大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2011年11月22日 | 写詩・写歌・写俳

<81> 果  実 (5)
         果実は生の象徴
         真に基づくところ
         天地の間に成る
         果して これは
         私たちに通じる

             陽 清 始 新 発 暑 順 美 有 吉 喜 楽 実 真 前 硬 好   愛 進 可 長 満 笑   光 明 動 表 開 正 賢 得 上
             聖 善 強 貴 自 大 多 乾 入 広 優 浮 凸 直 深 濃 理 昼 太 厚 拾 授 生 乾 経 阿 富 緩   雄 勝 天   心
  一個の生はこれら一字一字を有し、無限の可能性をもって生まれ来ったものである。加えれば、一字はほかにもある。一個の生はこれらすべてを含み存在している。しかしながら、一字一字にはみな相対する半面のあることを知らねばならない。これが生の真実であり、私たちはこの真実を歩むことになっている。「楽あれば苦あり」とはその意にほかならない。 岡倉覚三(天心)は『茶の本』 の中で「真理は反対なものを会得することによってのみ達せられる」(村岡博訳) と言っている。 前述する一字一字は、つまり、真理において不十分にしてあることを示している。 これらの一字一字はその中に反対語のあることを暗には物語っている。 言わば、これらの一字は次のような一字を意識の中に含んでいることが言える。
          陰 濁 終 古 着 寒 逆 醜 無 凶 悲 苦 虚 偽 後 軟 嫌 憎 退 否 短 干 泣   影 暗 靜 裏 閉 誤 愚 失 下
             邪 悪 弱 賎 他 小 少 湿 出 狭 劣 沈 凹 曲 浅 淡 非 夜 細 薄 捨 受 死   坤 緯 吽 貧 急 雌 負 地   身  
  この真理を見ず、 都合のよいように物事を解釈して私たち現代人は日々の営みを押し進めているようなところがある。 何事も結果がプラスにならず、マイナスに働くこともあることを想定しておかなくてはならない。光が射せば、 影も出来ることを承知しておかなくてはならない。 福島第一原発の事故などはそのマイナス面の例と言ってよかろう。想定外という言葉が飛び交ったが、 事故は行政や企業の都合によって真理の一面を無視する形で進められて来た結果であると私などには思えるのであるが、如何だろうか。
  ここにあげた果実は雌雄の融合、合体によって存在していることは前の項でも触れたが、雌雄のどちらかでも欠けていたら、ここに果実の実体はないわけである。つまり、果実は真理における完璧をもって生まれ来ったものということが出来る。ここに授受の様相があり、授のみでそれは成らず、受のみでもまた成らず、 授受の両者があって初めて成果となるのである。 ここに果実が生の象徴としてあると言えるわけで、 その意は私たちにも及び考えさせられる次第である。
  写真は左からヒメコウゾ(黒滝村)、センダン(宇陀市榛原)、ゲンノショウコ(曽爾村)、マタタビ(同)、ヒヨドリジョウゴ(平群町)、 キセルアザミ(大和郡山市・矢田丘陵)、ツルリンドウ(五條市西吉野町)、ミヤマシキミ(下北山村前鬼)、トチバニンジン(天川村)、アカシデ(天川村)、ツルマンリョウ(東吉野村・丹生川上神社中社)、バイケイソウ(十津川村・古田の森)、ウスノキ(奈良市忍辱山町)。