晴れ時々スターウォッチング

昔の出来事もたま~に紹介

みどり色に見える星のナゾ!?(仮説~その1)

2024年05月29日 | ☆星見隊
それは月面を撮影しようとした5月22日のことでした。薄明が終わる頃に外に出て月を見ると南東の空低いところに月があったので撮影は南の空に来てからだな~と思って南の空に目をうつすと…

 はて、緑色がかった星が見えます。一瞬、てんびん座のβ星「ズベン・エスカマリ」か?と思ったのですがこんなに明るく見えるはずはありません。そう、この星は春の大曲線の南端にあるスピカです。

 スピカと言えば「真珠星」と呼ばれるように白色を代表する星です。ありゃ~、ついに加齢で目がおかしくなったか~と思ったものの部屋からNIKON 7×50の双眼鏡を持ち出して覗いてみると…

 ほひょ、これはどういうことでしょう?確かに緑色がかって見えます。双眼鏡で見ると緩やかに瞬いているのでカラフルな色も見えますが、中心付近は白色で星の周囲が緑色になっています。

 比較のためアルクトゥールスを見るといつもの橙色に見えています。スピカだけが緑色を周りにまとっています。スピカの高度は30°と40°の間くらい… 肉眼と双眼鏡で何度も確かめたのですがたしかに緑色をまとっているように見えます。何とも不思議です…

 これは、ひょっとしたら月齢14の月明かり、または薄明の時間であることが関係しているのだろうか?という思いが頭をよぎったが、その時は月面撮影を控えていたので妖しげな緑色のスピカについてはモヤモヤとしたまま脳内フォルダへの保存となりました。


その数日後、SNSでたまたま「プルキンエ効果」と「ブルーシフト」の違いとお月様について、という興味深いポストを見かけて、この「プルキンエ効果」という現象については知らなかったのでいろいろ調べてみるとおもしろいことが分かりました。

  PanasonicのHPに「プルキンエ現象」についてわかりやすい解説がありました。

…ということで分かりやすく言うと「夕暮れや夜間になったときに赤い花は暗闇にかすむように暗く見えて青色の花はより明るくみえて目立つようになる現象」で「暗くなると青い光がよく見えるようになる」ことのようです。

 ここで注目したいのは明所視、薄明視、暗所視における桿体と錐体の働きによる色の見え方です。
・明所視-網膜にある三種類(S・M・L)の錐体が働いて物の色がはっきり分かる状態。
・薄明視-網膜にある桿体と錐体の視細胞が同時に働いていて物の色がいくらか分かる状態。
・暗所視-主に桿体が働いていて物の明暗だけ分かる(色は分からない)状態。

 ここで注目すべきは、薄明視は「網膜にある桿体と錐体の視細胞が同時に働いていて物の色がいくらか分かる状態」だが、明所視に比べて「絶対視感度(Im/W)」が最大で約2.5倍も強いという点です。

 つまり目に入ってくる光のエネルギーが昼間見るよりときも約2.5倍も強い(=眩しい)ことになり、その波長が青色に寄っているということです。

 そのため、暗い部屋でテレビを見たり夜に外でPC画面見たりすると桿体が作用するので明るい(錐体だけが作用している)ところで見るより2.5倍の光を吸収して目が疲れる、ということです。たしかに、惑星撮影をしているときのPC画面輝度はかなり落とさないと目が痛くなりますよね。

 桿体細胞の視感度が一番高いのは波長507nmです。これは色で表すと「緑色」になりますが、桿体細胞は色を認識しないので緑色だという信号を脳に送ることはありません。

 ただし、薄明視(夕暮れや月明かりがあるとき)では桿体と錐体の視細胞が同時に働いているので(薄明の明るさによって感じやすい色は変わりますが)波長が450nm~550nmの色を感じることができるということになります。

 波長450nm~550nmは青色~青緑色~緑色です。なので日没後の薄明が始まると、木の葉の緑がはっきり見えるようになり、それがやがて青色にシフトして、空一面が濃い青色になって、やがて夜の空の色になっていくということです。これがプルキンエ現象です。

 かの宮沢賢治は「心象スケッチ 春と修羅-風景観察官-」で林の青緑色が濃いことの表現にプルキンエ現象という言葉を用いています。さすが、科学者宮沢賢治ですね。

 また、戦国時代から安土桃山時代にかけての茶人・千利休は茶室において浅葱色(あさぎいろ)の足袋を好んで身に着けていた(速水宗達(1740~1809)の「喫茶明月集」に記されている)そうですが、これは利休の理想としていた薄明視に近い状態の明るさの茶室では青色の足袋が鮮やかに浮かび上がって映える効果を認識していたからだろうと言われています。

 プルキンエ現象が解明されたのは1825年ですが、その約200年前に千利休は体感的にプルキンエ現象を知っていたということなのでしょうね。

さて、ここで話を戻して、みどり色に見える星のナゾ!?についての晴れスタ的~仮説です。
〈仮説1〉てんびん座のβ星「ズベン・エスカマリ」が緑色に見えるのは薄明の時間または月明かりがある時間のようにプルキンエ現象が発生したことが要因のひとつではないだろうか。

 う~む、仮説としては言い切ってないところが何とも煮え切らないが、プルキンエ現象の影響なら全ての星が緑色にみえるのでは?という疑問もあるし、そもそも星の観望はフツーはプルキンエ効果のない薄明終了後だよね…と言う声も聞こえてきそうなので、あくまでも一つの仮説です。 (^^ゞ

 実は、5月25日にこの仮説(スピカが緑色に見えたことも含めて)を検証すべく、日没直後から椅子にドッカリと座って薄明終了までじっくり観察したのですが、スピカもてんびん座のβ星も緑色に見えることはありませんでした。どして?

 スピカが緑色に見えた5月22日は薄明終了前に14番目の月が出てたので薄明+月明かりだったことが5月25日と違うところですが、これが関係しているかは不明です。→調査継続中!

 さて、最後に紹介するのはゴッホの「星月夜」です。

 この絵はゴッホが精神療養のため入院していた修道院の窓から見えた風景を描いたといわれていますが、実際は入院していた病室からはこの村が見えないので別の場所でスケッチした村の風景を引用したか空想上の村だったのではと考えられています。
 
 ただ、ゴッホは星や夜空に対する深い関心を持っていたので月と星と空の色はゴッホの目で見た(感じた)宇宙が描かれているのではと思っています。なにより、この色合いはプルキンエ現象を表したようにも見えるし、今回改めて見ておどろいたのは、星の周りが緑色っぽくなっているところです。

 これが5月22日に見たスピカの色合いにとてもよく似ています。ひょっとしたらゴッホは緑色の星を見ていたのかもしれませんね。


〈関連ブログ〉
みどり色に見える星のナゾ!?
月と木星と土星の接近

月面アポロ着陸地点

2024年05月24日 | 
5月22日は月齢14.4のとても眩しい月でしたが天気が良かったのでアポロ着陸地点拡大撮影の下見(ロケハン)を行いました~。

 月齢14.4はほぼ満月なのでアイピースにはムーンフィルターを装着したのですが、ND96(50%)だけでは眩しかったのでND96(13%)の2枚重ねで観望です。

 さすがにこの月齢では月面の起伏はまったく分かりませんが、クレーターの光条と月面(海)の色の違いが分かるのでそれをたよりに着陸地点の特定をしてみました。

アポロ12号とアポロ14号の着陸地点

2024/5/22 22h24m μ210+ASI174MM+ZWO IR850 Filter Shutter=19.78ms Gain=228 (57%) 25% of 2000frames

 アポロ12号は月探査機サーベイヤー3号に歩いて行ける場所へのピンポイント着陸、アポロ14号は海ではなく初の丘陵地(13号が着陸する予定だったフラ・マウロ)への着陸を成功させています。

2024/5/22 22h01m μ210+TPL25mm+ASI290MM+Barder IR-Pass Filter 685nm Shutter=2.759ms Gain=238 (39%) 25% of 2000frames


 12号と14号はコペルニクス・クレーターの光条の及ぶ範囲内に着陸していることが分かります。

2024/5/22 22h04m μ210+TPL25mm+ASI290MM+Barder IR-Pass Filter 685nm Shutter=2.397ms Gain=238 (39%) 25% of 3000frames

 14号が着陸したフラ・マウロ高地は起伏の激しい場所ですがまったく起伏が無いように見えます。月齢によって起伏の見え方が変わるのは月面上でも顕著だったらしくフラ・マウロ高地に着陸した宇宙飛行士が目指すコーン・クレーターにたどり着いたと思ったら違っていたという逸話があります。

2024/5/22 22h31m μ210+TPL18mm+ASI174MM+ZWO IR850 Filter Shutter=55.62ms Gain=301 (75%) 25% of 2000frames

さて、こちらは11号、15号、17号の着陸地点を撮影したものですが、これも起伏がまったく分からない画像となっていますね。

2024/5/22 22h55m μ210+ASI174MM+ZWO IR850 Filter Shutter=19.78ms Gain=211 (52%) 25% of 2000frames

 これは上弦の前日(月齢6.3)に撮影した11号と17号の着陸地点ですが、17号が着陸したタウルス・リトロウ谷は山塊に囲まれた地域であることが分かります。→拡大photo

2024/5/14 19h24m μ210+TPL25mm+ASI290MM+Barder IR-Pass Filter 685nm Shutter=4.828ms Gain=297 (49%) 25% of 3000frames

さて、最後に残るは16号の着陸地点、デカルト高原ですがこれがアポロの着陸地点としては最も特定しにくい場所と言えます。似たようなクレーターが一面に広がる高原なので着陸地点にたどり着く目印が無い状態です。夜明け直後の月齢を狙うしかチャンスは無いようですね。

2024/5/22 22h11m μ210+TPL25mm+ASI290MM+Barder IR-Pass Filter 685nm Shutter=2.448ms Gain=214 (35%) 25% of 2000frames

 さて、これで本日のロケハンは終了です。とりあえず着陸地点のおおまかな特定はできたので、あとはベストな月齢で撮影を試みることにしましょう。



本日のラストフォト・美しい月面北部

2024/5/22 22h27m μ210+ASI174MM+ZWO IR850 Filter Shutter=19.78ms Gain=214 (53%) 25% of 2000frames


アレキサンダーのビーズ 撮影記録(5/14)

2024年05月22日 | 
5月14日にアレキサンダーのビーズが見られるというので初ウオッチングしてみました~。

 アレキサンダーのビーズは「アレキサンダー・クレーターの夜明け頃にクレーターの縁がビーズ状に光って見える」という現象です。5月14日の18時30分頃に見えるという情報を得たので望遠鏡を向けてみると…
 
 ほほう、たしかに太陽光が照らしているクレーターのリムが途切れ途切れになっています。日没時刻は18時41分なので空はまだブルースカイですがリムがビーズ状になっているのが分かります。

2024/5/14 18h51m μ210+TPL18mm+ASI290MM Duration=23s Shutter=3.793ms Gain=397 (66%) 25% of 2000frames


 アレキサンダーはアリストテレス・クレーターとエウドクソス・クレーターの南側に位置する直径82kmのかなり浸食された壁平原クレーターです。


 まだ空が明るかったのでキレイなビーズ状には見えませんでしたが、暗い空だったらもう少しキレイに見えたかもです。次回見えるのは7月12日16時頃なのでこれまた青空の中での観望となります。日没後に見えるのは2025年11月26日まで待たなければならないようですが、そもそもこの月齢は暗い空で見えている時間が少ないので条件良く見るのは難しい現象と言えますね。

2024/5/14 19h31m μ210+TPL25mm+ASI174MM Duration=94s Shutter=47.09ms Gain=223 (55%) 25% of 2000frames

 そうそう、今回のアレキサンダービーズ撮影中に飛行機の月面通過に遭遇しました。

〈アレキサンダーのビーズ撮影中に通過した飛行機の動画〉
 ↑ YouTubeの設定(歯車マーク)で再生速度を0.25にすると主翼(その直後に尾翼)が通過している様子が見えます。

 フライトレーダー24のプレイバックで調べたところ札幌発→羽田着のAir Do Boeing 767型機でした。飛行高度は11,582m、対地速度は793km/hです。この時は1000フレーム限定で撮影したので撮影時間は9.6秒でしたが、この短い時間にタイミングよく入ったものですね~。


 ↓ GIFアニメを作成してみたのですが主翼の部分がうまくキャプチャーできなかったようです。

 動画を撮影中はPCのモニターを見ていたので飛行機が通過した瞬間に月を見上げたのですが、その時はすでに月を通過したあとでした。そりゃ、そうですよね~。

スターリンク衛星(11904)観望記録 5/11

2024年05月13日 | 宇宙開発
5月11日19時38分頃、ウミヘビ座のヒュドラ様が「俺さまの下を勝手に通るんじゃね~よ!」とにらみをきかせる中、スターリンク御一行様が涼しげな顔色で通過して行きました~。

2024/5/11 19h38m36s D810A NIKON28mm f2.8 ISO1600 2.5sec

今回のスターリンク衛星11904は5月10日13時30分(JST)にヴァンデンバーグ空軍基地からFalcon 9で打上げられた機体である。5月11日の通過はリフトオフから30時間ほど過ぎているのでいい具合にばらけて銀河鉄道状の隊列となっていた。

 眼視では、通過時の明るさが3.5等級だったので棒状につながった光が妖しく光るゴースト列車のように見えたが双眼鏡では20機の衛星が一直線になって飛行している様子がよく見えた。

 機体の間隔は等間隔ではなく、4番目と5番目、12番目と13番目、16番目と17番目が近接して飛行していた。双眼鏡では白色に見えたが撮影した画像ではスターリンク衛星特有のブルー色に写っている。

 最近、星空を撮影するとこのスターリンクブルー色で写る衛星が多くなっている。しかし、すべてのスターリンク衛星がブルー色に写るわけではない。その違いはどこにあるのだろう。

2024/5/4 19h53m22s D810A NIKON VR24-70mm f/2.8 ISO2500 f24mm F2.8 5sec(トリミング)

 太陽電池パネルを展開した状態のスターリンク衛星は公式には公開されていない。何かヒミツがあるのだろうか? 意外と謎が多いスターリンク衛星… 拡大撮影の対象としては実におもしろい衛星だ。

低緯度オーロラ観望記録(5/11)

2024年05月12日 | Weblog
低緯度オーロラが東北でも見られるかもしれない… というニュースが流れてきたので妻と二人でオーロラ・ウオッチングに行ってきました~。

 観望場所はスプリングバレー仙台泉スキー場です。スプリングバレーは仙台市内から車で30分の近さですが泉ヶ岳の北側にあるので北天の星空がそこそこキレイに見える場所です。

 とは言っても仙台で低緯度オーロラは見えないよな~、今夜は20時30分頃にISSが北極星近傍を通過するのでそれを見たら帰ることにしよう…と思って家を出たのが19時45分頃、

 スプリングバレーまでは自宅から30分なので天文薄明が終わる20時20分頃にちょうど着くのでタイミングとしてはバッチリです。スキー場に着くまでは何かしらの野生動物と出逢うのでそれも楽しみですが今日見られたのはタヌキいっぴきと飼い猫と思われるかわいいニャンコでした。(なぜ!?)

 さて、スプリングバレースキー場に着きました。天頂の高いところには北斗七星が、西の空低いところではまもなく沈もうとする四日月が傾いていました。で、北極星の下を見ると… ん!?、空の色がいつものニュートラルグレーではなく、赤みを帯びているように見えます。

 いやいや、期待値が脳を錯覚させることは何度も経験済みなので、これは、そうだったらいいのになぁ~現象だ、と思って写真を撮ってみると… わぉ!! 空が赤い! こ、これは…

本日のファーストショット!

2024/5/11 20h20m22s D810A NIKON28mm f2.8 ISO4000 10sec

 これは低緯度オーロラで間違いないようです。 仙台でオーロラが見られるとは… 超オドロキです!


 東の方を見るとケフェウス座付近まで広がっています。その先はいつもの空の色です。


  西の方はぎょしゃ座付近で色が薄くなっているようです。


 オーロラの色が一番濃いところは真北よりやや西側のように見えます。

2024/5/11 20h26m46s D810A NIKON28mm f2.8 ISO6400 20sec

 う~む、信じられないけど目の前にオーロラが広がっています…カーテンのようなひらひらとしたオーロラでないけどこれも本物のオーロラです。これはスゴイ…

 …とオーロラの撮影に夢中になっているとISSがすでに北極星を通過していました! わぉ!!

低緯度オーロラとISSのツーショット!

2024/5/11 20h32m17s D810A NIKON28mm f2.8 ISO6400 10sec

 あわててISSを撮影していると、後ろで妻が「あれがISSなの? 速い!あんなに速いの?すご~い!」としきりに言ってましたが、思うにISSの高度が低く、山並みをかすめるように進んだので速さが強調されて見えてるんだ~と確信しましたがあえて説明はしませんでした。

さて、この時間の四日月(月齢3.3)はこの位置にあります。月明かりでオーロラとの境界が分かりにくくなってる感じがしますが、月明かりがあっても写っているのは驚異的と言えますね。

2024/5/11 20h34m24s D810A NIKON28mm f2.8 ISO6400 10sec

 しばらくオーロラウオッチングを楽しんでいましたが、20時45分頃から雲が流れてきてオーロラが薄くなり始めました。

2024/5/11 20h51m04s D810A NIKON VR24-70mm f/2.8 ISO6400 f24mm F2.8 10sec

 肉眼でも空の赤みを感じなくなってきたので名残惜しいですが観望会は終了です。

本日のラストフォト

2024/5/11 20h54m37s D810A NIKON VR24-70mm f/2.8 ISO6400 f24mm F2.8 13sec

 本日のオーロラ・ウオッチングは、東北で低緯度オーロラが見える可能性があると言っても、やっぱり仙台ではオーロラは見えなかったね~というオチになると100%思っていたので、眼視で夜空が赤っぽく見えたときはホントに信じられない気持ちでした。

 いつか見たいと思っていたオーロラがまさか地元の仙台で見られることになるとは… まさに事実は小説よりも奇なり~ですね。

 

土星・環の消失現象シーズンイン!

2024年05月11日 | 土星
土星の環の消失現象まであと1年(2025年3月24日と2025年5月7日)と近づいてきました。

 明け方東の空に見えている土星の環はかなり細くなっているはずなので早朝撮影にチャレンジしてみました。撮影した5月10日の土星の高度変化は下記のとおりですが、条件が厳しい上に気流が真冬並みのボヨンボヨンとグワングワンだったので撮影画像はまったくのだめだめでした。

01時58分 土星出
02時30分 高度5°
02時46分 天文薄明開始
02時50分 高度10°
03時20分 高度15° 航海薄明開始
03時50分 高度20°
04時00分 市民薄明開始

 撮影は高度が7°に達した頃から始めたのですが、低高度では環を確認することもままならぬ状態だったのでこの時間に撮影した画像はすべてお蔵入りです。笑

 で、こちらは3時50分、高度20°で撮影した土星です。すでに航海薄明が始まっている時間です。高度が20°もあれば夏場だったらそこそこ写るのですがこの日は寒気が流入したせいか真冬と同じような感じでした。

2024年の土星ファーストショット! 惑星面緯度3.35°、視直径16.4” 、光度1.2等

2024/5/10 03h50m(JST)CMI=109.0° CMIII=316.3° 
Duration=90s  Shutter=57.33ms Gain=352 (58%) 25% of 1571frames ap1

 まー、それでも環がかなり細くなって串団子に近い様相だということは分かるかなと思います。撮影時の惑星面緯度は3.35°でした。昨年最後に撮影した12月9日の土星は惑星面緯度が12.18°だったのでイッキに細くなりましたね。

2023年12月9日撮影土星、惑星面緯度12.18°、視直径16.7" 、光度0.9等、撮影時高度36°

2023/12/9 17h50m(JST)CMI=318.4° CMIII=232.6° FocalLength=5700mm
Duration=240s  Shutter=44.50ms Gain=350 (58%) 50% of 5394frames ap29


03時52分撮影、高度20°、航海薄明中

2024/5/10 03h52m(JST) CMI=110.1° CMIII=317.4°
Duration=90s  Shutter=57.33ms Gain=350 (58%) 25% of 1570frames ap1

 気流が落ち着かないまま時間は過ぎて時刻はまもなく市民薄明が始まる時間です。4時になると時報のようにヒバリがあちこちでさえずりを始めました。どうやらお目覚めの時間のようです。ヒバリのさえずりといえば空高いところでホバリングしながら鳴くのが特徴ですが、寝起きの状態では地面で鳴いています。

 有明の月と火星の接近を撮影した時もヒバリが至近距離の地面で突然鳴き始めたのでビックリしました。地面で鳴いているぶんヒバリまでの距離が近いのでふだんのさえずりよりは大きな声に聞こえて、はっきり言ってうるさいです。笑


04時04分撮影、高度22°、市民薄明開始4分後

2024/5/10 04h04m(JST) CMI=117.4° CMIII=324.4°
Duration=90s  Shutter=52.78ms Gain=350 (58%) 25% of 1706frames ap1

 市民薄明は外で新聞が読める明るさで農作業ができる明るさでもあります。望遠鏡のファインダーの中では土星がまだ見えていますが、肉眼では土星を視認することがまったくできません。そろそろ撮影会終了の時刻です。


04時07分撮影、高度23°、市民薄明開始7分後

2024/5/10 03h50m CMI=118.7° CMIII=325.7°
Duration=90s  Shutter=53.91ms Gain=350 (58%) 25% of 1670frames ap1

 最後に望遠鏡の惑星カメラを外して眼視で土星を見てみましたが、まだ完全な串刺し状態ではなく環の盤面がわずかに見える状態だということを確認できました。5/10の惑星面緯度は3.35° ですが今後は徐々に惑星面緯度が小さくなって2024年で最小となるのは6月28日の2.39° です。

 6月下旬は天文薄明開始時の土星高度が35°に達するので撮影条件はかなり良くなります。早朝の撮影であることに変わりはありませんが早起きして環の消失直前の土星を楽しむことにしましょう。

 そうそう余談ですが、寒気が流入した5月10日早朝の気温は3℃まで下がりました。天気予報で4月上旬並みの気温になると言ってましたがカメラバッグには霜が降りて真っ白でした。GWも終わったこの時期に個体になった水(こおりです)を見るとは思いませんでした。

有明の月と火星の接近(5/5)

2024年05月09日 | 
5月5日の早朝に「有明の月と火星の接近」ウオッチングに行ってきました~。

2024/5/5 03h16m35s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f190mm ISO1600 F5.3 1sec(トリミング)
 
 早起きをして観望場所に着いた時刻は3時10分頃… 火星出の時刻は02時53分なのですでに見えているはずです。双眼鏡で探すと月の東側にあって双眼鏡の視野に収まっていい感じに見えました。

 肉眼で見えるか確かめたのですが、5/4の「二十六夜月と土星の接近」と同じような空模様だったので「あそこに見えてるよ!」と言われれば「あ、見えてるかも…」という程度の見え方でした~。

2024/5/5 03h20m40s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f260mm ISO1600 F5.6 1sec

 観望を始めた直後というのに月には雲がかかり始めたので、天気はきのうの方が良かったかも…

2024/5/5 03h23m41s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f240mm ISO1600 F5.3 1sec

 ま、雲がかかった月は、これはこれで風情があるのでキレイですが、今日撮りたい月はこれではないので、なんだかなぁ~、と思っていると

2024/5/5 03h24m10s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f340mm ISO1600 F5.3 1sec

 あっという間に薄明が進んで早くも空一面がブルーモーメントです。

2024/5/5 03h52m04s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f340mm ISO2500 F9 1/2.5sec

 昨日、撮影画像で土星を確認できなくなったのは04時20分頃でしたが火星は4時を過ぎた直後で確認できなくなりました。視直径の違いは大きく影響するようですね。

2024/5/5 04h04m58s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f320mm ISO2500 F9 1/50sec

 さて、このあと約8時間後に月が火星を隠す「白昼の火星食」がありましたが、お出かけの予定があったので観望することは出来ませんでした。

2024/5/5 04h13m02s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f600mm ISO1600 F9 1/400sec(トリミング)

 視直径が4秒台の火星を白昼に撮影するのは至難の業ですが、その瞬間を撮影した画像がSNSでアップされていて、すばらしいな~と思いました。その技術の高さには感服です。

 今年は12月8日夕方に土星食、12月9日夕方には海王星食があって、どちらも観測しやすい時間と位置なので楽しみですね。


春の星座で二重星ウオッチング!

2024年05月08日 | 二重星
天気が良くなった5月2日に春の星座で二重星ウオッチングをしました~。

 最初のターゲットはおとめ座の γ(ガンマ)星 ポリマです。おとめ座 γ星は見かけ等級がほぼ等しい(3.65等級と3.56等級)連星で離角が2".9と近いのでキレイな双子星に見えます。

 ポリマまでの距離は約38光年、 公転周期が168.93年の連星で1836年と2005年の離角が最小でわずかに0".2~0".3 ほどだったそうです。2020年以降は小望遠鏡でも分離できる離角(2".9)になっているようなので今が見頃といえますね。



 次のターゲットはしし座の γ(ガンマ)星 アル・ギエバです。明るい方(主星)の見かけ等級が2.28等級で伴星が3.51等級なのでやや光度差がある二重星です。色味は黄色系(伴星は緑がかった黄色?)で離角は4".7です。

 こちらも連星ですが、2つの恒星は少なくとも170天文単位(太陽と冥王星の間の距離の4倍)も離れていて、公転周期は500年以上であるため完全な軌道はまだ分かっていないそうです。




 3番目のターゲットはうしかい座のε(イプシロン)星 イザールです。プルケリマといった方がピンとくる二重星ですね。主星の明るさが2.37等級で伴星が5.12等級、オレンジ色系の主星と青色系の伴星の色の対比がとても美しいペアです。離角は2".9ほどですがしっかり分離して見えました。




 さて、本日の最後のターゲットは「星座の事典」のうしかい座のページで「美しい二重星。離角は年々減少していて、現在、口径15cmの望遠鏡で2つの星に見える。」と紹介されている「うしかい座の44番星」です。

 今宵の観望はステラナビゲーターを赤道儀に接続させてあるので、44Booを検索してToGoさせれば導入完了なのですが、望遠鏡の視野に入ってきた星はどう見ても二重星に見えません。

 倍率を96倍→134倍→268倍と上げてもひとつ星で、だるま状に見えることもありません。導入がズレたかなぁ~と思って再導入してみたのですが間違ってはいないようです。

 とりあえず25mmアイピースで撮影をしてみたところ分離はしていませんでしたがどこか違和感を感じたのでアイピースを18mmに交換して撮影してみると、わぉ、分離しました~。

 うしかい座44番星はハーシェルが発見した二重星のようですが、二重星であることが確認された1819年のときの離角が1".5 で2020年現在の離角はわずかに0".2 のようです。

 なるほど、20cm望遠鏡の分解能は0".6なので、倍率を高くして覗いても離角0".2の44番星が分離しないのは当然のことだったんですね~。うしかい座44番星の見かけ等級は4.83等級ですが分離すると主星が5等級で伴星が6等級の明るさになるそうです。



 さて、今宵のウオッチングはこれで終了です。眼視で見てから惑星カメラに切り替えて撮影するのはピント合わせやら何やらで意外と時間がかかってしまいます。この続きは次回の晴れたときに~と待っていると季節が進んで予定の天体が撮影できなくなること学びました~。
 
 撮影対象リストは季節を先取りして計画することが効率の良さにつながりますね。

二十六夜月と土星の接近(5/4)

2024年05月07日 | 土星
5月4日は旧暦3月26日、2024年見たい天体現象「月と惑星の接近(5月~8月編)」で紹介した「二十六夜月と土星の接近」の日です。

  5月4日の月出の時刻は02時22分、土星出は02時20分です。03時過ぎに観望地に着くとやや赤みを帯びた月が煌々と輝いていましたが、土星はどこにあるのかまったく見えませんでした。

 土星は月の東側3°のところにあるので双眼鏡で見てみると、ふむ、ありました。かすかに見えます。どーも、薄雲が広がっているようですね。

 土星は1.2等級なのでカメラでは写りましたが、スッキリしない空模様です。

2024/5/4 03h18m19s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f320mm ISO5000 F7.1 1/5sec


 土星の南にあるのはみずがめ座の恒星です。薄雲で月明かりが拡散している様子が見て取れます。

2024/5/4 03h18m36s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f460mm ISO5000 F7.1 1/5sec


 広角で撮るとこんな感じ、ほぼ同じ明るさの火星が8°ほど離れたところで輝いていました。

2024/5/4 03h22m44s D810A NIKON VR24-70mm f/2.8 ISO5000 f70mm F2.8 1/8sec


 ブルーモーメントの時間を待って撮影しましたが、その時には土星が暗くなって、月に露出を合わせると土星が写らなくなってしまい、結局イメージどおりの写真は撮れずじまいでした。

2024/5/4 04h09m53s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f500mm ISO6400 F9 1/400sec


 ブルーモーメントの空に浮かぶ二十六夜月(月齢25.0、輝面比0.25)

2024/5/4 04h20m46s D810A SIGMA150-600mm f5-6.3 f500mm ISO1600 F7.1 1/640sec(トリミング)

 4時20分を過ぎると撮影画像で土星を確認できなくなったため撮影会は終了です。撮影開始時の土星高度は10°で撮影終了時の土星高度は21°でした。土星を拡大撮影するはまだ厳しいですが次回晴れたときに環がどの程度細くなっているか撮影にチャレンジしてみることにしましょう。



春のアルビレオ(Iota Cancri, 24 Comae Berenices)

2024年05月03日 | 二重星
春のアルビレオと言われている二重星「かに座 ι(イオタ)1星」と「かみのけ座 24番星」をウオッチングしました~。

 ウオッチングした夜は春霞で透明度が良くなかったので、夜空も心もモヤモヤしてましたが、そんな気持ちを吹き飛ばすほどキレイな二重星でした~。

 最初に観望したのはかに座の右はさみの先で小さく輝く4等星イオタ星です。離角は約30”なので本家本元のアルビレオとほぼ同じです。色も黄と青が濃く見えて、明るさは4等級と6等級なのでアルビレオよりはやや暗いかな?という感じでした。

 かに座は春の星座ですが位置的には冬の星座ふたご座のとなりなので空が暗くなったときには西の空でハサミを天空に上げて地平線に向かって後ずさりをしています。かに座を観望する季節はそろそろ終りですね。




↓ こちらは3月27日に撮影したかに座のι(イオタ)1星です。望遠鏡で覗いた感じはこちらの方が近いかな~と思ったのですが…よく見るとたいした変わりはないですね~。失礼しました。(^^ゞ




 さて、もうひとつの春のアルビレオはかみのけ座の24番星です。かみのけ座には「メロッテ111(Mel.111)」という大きな散開星団がありますが、明るい星がないので目立たない星座です。その中にある5等級の二重星24番星の色の対比がアルビレオに似ているというので覗いてみると…

 おー、離角が20”なのでやや小降りですが、確かにアルビレオっぽい色味です。主星はオレンジよりの黄色という感じですが、伴星の青色が濃いのでこれはアルビレオですね~。たしかにキレイです… 天空には天上の宝石といえる美しい星がまだまだあるんですね~。





 さてさて、今宵ウオッチングした春のアルビレオは、春霞の空で見たからなのか、二つともやわらか~い色合いでとてもやさしい感じがしました。冬のアルビレオと言われているおおいぬ座の145番星は春のアルビレオとは違ってどこか力強さがありました。冬の寒空に耐えている感じですね。

季節の二重星めぐりは今後も続きま~す。(あくまでも予定ですが…)どうぞお楽しみに~