花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

せめてなりたや、ニワトリに

2019-10-27 23:14:18 | Book
 年に一度くらい椎名誠さんの本が読みたくなる時があります。昭和軽薄体と言われる椎名さんの言葉使いに触れたくなるのは、ナツメロ番組についチャンネルを止めて見入ってしまうのと同じ心性なのかもしれません。

 この土日で読んだのは「さらばあやしい探検隊 台湾ニワトリ島乱入」(角川文庫)でした。この本でも、「わがココロはタハタハ化したのだった」だの、「面白的堕落的卒倒的泥酔人生」だの、「中国のしきりもドアもない非人間的な全身まるだしニイハオトイレ」だの、シーナ節は相変わらず随所で炸裂していました。

 さて、タイトルにある「台湾ニワトリ島」とは、椎名さん一行が滞在した家の庭にノラ化したニワトリがたくさん集まっていたことからきています。通訳氏の説明によると、「メンドリはやがてタマゴを産まなくなると若いうちに人間に食べられます。オンドリも食べられますがまあ好みによりますね。結局雄のニワトリはある程度トシをとるとどうしようもない存在になります。こうして仲間と集まって毎日大きな声で鳴いているしかない」、とのことです。

 説明を受けた椎名さんは、「じっくり聞いているとなんだか切なくなってくる。期せずしてほぼ同じ状況にいるおれたちとニワトリなのだ」と、同類相憐れむ感じになっていきます。

 しかし、このニワトリも椎名さんたちも集まって大きな声を出す仲間がいます。休みの日の日比谷公園などで見かける、ただ時間をつぶしているだけといった風でひとりポツ・ネンとベンチに腰かけている、おじさん、おじいさんに比べれば雲泥の差があります。自分がどうしようもない存在になったとしても、せめてニワトリくらいにはなりたいものだと思いました。


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