<1311> 春の黄色い花
川筋を 一面黄に 染めゐるは 外来の花 西洋芥子菜
春は黄色い花が目につく。中でもポピュラーなのはタンポポで、これはどこでも見られ、知らない人はいないはずである。しかし、その種に話が及ぶと、紛らわしく、見分け難いということがある。ほかには菜の花の類が黄色い花の代表格で、春を彩るが、これも種に及ぶと紛らわしく、一言では言えないところがある。
「菜の花の中に城あり郡山」(森川許六)と句に詠まれたごとく、江戸のころから戦前のころまで、大和では菜の花のアブラナが平野を一面に染めるほど作付けされていた。これは菜種から灯火用の種油を採るのが主な目的で、花は春の風物詩のようになっていた。今は農作物の作付けに変化が及び、菜の花畑がどこまでも広がるような光景は見られなくなった。これは電灯の普及などによるもので、時代の要請が言えるところである。
こうして田畑の菜の花が少なくなったのに反比例するように、近年、菜の花の仲間のセイヨウカラシナが勢力を拡大して川筋などを黄色に染める現象が見られるようになった。これは香辛料のからしにするカラシナの外来種で、明治以降、我が国に入って来たものが野生化したものである。
思えば、時代はグローバル化に向かい、いよいよ海外との交流が盛んになって、植物のみならず、人間の世界、即ち、外国人の姿も多く見られるようになったことがあげられる。奈良県は観光県で外国人が多くやって来るが、近年、その姿に変化の見られることが思われる。増加していることに加え、最近の外国人観光客は、インターネットの情報にもよるからか、行動範囲が広く、ツアーなどの集団のみならず、個人的に行動する旅行者も増え、いよいよグローバル化の様相を呈して来た観がある。 写真は川筋一面に花を咲かせるセイヨウカラシナ(大和川の河川敷で)。
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ところで、最近、各地の社寺において油のようなものが撒き散らされるという奇妙な被害報告がなされる事件が奈良や京都を中心として各地に広がっている。犯行が短時日に多くの場所に及んでいることと、社寺に集中して起きていることから犯行は単独ではなく、複数によると考えられ、社寺ばかりに被害が集中していることから宗教上のいやがらせと見ることが出来る。このような犯行例はいままでにないことで、何か気色の悪いところがある。
それも夜間誰もいないような時間帯にやるのではなく、ほかの観光客に紛れて犯行に及んでいることで、一層不気味さを感じさせる。思うに、この事件はいたずらの範疇の事件であろうが、そんなに軽くはないような気がする。言わば、テロのような手口であるから、被害はさほどでないにしても軽視は出来ないところがある。社寺のような場所で、警備は如何なものかとも思われるが、対策を取る必要があるのではないかというふうに思えるところのある事件ではある。