<3428> 写俳百句 (60) ビワの実
枇杷の実に枇杷の実の価値稔りたり
ビワの花と果実は教訓的であると、この花と実を見るたびに思う。褐色の綿毛が密生する萼に包まれた白い五弁花が寒さに向かう十一月から寒さが厳しさを増す一月にかけて見られる。殊に底冷えのする日、この花に出会うと、何故こんな寒い時期に花をつけるのかという気がする。花の辺りをうかがっても花粉を運んでくれそうな虫の姿など見受けない。ところが花には果実に似た甘い独特の匂いがある。これは花が花粉を運んでくれる虫を必要としている証に相違ない。だが、それにしても、この時期にと思う。
ところが、寒い冬を凌いだ花はその辛抱の甲斐があって夏のこの時期の黄橙色の果実の稔りに至る。まことに麗しいその果実を見上げていると、冬の花の寒さを凌いだ結果であるということが改めて思われる。という次第で、写真に収め、一句を思いついた。夏のこの時期はほかにもいろんな果物が姿を現わして来るが、ビワの黄橙色の果実は控え目ながら確かさをもって店頭の一隅を占め、その姿を見せる。 写真は黄橙色の果実を生らせる野生のビワの木。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます