仕事が終わった後、新大阪駅で新幹線を待つ間に駅弁を見ていたら、いろんなお弁当の中に柿の葉鮨が並んでいるのが目に留まり、「陰翳礼讃」に柿の葉鮨のことが書いてあるのを思い出しました。その美味しさについては、「鮭の脂と塩気とがいい塩梅に飯に浸み込んで、鮭はかえって生身のように柔らかくなっている工合が何ともいえない。東京の握り鮨とは格別な味で、私などにはこの方が口に合う」、と絶賛しています。家に持って帰れば、家族もひとつやふたつは食べるだろうと、ひと折求めて新幹線に乗り込みました。家に着いた時、子どもは食事が済んでいましたが、鮭の柿の葉鮨を美味しいと頬張りました。私は鯖と鯛のお鮨を前にして、いそいそと日本酒の口を切りました。折しも、この夜は皆既月食でした。お鮨を食べる手を止めてベランダへ出て空を見上げると、赤茶けた月が細い眉のように弓なっていました。白く明るい月から赤茶けたかすかな光へ、これぞ陰翳際立つ天空のショーだなと思いました。柿の葉鮨で終わったと思っていた「陰翳礼讃」でしたが、最後の最後、翳が醸し出す幽なる美での締め括りとなりました。
最新の画像[もっと見る]
- もうひとつの親ガチャ 3ヶ月前
- ヱビスビール 7ヶ月前
- 少しだけ花の下にて酒飲まん 7ヶ月前
- 次は桜花無きにしも非ず 7ヶ月前
- パートタイマー・秋子 10ヶ月前
- 朝鮮通信使 1年前
- 飲み始め(moderate & suitable) 2年前
- 置いてけぼり 2年前
- 何故か不真面目 2年前
- シュンラン2022 3年前
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます