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賃貸しているマンションが差し押さえられた

2008年06月23日 | 借地借家の法律知識
(Q)元々は分譲マンションだったのですが、今は全戸賃貸にしているマンションがあり、今年3月入居しました。ところが、突然、債権者に差し押さえられたという連絡を管理会社の方から受けました。

 抵当権の設定があることは重要事項説明されていましたが、競売されることはめったにないということで、まさかこんなに早く立ち退きの心配をしなければいけなくなるなんて、夢にも思っていませんでした。

 競売されたらすぐに出て行かなければいけないのでしょうか? その際、敷金礼金はどうなるのでしょうか?




(A)建物明け渡し猶予制度

(住宅ねっと相談室カウンセラー NPO役員 石田 光曠)


 とんだ災難でした。ついこの前まで、不動産のバブル傾向の心配をしていたのに、サブプライム問題以降あっという間に不動産を取り巻く経済環境の失速傾向を感じます。

 さて、抵当権の設定後、その実行(競売の申し立て)のための差し押さえの登記がされる前に目的建物を借りていた者は、以前は競売の買受人が「出て行け」と言えば、直ちに退去明け渡しをしなければならなかったのですが、平成16年の民法改正により、建物の賃借人については、新しい買受人が競売代金を支払って所有権を獲得してから6カ月間は、退去が猶予されるという保護制度ができました。

 したがって、たとえ競売が成立しても、とりあえず6カ月間は退去猶予期間があります。この間については、従前の賃貸借契約は解除されますが、家賃相当額を買受人に支払う義務があります。この場合、敷金は返還されますが、礼金等は契約の債務不履行がない限り戻りません。

 もっとも、現在全戸賃貸にされているようなマンションは、競売の買い主も賃貸住宅として使用する確率は高いでしょうし、差し押さえ債権者も「競売」という形ではなく、差し押さえたマンションを裁判所の管理の下に賃貸物件として利用して、その賃料を債権回収に充てる「収益執行」という方法を選択する可能性もあります。そうなれば、継続して借りられることになります。

 いろいろ先のことを心配しなければいけない環境には違いありませんが、もう少し様子を見守り、この先の債権者等からの連絡を注視しましょう。

 そして、この先の通知、連絡の内容に関して分からないことがあれば、その文章や契約書などを持って、地元行政や弁護士会主催の法律相談に行くことをお勧めします。



[日経 2008.6.12 掲載]

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