東京多摩借地借家人組合

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部材まで購入したフェンス工事がキャンセル、料金の一部を施主からもらえますか

2007年11月21日 | 増改築と修繕
(Q) 部材まで購入したフェンス工事がキャンセル、料金の一部を施主からもらえますか  建築業者です。施主から、不仲の隣家との間に目隠しのフェンス(高さ1.8メートル)を作りたいとの依頼があり、部材も発注しました。施工にあたって、事前に隣家へ挨拶に行った際、「日当たりなどの関係もあるから、完成図など見たい」と求められたので、施主の奥さんに「隣家に図面を見せて誠意を示し、1週間をめどに工事したい」と伝えました。ところが、夜、施主ご本人から電話で「図面は個人情報なので見せられない」と言われた上、工事をキャンセルされました。工事の際には、隣家へも影響のあることなので挨拶と一定の説明は欠かせないと思うし、この程度の図面でも“個人情報だから出せない”ということに疑問があります。受注できなくなったため、発注部材のキャンセル料の問題も発生しました。施主にその料金の一部を請求できますか。

東京都あきる野市 あん(建築業者)


(A)キャンセルされたことによる損害の賠償請求ができます●フェンス工事の依頼は

 請負契約があったことになります。隣家との間に高さ1.8メートルの目隠しのフェンスを作ることを目的としたものです。目隠しのフェンスの完成を目的とすることが特色です。

●施主のキャンセルには

 合理性がありません。なぜなら、請負工事人である建築業者として、施工に当たり事前に隣家に挨拶に行くことは、当然やるべきことです。その際、隣家の人からの「日当たりなどの関係もあるから、完成図などを見たい」という申し入れも、この種の工事では通常、予想されるし、実際にもまた、工事発注者が説明すべきことでしょう。あなたが建築業者として「隣家に図面を見せて誠意を示したい」というのはごく当たり前のことです。

 「図面は個人情報なので見せられない」との施主の言い分はおかしいと思います。目隠しのフェンスを作るというだけのことであり、その図面をあらかじめ、関係する隣家の人に見せるのもごく自然のことであり、特に保護されるべき個人の秘密情報とも異なります。

●施主の請負契約の解除は

 できます。民法に規定があって「請負人が仕事を完成しない間は、注文主はいつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる」とされているからです。注文者の不要となった仕事を強いて完成させる必要はないからです。

●仕事完成前の施主の解除によって

 請負人に生じた損害の賠償請求ができます。なぜなら、施主の意思によっての解除ですから、それによって建築業者に何らかの損害をこうむらせるべきではないからです。

●どのような損害があるか

 すでに発注した部材のキャンセル料が発生すれば、損害になります。その他、施主からの発注後以降、キャンセルまでにあなたがこうむった損害があれば、請求できます。例えば、目隠し用のフェンスの設計図面を作成すれば、その作成料や隣家へ挨拶に行ったときの日当、施主との打ち合せに要した日当、交通費などが考えられます。

●今後のために

 本件トラブルは、口約束による請負契約だったようです。建築業者としては、今回のようなことがあると、口約束で争いになると立証に苦労する場合もあります。簡単な請負契約書面を取り交わすべきです。仮に契約書作成まではいかないまでも、施主から注文書は取るべきです。請負代金額、途中解約の際の違約金の定めなども簡単に注文書の中に条件として入れておくとなおよいと思います。請負契約にケチがつくと、こじれて損害賠償額などのトラブルになりやすいからです。

(2007年11月16日 読売新聞)

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