花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

東大寺戒壇院

2015-05-08 20:48:41 | Weblog
 戒壇院へは二月堂の裏参道を通って行きました。先が見通せないように適度に角度がつけてある土塀が続く道は、観光客の多い東大寺の中では比較的静かです。裏参道の坂を下りきってしばらく行くと、小さな丘の上に戒壇院はあります。戒壇院の四天王像、これは何度見ても圧倒的な存在感があります。受戒を与える戒壇院にふさわしい緊張感があります。不空羂索観音の面付きを「包容力を湛えた厳しさ」とするなら、四天王像のそれは「静けさの中の厳しさ」ではないかと思います。静けさと言っても、穏やかな静かさではなく、すぐさま「動」に転じ得る静けさです。「寄らば斬るぞ」の凄みを感じさせる静けさです。その凄みが緊張感を生んでいます。鋭い目つきの四対の仏像は見飽きることがありませんでしたが、帰りの新幹線の時間を考えると、そんなに長居は出来ません。立ち去り難い思いを残しながら、表へ出ました。戒壇院の石庭を少し眺めてから、「さあ、帰るぞ」とばかりに別れを告げるために戒壇院を振り返って見た時、屋根に載った龍の姿の鬼瓦に目が留まりました。四天王像の研ぎ澄まされた緊張感とは全く対照的に、鬼瓦の龍の顔は漫画的でとてもユーモラスなものでした。一瞬にして私を包んでいた空気が入れ替わったように感じました。すっかり楽しんだ京都、奈良。後は奈良漬けを買って帰るだけでした。