晴れ時々スターウォッチング

昔の出来事もたま~に紹介

国宝 松本城は 二十六夜月に守られていた!?

2023年12月31日 | Weblog
今日のブログは国宝 松本城と二十六夜月には深~い関係があったというお話です。

 松本城を訪れたのは今月上旬に長野県へ観光に行ったとき…この日は早朝に善光寺で日の出とともに始まるお朝事の体験参加をして、午後から松本城へ向かいました。

 お朝事の法要では、普段閉ざされている御本尊前の戸帳が上げられて善光寺の御本尊である一光三尊阿弥陀如来像が納められた瑠璃壇と厨子を垣間見ることができます。

 お朝事のあとは、ご本尊が安置されている瑠璃檀と三卿の間の床下にある暗黒の回廊をめぐるお戒壇巡りに参加しました。

 暗闇の中を手探りで進んでご本尊の下にかかる極楽の錠前に触れることができましたが、回廊の中は本当に真っ暗闇で顔に近づけた手も見えない闇体験は百武彗星を観望したとき以来のコトでした。笑

 さて、前置きが長くなりました。本題の松本城です。

 松本城は国宝 5城のひとつで大天守が建造されたのは1591年頃と言われています。天守、乾小天守渡櫓辰巳附櫓月見櫓の5棟が昭和11年に国宝に指定されており城全体が国宝に指定されているのはめずらしいそうです。

 狭くて急な階段を上って複合連結式層塔型5重構造の6階にある大天守にたどり着くまでけっこう時間がかかりましたが、さすが大天守!そこからの眺めはすばらしいものでした~。

 景色を一通り見終わってふと気がつくと、大天守の天井中央を見上げて写真を撮っている人がいます。はて、天上には何があるのだろう?…と見上げてみると

 そこには二十六夜神が祀られた小さな社がありました。

 なんと、天守にある二十六夜神が守護神となって400年間の長きにわたって城を守っていてそのおかげで火災等の災害に逢うこともなく今日に至っているとのことです。

 創建当時の天守が残っているいわゆる現存天守と呼ばれるお城は12城ありますが、天守に二十六夜神が祀られているお城はほかにあるのでしょうか?これはオドロキの事実です。

 さてさて、「二十六夜様が天守藩の藩士、川井八郎三郎の前に美婦となって現れてお告げをしたのが元和4年(1618年)の正月、月齢二十六夜の月が東の空に昇る頃…」とありますが、

 気になるので「二十六夜様が現れてお告げをした日」が西暦の何年何月何日なのか調べてみました。

 「元和4年(1618年)の正月、月齢二十六夜の月が東の空に昇る頃」という記述があるので、お告げがあった日は1618年の正月、旧暦の1月26日ということが分かります。

 ステラナビゲーターで調べると1618年の旧暦1月26日は西暦1618年2月20日ということが分かりました。二十六夜月が昇ってくるのは、日付が変わったよく朝なので月出時刻は西暦2月21日の03時43分となります。

↓ 1618年旧暦1月27日04時30分(西暦1618年2月21日)に松本城から見た東空

 説明板では翌2月26日に社を勧請したとあります。翌月の二十六夜の日から城主の戸田氏が毎月三石三斗三升三合三勺(約500kg)の餅をついてお供えして藩士全員にも分け与えたとはスゴイことです。


↓ こちらは戦乱の世が終わったあとに松平氏がリノベした月見櫓です。

 月見櫓は板戸を外すと三方が吹き抜けになるのでキレイな月が見えたことでしょうね。

 いつの日か松本城の月見櫓から二十六夜月を見てみたいものです。

さて、2023年も残すところあと6時間あまりとなりました。今年もこのブログを見てくださった みなさん、本当にありがとうございました。 

 来年も、相も変わらずのゆる~いアップになります(←早くも宣言している)が、時間があるときや思いついた時にちょこっとお寄りいただければ幸いです。

↓ こちらは2023年の初日、明日はキレイな初日が見られるかな?

 それでは皆さん、よいお年を~! 

2024年見たい天体現象「月面 X」

2023年12月29日 | 「見たい天体現象」
2024年見たい天体現象の第5弾は「やっぱり気になる月面 X 」です。

 来年の月面Xは、ピーク時刻に月が地平線上に出ている回数は7回ほどありますが、好条件(夜間でピーク時の月高度が高い)は1回だけのようです。

・夜間で条件良く見られる日→1回(1月18日)
・夜間だけど高度が低い日→4回(3月17日、5月15日、7月13日、9月10日)
・ピーク時刻が日没前の日→2回(4月16日、12月8日)

月面Xのピーク日時   高度  日没  方位  b値
◎ 1月18日(木)19時11分  57° 16:43 南南西   -1.51°            
× 2月17日(土) 9時39分   -8°  17:17    
◎ 3月17日(日)23時18分  25° 17:46 西北西   -0.52°       
Δ 4月16日(火)12時07分  13° 18:15 東北東   +0.30°      
Δ 5月15日(水)23時59分   9° 18:42  西    +1.82°        
× 6月14日(金)11時15分  -2°  19:02        
Δ 7月13日(土)22時19分   5° 19:01 西南西   +1.54°     
× 8月12日(月) 9時14分  -30° 18:35          
Δ 9月10日(火)20時47分   2° 17:53  南西   +0.56°                
× 10月10日(木)9時11分  -37° 17:07    
× 11月8日(月)22時28分  -6°  16:31  
Δ 12月8日(日)12時41分  9° 16:17 東南東   -1.45°    
(注:上記日時はあくまでも晴れスター的独自予報です。) b値:月面上で太陽が真上から照らす地点の月面緯度

 上記データを見ると1月18日と3月17日以外は月高度が低いので観望は難しいようです。しか~し、高度が低くても空の透明度が良ければ撮影は可なのでチャレンジしてみることにしましょう。

 1月18日の月面Xは夜間としては2年ぶり(2022年12月30日以来)なので必見です。しかも、この日は月の東5°のところで木星が輝いているので、月と木星のプチ接近も見られます。

 近くに木星がいるのなら…ということで、晴れスタ撮影班が「同倍率拡大撮影による木星と月面Xの大きさ比べ」イベントを計画していま~す。はたして結果はいかに? 乞うご期待!


 さて、こちらは毎度おなじみの今年撮影した月面Xフォト アーカイブです。
3月29日 14時41分撮影 撮影時高度48°(予想ピーク時刻 14時38分)〈photo

2023/3/29 14:41 miniBORG60n ASI290MC  Shutter=0.316ms Gain=190 (31%) 30sec

3月29日 15時35分撮影 撮影時高度58°(予想ピーク時刻の57分後)〈photo

2023/3/29 15:35 EVOSTAR80ED ASI290MC Shutter=0.616ms Gain=200 (33%) 60sec

3月29日 16時37分撮影 高度70°(予想ピークの2時間後)

µ210 ASI290MC Shutter=2.161ms Gain= 223 (37%) 60sec 〈photo

3月29日 16時51分撮影 高度72°(予想ピークの2時間13分後)

µ210 ASI174MM Shutter=1.593ms Gain= 190 (47%) 30sec 〈photo

11月20日 14時41分撮影 高度20°(予想ピークから32分後)(photo

2023/11/20 14:41 miniBORG60n ASI290MC  Shutter=0.559ms Gain=158 (28%) 13sec

11月20日14時53分撮影 高度21°(予想ピークから44分後)(photo

2023/11/20 14:53 EVOSTAR80ED ASI174MM Shutter=1.227ms Gain=89(22%) 31sec

 2023年はすべて青空の中での月面Xだったので久しぶりの夜間LunarXになる1月18日はいい天気になるといいですね。

こぐま座流星群 ATOM Cam2撮影記録(12/22-12/23)

2023年12月25日 | ☆星見隊
12月22日23時~23日02時台に活動レベルが高まる予報が出ていたこぐま座流星群ですがほぼ予報どおりの時間帯で通常より多い出現が確認されたようです。

 流星電波観測国際プロジェクト「2023こぐま座流星群電波観測速報」のグラフを見ると12月23日03時頃(JST)をピークとする出現があったことが分かります。

Ⓒ:流星電波観測国際プロジェクト

 このグラフは電波観測によるものなので必ずしも目撃出現数と一致するものではないようですが、ATOM Cam2の動画記録を見ると確かにそれらしき流星が写っていました。

こぐま座流星群 ATOM Cam2 撮影記録(12/22-12/23)

 数としては突発出現と言えるほど多くありませんが、02時15分から02時16分にかけて3個、03時17分の1分間に2個、03時20分の1分間に2個、流れているのが動画で確認できました。これ以外にもそれらしき発光体がありましたが雲で確認できなかったものは除外しています。こぐま座流星群のHRは1時間で5個なので平年レベルよりは多いことが分かります。


 こぐま座流星群の対地速度は 33km/sで、対地速度35km/sのふたご座流星群とほぼ同じ速度と言われていますが、ふたご座流星群の動画と比べてみるとたしかに流れる速さが似ています。

 ちなみにこちらは対地速度49km/sのこと座流星群ですが、こぐま座群、ふたご座群より若干速いことが分かります。動画で流星の速さを比べるのは面白いですね。



こぐま座流星群の母天体 8P/タットル彗星・周期13.6年
前々回の回帰時に撮影(2008年1月27日近日点通過), 前回の回帰は2021年8月27日, 次回は2035年4月18日

2007.12.30 23:25 NIKON D90 NIKKOR ED 50-300mm F4.5 ISO800 72秒

2024年見たい天体現象「月と惑星の接近(5月~8月編)」

2023年12月23日 | 「見たい天体現象」
2024年見たい天体現象の第4弾は「月と惑星の接近(5月~8月編)」です。
今回も盛りだくさんなので、どうぞごゆるりとご覧くださ~い。


5月4日「二十六夜月と土星の接近」
 
 夜明け前の東の空で見えるようになった土星が二十六夜月と接近する。土星と月の離角は3°(サムアップした親指1.5本分)ほどである。この時期の白道は傾きが小さいので空が白み始める頃でも土星と月の高度は約15°と低い。環が細くなった土星を望遠鏡で観望するにはまだ厳しい条件だ。
撮影記録→photo photo photo


5月5日「有明の月と火星の接近」

 夜明け前の東空で有明の月と火星が接近する。火星と月の離角は約4°なので大接近と言えるほど近づいてはいないが、この11時間40分後には月が火星を覆い隠す「火星食」が起きる。火星が月縁に潜入する時刻が白昼(12時13分)なので光度1.1等の火星を見るには望遠鏡が必要だ。その前に肉眼で見ることができる夜明け前の接近は見ておきたいイベントだ。
撮影記録→photo photo photo


5月5日「白昼の火星食」

 こちらは仙台における火星食イベントデータである。現象時刻は地域によって違うので天文情報誌等を参考にしてほしい。この時の火星の視直径は4″8 と小さいが火星が全て隠れるまでは約10秒ほどかかる。その様子を望遠鏡で見たいところだが火星の光度が1.1等なので気象条件によっては見えないことがある。それ以前に輝面比0.12の月を青空で見つけることがかなり難しいことではある。


5月6日「二十八夜月と水星の接近」

 5月10日に2回目の西方最大離角を迎える水星と有明の月が接近する。水星の高度は日の出の時刻でも10°と低く、しかも光度は0.8等級なので水星と月の接近が見られる時間は水星出から20分程度だろう。水星はほぼ同じ高度で推移するので光度がマイナス等級になる5月下旬の方が観望には適している。


6月3日「有明の月と火星の接近」

 1か月前の火星食の時は夜明け前の離角が 4°だったが、今回はその半分の約 2°なので接近している様子を楽しめる近さだ。この時期の火星は南半球を地球に向けている。火星歴では12月の下旬頃、南半球は夏至を過ぎてダストストームが起こりやすい時期になっている。大砂嵐は発生しているのだろうか?2億7千万km彼方の火星にそんな思いを馳せて眺めてみるのもいいだろう。



6月5日「新月前日の月と木星、水星の競演」

 この日の月は「2024年細い有明の月ランキング」では第13位だが、「2024年撮影条件良い順ランキング・有明の月編」で第2位なので新月前日の月としては見つけやすい日と言える。さらにこちらがメインイベントとも言えるが、木星と水星が離角37′(満月1個分)で大接近する。両惑星とも高度は低く、日の出直前のため条件はキビシイがダメ元でも観望にチャレンジしたいイベントだ。
撮影記録→photo photo photo


6月6日 番外編「新月(月齢28.6)」

 こちらは「番外編 新月」の第2弾だ。日の出35分前の月高度が約1°と条件は悪いが、西に約5°ほど離れたところに-2等級の木星があるので月の位置を特定しやすい条件ではある。カメラで撮影した画像を天体ソフトで処理して浮かび上がるかチャレンジしてみたいイベントだ。


6月28日「下弦前日の月と土星の接近」

 この日の月と土星の離角は最接近時刻の23時17分で0.8°まで近づくのでかなりの接近と言える。土星の高度が高くなる2時00分頃には離角が1.5°と開いてくるが、注目したいポイントはこの日が2024年で土星の環の傾きが一番小さく(中央経度が2.39°に )なる日ということだ。天気が良ければ、高度が低い時に眼視で月と土星の接近を、高度が高くなった時に望遠鏡で串団子の土星を見ることができる。1日で2度楽しめる土星イベントデーになるだろう。
撮影記録→photo photo photo


7月3日「有明の月とプレアデス星団、木星、火星の競演」

 有明の月がプレアデス星団と接近する。月の下には木星、アルデバランが輝いていて、少し離れたところで火星も輝きを放っている。梅雨の最中なので見られるかはお天気次第だが梅雨の晴れ間は意外にキレイな星空が見えるのでお天気の神様の機嫌がいいことを願いたい。
撮影記録→photo photo photo photo


7月7日「二日月と水星、金星の接近」

 5月まで明けの明星として東の空に見えていた金星が6月4日の外合を過ぎて宵の明星として西の空で輝き始める。まだ日没後の高度は低いが月齢1.5の二日月と水星、金星の接近は見ておきたいイベントだ。マジックアワーの空で二日月と二つの内惑星が並ぶことはそうそうある事ではないのでお気に入りの場所で星景フォトとして記録しておきたい眺めだ。


7月8日「三日月と水星の接近」

 7月22日に今年2回目の東方最大離角を迎える水星が月齢2.5の三日月と接近する。2024年は夕方見える水星の観望好機が春分の頃と7月半ばだけなのでこれが三日月と接近する水星を見るラストチャンスとなる。3月11日の三日月と水星の接近は離角が15°だったが7月8日は離角が6°なのでキレイな眺めとなるだろう。地球照の見える三日月と水星のコラボを記録しておきたいイベントだ。


7月25日「月と土星の接近」

 これは「白昼の土星食」が見られる7月25日未明の土星と月の様子である。この時間の離角は約2°だが月出直後の7月24日22時頃の離角は約10°もある。月出直後と夜明け前の離角を比較することで月の公転速度を実感することができるだろう。土星が眼視で見えなくなる薄明時の離角は1.5°と離れているが、土星食が起きるのが早朝(6時30分頃)なので望遠鏡で土星を追尾したまま観望すると月への潜入を容易に見ることができるだろう。


7月25日「白昼の土星食」

 天文事象としては「白昼の土星食」だが月への潜入時刻が6時30分頃なので「早朝の土星食」と言った方がイメージしやすい。潜入時の月高度は約25°と低いが輝面比が大きいので青空の中で月を探す手間がないのはありがたい。土星の視直径は18″もあるので潜入・出現が完了するまで約40秒ほどかかる。その様子を連続撮影したいところだが時期的に梅雨末期か梅雨明けしてるかで天候状況は大きく変わる。早い梅雨明けになることを期待したい。


7月30日「有明の月とプレアデス星団、木星、火星、アルデバランの競演

  7月3日に引き続き7月30日もプレアデス星団と有明の月が接近する。時間の経過とともに月はプレアデス星団へと近づくので夜明け前には離角1°30′まで接近する。2024年はプレアデス星団と白道が重なっているので7月以降は毎月接近を見ることができる。12月14日未明にはプレアデス星団食(月齢13)もあるので楽しみだ。


7月31日「二十六夜月と木星、火星、アルデバランの競演」

 7月31日未明に二十六夜月と木星、火星が東の空でトライアングルを描く。近くでは火星とほぼ同じ明るさのアルデバランが輝いているのでその色と明るさの対比も楽しみたい。火星は日を追うごとに木星へと近づいていき、8月15日には離角18′まで接近する。こちらも見逃せないイベントだ。


8月5日「月齢1の月と金星の接近」

 8月5日の夕方に月齢1.0の月と金星が接近する。この日の月は「2024年新月の翌日に見える細い月ランキング」の第1位で「2024年撮影条件良い順ランキング・新月翌日編」では第4位と条件も悪くないので夕方見える月としては2024年で最も見たい細月だ。輝面比はわずかに0.86%である。日没30分後の月高度は1.2°と低いが東に6° 離れたところに-3.9等級の金星が輝いている。それを手がかりにすることで月の位置が特定できるので条件としては申し分ない。晴れスタ的には観望したい一推しのイベントだ。


8月6日「究極に細い三日月と金星の接近」

 月齢2.0(輝面比0.04)の三日月が日没直後の西空で金星と接近する。グラデーションがキレイな空に浮かぶ究極に細い三日月と金星が並んでいる様子はいつ見ても美しい。2024年の金星は6月までは明けの明星として、7月以降は宵の明星として輝くが11月まで高度が上がらないので見えている時間は少ない。意識しないと見逃しがちな金星なので接近イベントはぜひ見たいところだ。


8月28日「上弦翌々日の月と木星、火星の接近」

 7月31日と同じように東の空で月と木星、火星がトライアングルを描くが、よく見ると火星と木星の位置が逆転していることが分かる。8月15日の接近後は火星と木星は(見かけ上で)離れる動きをしており、このあと木星は急速に高度を上げるので観望がしやすくなる。2024年の木星の衝は12月8日になっている。

*上記のシミュレーション画像はステラナビゲーター11で作成しています。


超オドロキ! 月への宅配便が来年から可能に!?

2023年12月22日 | 宇宙開発
2024年から月へ宅配を送れるサービスが始まる!?  え、なに? 誰に何を届けるの? 白うさぎさんに餅米ですか~? それとも宇宙人でもいるの? え~これホントの話なの?
A:ハイ、本当の話です。宅配の正式名称は「商業月面輸送サービス(CLPS)」です。

 商業月面輸送サービス(CLPS)は、月着陸システムを保有していないNASAが観測機器やローバーなどを搭載したペイロードの月面輸送を民間企業に有償で委ねるサービスです。現在CLPSに参加している企業は14社あります。*CLPS(Commercial Lunar Payload Services)

 このサービスは観測機器等を月面へ輸送するためにNASAが民間企業に委託しているものですが、NASAのペイロードの要件に干渉しないものに限り独自に追加のペイロードを搭載することができる(NASAもこれを奨励している)ため各企業は個別に依頼された物品を月面へ輸送することができます。

 その月面輸送第1便となる月着陸船「Peregrine(ペレグリン)」が2024年1月8日にリフトオフする予定です。この記念すべき第1便を打ち上げる企業は、月惑星ミッション用の宇宙ロボット技術を開発しているアメリカの民間企業「アストロボティック・テクノロジー社」です。

↓月着陸船「Peregrine(ペレグリン)」 (Credit: United Launch Alliance,ULA)

 月着陸船「ペレグリン」にはNASAのペイロードが5つ、それ以外として、6カ国、数十の科学チーム、数百人の個人から依頼されたさまざまな科学機器、技術、記念品をパッキングした16のペイロードが搭載されています。→MISSION 1 | PEREGRINE

 搭載する観測機器以外のユニークなものとしては下記のような輸送物があります。
・マイニングされるビットコイン(暗号通過)の最初のブロックであるジェネシスブロックのコピー(BTC INC.)
・月面に永遠に足跡を残すサービスとして世界中から寄せられた足跡のデジタルストレージ(LUNAR MISSION ONE UK)
・ビットコインそのものを1枚(BITMEX SEYCHELLES)
・個人的な記念品を月面に永遠に残すサービスとして個人の写真や小説、学生時代の作品など(DHL MOONBOX)
・追悼宇宙旅行サービスとして月面に残す遺骨及び家族のDNA(CELESTIS USA)
 

 そして最も注目すべき輸送物としては今回参加した中では唯一の日本企業となる大塚製薬が依頼した「ルナ ドリーム カプセル(Lunar Dream Capsule)」です。

↓月着陸船「ペレグリン」の側面に見える青い缶が「Lunar Dream Capsule」です。

 これは世界中のこどもたちが描いてくれた185,872通の夢のメッセージと、ポカリスエットの粉末をポカリスエットの缶型をしたドリームカプセルに封入し、38万キロかなたの月面に民間の力だけで届ける人類史上初の挑戦というもので2014年に始まったプロジェクトです。

プロジェクトの詳しい内容はこちらを→「Lunar Dream Capsule Project
宇宙で初めて使用する青い色「ポカリブルー」も日本の技術の粋を集めていて興味深いですね。

 ポカリスエットの粉末は、近い将来、夢のメッセージを描いた君たちの中の誰かが月に行き、カプセルを開けて月の水で溶かしたポカリスエットを飲んでくれる日が来ることを願ってカプセルに入れてあるそうです。なんとも夢のある話ですね。

 ドリームカプセルは月着陸船から落下して月面で未来の宇宙飛行士が来るのを待ちます。

 1月8日にリフトオフした月着陸船「ペレグリン」は2月23日に月面に到着する予定です。

 月着陸船「ペレグリン」が成功すれば民間企業として世界初の月着陸となりますが、アメリカの民間宇宙企業インテュイティブ・マシーンズ(Intuitive Machines)が、開発している月着陸船「Nova-C」の打ち上げを2024年1月12日以降に再設定したと発表しています。

 「Nova-C」は打ち上げから約7日後に月面着陸をするので開発の進み具合によってはインテュイティブ・マシーンズが民間企業初の月面着陸となる可能性があります。

 ほかの民間企業も着々と開発を進めているので、2024年は「商業月面輸送サービス 元年」となりそうですね。ワクワク…


ふたご座流星群 撮影記録(極大前夜12/13-12/14)

2023年12月18日 | ふたご座流星群
極大前夜にATOM Cam2で撮影したふたご群の動画からとある仮説を検証してみました~。

 その仮説というのは「流星群の流れ星はひとつ流れると続けて流れる傾向がある」です。

12月14日 0時13分~1時40分(ふたご群流星数 14個)
 これまでの経験則で流星群の流れ星はひとつ流れると続けて流れる傾向があるなぁ~と漠然と思っていたのですが、この動画にはその様子が何カ所かではっきり写っていました。

 ↑ 12月14日 0時13分~1時40分の動画では、0時13分23秒からの5秒間で2個、1時19分04秒からの7秒間で3個流れる様子が写っています。

 また、↓ 12月14日 1時40分~2時30分の動画では、1時42分36秒からの2秒間で2個、2時00分46秒からの2秒間で2個、2時01分59には同時に2個流れる様子が写っていました。

12月14日 1時40分~2時30分(ふたご群流星数 15個)
 以前からそのような傾向があると思ってはいましたが動画で確認することができたのは大きな収穫です。この動画を見る限り頻度が多いとは言えませんが、全天を高感度カメラで撮影すれば短時間に複数流れる流星数は意外に多いという結果になるかもしれませんね。

 ダストトレイルは流星物質が均一に散らばっているのではなく濃淡差がある状態で漂っている…ということを体感できたような気がします。

 さて、話は変わりますが、上記動画を見ると長経路と名付けた?流星がほぼ同じコースで流れていることに気付きます。はてさて、これは何かの流星群なのでしょうか?

 動画で分かるように0時24分17秒の流れ星は特に長くて、経路が30~40°はありそうです。この経路をたどると地平線から顔を出したかみのけ座付近にたどり着くのですが…

 かみのけ座群は活動期は12月中旬から1月下旬で、極大が12月26日、予想HR3なのでちょっと違う感じがします。単なる散在流星と言うことでしょうかね~。(注:天文年鑑では極大日が12月26日となっているが、国立天文台HPではかみのけ座群は太陽黄経264.00、極大12/16 となっているのでその可能性はある)

 さて、話はさらに変わってこちらは「流星電波観測国際プロジェクト」で発表している「2023年ふたご座流星群電波観測速報」に記載されているグラフです。

 これを見ると今回のピークは12/15 02時頃(JST)でその後はガクンと流星数が減っているように見えます。当初の予報では04時(JST)が極大となっていたので若干ピークが早かったようです。

 さらに注目すべきは12月12日21時頃(JST)にサブピークが観測されていることです。これはふたご群のサブピークなのかもしれませんが、46P/ビルタネン周期彗星群(突発出現流星群)が12月12日20時台に1974年のダストトレイルと接近する予報が出ていたのでその出現の可能性があると思われます。

 天気が悪かったので46P/ビルタネン周期彗星群の観望はできませんでしたが、晴れていれば活動域とされている南天のちょうこくしつ座西部とうお座西部からゆったり流れる(V=10km)流れ星が見られたかも…ですね。ざんね~ん。

 さてさて、今年のふたご群は極大前夜でもたくさん流れているようすが写っていてさすが新月期という最良条件はちがうなぁ~と思いました。あ、この日は極大日のプチ遠征に備えて早寝をしていたので流星は1個も見ていませ~ん。代わりにATOM Cam2さんにしっかり働いてもらいました。笑

ふたご座流星群 観望記録(12/14)

2023年12月15日 | ふたご座流星群
ふたご座流星群の観望記録で~す。

 天気は日付が変わる頃から曇る予報だったので21時を観望開始時刻としてプチ遠征してきました~。観望地は雲の到来が遅くなりそうという観点で登米市の北部にしました。

 観望を開始したときは星が見えていたのですが透明度がいいのは天頂付近のみ、高度が低いところは星がよく見えません。どーも空はすでに高層雲で覆われているようです。

 ま、星が見えてるうちにじっくりウオッチングすることにしましょう!…ということで撮影はカメラの連続撮影におまかせして、チェアーに腰掛けてコンビニで買った熱いコーヒーを飲みながらゆったり観望です。いいですね~至福の時間です!


こちらは本日ゲットした流れ星のファーストショット(ふたご群ではありませんが…)

2023/12/14 21h52m00s D810A NIKON VR24-70mm f/2.8 ISO2500 f24mm F3.2 25sec

 そろそろ本命来ないかな? と思った瞬間に流れました!、お、あちらでも… 流れ星はひとつ流れると続けて流れる傾向があるようで、21時53分から2~3分の間に7~8個の流星を目視で数えました。

 その後は静かな空でしたが、22時08分に、ふたご群ではありませんが北斗七星からふたご座を超えておうし座の方へ流れるハイスピードの長経路流星を見ました。かなり暗かったのでカメラには写っていませんが見たことないほど速い流星でした。

 22時20分過ぎになると再び連続で3~4個流れたので、空をくまなく見渡していると… 22時29分頃にカシオペヤ座の下で大きな流星が流れたのですが残念ながらカメラの写野外です。

こちらはカシオペヤ座方面の空の様子、大気光のように見える雲が次々に流れてきます。

2023/12/14 22h33m11s D810A NIKON VR24-70mm f/2.8 ISO0500 f24mm F3.2 25sec

 お、22時40分に東の空で北斗七星とほぼ同じ長さの明るい流星が地面に向かって降り注ぎました~。しか~し、またしてもカメラの写野外です。トホホ…

 22時58分にはおおいぬ座の東側でマイナス等級のみごとな火球が流れました。なかなかカメラに写ってくれない流星ですが。下の写真2枚は目撃してカメラにも写っていたありがたい流星です。

輻射点から北斗七星に向かって流れたふたご群流星

2023/12/14 23h20m54s D810A NIKON VR24-70mm f/2.8 ISO3200 f24mm F3.2 25sec

その約2分後に同じコースで流れたふたご群流星

2023/12/14 23h23m09s D810A NIKON VR24-70mm f/2.8 ISO3200 f24mm F3.2 25sec

 観望開始から3時間が過ぎて日付が変わった頃から雲の濃度?が濃くなって星が見えにくくなってきたので(見えないわけではないが…)ここでいさぎよく観望をやめて撤収です。

 で、自宅に帰ってきたらまだそれなりに星が見えているので、庭で連続撮影をしたところ、3枚ほど写っていました。遠征先より自宅の方が効率が良いってどういうこと?

こちらは目撃流星です。西に傾いたオリオンに流星が降り注いでいます。

2023/12/15 03h14m15s D810A NIKON VR24-70mm f/2.8 ISO2500 f24mm F3.2 10sec

ここからはカメラ任せなので目撃はしていませ~ん。

2023/12/15 03h22m05s D810A NIKON VR24-70mm f/2.8 ISO4000 f24mm F2.8 5sec

雲ごしですが、これがふたご座流星群2023のラストフォトで、ベストフォト…かな

2023/12/15 03h26m03s D810A NIKON VR24-70mm f/2.8 ISO2500 f24mm F3.2 25sec

 今年のふたご群は8年ぶりの好条件だったので最良の条件で見たかったところですがお天気は気まぐれなので仕方ないですね。観望中にYouTubeでマウナケア山のライブ中継も見たのですが…

 え!? 何これ、プチ流星雨だよ~、と思えるほど流れていてオドロキでした。日本でも雲が無くて空の暗いところだったら同じように見えるのだろうか?と興味深く思いました。

 さて、今日のふたご座流星群が、今年の「見たい天文現象」の大トリでしたがそれにふさわしいイベントでしたね。来年は月の巡りが良くないので流星群はペルセのみが好条件となっているのが残念ですが、マイナー流星群も含めて来年はどんな流れ星と出逢えるのか楽しみですね~。

12月9日の土星(シン・システム構築 アイピース対決 編)

2023年12月11日 | 土星
12月9日に実施した「シン・システム構築 アイピース対決 土星編~その2」の記録です。

〈シン・システム7thトライアル 〉
・撮影日時:2023年12月9日17時00分~
・撮影システム:μ210+各種アイピース+拡大撮影アダプター+ASI290MC(UV/IRcut)
・拡大撮影カメラアダプター:TCA-4(拡大チューブ引き延ばし無し)
・アイピース:TPL-25mm(TAKAHASHI)、PL25mm(SE200N 付属品)、 SPL25mm(たぶん付属品)
       K 20mm(CORONADO P.S.T 付属品)、Or18mm(谷オルソ)
・合成焦点距離:撮影データに記載
・土星データ:視直径16.61"、光度 0.96等
・画像処理(AS!3→RegiStax6→RGB3色分解→位置合わせ→RGB合成→画像処理)


PL25mm

2023/12/9 17h14m(JST)CMI=297.7° CMIII=212.7°  FocalLength=5850mm
Duration=240s  Shutter=47.50ms Gain=350 (58%) 50% of 5052frames ap28


SPL25mm

2023/12/9 17h20m(JST) CMI=302.3° CMIII=217.1° FocalLength=5600mm
Duration=240s  Shutter=43ms Gain=350 (58%) 50% of 5580frames ap28


K 20mm

2023/12/9 17h29m(JST) CMI=306.1° CMIII=220.7° FocalLength=6750mm
Duration=240s  Shutter=66.50ms Gain=350 (58%) 50% of 3609frames ap30



Or.18mm

2023/12/9 17h42m(JST)CMI=313.7° CMIII=228.1° FocalLength=12300mm
Duration=240s  Shutter=58.50ms Gain=445 (74%) 50% of 4102frames ap30



TPL-25mm

2023/12/9 17h50m(JST)CMI=318.4° CMIII=232.6° FocalLength=5700mm
Duration=240s  Shutter=44.50ms Gain=350 (58%) 50% of 5394frames ap29



〈比較図〉


〈考察〉
・まずもって今回の気流は撮影をためらうほどの乱流だったので、結果としてはたまたま安定した気流に遭遇したアイピースの解像度が良かった…という感じがある。とはいえアイピースの差はそれなりに見られたのでPCモニター上の様子も含めて考察してみたい。

・初参加のケルナー(K20mm)は色収差が大きくピントの山もつかめずでいいとこなしだった。ただしこれがケルナーの特性なのかこのアイピースの持つ資質なのかは不明(たぶん後者だとは思うが…)。

・谷オルソ18mmはパラメーター上の合成焦点距離が12,800mmなのでF60になる。さすがに拡大率が大きすぎるのでセンサーのゴミの映り込みも多く、また、ゲインも440まで上げているので粒状性も荒さが目立つ。やはりμ210では過剰倍率といえるだろう。

・さて、ザ・プルーセル・トリオだが、これはなかなか面白い結果となった。気流が悪いためモニター上ではカッシーニの空隙を確認することはできなかったが画像処理をするとTPL-25mmだけカッシーニの空隙が浮かび上がってきた。僅差ではあるがシャープさと発色の良さもTPL-25mmが一番良い結果となった。

・そして、これまで2連勝だったPL25mmは気流の影響が大きかったせいか精彩を欠いていて結果としては第3位だった。また今回初参加のもう一つのプルーセルSPL25mmはなかなかの健闘ぶりだった。タイプ的にはPL25mmと同じだが主点の位置のちがいで合成焦点距離が若干短くなるようだ。

・以上のことから結論として、この3種のプルーセルはどれも拡大撮影に使用して特に問題ないアイピースだと言えるだろう。

・今後のテストとしては顕微鏡用対物レンズを流用して拡大撮影でどの程度通用するかを調べたいところだが準備ができるまでは、30cmドブでISS(CSSを含む)を対象として「プルーセル25mm+ASI290MC」と「谷オルソ18mm+ASI174MM」の2つのシステムでテストを行う予定である。


12月8日の土星(シン・システム構築 アイピース対決 編)

2023年12月09日 | 土星
12月8日に実施した「シン・システム構築 アイピース対決 土星 編」の記録で~す。

〈シン・システム6thトライアル 〉
・撮影日時:2023年12月8日17時00分~
・撮影システム:μ210+アイピース25mm+拡大撮影アダプター+ASI290MC(UV/IRcut)
・拡大撮影カメラアダプター:TCA-4(拡大率可変機能付き)
・アイピース:TAKAHASHI TPL-25mm、SE200N 付属品 PL25mm
・合成焦点距離:可変式のため撮影時パラメータを参照
・大気分散補正プリズム:ZWO ADC(一部で使用)
・土星データ:視直径16.64"、光度 0.96等
・画像処理(AS!3→RegiStax6→RGB3色分解→位置合わせ→RGB合成→画像処理)

TPL-25mm(拡大チューブ引き延ばし無し→合成 f5700mm )


2023/12/8 17h18m(JST)CMI=175.6° CMIII=124.1°
Duration=240s  Shutter=52ms Gain=350 (58%) 70% of 4616frames ap20


TPL-25mm(拡大チューブ引き延ばし有り→合成 f6850mm )


2023/12/8 17h26m(JST)CMI=180.1° CMIII=128.4°
Duration=240s  Shutter=42ms Gain=400 (66%) 70% of 6110frames ap34


TPL-25mm(拡大チューブ引き延ばし無し+ADC→合成 f11750mm )


2023/12/8 17h37m(JST)CMI=186.8° CMIII=134.8°
Duration=240s  Shutter=66.50ms Gain=436 (72%) 70% of 3610frames ap101


PL25mm(拡大チューブ引き延ばし無し→合成 f5400mm )


2023/12/8 17h46m(JST)CMI=192.0° CMIII=139.8°
Duration=240s  Shutter=45ms Gain=350 (58%) 70% of 5334frames ap22


PL25mm(拡大チューブ引き延ばし有り→合成 f6000mm)


2023/12/8 17h52m(JST)CMI=195.3° CMIII=143.0°
Duration=240s  Shutter=57.50ms Gain=350 (58%) 70% of 4175frames ap30


PL25mm(拡大チューブ引き延ばし有り→合成 f6400mm)


2023/12/8 18h01m(JST)CMI=200.6° CMIII=148.1°
Duration=240s  Shutter=64ms Gain=350 (58%) 70% of 3751frames ap30

〈考察〉
・今回の撮影はカメラアダプターの拡大チューブを使って倍率を変えているので共通パラメーターは露出時間のみで、シャッタースピードとゲインは適正露出になるようその都度調整をしている。
・気流は12月にしてはかなり落ち着いていて、撮影中(17:15~18:05)に気流の大きな変化はとくに見られず終始安定していたように感じた。
・さて、アイピースによる撮影画像の比較だが、上記画像を見るかぎり軍配はあきらかにPL25mmに上がっており、木星編に続いてSE200N 付属品 PL25mmの2連勝となった。
・ TPL-25mmの見え味は決して悪くないのだが、この結果から言えるのは「見え味の良さと撮影時の解像度の良さはイコールではない」ということなのだろう。たしか吉田正太郎先生の著書だったと思うが、「アイピースはそもそも人間の目の優秀な補正機能をあてにして作られているので光学的な性能と一致するものではない」という記述があったように記憶している。

・PENTAX XP-24が惑星撮影用アイピースとして今だに人気があるのは、「従来の眼視観測用アイピースでは補正しきれなかったディスト-ション(歪曲収差)から像面湾曲など、拡大撮影に影響を及ぼす諸収差を極限まで低減して中心から周辺までシャープで歪みの少ない描写特性が得られるよう設計している拡大撮影専用アイピース(PENTAX天体望遠鏡カタログより抜粋)」だからなのだろう。
・PENTAX天体望遠鏡カタログには「 XP-24は眼視用としても使用可能です」とあえて記述しているくらいなので、裏読みすると見え味の方は極めていないといえるだろう。

・さらにXP-24は「光学系の空気接触面にはペンタックス独自のマルチコーティング、貼り合わせ面は特殊コーティング処理を施し、高いコントラストと透過率を確保。 さらに、遮光環の設定により、迷光を抑え、ゴーストやフレアーの発生を防止している」そうなのでこれに近い性能を持つアイピースは現在販売されていないと思うが中には拡大撮影にマッチしたアイピースがあるのかもしれない。今後プルーセル以外のアイピースを試してみる価値はあると思われる。


まぼろしの「アンドロメダ座 流星群」 観望記録(12/3)

2023年12月08日 | ☆星見隊
12月3日未明にアンドロメダ座 流星群の観望に行ってきました~。

 アンドロメダ座群は19世紀後半に母天体である3D/ビエラ周期彗星の崩壊にともない複数回にわたって流星雨レベルの出現が見られたのですがその後は目立った活動がないため今ではまぼろしの流星群と言われています。

 こちらはその時の様子を表した1877年発行のアンティーク図版です。
 
 アンドロメダ座 流星群はとてもゆっくり流れる特徴があるそうですが、この図版はその様子が分かるように描かれていますね。

 その後沈黙を続けているこの群が12月3日04時00分(JST)に1649年のダストトレイルと接近する予報が出ているが、はたして伝説と化した流星雨は再び姿を現すのだろうか? 

 …と、期待に胸を膨らませて観望場所に到着したのはダストトレイル接近予報時刻の1時間前、空は晴れていますが月齢20の月明かりは予想以上に明るく、山並み家並みが肉眼ではっきり見えます。

 アンドロメダ座群はほとんどが暗い流星だという情報もあるのでこの明るさでは眼視はムリでカメラにも写らないのでは…と不安がよぎりましたがとりあえず試し撮りです。

03時10分頃の空の様子

2023.12.3 03h10m33s D810A NIKKOR 24mm-70mm F2.8 f24mm ISO1600 15sec f3.2

 う~む、空が明るいですね~。露出は若干絞ってf5.6にして、シャッタースピードは15秒で連続撮影を開始することにしましょう。さあ、あとはチェアーに座ってお気楽観望です。

03時20分頃の様子

2023.12.3 03h21m56s D810A NIKKOR 24mm-70mm F2.8 f24mm ISO1600 15sec f5.6

 ふむ、しずかな夜です。流れ星が空を横切る気配がまったくありません。いや、ひょっとしたら流れているけど見えないだけかもしれません。もう少し待ちましょう…。

03時30分頃の様子

2023.12.3 03h32m36s D810A NIKKOR 24mm-70mm F2.8 f24mm ISO1600 15sec f5.6

 あらら、雲です。撮影を始めて20分を過ぎた頃から西空の雲が押し寄せてきました。雲はみるみる空を覆い、3時40分には北の空は雲で覆われて星が見えているのは東の空だけになってしまいました。

2023.12.3 03h37m56s D810A NIKKOR 24mm-70mm F2.8 f24mm ISO1600 15sec f5.6

 まもなく東の空も雲に覆われることは間違いないことですが、一縷の望みを託してカメラを東の空に向けて連続撮影の再スタートです。

03時38分頃の東の空の様子

2023.12.3 03h38m28s D810A NIKKOR 24mm-70mm F2.8 f24mm ISO1600 15sec f5.6

 ところが、あっというまに東の空も雲に覆われたため撮影は5コマほどで終了です。トホホ… なんと終わってみれば撮影をしていた時間はわずかに30分間だけでした。

 かくしてダストトレイル接近時刻の04時を待たずして観望会は強制終了となり、流星を眼視で確認することはまったくできませんでした。後は自宅に帰って撮影画像の確認です。

 で、自宅で連続撮影した画像を一コマずつくまなく探したのですが北の空で流星が写っている画像は1枚もナシ。東の空もあるわけないよな~と思いながら見ていると、

 ラストショットに流れ星らしき光跡が写っていました。はて?これは流れ星でしょうか。時間的に人工衛星ということも考えられるので東の空で撮影したほかの画像を調べてみると…

2023.12.3 03h40m36s D810A NIKKOR 24mm-70mm F2.8 f24mm ISO1600 15sec f5.6

 なんと同じような光跡がたくさん写っています。しかも、東の空で撮影した5コマの全てに、それもほぼ同じ場所で… なんじゃ、こりゃ~、え?、これが… 今話題のスターリンク衛星フレア!?


こちらは東の空で撮影した5コマを比較明合成した画像です。ご覧のようにほぼ同じ場所でたくさんの「ひっかき傷?」が写っています。写っている高度は5°~10°の間といった感じです。

 ここ最近、SNS上で「日没後の北西の空と日出前の北東の空に、流れ星のような光跡が同じ場所でたくさん写っている」という書き込みが話題になっていますが、それはスターリンク衛星のフレアによるものだろう…ということが言われています。

 詳しいメカニズムはよく分かりませんが、軌道上のスターリンク衛星の太陽電池パネルは「日没後の北西の空」と「日出前の北東の空」の特定の位置でフレアを起こす現象があるようです。

 上記5コマの撮影時間は128秒ですが、その間に少なくとも10個のフレアが写っています。月明かりがあるにも関わらず…です。これはいかがなものでしょう?

 現在軌道上にあるスターリンク衛星は約4600機で、最終的には2020年代中頃までに総数約12,000基の人工衛星を展開する計画なので、この「空のひっかき傷」が今後さらに増えることは確実です。

 もはや、銀河鉄道が見えた~と喜んでいる場合ではないような気がしますが、数年後の夜空はどのようになっているのでしょう。気軽にスターウオッチングを楽しめる夜空であってほしいですよね。