shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Wings Over America

2009-09-07 | Paul McCartney
 この「ウイングス・オーヴァー・アメリカ」はポール&ウイングスの1976年USツアーの模様を収めたライヴ盤で、当時 “アナログLP3枚組で発売!” というリリース・インフォメーションを聞いた私は “3枚組って、ほぼ完璧版やん!しかもビートルズ・ナンバーも演ってるし... これはめっちゃ楽しみや(^o^)丿” と大コーフンしたのを覚えている。発売日当日に手にしたこのアルバムは3枚組ということもあってズシリと重かったが、中身の方も私の期待通り、いや期待を遙かに超えて素晴らしいもので、 “ライヴ盤よりもスタジオ録音盤の方が完成度は上” と信じ切っていたそれまでの私の考えを木っ端微塵に打ち砕いてしまった(≧▽≦)
 このアルバムは全30曲というヴォリュームで、楽曲の内訳はツアーのベースになった「ヴィーナス・アンド・マース」からが9曲と最も多く、続いて最高傑作「バンド・オン・ザ・ラン」から5曲、ツアー当時の最新アルバム「スピード・オブ・サウンド」から4曲と、いわゆる全盛期の最新3部作から計18曲が選ばれている。更にビートルズ・ナンバーが5曲、残りはソロ初期のナンバーやデニー・レインの曲という構成だ。
 A面はまず①「ヴィーナス・アンド・マース~ロック・ショウ~ジェット」という怒涛の3連発メドレーで始まる。ライブのオープニングを想定して作られたと思しき曲想がピッタリとハマッてオーディエンスものっけから大興奮。バラッドも悪くはないが、私はやはりノリノリのロックを歌うポールが一番好きだ。②「レット・ミー・ロール・イット」はスタジオ・テイクよりもブルージーな色が濃く、特に間奏でのジミーのギター・ソロは水を得た魚のようにバリバリと弾きまくっている。ここで早くも③「スピリッツ・オブ・エインシェント・イージプト」と④「メディシン・ジャー」というメンバーのヴォーカル曲を持ってくるあたり、ポールの “ウイングスはバンド” という主張が伝わってくる。2曲とも自由闊達に歌いまくるポールのベース・ラインが聴きものだ。
 B面の①「メイビー・アイム・アメイズド」は 1st ソロ・アルバム「マッカートニー」からの曲で、6年という月日を経て更に熟成されたアレンジと自信に溢れたポールの歌声が素晴らしい。「ハートのささやき」などという信州みやげのクッキーみたいな邦題以外は言うことナシだ。ここからはブラス・セクションが大きくフィーチャーされる曲が続く。②「コール・ミー・バック・アゲイン」はポールのソウルフルなシャウトと味のあるバック・コーラス、ブルージーなギターといった要素が一体となって迫ってくる。ラストのリフレインはちょっと長すぎるか。ハジケるようなピアノのイントロで大歓声が上がる③「レディ・マドンナ」、キタ━━━(゜∀゜)━━━!!! という感じである。続く④「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」のポールの歌い出しに対するオーディエンスの反応もハンパじゃない。やっぱり何だかんだ言ってもポールといえばビートルズなのだ。アレンジを巡ってフィル・スペクターと激しく対立したこの曲は「アンソロジー3」で聴けるのと同じシンプルなアレンジが嬉しい。この深~い味わい、たまりまへん。私の超愛聴曲⑤「リヴ・アンド・レット・ダイ」の出だしをポールが歌い始めると背筋がゾクゾクするような快感に襲われる。このダイナミックな歌と演奏は間違いなくあの傑作スタジオ・テイクをも凌駕していると思う。ライブ映像を見た記憶では、アップ・テンポになるパートでのストロボ乱射とエンディングでのマグネシウム花火爆裂がインパクト大だった。
 C面はアコースティック・セットで、①「ピカソズ・ラスト・ワーズ」はテンポ・チェンジするところでスムーズに次の②「リチャード・コーリー」へとメドレーのように繋がっていく。この曲のオリジナルはサイモン&ガーファンクルだが、私は流れるようなテンポ設定のこのヴァージョンの方が断然好きだ。正直言ってポール以外のヴォーカル曲はあまり聴かずに飛ばしてしまうことも多いのだが、このトラックだけは別。特に歌詞の “I wished that I could be... John Denver.” ってところが何故か気に入っている。スタジオ・ヴァージョンを忠実に再現した③「ブルーバード」に続いて始まる④「アイヴ・ジャスト・シーン・ア・フェイス」、元々大好きな曲だったが、ここでもビートルズ時代のヴァージョンに負けないくらい高速で疾走するポールがめちゃくちゃカッコイイ(≧▽≦) このアルバム中の私的ハイライトがこれだ。イントロだけで大きな歓声が上がる⑤「ブラックバード」、淡々と歌うポールの弾き語りが心に染み入ってくる。歌い出しの “イエスタデイ~♪” で物凄い歓声が上がる⑥「イエスタデイ」... ポール、あなたに出会えて良かったよ(^.^)
 静謐な2曲が終わりコンサートも後半に入ってD面は①「ユー・ゲイヴ・ミー・ジ・アンサー」、②「マグネット・アンド・チタニアム・マン」と傑作「ヴィーナス・アンド・マース」からアップテンポなナンバーが続く。このあたりの曲の並べ方もアメリカ受けしそうな流れでさすがという他ない。デニーの③「ゴー・ナウ」に続く④「マイ・ラヴ」は言わずと知れた全米№1ソングで、オリジナルのストリングスがない分、シンプルな印象だ。ちょうど B④みたいな感じである。次は再びアップテンポな曲で⑤「リスン・トゥ・ホワット・ザ・マン・セッド」、もう全米№1ソングのアメアラレである。改めてポールの偉大さを痛感させられてしまう。
 E面はリリースして間もない新作「スピード・オブ・サウンド」からの4曲で占められており、このツアーの効果もあってアルバムは全米№1をゲット、①「レット・エム・イン」、②「タイム・トゥ・ハイド」、③「シリー・ラヴ・ソングス」、そして④「ビウェア・マイ・ラヴ」と、立て続けに演奏することによって絶好のプロモーションになったのだろう。特に④は長いイントロをカットしていきなりクライマックスがやってくる激しい演奏で、張り裂けんばかりのポールのヴォーカルがめちゃくちゃカッコエエのだ。
 F面はブルージーな①「レッティング・ゴー」に続く②「バンド・オン・ザ・ラン」では今更ながらポールの縦横無尽なベース・プレイに唖然とさせられる。あまり指摘されないことだが、歌いながらこれだけのプレイを易々とやってのけるポールって凄いと思う。アンコールはコンサートのシメに相応しい疾走系ナンバー2連発で、大好きな③「ハイ・ハイ・ハイ」はオリジナルよりも高速化してノリノリで突っ走っているし、公式未発表曲④「ソイリー」はこれまでも度々アンコール・ナンバーとして歌われてきたハードなロックンロールで、火の出るようなポールのシャウトをはじめ、バンドが一体となって燃え上がる様が楽しめる。全部聴き終えるともうお腹いっぱい、大満足という感じだ。
 ポール&ウイングスの絶頂期の姿を見事に記録したこのライブ・アルバムは、選曲・歌・演奏とどれを取っても “ハードで、楽しくて、メロディアス” という3拍子揃った文句なしの内容で、ポールのベスト盤的側面をも持った超お買い得の1枚だと思う。

134 ROCK SHOW part 4 of 12 - PAUL McCARTNEY & WINGS