<66> ケヤキの紅葉
紅葉の 真っ盛りなる 一樹の燦
あれはケヤキでしょうな。みごとだなあ。結構大きな木ですよ。一本だけ。不思議だけど、シンボリックだ。多分、 植林したとき、あの木だけ、伐られず残した。この辺りはクリの木が多かったらしい。 クリの木はみんな 伐られたけど、あのケヤキだけは伐られなかった。ケヤキは四季の表情がはっきりしているから季節の訪れを告げる。つまり、情趣の細やかな木なんだ。そう、紅葉(黄葉)もみごとだけど、 春の芽吹きもいい、 夏の茂る葉に風の渡る風情もいい。 落葉して雪を積む冬の樹冠にも格別の眺めがある。
木理の美しい材は 狂いがなく、昔から家具などに用いられて来た。 北国に多いようだけど、言ってみりゃあ、 ケヤキは日本を代表する樹木だ。それにしても、 みごとなものだ。 樹齢は相当なものだろう。私らが生まれるずっと前から、ああして、あそこに立って、この時期になると、あんなに美しく紅葉を見せて来た。 そうだ、確か人里に近い山に多い木だった。 ケヤキの徳目を言えば、この紅葉も徳目の一つと言えよう。ケヤキのみごとな紅葉に男二人は暫く眼を釘づけにしていた。 写真はケヤキの紅葉(奥宇陀の山中)。