(Q) 隣家との境界にある塀が、境界線を20cmほどはみ出していると隣家に指摘されました。わが家は1982年築ですが、私がこの家を中古で購入したのは12年前です。ですから、建築当時のことはまったくわかりません。隣家の人は、知り合いの弁護士から、こちらの全額負担で塀の撤去をしてもらえるといわれたそうです。はみ出ている以上、撤去しなければならないのは分かりますが、私も知りえなかったことですから、せめて折半にならないのでしょうか。
(千葉県市川市 男性 会社員 48歳)
(A)時効取得により、はみ出た土地があなたのものになる可能性があります 境界線を20cmほどはみ出している土地の部分については、あなたが時効取得できる可能性があります。そうなれば、あなたの全額費用負担での塀の撤去も、半額負担でのそれも、行う義務はないといえます。逆に、あなたが時効取得した部分の土地の所有権移転登記手続き請求を隣家に対してできるのです。
●10年間平穏で、「公然」「善意」「無過失」であることが条件
時効取得の要件は、10年間所有の意思をもって、平穏に、しかも公然と他人の物を占有した者が、開始の時に善意であり、なおかつ過失がなかったときはその所有権を取得する、というものです。
今回のご質問の場合、占有の開始はあなたが12年前に家を購入した時です。購入した時は、あなたは建物当時の事情をまったく知らなかったのですから、善意(この場合、法律用語では20㎝の土地が隣家の土地であったことは知らない、ということを意味します)、または無過失(知らないことに過失がないこと)であることです。一般的に見て、1982年建築の家に塀があって、現状のまま前主から購入したとすると、過失はなかったといえるでしょう。
「平穏」とは、たとえば、暴力などによる実力行使によるものではないということです。「公然」とは、隠し立てすることなどのないことです。あなたの場合は、1982年建築の中古物件を購入し、塀も前主が住んでいた当時のままだとすれば、これらの要件に当たるでしょう。
●はみ出していたことを知っていても、20年たてば時効取得が成立
なお、ご質問にある、あなたが建物の建築当時のことをまったくわからなかったという事情から考えにくいことですが、万一、あなたが20cmほど塀がはみ出していたことを知っていたとしても(法律用語では悪意といいます)、または、知らないことに過失があったとしても、平穏、かつ公然に所有の意思をもって20年間たてば、20cmの土地の部分の時効取得が完成します。
あなた自身の占有は12年間ですが、前主の新築当時からの占有期間を加算することができ、通算すると26年に達しますので、同じく20cmの土地について、時効取得が可能なのです。時効取得をすると、前述したように、あなたは20cm部分の土地の所有権移転登記手続き請求を隣家にすることができます。
1つの具体的な解決策として、あなたが時効取得をすることを譲歩して、隣家と話し合うことが考えられます。これはあなたの自由です。仮に、20㎝の土地については、わずかな面積であるとすれば、土地の取得を諦めることを条件に、「隣家の申し出通りの境界線に塀を作り直すことに応じる。ただし費用は隣家持ちで」ということも選択肢になるかもしれません。もちろん、応じるか否かはあなたの意思次第です。(読売 住まいの相談室より)
(千葉県市川市 男性 会社員 48歳)
(A)時効取得により、はみ出た土地があなたのものになる可能性があります 境界線を20cmほどはみ出している土地の部分については、あなたが時効取得できる可能性があります。そうなれば、あなたの全額費用負担での塀の撤去も、半額負担でのそれも、行う義務はないといえます。逆に、あなたが時効取得した部分の土地の所有権移転登記手続き請求を隣家に対してできるのです。
●10年間平穏で、「公然」「善意」「無過失」であることが条件
時効取得の要件は、10年間所有の意思をもって、平穏に、しかも公然と他人の物を占有した者が、開始の時に善意であり、なおかつ過失がなかったときはその所有権を取得する、というものです。
今回のご質問の場合、占有の開始はあなたが12年前に家を購入した時です。購入した時は、あなたは建物当時の事情をまったく知らなかったのですから、善意(この場合、法律用語では20㎝の土地が隣家の土地であったことは知らない、ということを意味します)、または無過失(知らないことに過失がないこと)であることです。一般的に見て、1982年建築の家に塀があって、現状のまま前主から購入したとすると、過失はなかったといえるでしょう。
「平穏」とは、たとえば、暴力などによる実力行使によるものではないということです。「公然」とは、隠し立てすることなどのないことです。あなたの場合は、1982年建築の中古物件を購入し、塀も前主が住んでいた当時のままだとすれば、これらの要件に当たるでしょう。
●はみ出していたことを知っていても、20年たてば時効取得が成立
なお、ご質問にある、あなたが建物の建築当時のことをまったくわからなかったという事情から考えにくいことですが、万一、あなたが20cmほど塀がはみ出していたことを知っていたとしても(法律用語では悪意といいます)、または、知らないことに過失があったとしても、平穏、かつ公然に所有の意思をもって20年間たてば、20cmの土地の部分の時効取得が完成します。
あなた自身の占有は12年間ですが、前主の新築当時からの占有期間を加算することができ、通算すると26年に達しますので、同じく20cmの土地について、時効取得が可能なのです。時効取得をすると、前述したように、あなたは20cm部分の土地の所有権移転登記手続き請求を隣家にすることができます。
1つの具体的な解決策として、あなたが時効取得をすることを譲歩して、隣家と話し合うことが考えられます。これはあなたの自由です。仮に、20㎝の土地については、わずかな面積であるとすれば、土地の取得を諦めることを条件に、「隣家の申し出通りの境界線に塀を作り直すことに応じる。ただし費用は隣家持ちで」ということも選択肢になるかもしれません。もちろん、応じるか否かはあなたの意思次第です。(読売 住まいの相談室より)
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