晴れ時々スターウォッチング

昔の出来事もたま~に紹介

みどり色に見える星のナゾ!?(ヒストリー編)

2024年07月02日 | ☆星見隊
てんびん座のβ星がみどり色に見えるナゾについては現在も調査中ですが、そもそも最初に緑色に見えることに気付いたのは誰で、いつのことだったのだろう?…という疑問が湧いたので、そのヒストリーを探ってみました。

〈はじめに…〉
 私がてんびん座β星のことを初めて知ったのは「天文ガイド別冊・ジュニア夏の天体ガイド(昭和47年発行)」の裏表紙を見たときです。そこには「てんびん座のズベンエルシャマリ(緑)…肉眼で見えるただ一つの緑色星」と紹介してありましたが…

〈星座ガイドブックの多くでは…〉
 「この星のグリーンの輝きが美しいと表現する人もある」「青白い高温星だが、人によっては ‘‘グリーンの輝きが美しい" といわれる」「古来からこの星の色は『緑がかった』『エメラルド色』と表現され、緑色の星として紹介されている」のように書かれていて、「緑色に見えます…」と書いてあるガイドブックはお目にかかったことがありません。

〈…ということは〉
 つまるところ、てんびん座のβ星が緑色に見えた人や緑色だと確信した人は、どこにもいないんじゃないの?と思って調べたところ、「緑色に見えた」ということを書物に記している人がいました! 星の和名の収集研究で知られている天文民俗学者の野尻抱影です。

〈みどり色のβ星を見た日本人-野尻抱影 1885-1977〉
 昭和16年(1941年)発行『星』(恒星社厚生閣)「紫の星・緑の星」P32
・さそり座の右隣にてんびん座の星が四辺形を作っている。その頂のβという星が全天にも稀有の美しい緑の星で、昔のプトレマイオスの星表には1等星になっている。昔はさぞ素晴らしい色の光であったのだろう。肉眼でも心もち緑に見え、更に双眼鏡でははっきり緑いろの星を現す
 φ(.. ) -野尻抱影は1928年(昭和3年)日本光学製の屈折望遠鏡を購入し、ロングトムと命名して愛用したが、『星』を執筆するときに使用した口径10センチメートルの望遠鏡が屈折望遠鏡か反射望遠鏡かは不明。双眼鏡の性能も不明

〈で、言い出しっぺは誰なの?〉
 日本で野尻抱影さん以外にみどり色のβ星を見たという人は見つからなかったので、ここからは外国の文献で「みどり色に見える星」と言われるルーツを調べてみました。 φ(.. ) 検索中~

 ~ふう、かなり時間がかかりましたが、てんびん座のβ星が緑色に見えることを記述している外国の文献は5件ほど見つかりました。では、時代の新しい文献から順に見ていくことにしましょう。

資料1〈アメリカの天文学者、サイエンスライター、ジェームス・B・ケラー〉1938-2022
1988年公開オンラインデータベース『STARS

・このような星は通常、青白い色をしていると考えられているが、ズベンエスシャマリは長い間、人間の目には奇妙に緑色に見える唯一の肉眼の星であるという評判があった。また、単に白く見えるだけだと主張する者もいる。この論争が続くことは間違いない。

φ(.. ) ふむ、いかにもサイエンスライターらしい文面ですね~。しか~し、出典や引用元は記載されていないようです。では、次は58年前に出版された「バーナム天体ハンドブック」を見てみましょう。

資料2〈アメリカの天文学者、ロバート・バーナム・ジュニア 1931-1993〉
1966年出版『Burnham's Celestial Handbook・バーナムの天体ハンドブック

・オルコット - 肉眼で見える唯一の緑色の星と言っている。
・ウエッブ - この星は美しい淡い緑色をしていると表現している。

 φ(.. ) ほほう~、いいですね!出典をはっきり書いています。バーナムはローウェル天文台職員の時に天体ハンドブックを出版してますがその生い立ちを見るとホントに星が好きな人なんだ~ということが分かります。では、ここからはオルコットとウエッブの文献を見てみることにしましょう。


資料3〈アメリカの弁護士、アマチュア天文学者ウィリアム・タイラー・オルコット 1873-1936〉
1907年出版『A Field Book of the Stars・星空のフィールドブック

・βは淡い緑色の星である。その色は非常に珍しい。

φ(.. ) ふむ、オルコットの記述はあっさりですね~。オルコットはおもに変光星の観測をしていたようですが、4年後に出版した「Star Lore of All Ages‣あらゆる時代の星の伝承」にもβ星のことを書いているので見てみましょう。

資料3b〈ウィリアム・タイラー・オルコット 1873-1936〉
1911年出版『Star lore of all ages・あらゆる時代の星の伝承』

・β星は肉眼で緑色に見える唯一の星で、興味深い変光星である。
・エラトステネスはさそり座(てんびん座)の中で最も明るい星だと言っているが、
 プトレマイオスはアンタレスと同等とだと言っている。

φ(.. ) ふむふむ、前出のバーナムはこの文面を見て「オルコットは肉眼で見える唯一の緑色の星だと言っている」と記述したわけですね~。オルコットは変光星の研究者なのでどちらかというとβ星の光度に興味があったように感じますが実際に自分の目で緑色を確かめたかはこの文面からは判別できませんね。

 さて、次はウェッブの文献ですが、ここでウェッブの言葉を引用している興味深い文献を発見!それはリチャード・ヒンクレー・アレンの『Star-Names and Their Meanings・星の名前とその意味」という書物ですが、そこにはオドロキの文章が…

資料4〈アマチュアの博物学者、リチャード・ヒンクレー・アレン 1838-1908〉
1899年出版『Star-Names and Their Meanings・星の名前とその意味』

・ウエッブ は β星の色は濃紺のような濃い緑だが肉眼で色を見ることはできないと言っている。

φ(.. ) な、なぬ~! ウェッブは「肉眼で色を見ることはできない」と言っていた!? もしこれが事実なら「肉眼で緑色に見える唯一の星」という牙城はもろくも崩れ去るのか~?

 さっそくウェッブの書物を見てみることにしましょう。 

資料5〈イギリスの天文学者、トーマス・ウィリアム・ウェッブ 1807-1885〉
1859年出版『Celestial Objects for Common Telescopes・一般的な望遠鏡で見る天体』

・β星は目立つ星の中では非常に珍しく美しい淡い緑色をしているので二重星の項目に付記する。
・β星の色は濃紺のようなダークグリーンだが、肉眼では色を見ることはできない。
・日照時間が長く日没が遅いため、この星座の天体を探すのに苦労する。

φ(.. ) ふむ、はっきり「肉眼では色を見ることはできない」と書いてますね。ウェッブは小さな天文台を建てて、3.7インチ (94 mm)屈折望遠鏡や9-1/3インチ (225 mm) の反射望遠鏡で観測を続けて1859年に『Celestial Objects for Common Telescopes」を出版。この本は望遠鏡の使い方と望遠鏡で何が観測できるかの詳細な説明が書かれていたので世界中のアマチュア天文学者の標準的な観測ガイドとなったようです。それだけにここに記載されているβ星の説明はウェッブの観測に基づいた信頼できる記述であり、なにより「二重星」の欄に追記しているという事実がこのβ星の特異性を現していると言えます。


-総論-
・以上のことから、Libra-β星は望遠鏡を使えば濃紺のようなダークグリーンに見える星であるが、肉眼(naked-eye)で緑色に見える星ではないと結論付ける。
・ただし、β星は変光星だった可能性もあるので、ウェッブが見たβ星の色が現在のβ星と同じ色であるかは分からない。野尻抱影は「双眼鏡では、はっきり緑いろの星を現す」と記述しているので昭和16年までは容易に緑色を感じることができたのだろう。
・今回の調査では ウェッブより以前にLib-β星の緑色に気付いた人がいたかどうかはわからなかったが、ウェッブの観測が今に伝わる「Lib-β星が緑色に見える唯一の星」のルーツだと言えるだろう。

〈関連ブログ〉
みどり色に見える星のナゾ!?(仮説~その1) 2024.5.29
みどり色に見える星のナゾ!?         2022.7.29

みどり色に見える星のナゾ!?(仮説~その1)

2024年05月29日 | ☆星見隊
それは月面を撮影しようとした5月22日のことでした。薄明が終わる頃に外に出て月を見ると南東の空低いところに月があったので撮影は南の空に来てからだな~と思って南の空に目をうつすと…

 はて、緑色がかった星が見えます。一瞬、てんびん座のβ星「ズベン・エスカマリ」か?と思ったのですがこんなに明るく見えるはずはありません。そう、この星は春の大曲線の南端にあるスピカです。

 スピカと言えば「真珠星」と呼ばれるように白色を代表する星です。ありゃ~、ついに加齢で目がおかしくなったか~と思ったものの部屋からNIKON 7×50の双眼鏡を持ち出して覗いてみると…

 ほひょ、これはどういうことでしょう?確かに緑色がかって見えます。双眼鏡で見ると緩やかに瞬いているのでカラフルな色も見えますが、中心付近は白色で星の周囲が緑色になっています。

 比較のためアルクトゥールスを見るといつもの橙色に見えています。スピカだけが緑色を周りにまとっています。スピカの高度は30°と40°の間くらい… 肉眼と双眼鏡で何度も確かめたのですがたしかに緑色をまとっているように見えます。何とも不思議です…

 これは、ひょっとしたら月齢14の月明かり、または薄明の時間であることが関係しているのだろうか?という思いが頭をよぎったが、その時は月面撮影を控えていたので妖しげな緑色のスピカについてはモヤモヤとしたまま脳内フォルダへの保存となりました。


その数日後、SNSでたまたま「プルキンエ効果」と「ブルーシフト」の違いとお月様について、という興味深いポストを見かけて、この「プルキンエ効果」という現象については知らなかったのでいろいろ調べてみるとおもしろいことが分かりました。

  PanasonicのHPに「プルキンエ現象」についてわかりやすい解説がありました。

…ということで分かりやすく言うと「夕暮れや夜間になったときに赤い花は暗闇にかすむように暗く見えて青色の花はより明るくみえて目立つようになる現象」で「暗くなると青い光がよく見えるようになる」ことのようです。

 ここで注目したいのは明所視、薄明視、暗所視における桿体と錐体の働きによる色の見え方です。
・明所視-網膜にある三種類(S・M・L)の錐体が働いて物の色がはっきり分かる状態。
・薄明視-網膜にある桿体と錐体の視細胞が同時に働いていて物の色がいくらか分かる状態。
・暗所視-主に桿体が働いていて物の明暗だけ分かる(色は分からない)状態。

 ここで注目すべきは、薄明視は「網膜にある桿体と錐体の視細胞が同時に働いていて物の色がいくらか分かる状態」だが、明所視に比べて「絶対視感度(Im/W)」が最大で約2.5倍も強いという点です。

 つまり目に入ってくる光のエネルギーが昼間見るよりときも約2.5倍も強い(=眩しい)ことになり、その波長が青色に寄っているということです。

 そのため、暗い部屋でテレビを見たり夜に外でPC画面見たりすると桿体が作用するので明るい(錐体だけが作用している)ところで見るより2.5倍の光を吸収して目が疲れる、ということです。たしかに、惑星撮影をしているときのPC画面輝度はかなり落とさないと目が痛くなりますよね。

 桿体細胞の視感度が一番高いのは波長507nmです。これは色で表すと「緑色」になりますが、桿体細胞は色を認識しないので緑色だという信号を脳に送ることはありません。

 ただし、薄明視(夕暮れや月明かりがあるとき)では桿体と錐体の視細胞が同時に働いているので(薄明の明るさによって感じやすい色は変わりますが)波長が450nm~550nmの色を感じることができるということになります。

 波長450nm~550nmは青色~青緑色~緑色です。なので日没後の薄明が始まると、木の葉の緑がはっきり見えるようになり、それがやがて青色にシフトして、空一面が濃い青色になって、やがて夜の空の色になっていくということです。これがプルキンエ現象です。

 かの宮沢賢治は「心象スケッチ 春と修羅-風景観察官-」で林の青緑色が濃いことの表現にプルキンエ現象という言葉を用いています。さすが、科学者宮沢賢治ですね。

 また、戦国時代から安土桃山時代にかけての茶人・千利休は茶室において浅葱色(あさぎいろ)の足袋を好んで身に着けていた(速水宗達(1740~1809)の「喫茶明月集」に記されている)そうですが、これは利休の理想としていた薄明視に近い状態の明るさの茶室では青色の足袋が鮮やかに浮かび上がって映える効果を認識していたからだろうと言われています。

 プルキンエ現象が解明されたのは1825年ですが、その約200年前に千利休は体感的にプルキンエ現象を知っていたということなのでしょうね。

さて、ここで話を戻して、みどり色に見える星のナゾ!?についての晴れスタ的~仮説です。
〈仮説1〉てんびん座のβ星「ズベン・エスカマリ」が緑色に見えるのは薄明の時間または月明かりがある時間のようにプルキンエ現象が発生したことが要因のひとつではないだろうか。

 う~む、仮説としては言い切ってないところが何とも煮え切らないが、プルキンエ現象の影響なら全ての星が緑色にみえるのでは?という疑問もあるし、そもそも星の観望はフツーはプルキンエ効果のない薄明終了後だよね…と言う声も聞こえてきそうなので、あくまでも一つの仮説です。 (^^ゞ

 実は、5月25日にこの仮説(スピカが緑色に見えたことも含めて)を検証すべく、日没直後から椅子にドッカリと座って薄明終了までじっくり観察したのですが、スピカもてんびん座のβ星も緑色に見えることはありませんでした。どして?

 スピカが緑色に見えた5月22日は薄明終了前に14番目の月が出てたので薄明+月明かりだったことが5月25日と違うところですが、これが関係しているかは不明です。→調査継続中!

 さて、最後に紹介するのはゴッホの「星月夜」です。

 この絵はゴッホが精神療養のため入院していた修道院の窓から見えた風景を描いたといわれていますが、実際は入院していた病室からはこの村が見えないので別の場所でスケッチした村の風景を引用したか空想上の村だったのではと考えられています。
 
 ただ、ゴッホは星や夜空に対する深い関心を持っていたので月と星と空の色はゴッホの目で見た(感じた)宇宙が描かれているのではと思っています。なにより、この色合いはプルキンエ現象を表したようにも見えるし、今回改めて見ておどろいたのは、星の周りが緑色っぽくなっているところです。

 これが5月22日に見たスピカの色合いにとてもよく似ています。ひょっとしたらゴッホは緑色の星を見ていたのかもしれませんね。


〈関連ブログ〉
みどり色に見える星のナゾ!?
月と木星と土星の接近

冬の星座の散開星団でスターウォッチング!

2024年03月31日 | ☆星見隊
3月29日は午後まで雨降りでしたが夕方から急速に晴れたので冬の星座の散開星団でスターウオッチングをしてみました。

 本日の望遠鏡はSky-WatcherのEVOSTAR 80EDです。焦点距離が600mmのF7.5ですがこれで観望と惑星カメラでの撮影を行います。

〈本日のシステム〉
・眼視システムーEVOSTAR 80ED+アイピース(LET28mm、TPL25mm、TPL18mm)
・撮影システムーEVOSTAR 80ED+ASI290MC+UV/IR Cut、SharpCap - LIVE Stack

〈観望対象リスト表〉
・おおいぬ座α星 - アライメント、ピント合わせ
・おおいぬ座M41- ピント合わせ、テスト撮影、4.9等、視直径39'.80×39'.80
・オリオン座37星団(NGC2169)6.0等、視直径5'00×5'00
・おおいぬ座τ星団(NGC2362)4.1等、視直径6'20×6`20
・とも座M46 - 6.0等、視直径25'30×25'30、NGC2438 - 10.8等、視直径1'.1×1'.1
・とも座M47 - 4.4等、視直径31'10×31'10

 撮影は天文薄明が終了する19時27分から開始です。この時刻のおおいぬ座シリウスの高度は30°で、シリウスのすぐ南にあるM41の高度は25°しかありません。

 望遠鏡をシリウスに向けて見ると、ほほう、さすがシリウスです。とてもキレイに見えますが今日のシリウスはいつにも増してキラキラ瞬いています。気流はあまり良くないようです。では早速M41を導入してみましょう。

 望遠鏡がウイ~ンと少しだけ動いてM41の導入が終わりました。ふむ、M41は視直径が39分で満月より大きいので28mmアイピースの低倍率でちょうどよく見えます。

 ではここで惑星カメラにチェンジです。EVOSTAR 80EDの焦点距離は600mmですがASI290MCの組合せでは写野角が0.5°×0.3°しかありません。この写野角ではM41は画角に収りきれませんがとりあえず撮影して見ました。→photo

 ふむ、M41の全貌は分かりませんがとりあえずは写りましたね。

 本日キャプチャーソフトとして使っているのは SharpCap - LIVE Stack ですが、実際のところ使い方がよく分かってないので本日は習熟も兼ねて撮影の全てがテキトーです。(^^ゞ

 では、テスト撮影はここまでにして早速、本撮影を行うことにしましょう。最初は37星団です。オリオン座はすでに西に傾いていますが、37星団は高く上げたオリオンの右手にあるので高度は49°もあります。まだ余裕で撮影できます。

 37星団(NGC2169)は視直径が5分しかないので低倍率の眼視ではどう見れば37に見えるのかぜんぜん分かりませんでしたが、惑星カメラで撮るとしっかり「37」に見えました。納得の37星団です。

オリオン座 37星団(NGC2169)


 では、次は前回 μ210で撮影して画角に収りきれなかったおおいぬ座τ星団(NGC2362)です。こちらの視直径は6分で37星団とほぼ同じ大きさなので眼視ではちっちゃ!って感じでしたが、惑星カメラでは τ星を中心に微星が取り囲んでいる様子がキレイに写りました。

おおいぬ座τ星団(NGC2362)


 さて次は本日のメインイベント、とも座のM46です。この散開星団は視直径が25分とやや大きめですが、散開星団の中にハーシェルが発見した惑星状星雲NGC2438があるのでとてもフォトジェニックな対象です。

 普通に撮影すれば光害のある市街地ではムリ~な対象ですがLIVE Stack すれば写るはずです。で、こちらは140秒ほどLIVE Stackさせたものですが11等級のNGC2438が淡~くですが写っています。なるほどこれがLIVE Stackですね。ナイス!です。

とも座M46とNGC2438(photo


 さて、こちらはM46のすぐ西にあるM47です。M46とM47の並びは南天の二重星団といった感じですが、M47は微星が集まったM46とは対照的で明るい星がまばらに数個あるのが特徴です。M47の撮影はなぜか露出が30秒だったので露出を十分かけてればもっと星が写ったと思われます。

とも座M47


 M47撮影後に機材を望遠鏡から望遠レンズにチェンジしてより広い視野を惑星カメラで撮影しようとしたのですが対象天体がお隣のアンテナに掛かってきたこととオールドレンズと惑星カメラの相性が良くなかったので撮影会はやむなくお開きとなりました。

 続きは次回と言いたいところですが、さすがに冬の星座ウオッチングは時期的に厳しくなったので、次回は春の星座の二重星と散開星団をウオッチングをすることにしましょう。

しぶんぎ座群流星群 観望記録(1/4)

2024年01月06日 | ☆星見隊
しぶんぎ座流星群の観望記録です。

 極大時刻の1月4日18時に合わせて1時間ほど観望をしましたが目撃はゼロでした~。

2024/1/4 17h59m43s NIKON D810A NIKKOR f10.5mm F2.8 ISO1600 4sec

 撮影した画像を確認したところ1枚だけ流星が写っていたので、ステラナビゲーターの流星出現確率を1000倍にしてシミュレートしたところ流れ星の方向がほぼ合っているのでたぶんしぶんぎ座流星群で間違いないと思われます。

 輻射点はギリ地平線上にあったのですが、やはり低いと流れる数は少ないようですね~。

 1月5日未明の観望は行わなかったのですが、SNSで通常を上回る出現があったと言う情報が流れていたのでATOMCam2を確認したところ1個だけ写っていました。

2024年1月5日04時09分54秒に流れたしぶんぎ座群流星
↓ ステラナビゲーターで再現した04時09分頃のしぶんぎ座流星群

 今年のしぶんぎ座は1月5日01時から03時にかけて明るい流星がたくさんた流れたようですがATOMCam2のモーション検知ではキャプチャーすることができませんでした。

 明るい月があったから検知しなかったということではないようなので今後は連続録画で記録する方がいいようですね。NASハードディスクを設置して転送して確認するのが一番無難ですかね。

 北天カメラの増設も含めてATOMCam2の運用については今後検討することにしましょう。

こぐま座流星群 ATOM Cam2撮影記録(12/22-12/23)

2023年12月25日 | ☆星見隊
12月22日23時~23日02時台に活動レベルが高まる予報が出ていたこぐま座流星群ですがほぼ予報どおりの時間帯で通常より多い出現が確認されたようです。

 流星電波観測国際プロジェクト「2023こぐま座流星群電波観測速報」のグラフを見ると12月23日03時頃(JST)をピークとする出現があったことが分かります。

Ⓒ:流星電波観測国際プロジェクト

 このグラフは電波観測によるものなので必ずしも目撃出現数と一致するものではないようですが、ATOM Cam2の動画記録を見ると確かにそれらしき流星が写っていました。

こぐま座流星群 ATOM Cam2 撮影記録(12/22-12/23)

 数としては突発出現と言えるほど多くありませんが、02時15分から02時16分にかけて3個、03時17分の1分間に2個、03時20分の1分間に2個、流れているのが動画で確認できました。これ以外にもそれらしき発光体がありましたが雲で確認できなかったものは除外しています。こぐま座流星群のHRは1時間で5個なので平年レベルよりは多いことが分かります。


 こぐま座流星群の対地速度は 33km/sで、対地速度35km/sのふたご座流星群とほぼ同じ速度と言われていますが、ふたご座流星群の動画と比べてみるとたしかに流れる速さが似ています。

 ちなみにこちらは対地速度49km/sのこと座流星群ですが、こぐま座群、ふたご座群より若干速いことが分かります。動画で流星の速さを比べるのは面白いですね。



こぐま座流星群の母天体 8P/タットル彗星・周期13.6年
前々回の回帰時に撮影(2008年1月27日近日点通過), 前回の回帰は2021年8月27日, 次回は2035年4月18日

2007.12.30 23:25 NIKON D90 NIKKOR ED 50-300mm F4.5 ISO800 72秒

まぼろしの「アンドロメダ座 流星群」 観望記録(12/3)

2023年12月08日 | ☆星見隊
12月3日未明にアンドロメダ座 流星群の観望に行ってきました~。

 アンドロメダ座群は19世紀後半に母天体である3D/ビエラ周期彗星の崩壊にともない複数回にわたって流星雨レベルの出現が見られたのですがその後は目立った活動がないため今ではまぼろしの流星群と言われています。

 こちらはその時の様子を表した1877年発行のアンティーク図版です。
 
 アンドロメダ座 流星群はとてもゆっくり流れる特徴があるそうですが、この図版はその様子が分かるように描かれていますね。

 その後沈黙を続けているこの群が12月3日04時00分(JST)に1649年のダストトレイルと接近する予報が出ているが、はたして伝説と化した流星雨は再び姿を現すのだろうか? 

 …と、期待に胸を膨らませて観望場所に到着したのはダストトレイル接近予報時刻の1時間前、空は晴れていますが月齢20の月明かりは予想以上に明るく、山並み家並みが肉眼ではっきり見えます。

 アンドロメダ座群はほとんどが暗い流星だという情報もあるのでこの明るさでは眼視はムリでカメラにも写らないのでは…と不安がよぎりましたがとりあえず試し撮りです。

03時10分頃の空の様子

2023.12.3 03h10m33s D810A NIKKOR 24mm-70mm F2.8 f24mm ISO1600 15sec f3.2

 う~む、空が明るいですね~。露出は若干絞ってf5.6にして、シャッタースピードは15秒で連続撮影を開始することにしましょう。さあ、あとはチェアーに座ってお気楽観望です。

03時20分頃の様子

2023.12.3 03h21m56s D810A NIKKOR 24mm-70mm F2.8 f24mm ISO1600 15sec f5.6

 ふむ、しずかな夜です。流れ星が空を横切る気配がまったくありません。いや、ひょっとしたら流れているけど見えないだけかもしれません。もう少し待ちましょう…。

03時30分頃の様子

2023.12.3 03h32m36s D810A NIKKOR 24mm-70mm F2.8 f24mm ISO1600 15sec f5.6

 あらら、雲です。撮影を始めて20分を過ぎた頃から西空の雲が押し寄せてきました。雲はみるみる空を覆い、3時40分には北の空は雲で覆われて星が見えているのは東の空だけになってしまいました。

2023.12.3 03h37m56s D810A NIKKOR 24mm-70mm F2.8 f24mm ISO1600 15sec f5.6

 まもなく東の空も雲に覆われることは間違いないことですが、一縷の望みを託してカメラを東の空に向けて連続撮影の再スタートです。

03時38分頃の東の空の様子

2023.12.3 03h38m28s D810A NIKKOR 24mm-70mm F2.8 f24mm ISO1600 15sec f5.6

 ところが、あっというまに東の空も雲に覆われたため撮影は5コマほどで終了です。トホホ… なんと終わってみれば撮影をしていた時間はわずかに30分間だけでした。

 かくしてダストトレイル接近時刻の04時を待たずして観望会は強制終了となり、流星を眼視で確認することはまったくできませんでした。後は自宅に帰って撮影画像の確認です。

 で、自宅で連続撮影した画像を一コマずつくまなく探したのですが北の空で流星が写っている画像は1枚もナシ。東の空もあるわけないよな~と思いながら見ていると、

 ラストショットに流れ星らしき光跡が写っていました。はて?これは流れ星でしょうか。時間的に人工衛星ということも考えられるので東の空で撮影したほかの画像を調べてみると…

2023.12.3 03h40m36s D810A NIKKOR 24mm-70mm F2.8 f24mm ISO1600 15sec f5.6

 なんと同じような光跡がたくさん写っています。しかも、東の空で撮影した5コマの全てに、それもほぼ同じ場所で… なんじゃ、こりゃ~、え?、これが… 今話題のスターリンク衛星フレア!?


こちらは東の空で撮影した5コマを比較明合成した画像です。ご覧のようにほぼ同じ場所でたくさんの「ひっかき傷?」が写っています。写っている高度は5°~10°の間といった感じです。

 ここ最近、SNS上で「日没後の北西の空と日出前の北東の空に、流れ星のような光跡が同じ場所でたくさん写っている」という書き込みが話題になっていますが、それはスターリンク衛星のフレアによるものだろう…ということが言われています。

 詳しいメカニズムはよく分かりませんが、軌道上のスターリンク衛星の太陽電池パネルは「日没後の北西の空」と「日出前の北東の空」の特定の位置でフレアを起こす現象があるようです。

 上記5コマの撮影時間は128秒ですが、その間に少なくとも10個のフレアが写っています。月明かりがあるにも関わらず…です。これはいかがなものでしょう?

 現在軌道上にあるスターリンク衛星は約4600機で、最終的には2020年代中頃までに総数約12,000基の人工衛星を展開する計画なので、この「空のひっかき傷」が今後さらに増えることは確実です。

 もはや、銀河鉄道が見えた~と喜んでいる場合ではないような気がしますが、数年後の夜空はどのようになっているのでしょう。気軽にスターウオッチングを楽しめる夜空であってほしいですよね。

アンドレアス・セラリウス「大宇宙の調和」

2023年08月22日 | ☆星見隊
先日のこと、部屋の片付けをしていたところ何やら古めかしい筒を発見… 
 包まれている物を引っぱり出して開いてみると、ほほう、ポスターが4枚ほど入っています。ふむ、これはかなり昔に頂いたものですね~。その存在をす~っかり忘れてました。 (^^ゞ

 で、こちらが、その中の1枚 アンドレアス・セラリウスの「大宇宙の調和」北天星図です。オリジナルは1660年に出版された版画図ですが、こちらはSalt Lake CityにあるHansen Planetariumで1982年に作成した復刻版です。


  ↑ この状態で保管されていました~。(いや、ほったらかしてた… が正しいですね)


 さて、この星図、芸術的な美しさがあってとてもキレイなのですが、じ~っくり見ると、今とちがうところがたくさんあって… 突っ込みどころ満載の星図です。

 ということで、今回はアンドレアス・セラリウスの「大宇宙の調和・北天星図」を晴れスタ的に深掘りしてみました~。

深掘りポイントその1
「星図が裏返し! 星座が神様の視点で描かれている!?」
 この星図、よく見るとしし座が左を向いていて、その左にかに座、ふたご座があります。そう、この星図はすべての星座絵が裏返しになっています。なぜ空を見上げた時の向きにしないのだろう? と誰しも疑問を抱くところですが、その理由は、それが当時の「星図の流儀」だったからです。

 当時の星図は天球上の恒星の位置を示す天球儀に描いていたので、星図を天球の外から眺めるように描くのが主流となっていました。1729年に刊行されたジョン・フラムスティードの星図・天球図譜以降は多くの星図が空を見上げた向きで作られています。

 ジョン・フラムスティードは「星座を正面から描かないのはプトレマイオス時代からの流儀だが、それが無用な混乱の元になっているので(1603年にバイエルが刊行した)「ウラノメトリア」の星図表示法を正したい」という思いを持っていたらしく、それがフラムスティード星図を刊行した動機のひとつだったと言われています。


深掘りポイントその2
「みつばち座、こがに座、ヨルダン座ってなんですか? 聞いたことないんですけど…」
たしかにこの3つの星座は現代の88星座に残っていませんがそれぞれ由緒正しき?歴史があるようです。そのヒストリーを紐解いてみましょう。

 エントリー№1「みつばち座(Apes)」
 「みつばち座」が星図の歴史に初めて登場するのは1603年。バイエルが「ウラノメトリア」で南天のはえ座を「みつばち座(Apis)」と誤って紹介したことに始まる。その後、1612年にオランダの天文学者ペトルス・プランシウスがバイエルが誤って命名した南天の「みつばち座(Apis)」を本来の名前である「はえ座(Muica)」に戻し、それと同時におひつじ座の北側にある4つの星を使って「みつばち座(Apes)」作ったことで北天の「みつばち座(Apes)」が誕生した。ここから「はえ座」を巡る数奇な運命が始まる。
 1624年にドイツの天文学者ヤコブ・パルチウスが北天の「みつばち座(Apes)」に「Vespa(すずめばち)」と記したことからこれ以降は「すずめばち座(Vespa)」となったが、1690年にヨハネス・ヘヴェリウスが「はえ(Musca)」と名付けたことから、南天にある「はえ座(Musca)」との区別が付かなくなり混乱が発生する。しかも、ヘヴェリウスは名前は付けたが星座としてはカウントしなかったため正式な星座ではなくなるという事態が発生! そのため、それ以降は南天の星座としての「はえ座 Musca」と北天の星座絵だけの「Musca」が天球図に描かれることに…。
 この時代は約100年間続いたが、1801年にドイツの天文学者ヨハン・ボーデが刊行した星図「ウラノグラフィア」で北天の昆虫を「Musca(はえ)」、南天の昆虫を「Apis(みつばち)」と記したことで再び混乱が発生!、なんと200年の時を経て南天星座に再び「みつばち座(Apis)」が記されることになった。
 その後、1822年にイギリスの教育者アレクサンダー・ジェミーソンが出版した星図「Celesyrial Atlas」で北天の昆虫に「北のハエ」を意味する「Musca Borealis」と記したことで正式に「きたばえ座」となったのだが、なぜか南天の昆虫には名前が記載されてなかったため南天のハエ座(みつばち座?)の存在があやふやに…。そんな混乱の中、1835年にはアメリカの教育者イライジャー・バリットが出版した星図「Celestial Atlas」で、南天の昆虫に「インドのハエ」を意味する「Musca Indica」と記し、北天の昆虫の方を「Musca」としたため「はえ座」を巡る騒動は更に続く…。

 この混乱に終止符を打ったのがイギリスの天文学者フランシス・ベイリーだった。19世紀初めのイギリスの天文学者フランシス・ベイリーが編纂し、彼の死後の1845年に刊行された星表で100以上あった星座が87個に整理されて、そのタイミングで北天の昆虫は駆除?され、南天の「はえ座」が残されて名前も「Musca」に確定した。

 ふう、天界にある唯一の昆虫星座である「はえ座」にこのような約200年も続いた混乱劇があったとは驚きですね。セラリウスの「大宇宙の調和」北天星図は初期の「みつばち座(Apes)」が描かれているのでプランシウスの天球儀を元に描かれたものなのでしょう。

(注:きたばえ座(旧みつばち座)は1679年にロワーエが、後援者であるフランス国王ルイ14世を称える(忖度?)ために「ゆり座(ブルボン王朝の紋章に使われていたユリの花の意匠がモチーフ)」と命名していますが、ハエ座ヒストリーとは系譜が違うのでここでは割愛しています。)


 エントリー№2「こがに座(Cancer minor)」
 「こがに座(Cancer minor)」はペトルス・プランシウスが1613年に新設した8つの星座(きりん座、いっかくじゅう座、こがに座、みつばち座、チグリス座、ヨルダン座、おんどり座、南の矢座)のひとつとしてプランシウスの天球儀に登場しますが、なぜか支持されなかったらしく、1624年のヤコブス・パルチウス星図では「こがに座」の姿が早くも無くなっています。

 アンドレアス・セラリウスの「大宇宙の調和」は1660年出版ですが、「こがに座」が描かれていることからプランシウスの天球儀を元にしているということがよく分かりますね。それにしても、この時代のかに座はどーみてもカニというよりはエビ寄りの姿(ロブスター系?)をしていますよね。

 これは推測ですが世界で最初に印刷された星図と言われている1515年出版の「デューラー天球図(プトレマイオスの48星座を描いた古典星図)」のかに座がエビ系だったので初期の星図はこの形で描かれていたものと思われます。

↑ 1515年に出版されたデューラーの星図(北天)

 さて、最後はヨルダン座です。

 エントリー№3「ヨルダン座(Iordanis fluv)」
 「ヨルダン座(Iordanis fluv)」は前出のペトルス・プランシウスが1613年に新設した星座のひとつで、ヨルダン川をモチーフとして作られています。ヨルダン座は1624年のヤコブス・パルチウスの星図や1679年のオギュスタイン・ロワーエの星図でも描かれていますが、1690年に刊行されたヘベリウスの星図から描かれなくなりました。

 …というよりは、ヘベリウスがヨルダン座があった場所にりょうけん座、やまねこ座、こじし座を新設したため、ヨルダン座は忘れ去られることになったというのが正しいヒストリーです。ヘベリウスは星座間の空白粋を埋めるために10個の星座を新設したと思っていたのですが、ひとつの星座を消していたとはまったく知りませんでした~。

*ヘベリウスが新設した10個の星座こぎつね座、こじし座、たて座、とかげ座、やまねこ座、ろくぶんぎ座、りょうけん座、ケルベルス座、しょうさんかく座、マエナスルさん座

 このように長い星図の歴史の中でもごく初期の短い期間にだけ描かれていた「みつばち座、こがに座、ヨルダン座」が載っているアンドレアス・セラリウスの「大宇宙の調和」北天星図は星座ヒストリーを語る上では貴重な資料と言えますね。さて、セラリウスの「大宇宙の調和」北天星図にはもうひとつ注目すべき点があります。

 それは、星座と一緒に世界地図が載っているところで~す。

深掘りポイントその3
「1660年のニッポン(Japan)には… 東北と北海道が無い!?」

 アンドレアス・セラリウスの「大宇宙の調和」北天星図はご覧のように世界地図の上に星座絵が描かれています。フツー天球儀は星座だけが描かれていて、世界地図は当時としても地球儀に描かれていますが、この星図では重ね合わせるというとてもオシャレな描き方をしています。

 今回見つかったポスター4枚の中には1660年当時の世界地図「THE WORLD IN 1660」というのもあったのですが、そこに記載されている日本列島には東北地方がないにもかかわらず「Aquita(秋田?)」という地名が載っています。

 そのほかに載っている日本の地名は京都付近の「Meaco(都?)」と東京付近の「Iedo(江戸?)」だけなので、なぜ、京都、江戸と並んで「秋田(Aquita)」が記載されているのかまったく謎です。Aquita の地名はよく見ると太平洋側に記されているので秋田以外の地名という可能性もあるかな…

 最後は星図の話ではなくなってしまいましたが、アンドレアス・セラリウスの「大宇宙の調和」北天星図は深掘りするとまだまだ発見がありそうですね。今回見つかった4枚のポスターの中には南天星図もあったので、そちらも後日紹介したいと思いま~す。

きりん座流星群 観望記録(5/24)

2023年05月25日 | ☆星見隊
5/24はみごとな快星になったのできりん座流星群の観望に行ってきました~。

 きりん座群は突発的に出現するまぼろしの流星群ですが今年は日本時間の21時40分と22時07分に1903年と1909年に放出されたダストトレイルとの接近予報がでている注目流星群です。

 この予報が当たればまぼろしのきりん座群を日本で初めて見ることのできる千載一遇のチャンスとなるのですが、はたして出現するのでしょうか? 期待が高まります。ワクワク…

 今回の観望地は泉ケ岳スキー場の大駐車場です。泉ケ岳といっても仙台市中心部から車で30分の場所なのでソラノクラサはそれなりです。自宅よりはいいけど…といった程度ですね。

 試し撮りで撮った北の空はこんな感じでした。

2023/5/24 20h22m07s D810A NIKON VR24-70mm f/2.8 ISO2500 f24mm F3.2 10sec

 さて、本日の撮影計画ですが、きりん座流星群は6~7等の暗い流星が多いようなので感度をISO3200まで上げて露出30秒で連続撮影します。この露出では背景がかなり明るくなりますが暗い流星を捉えるためには見た目は度外視です。

 撮影は21時20分から始めました。この時間は飛行機と人工衛星がたくさん通過していきます。本日の薄明終了時刻は20時38分です。

2023/5/24 21h20m00s D810A NIKON VR24-70mm f/2.8 ISO3200 f24mm F3.2 30sec

 う~む、静かな夜です。星が流れる気配がまったくありません。こちらは1903年放出ダストトレイルとの接近遭遇予報時刻の21時40分の画像ですが流星は一つも写っていません。写野の外でも見渡した限りでは一つも見えませんでした。(photo

2023/5/24 21h40m24s D810A NIKON VR24-70mm f/2.8 ISO3200 f24mm F3.2 30sec

 いやな予感です。きりん座群はおろか散在流星もただの一つも流れていません。時間だけが静かに過ぎて、西の空で賑やかに輝いていた月や金星たちもだいぶ低くなりました。

 こちらはもう一つの接近遭遇時刻22時07分頃の画像です。流れ星らしきものはまったく写っていません。眼視でもまったく見えませんでした。

 ふ~む、まぼろしのきりん座群は、結局まぼろしで終わってしまうようですね…。

2023/5/24 22h07m32s D810A NIKON VR24-70mm f/2.8 ISO3200 f24mm F3.2 30sec

 気温が6度まで下がり耐寒的に限界なのでここでやむなく切り上げることにしました。せっかくなので適正露出で記録写真を撮って帰りましょう。それにしても寒すぎます…。

 はじめは連続写真と同じ構図で…

2023/5/24 22h08m57s D810A NIKON VR24-70mm f/2.8 ISO3200 f24mm F3.2 15sec


 次は北斗七星とこぐま座の間にあるきりん座を中心として…

2023/5/24 22h09m21s D810A NIKON VR24-70mm f/2.8 ISO3200 f24mm F3.2 15sec

 最後に、地上の木々を写して星景写真風に写して、以上で終了で~す。

2023/5/24 22h11m03s D810A NIKON VR24-70mm f/2.8 ISO3200 f24mm F3.2 15sec

 で、ここからは家に帰ってからの出来事です。まったりとしながらどっかに間違って写ってないかな~と撮影した画像を眺めていたところ… ワオ! 最後のラストフォトに明るい流星らしきものが写っています! なんじゃこりゃ~! まぼろしのきりん座流星群か~?(photo) 


 さっそく画像に星図を入れて確かめてみました。きりん座群の放射点はキリンの長~い首のほぼ中間にあります。流れ星をたどると首の中間付近の放射点と一致するように見えますが…どうでしょう?

 確信は持てませんがまぼろしのきりん座群を捉えた写真かも…です。残念ながら肉眼で見ることはできませんでしたが、ラストフォトに写り込んでいたことは超ミラクルです~。(photo

 きりん座群は流星群の中でも極めてゆっくり流れる「ふわっと流星群」なのでいつかこの目で見てみたい流星です。いつの日になるか分かりませんが、次回のきりん座流星群との遭遇を楽しみに待つことにしましょう。


こと座流星群 撮影記録

2023年04月30日 | ☆星見隊
 4月24日のISSウオッチング時にATOMcam2がこと座流星群を捉えたことから、ひょっとしたらほかにも流星が捉えられているのでは?…と思ってATOMcam2の記録データを確認してみると、

 なんと、クラウド上にモーションキャプチャーで捉えた流星が2個、SDカード上には37秒間の間に2つの流星が流れている様子が記録されていました~。

 こちらは4月23日01時16分33秒に流れたこと座群です。

 で、上記の動画はクラウド上にモーションキャプチャーで記録されたものなので12秒間しか記録されていませんが、この流星の27秒前に散在流星が流れていてその様子がSDカード上に記録されていました。

 4月23日1時16分に流れた2つの流星(散在流星とこと座群)

 この動画には1時16分06秒に散在流星が1個、その27秒後の01時16分33秒にこと座群が1個流れる様子が写っています。

 このほかにはクラウド上に4月24日01時38分37秒に流れたこと座群が記録されていました。

 4月24日01時38分37秒に流れたこと座群


 そのほかにATOMcam2 が捉えた動画として、ISSウオッチングの直後に捉えた4月24日03時50分58秒の流星があるので、合計で4個のこと座群を捉えたことになります。(スマホ上での目撃を入れると5個)

 4月24日3時50分58秒に出現したこと座群流星

 これまで、光害が強い自宅庭でATOMcam2 が流れ星を捉えたことはなかったのですが(チェック漏れはあるとは思いますが)今回複数の流れ星を捉えたことは驚きに値します。

 その理由としては、2022年12月8日のブログ「見たい天体現象・突発出現が期待される流星群」で「こと座群は月明かりの影響がないので早朝には出現数が増加する(空の条件次第ではHR=20になる)予報がでている」と紹介したように空が暗かったことが今回の記録の多さに繋がったと考えられます。

 ATOMcam2 の動画は解像度が悪くてざらつきがかなりありますが、感度が高いこととなにより実際の流星の様子(こと座群は高速流星)が分かるので、これもありだなと思いました。

 光害の強い自宅庭でATOMcam2を使いこなすにはまだまだ未知な部分がたくさんありますが、これを機にいろいろ試してみようと思ってま~す。


みどり色に見える星のナゾ!?

2022年07月29日 | ☆星見隊
 てんびん座のβ星「ズベン・エスカマリ」は全天で
唯一、肉眼でみどり色に見える星と言われていますが、

 科学的には緑色に見える恒星は夜空には存在しないので、
なぜ、この星だけが緑色に見えるのかは今もってナゾです。

 …という話は、昔から知ってましたが、実際に確か
めたことがなかったのでウオッチングしてみました~。

 はたして、ホントにみどり色に見えるのでしょうか?

 ウオッチングしたのは7月1日の22時過ぎ…
てんびん座はすでに南西の空に移動していました。

 ズベン・エスカマリは3等星なので光害のある自宅
からは肉眼ではかろうじて見える程度です。

 ということで、肉眼はあきらめてまずは双眼鏡で色確認です。
ふむ、まったく色はありません。フツーの白い星です。

 次は望遠鏡です。μ210に25mmアイピースを付けて倍率は約100倍ですが…
おお!? こ~れは… シンチレーションで激しく瞬いていますが、

 たしかに、みどり色っぽい…彩りです。スペクトル型の分類上は
青白い星(B8型)ですが、見た目からはみどり色を感じます。

 これはオドロキです。予想以上にみどり色です。しか~し、
期待値が脳を錯覚させていることも考えられるので、

 惑星カメラで撮影してみました~。AS!3でスタックしてますが、
色味は全くいじっていません。比較のためアンタレスも撮影しました。(photo
背景は2020年7月にネオワイズ彗星遠征で出かけた五里合海水浴場で撮影した画像です。
2020/7/17 21h38m46s D810A f24mm ISO3200 F2.8 15sec 

 写真ではズベン・エスカマリが青白く写っていますが、特筆すべきは撮影時のヒストグラムが緑レベルが一番大きくて、青と赤が緑より一段低いレベルでキレイに並んでいたことです。

 言い換えると、グラフが緑を頂点とした三角屋根状態になっていたわけで、これまでこれほどキレイに並んだグラフは見たことなかったので、なにか緑色に見える理由と関係があるのかもしれません。

 実際に緑色を強く発している恒星はいくつかありますが、緑色だけでなく赤色や青色なども発しているため人間の目では緑に見えず黄色に見える(太陽もそのひとつ)というのが、緑色の星が夜空にない理由だそうです。

 ひょっとしたら、てんびん座β星「ズベン・エスカマリ」は絶妙な色バランスで、唯一、人間がみどり色を感じる恒星なのかもしれませんね。

 7月1日夜は惑星撮影が控えていたので、てんびん座β星の深掘り撮影はできなかったのですが、翌日以降は「ここは金星ですか?」と言いたくなるほど曇り空が続いて、追跡調査ができていません。

 8月になるとてんびん座は西の空に傾いてしまうので、みどり色の星探訪は来シーズンのお楽しみですね。それにしても今年は史上最も早い梅雨明けのあとに、梅雨前線シーズン2がやって来て、星空がほとんど見えない日が続いています。夏空はいつになったら来るのでしょうかね~?