大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2011年11月29日 | 写詩・写歌・写俳

<88> 長 谷 寺 紅 葉
        観音の 大悲の山の 紅葉かな
  「いくたびも まゐるこころは はつせでら やまもちかひも ふかきたにがは」と御詠歌に詠われ、 「初瀬(はせ)の観音さん」 で親しまれている桜井市初瀬の長谷寺は真言宗豊山(ぶざん)派の総本山で、朱鳥元年(六八六年)天武天皇のために道明上人によって開基されたと言われ、 神亀四年(七二七年)に徳道上人が聖武天皇の勅命により十一面観世音菩薩を祀ったことから観音信仰の根本霊場になった。
  本尊は度重なる災禍により失われたが、 その都度作り直され、現在の十一面観世音菩薩立像は室町時代の作で、高さが 一〇.一八メートルにも及ぶ見上げるほどの大きさを誇り、木造では我が国最大の仏像として知られ、右に錫杖、左に水瓶を手にする長谷寺様式の観音像として重要文化財に指定されている。
  長谷寺は 西国三十三観音霊場八番札所で、 サクラやボタンの 名所としても 名高く、「花の御寺」とも称せられ、四季を通じて花を欠かさないお寺であるが、春から夏にかけてのサクラやボタンの時期は殊に華やかで、境内は満員の盛況を見せる。このように、長谷寺は花の御寺としても親しまれているが、秋は紅葉がよく、大和では紅葉(もみじ)の名所にもなっている。 殊に本堂から五重塔を望む眺めは春の花に負けないほどの彩りを見せ、みごとである。

                    
  これは記紀、万葉の時代から「隠口(こもりく)の泊瀬山」 と枕言葉にも示され、御詠歌にも見えるように、深山幽谷の地として、当時から初瀬が紅葉の適地であったことを覗わせるものである。 写真は本堂の舞台から五重塔に向かって撮影したもの。