大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年11月22日 | 創作

<3235>  写俳百句  (16)   リンドウ(龍膽)

                             龍膽の花咲く里の過疎化かな

                     

 自生するリンドウ(龍膽)を大和(奈良県)の地に見れば、平地に近い棚田があるような里山周辺から標高一八〇〇メートル前後に及ぶ山岳まで幅広く分布し、草地から切り立った崖地の岩場まで、日当たりのよいところに見える。ほかには湿地に生える葉の細いホソバリンドウ(細葉龍膽)、紀伊半島の南端部の山地に自生地が限られるアサマリンドウ(朝熊龍膽)、春に開花するフデリンドウ(筆龍膽)がある。みな先が裂けた青紫色の筒状花を咲かせ、ときに白色種も見られるようであるが、白色の自生種にはまだ出会っていない。

 普通のリンドウは晩秋から初冬の今の時期、山里を歩けば、棚田の畦などで、枯れ始めたほかの草に混じって暖かな日差しを受け、咲いているのに出会える。山岳では岩場に生えることが多く、花は夏の終わりごろに見られる。アサマリンドウは三重県の朝熊山(あさまやま)で最初に見つかったことによりその名があるリンドウで、珍しい。私は十津川村の果無峠越えで出会った。春咲きのフデリンドウは奈良盆地周辺の青垣の山で見られるが、減少傾向にあり、奈良県では絶滅危惧種にあげられている。

 昨日、斑鳩から平群の山里に出かけ、里山の棚田の周辺を歩いたが、リンドウは一箇所でしか見られなかった。畦がコンクリートで固められ、人の手が入らず、放棄された田んぼが増えるに従って、植生の変化も見られるようになり、日当たりを好むリンドウなどは徐々に姿を少なくしていると思われた。それはある意味過疎化に連動しているようにも感じられるところがり、冒頭の句になった。 写真は枯れ始めた草の中で、日差しを受けながら咲くリンドウの花(斑鳩の里)。