→20時07分)


2025/3/23 19h36m.20h07m μ210+WREYMER PLAN 5×+TCA-4(Extend)+Apollo-C(UV/IRcut) 
Shutter=11.68ms.9.681ms Gain=350 (72%) Duration=90s  AS!3 Drizzle1.5× De-rotation270s


φ(.. ) 今回の撮影では適正露出を探るためファーストショットは14.18msでその後は9.681msまでシャッタースピードを1段階ずつ下げて撮影を行った。モニター上では9.681msは露出アンダーに見えたが処理後の画像ではこれが適正露出だった。


2025年3月23日に確認できたアルベド地形(中央経度242.6°、火星暦5月21日)


2025年1月11日に撮影したアルベド地形(中央経度209.7°、火星暦4月18日)


北極冠の変化

 1月11日に撮影した火星がほぼ同じ中央経度だったので北極冠の大きさの違いを比較してみた。火星の視直径が違うので詳細までは分からないが3月23日の火星はWinJUPOSのシミュレーションで示しているように北極冠(北極フード)が北緯70度より北上しているようにも見える。

 北極冠に積もっているドライアイスの氷が昇華してH2Oの氷が露出するのは火星の夏至から立秋の頃だ。今シーズンの火星夏至(Ls90°)は2か月後の5月30日頃で、薄明終了時の火星高度は約30°と低い。

 日没1時間後の高度は約40°なので撮影できない高度ではないが視直径は5".6まで小さくなるので条件としてはかなりキビシイ、ただし中央緯度は21°なので北極冠を観望するには適した時期ではある。

 視直径5".6と撮影時高度30°は2024年の火星初撮影時の条件とほぼ同じなので気象条件さえ良ければH2Oの氷が露出している北極冠を撮影できる可能性はある。

 5月下旬は梅雨入り前で好天気が続くことがあるので、チャレンジング精神で火星の北極冠撮影ミッションに取り組んでみることにしましょう!

3月10日の火星

2025年03月26日 | 火星
3月10日は日中快晴で気流良好、夜の天気も曇る予報無し…だったので、早めに準備と夕食を終えて薄明終了時刻に外に出たらまさかの雲量9~10だった。

 月齢10の月も見えない状態だったが晴れることを期待して室内でATOM Cam2 で夜空をモニターしながら待つこと約2時間… 期待に反してまったく晴れる気配がないので外に出てやむなく撤収です。

 ところが、撤収を始めた途端に天頂から東の雲が消えて西側だけが曇っているというハーフ&ハーフの状態に…どういうこと? いや、これはワンチャンあるかも!と思って急いで撮影を始めたら撮影できたのはホントにOneチャンスだけで撮影の途中から雲に覆われ始めました。まじか~

20時57分の火星、撮影時高度68°、-0.1等、視直径9".9、輝面比0.924、


2025/3/10 20h57m μ210+WREYMER PLAN 5×+TCA-4(Extend)+Apollo-C(UV/IRcut) FocalLength=12300mm (F/52)
Shutter=60.64ms Gain=350 (72%) Duration=90s  AS!3 Drizzle3.0× 25% of 1286frames


 その後は全天が雲だらけとなって月はおろか火星も肉眼ではまったく見えなくなりましたが惑星カメラは火星を捉えていてノートPCの画面には暗くなった火星が映っています。

 雲が流れているのでPC上の火星は光度がめまぐるしく変化していますが気流は悪くありません。せっかくなのでモニター上で見えている間は撮影しておこうという貧乏根性で撮影したものの結局お蔵入り…それを最近になって画像処理したところ意外や意外… そこそこ写っていました~。

 ということで今回は「肉眼では見えなかったが惑星カメラが捉えていた火星の姿」特集?です。

1億4100万km彼方の火星(中央緯度+8.09°、中央経度18.12°、Ls=54.77°、火星暦5月14日)

2025/3/10 21h07m μ210+WREYMER PLAN 5×+TCA-4(Extend)+Apollo-C(UV/IRcut) FocalLength=12300mm (F/52)
Shutter=23.25ms Gain=350 (72%) Duration=90s  AS!3 Drizzle3.0× 25% of 2980frames


 雲越しの撮影は7ショットほど行うことができたが90秒動画撮影の間に火星が見え隠れする状態だったのでスタックしてそこそこの解像度を得られたのは上記の21時07分の画像だけであった。

 撮影時の火星の惑心太陽黄経(Ls)は54.7°なので火星暦では5月14日。北極冠の氷が露出する火星上の夏至6月21日は地球暦では2か月後の5月30日頃なので北極はまだフードで覆われている。

2025年3月10日に確認できたアルベド地形(中央経度18.1°、火星暦5月14日)

 それでも、2月2日に撮影した火星と比べると若干ではあるが北極フードが小さくなっているのが分かる。火星上でも確実に季節が進んでいるようだ。

2025年2月2日(中央経度15.4°、火星暦4月28日)の北極冠


2025年2月2日(中央経度351.9°、火星暦4月28日)の北極冠


2025年2月2日(CM=15.4° Dia=13".6)の火星と3月10日(CM=18.1° Dia=9".9)の火星比較GIF


撮影時のシーイング(雲中の火星)


 火星の視直径は日に日に小さくなっているが薄明終了後の火星高度はまだ高いので天気の具合を見ながら撮影を続けていくことにしましょう。


金星内合 観望記録(3/23)

2025年03月24日 | 金星
3月23日は黄経座標の金星内合だけど春霞でムリだよね~と思って撮影する予定はまったくなかったのですが、おとといとは真逆の透明度の良い空だったので観望と撮影にチャレンジしてみました。

 それにしても今日の青空は、いわゆる天文界隈で言うところの「抜けの良い空」でクリアですね~。ま、春霞を吹き飛ばした強い風が今も吹いているのは玉に瑕ですが良しとしましょう!

 で、導入ですが望遠鏡のファインダーでもかすかに金星が見えたので時間はかかりませんでした。25mmアイピースを挿入して96倍で見た金星は糸のように細くてとてもキレイでした。

 輝面比は0.010ですが優に180°はある円弧が輝面比0.01の月と違うところで神秘的です。

2025/3/23 14h42mμ210+ADC+Apollo-C(UV/IRcut) Shutter=0.401ms Gain=171 (35%) 25% of 4403frames トリミング


 こちらは IR850 フィルターを装着して撮影したモノクロ・ビーナスですがイマイチでした。(^^ゞ

2025/3/23 15h00m μ210+ASI290MM+ZWO IR850 Filter Shutter=1.759ms Gain=260 (43%) 25% of 3697frames トリミング

 で、本日のまとめメモφ(.. )です。

*メモというよりはステラナビと国立天文台 惑星地心座標と撮影画像のコラージュですね。失礼しました~。(^^ゞ

 さて、気になる次回の金星内合ですが調べてみると2026年10月22日で太陽離角は6.5°、輝面比は0.008でした。その次は 2028年6月1日、太陽離角0.8°、輝面比0.00、のようです。

 2028年6月1日はムリですが、2026年10月22日はギリ観望できそうですね。

宵明けの明星 観望記録(3/21)

2025年03月22日 | 金星
3月21日は日の出前に明けの明星として見えた金星が夕方に宵の明星として見える日なので、一日で金星を二度見する「宵明けのダブル明星ウオッチング」に挑戦してみました~。

 宵明けのダブル明星が見られると言っても条件的にはかなりキビシイです。仙台では日の出時の金星高度が5.1°で日没時の金星高度が3.9°です。

 実は前日の3月20日も日の出時の金星高度が4.3°で日没時が5.4°とほぼ同条件だったのでウオッチングに挑戦しましたが雲に阻まれまったく見えませんでした。

 で、3月21日は天気も良好だったので金星出の時刻05時09分から双眼鏡で磁方位84°付近を捜索したのですが… なぜかまったく見えません。光度は-4.2等級なのにどして見えないの~?

 5分~10分~15分と時間だけが過ぎていき、頭の中がはてなマークで埋め尽くされた直後のことです。あー、あった… 発見です! しか~し、これで-4.2等級もあるか~? いやいや絶対ないでしょ~

2025/3/21 5h27m00s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f600mm ISO1600 f/6.3 1/500sec

 春霞で透明度が悪かったのは確かですが、いつも見慣れた金星のイメージにはほど遠い姿で… 少なくとも明星という称号は今日に限っては与えられない容姿でした。

 撮影画像を確認したらカメラが金星を捉えたのは双眼鏡で発見する23秒前のショットでした。

2025/3/21 5h26m37s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f340mm ISO1600 f/5.6 1/500sec 金星高度2.7°

 本日の観望ポイントとしては輝面比0.012の金星が肉眼ではどのように見えるのか、3倍の双眼鏡でも三日月型に見えるのかを確かめることだったのですが…

2025/3/21 5h36m08s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f600mm ISO1600 f/6.3 1/1000sec 金星高度4.6°

 7倍の双眼鏡でやっと見えている状態なので肉眼ではおろか3倍の双眼鏡でもその存在を確認することはできませんでした。視直径は59".4もあるのですがね~。

2025/3/21 5h39m02s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f600mm ISO800 f/6.3 1/800sec 金星高度5.1°

 おっと、太陽が顔を出しました。本日の日出時刻は05時38分です。

2025/3/21 5h39m22s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f600mm ISO800 f/6.3 1/500sec 

 あちゃ~しまった!太陽が見えて反射的にカメラを太陽に向けてしまったので金星を見失ってしまいました。う~む、双眼鏡で探しても金星が見つかりません。トホホ…

2025/3/21 5h40m24s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f150mm ISO640 f/5.6 1/5000sec 

 今回の金星内合の離角は約9°もあるので太陽の直近にあるという感じではなくて焦点距離150mmの望遠レンズで撮るとこんな感じで離れています。

 ということで、内合当日の金星を昼間に拡大撮影しようと準備をしたのですが雲がモクモクで昼間の金星も宵の明星も撮影することはできませんでした。ざんねん!

 3月21日の金星輝面比は0.012ですが、3月23日の輝面比が0.010で最も細くなるので天気が良かったら拡大撮影にチャレンジしてみることにしましょう。

 メモメモφ(.. )
・天文年鑑では金星内合日を赤道座標(太陽と金星の赤経が等しくなる日にち)であらわしているが、国立天文台では黄道座標(太陽と金星の黄経が等しくなる日にち)で金星内合日をあらわしているので若干のズレがある。天文年鑑に記載されている赤道座標での金星内合は3月21日だが、国立天文台の暦象年表では3月23日が内合となっており、この日の方が離角(約8°)も輝面比(0.010)も小さい。
〈参照:国立天文台「暦象年表 令和7年 2025」より抜粋〉



スターリンク衛星(G12-21)撮影記録 3/14

2025年03月15日 | 宇宙開発
3月13日11時35分(JST)にリフトオフしたスターリンク衛星の3月14日通過撮影記録です。

2025/3/14 19h07m55s D810A NIKON 28mm f/2.8 ISO3200 F6.3 1sec

 スターリンク衛星(G12-21)が3月14日19時08分頃に仙台上空を好条件で、しかも木星近傍を通過することに気付いたのは通過のわずか40分前… なぜかいつもギリギリの時間です。 (^^ゞ


 こりゃ~木星面を通過するかも…と思って準備したのですがけっこう離れていました。ざんねん~

2025/3/14 19h07m43s~ 19h08m25s D810A NIKON 28mm f/2.8 ISO3200 F6.3 1sec

 いちおう μ210に惑星カメラを取り付けて録画はしておいたのですが写っていませんでした。

 μ210+ADC+Apollo-C(UV/IRcut) Shutter=1.096ms Gain=370 (77%) Duration=180s 

 ま、結果はともあれ、最近のスターリンクは必ず前列と後列に分かれて通過して行きます。この理由としてはタイプの違う衛星がそれぞれグループで飛行している…ということのようです。

 前列はv2 mini というフツーのタイプで、後列はダイレクトに携帯電話と通信ができる機能を備えたv2-mini DTC(direct-to-cellular) という衛星のようです。

 どちらもソーラアレイの大きさは同じですが、busと呼ばれる本体の大きさが違うようです。


 こちらは1月2日に拡大撮影した複数のスターリンク衛星にソーラアレイ間の幅が違うものがあったので比べるとこうなるのかな…という比較図です。が、勝手な推測なので合ってるかは不明です。(^^ゞ

 ちなみにネーミングがミニ(mini)となっている理由ですが、スターリンク衛星はそもそもstarshipで打上げることを前提として設計されているので本来のスターリンクはもっとデカい図体をしています。

 それがstarshipの開発の遅れで打上げることができなくなったので、とりあえずファルコン9で打上げられるようにスケールダウンしたタイプがv2 mini というわけです。

 starshipでリフトオフするスターリンク衛星の大きさは、ノーマルタイプの starship-1 v2 が重さ2000kg 、ソーラアレイ 20.2m×6.36m×2 256.94㎡、バス 6.4m×2.7m×1 17.28㎡とかなりの大きさです。

 ダイレクト携帯電話通信ができるstarship-1 v2 with DtCはソーラアレイは同じ大きさですが、バスの大きさが 10.1m×2.7m×1 27.27㎡ のようです。

 このstarship-1のデモバージョン衛星はスターシップの7回目の試験飛行(1/16)と8回目の試験飛行(3/3)で搭載されていたのですが、いずれも爆発したため地球軌道の周回はまだできてない状態です。

 スターシップが実用段階に入ると打上げるスターリンク衛星は現行の約1.7倍の大きさのstarship-1 v2 バージョンとなるので銀河鉄道の見え方も変わってくるかもですね。

月着陸船 IM-2 Athena は何を見た?

2025年03月13日 | 宇宙開発
月面南極への着陸を試みた月着陸船 IM-2 Athena が2025年3月6日17時28分50秒(UTC)に月面に到達(月の表面重力検出で確認)した。着陸プロセス中に連絡が一時的に途絶えるトラブルが発生したことから月面到着後にデータを精査したところクレーターの中で横倒しになっていることが確認された。

 太陽光の当たらないクレーターで横倒しになったため十分な電力生成ができず、3月7日 06:15( UTC)にバッテリーが尽きて機能が停止、ミッション終了となった。取得データは限定的だが月南極に到達したことはアルテミス計画に繋がる大きな成果だ。IM-2 Athena は何を見たか軌跡をたどってみよう。


〈南極エリア上空を飛行するIM-2 Athenaが見た月面〉
 3月7日にインテュイティブ・マシーンズ社のXで「アテナが予定着陸地点であるモンス・ムートン付近の南極地域上空を撮影した画像シーケンス」が公開された。
 
 公開された動画はアムンゼン・クレーターを真上からしかも至近距離で画面いっぱいに写す所から始まる。IM-2 Athena がファウスティーニ、シューメーカー上を高速で通過し、真円のシャックルトン・クレーターから月面の夜側へと飛行する様子はアルテミス計画宇宙飛行士が見る眺めそのものだ。

 ダイジェスト版GIFアニメ(クレーター解説付)photo1.2.3.4.5

 φ(.. ) 動画11秒後に写る月面夜側の地平線上が赤緑青色に光っていることが気になる。月面は大気がないので日の出前の太陽光が散乱して回り込むことはないはずだがアポロ宇宙飛行士が地平線近くのレゴリス粒子が散乱して見える「Linar Horizon Grow(月の地平線の輝き)」を報告している。カメラの形式と撮影状況が不明なので確定はできないが「Linar Horizon Grow(月の地平線の輝き)」を捉えたものだとしたら貴重な映像だ。

太陽光による電力生成を失ったIM-2 Athenaが月面上で作動した時間はわずかに12時間46分だったができる限りの観測を行いデータを地球に送信している。データは分析中と思われるがいち早く公開されたのがクレーターの中で横倒しになったAthena と地球のツーショット画像だ!

〈直径20mのクレーター(南緯 84.7906° , 東経 29.1957° ) に着地した IM-2 Athena が見た月世界〉


 アテナが横倒しになった場所は予定していたランディング・ポイントから250mほど離れた直径20mほどのクレーターの中だった。横倒しになったプロセスは不明だが、着地後もスラスターが噴射し続けていたことから片足がクレーターの縁に乗った状態でホバリング静止していたのではと考えられている。
 
 20秒間噴射を続けたスラスターを停止した際に機体が横倒しになったということなのだろうか。いずれにせよ着地点が予定された場所から250mほど離れたことや着陸時刻が予定より80秒ほど早かったことから着陸シーケンス時に何らかのトラブルが発生していたことは確かだろう。

〈ステラナビゲーターで再現した着陸地点から見た地球と太陽の位置〉 

 着地した時刻の太陽は東北東の方位、高度1.8°付近にある。約2週間続く月面上の昼が始まる朝だったことが分かる。地球は北北西方向、高度は12~13°に見えていたことだろう。この時刻の太陽と地球の離角は約89°なので地球を正面に見ると右手方向に太陽が見えていたことになる。

〈レベル補正で見えたクレーターの内側〉photo1.2

 オリジナル画像をレベル補正したところ、クレーター内部にある小石と内壁が浮かび上がってきた。カメラのダイナミックレンジには限界があるが人間の目は究極のダイナミックレンジを持っているので月面に降り立った宇宙飛行士はクレーター内壁も地球も適正露出で見ることができるだろう。

 地球の左下にはさそり座のアンタレスがあるはずなので画像処理をかけてみたが抽出することはできなかった。アポロ宇宙飛行士も証言していたが空が暗くても昼間の月面上で星を見ることはできないというのは揺るぎない事実のようだ。

 φ(.. ) 余談だが太陽光も地球反射光も届かない月の裏側で見た夜空の星の多さは言葉では表すことができない凄さがあったとアポロ宇宙飛行士が証言している。ISSでは地球の夜側に入っても都市の明かりがあるので完璧な夜空を見ることはできない。近い将来に日本人宇宙飛行士も月に向かうのでこの究極の星空レポートを日本語で聞ける日が来ることを期待したい。

〈IM-2 Athena が見るはずだった月面上の皆既日蝕〉

 すでにミッションを終了しているので叶わないことであるが3月14日に月面上で見える皆既日蝕(地球上では皆既月食)を観測することになっていた。これまで月面上で皆既日蝕の観測に成功したのは1967年のサーベイヤー3号のみである。

 面積比で太陽の4倍もある地球が太陽を隠すと(面積比が違うのでダイヤモンドリングは発生しないように思うが)どのように見えるのか興味津々だ。3月2日に月面着陸に成功した Firefly Aerospace社のBlue Ghostが日蝕観測を行う予定なのでそちらの公式発表を待ちたい。

〈IM-2 Athena が月面南極へ降下中に見た景色〉

 上記画像はNASAの月面探査機ルナ・リコネッサンス・オービター(LRO)が3月7日16:54:21(UT)に撮影したIM-2 Athena の着陸エリア(白枠内)である。月面南極は起伏が激しいので太陽高度2°では太陽光の当たっていないところの方が遙かに多いことが見て取れる。

 まるでスポットライトを当てたように見えるランディング・ポイントに向かって降下していくことは感情を持たないマシーンのIM-2 Athenaでも不安だったのでは…と思うほどだ。着陸地点の起伏が容易に認識できる月面上の日の出時に着陸することはアポロ時代からのセオリーではあるが月面南極に限ってはリスクが多すぎるように思える。

IM-2 Athena 着陸5時間前に撮影した月面南極地域(着陸予定地点は部分的にしか太陽光が当たっていない)

2025/3/6 21h56m μ210+ASI174MM+ZWO IR850 Filter Shutter=8.042ms Gain=218 (54%) 25% of 3704frames トリミング

IM-2 Athena 着陸19時間後に撮影した月面南極地域(着陸地点はまだ日陰の部分が多い)


2025/3/7 21h54m μ210+ASI174MM+ZWO IR850 Filter Shutter=5.446ms Gain=243 (60%) 25% of 5464frames トリミング

IM-2 Athenaの正確な着陸地点はLROが撮影した画像を元にNASAが公開している。

*クレーターのアルファベットはLROの画像とQuickMapを照合するために付記したものでオリジナル画像には記入されてない

IM-2 Athena着陸地点QuickMap→惑星カメラ撮影画像 photo1.2.3.4.5.6.7


〈日本の民間企業・株式会社ダイモンが開発した月面探査車YAOKIが見た景色〉

 IM-2 Athenaが横倒し状態だったため月面探査車YAOKIが月面を走行することはできなかったがクレーターの中から撮影ミッションを実施しそのデータを受信することに成功した。

 日本の民間企業として初めて月面に到達し稼働した月面探査車YAOKIが撮影した画像を見るとクレーターの中で横倒しになったAthena と地球のツーショット画像と同じようにクレーターの中からクレーターの縁を撮影したアングルであることが分かる。

 今回 YAOKIはその名のとおり「七転びYAOKI」を実現して暗いクレーターの中から月面を撮影することに成功した。株式会社ダイモンは後継機を月面へ届ける計画があるようなのでアルテミス計画に繋がるミッションを今後も実施して日本の子どもたちの持つ夢を大きく膨らませて実現してほしい。

 さて、2回連続で月面南極に探査機を到達させたインテュイティブ・マシーンズ社は今後の計画として、2026年に3号機・IM-3を月面ライナー・ガンマに探査機を送り込むことを予定している。こちらもかなりの野心的な計画だ。

 4号機となるIM-4は、まだ詳しいミッション内容は未定だが月面南極に探査機を送る計画となっている。ぜひ3度目の正直となって南極でフルミッションを完遂することを期待したい。

〈関連ブログ〉
月面南極への着陸に挑む「IM-2/Athena」 2025.2.13
月面南極 撮影記録 2024.5.2

3月9日の火星

2025年03月10日 | 火星
久々の火星撮影です。視直径は10秒まで小さくなってました~。

22時04分の火星、撮影時高度58°、光度-0.1等、視直径10.0"、輝面比0.926

2025/3/9 22h04m μ210+WREYMER PLAN 5×+TCA-4(Extend)+Apollo-C(UV/IRcut) FocalLength=14600mm (F/62)
Shutter=17.49ms Gain=350 (72%) Duration=90s  AS!3 Drizzle1.5× 25% of 5137frames


 撮影時の気流は思ったほど良くありませんでした。雲量はほぼゼロでしたがリゲルベテルギウスもしっかり瞬いていました~。春っぽい空でしたが見かけ倒しで…春まだ遠しですかね~。

今回確認できたアルベド地形

 アルベド模様もなんかザックリとした感じですが、気流が落ち着けば解像度は向上するはずなのでもうしばらく撮影を続けることにしましょう。

2025年見たい天体現象「月と惑星の接近(4月~6月編)」

2025年03月01日 | 「見たい天体現象」
3月になりました~ あと1か月で4月…そろそろ春の天体現象が気になりますね。

 …ということで今日のブログは「月と惑星の接近(4月~6月編)」で~す。
晴れスタがオススメする「月と惑星の接近」は4月~6月期もたくさんありますよ~!

 では、さっそく始めましょう! ヒアウイゴ~

4月5日「上弦と火星、カストル、ポルックスの競演」

 カストル・ポルックスに近づいて天空三角形を作っていた火星が2月24日に逆行を終えてふたご座から遠ざかっている。火星とポルックスとカストルがほぼ一直線に並ぶ4月5日に上弦の月が3天体に近づく。まるでカストル・ポルックスに別れを告げる火星を上弦の月が見送っているようだ。1日限りのまさに一期一会と言える上弦と火星,カストル,ポルックスの競演はぜひ見ておきたいアステリズムだ。そしてこの日は今年2回目の月面Xの日でもある。ピーク時刻は21時頃、そちらも見逃せないイベントだ。


4月25日「二十八夜月と金星、土星、水星の競演」

 明け方の空で近づいている金星・土星・水星に二十八夜月が寄り添う。3/21が内合だった金星の輝面比は0.23で二十八夜月とほぼ同じ位相だ。土星は太陽光の当たっていない裏側から環を見る「環の消失期(3/25環の消失~5/7)」を迎えている。3/24に内合を迎えた水星の輝面比は0.49で下弦の月と同じ位相になっている。低高度なのでシーイングは良くないが可能なら望遠鏡でも見てみたいイベントだ。


4月26日「二十九日月と水星の接近」

 新月2日前の月が水星に接近する。この日の水星は4/22の西方最大離角から4日ほど過ぎているが光度が0.3等と暗いので眼視での観望は難しいだろう。やや明るくなった薄明の空で見る新月2日前の月は実際の輝面比よりかなり細く見える。天気しだいではあるがライトブルーのグラデーションがキレイな薄明の空で接近する二十九日月と水星はフォトジェニックな星景になるだろう。


4月29日「二日月とプレアデス星団の接近」

 プレアデス星団食シーズンに入っているので月とプレアデス星団の接近はほぼ毎月(プレアデス星団食は4回-3/5,8/17,11/7,12/31)あるが、新月翌日の二日月と接近するのは4月29日だけである。しかも接近時の離角がプレアデス星団食レベルだ。それもそのはず、青空の中ではあるが16時頃に二日月がプレアデス星団の前を通過している。時間が過ぎるほど離角が大きくなるので撮影は早い時間からチャレンジしたい。双眼鏡で見る二日月とプレアデス星団の接近は息をのむほどの美しさになるだろう。


4月30日「三日月と木星の接近」

 西空に低くなった木星が三日月と接近する。6/25に合を迎える木星は光度が-2.0等まで暗くなっている。視直径も33"ほどで4/27に最大光度を迎えた金星の視直径37"より小さい。これでは惑星の王者としての風格やいかにと思われるがそこは太陽系最大の惑星木星である。三日月と並ぶ木星は惑星の王者としての威厳を見せつけてくれる。金星ならぬイミテーション宵の明星として輝く木星と三日月の接近はぜひ見ておきたいイベントだ。


5月23日「二十六夜月と土星、金星の競演」

 二十六夜月が環の消失(5/7 太陽が環を真横から照らす) を終えた土星と接近する。土星の光度は1.1等、月との離角は2°30′(満月5個分)だ。二十六夜月から15°ほど東では明けの明星が輝いている。4月25日の有明の月と金星・土星の接近は薄明中のイベントだが、5月23日は暗い時間から観望できるので空のグラデーションの変化を楽しみたい。


5月24日「二十七夜月と金星の接近」

 2025年の明けの明星としての金星は6月1日に西方最大離角を迎え、7月下旬から8月上旬が日の出時最大高度(31°)となる。12月までは明けの明星として東空にあるので有明の月と接近する機会は毎月あるが最も近づくのが5月24日だ。金星が地平線から昇った直後は二十七夜月の真下に金星があるので見応えのある星景となるだろう。


5月28日「二日月と木星の接近」

 6月25日の合に向かって西空の高度を下げている木星が輝面比0.03の二日月と並ぶ。合の1か月前だが木星の光度は-1.9等もあるので二日月が見える前に輝き始めるだろう。二日月と木星の離角は約5°(満月10個分)だ。木星と二日月が織りなすマジックアワーショーを楽しみたい。6月8日には木星(-1.9等)と水星(-1.2等)が離角2°まで接近する。低高度(2~3°)ではあるが光度がマイナス等級なのでウオッチングしたいイベントだ。


6月1日「六日月と火星の超接近」

 西空で火星と六日月が離角20′まで近づく。薄明終了時の高度は約30°、視直径5".5まで小さくなった火星の光度はしし座のレグルスと同じ1.3等だ。月は公転運動で東へ移動しているので月と火星の位置は刻々と変わる。離角が最も小さくなるのは20時50分頃、月と火星の離角の変化も楽しみたい。6月17日には火星とレグルスが離角47′まで接近するのでそちらも注目したい。


6月23日「二十八夜月と金星プレアデス星団の競演」

 夏至の2日後、明け方の東空でプレアデス星団と二十八夜月が近づく。離角は5~6°なので接近というほどではないがプレアデス星団が有り明けの細月と近づくのは6月だけで、7月以降はプレアデス星団の高度が高くなるので接近する月の輝面比は大きくなる。月の西側には-4.2等級の金星も輝いている。プレアデス星団と有り明けの細月と金星のコラボはぜひ見ておきたいそして写真にも残したい星景だ。



6月27日「三日月と水星の接近」

 夕方見える水星としては2025年で日没時高度が最も高い6月27日に輝面比0.05の三日月と離角2°51′まで接近する。東方最大離角1週間前の水星の光度は0.2等級ほどなのでとびきり明るいわけではないが、日没30分後の高度が約10°もあるので余裕で見ることができる。梅雨真っ盛りの時期なので天気が心配だが梅雨の中休みに当たればマジックアワーの空で見る極上の接近ショーとなるだろう。

 以上が「月と惑星の接近(4月~6月編)」です。今回も「月と惑星の接近(1月~3月編)」と同じように撮影できたイベントには記録画像(関連photoを含む)をアップする予定にしてますので、どうぞお楽しみに~。

〈関連ブログ〉
・2025年見たい天体現象「月と惑星の接近(1月~3月編)←撮影記録アップ済み