花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

多様性の陥穽

2024-06-09 15:35:20 | Book
(※朝日新聞朝刊連載「折々のことば」風に)

 「多様さを地球的規模で全面的に花を開かせなくてはならない」

 技術化によって世の中の均質化、等質化が進んでいる。その中で、地域や集団において生活に現れる違いを見つけてきて、多様性が保たれていると安堵してはならない。それでは多様性が切り崩されるのを止めることにはならないし、知らぬ間に国家主義に与することにもなりかねない。それぞれの違いや多様さの底にある可能性をじっくりと見極め、合せて人間にとって普遍的な力となるものを探る営みが必要である。日本を単一民族による共通の文化基盤を持つ国と捉える史観に疑問を呈し続けてきた歴史家は、そう語る。

岩波現代文庫「網野善彦対談セレクション 2 世界史の中の日本史」所収「歴史と空間の中の”人間”」から