shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Wings At The Speed Of Sound

2009-09-06 | Paul McCartney
 「ウイングス・アット・ザ・スピード・オブ・サウンド」は1976年の全米ツアーに合わせてリリースされたウイングス全盛期の1枚なのだが、大ヒットしたわりにはファンの間での人気はイマイチ低いらしい。①「レット・エム・イン」(幸せのノック)、⑥「シリー・ラヴ・ソングス」(心のラヴ・ソング)という2大ヒット曲が入っているにもかかわらずだ。私の場合もポールの他のアルバムに比べるとターンテーブルに乗る頻度はやはり低かった。それは全11曲中ポールがリード・ヴォーカルを取っているのはわずか6曲で残りの5曲は他のメンバー... デニー・レイン2曲②⑧、リンダ・マッカートニー1曲⑦、ジミー・マッカロック1曲⑤、ジョー・イングリッシュ1曲⑨... がリードを取っているという、良く言えば民主的、悪く言えばファンの気持ちを無視した KY なアルバムなんである。何でも「バンド・オン・ザ・ラン」、「ヴィーナス・アンド・マース」の連続大ヒットですっかり気を良くしたポールがニュー・アルバムの構想を練るにあたって “何か今までと違ったことをやりたい” “メンバー全員のフィーリングに彩られたアルバムにしたい” と言い出し、このような形になったという。でも正直なところ、このアルバムを身銭を切って買うファンの内、一体何人がポール以外のメンバーのヴォーカルを聴きたいと思うだろうか?不謹慎な話だが、メディアが LP から CD に移行した一番のメリットはリモコン一つで曲を簡単に飛ばせることで、ジョンの「ダブル・ファンタジー」やこの「スピード・オブ・サウンド」ではリモコンが欠かせない。
 いきなりネガティヴな話になってしまったが、ポールが歌う6曲のレベルは文句なしに高い。まずは 1st シングルとしてカットされた⑥「シリー・ラヴ・ソングス」は当然のごとく全米№1(5週間!)をゲット、更に1976年の年間№1シングルにも輝いたという、絵に描いたような名曲名演だ。特にこの曲でのポールの自由闊達なベース・プレイは凄いとしか言いようがない。ウイングスお得意のコーラス・ハーモニーも絶品で、これで売れない方がおかしい。有名なイントロはピンク・フロイドの「マネー」にインスパイアされて作ったという。さすがは天才ポールです(^o^)丿 又、 “愚かなラヴ・ソングの一体どこが悪いねん!” と開き直ったような歌詞は、甘いバラッドばかり書くと(←実際はそんなことないのにねぇ...)ポールを批判する人たちに向けてのポールからの回答だろう。やるねぇ...(^.^)  2nd シングル①「レット・エム・イン」はいかにもポールらしい陽気な曲で、メロディーは単調だがそこを補って余りある多彩なサウンド・プロダクションが聴きもの。あまりシングル向きの曲ではないと思うのだが、全米チャートで4週連続3位を記録したのは全米ツアーの勢いだろう。
 シングル曲以外も良い曲が並んでいるが、中でも私がダントツに好きなのが④「ビウェア・マイ・ラヴ」だ。静謐なイントロにアコギがかぶさり、これはフォーキーな曲かいなぁと思っていると1分28秒あたりから雰囲気が変わり、風雲急を告げるポールのシャウトが響き渡る。後はひたすらハードに盛り上がっていく疾風怒濤の展開が圧巻で、ライブ映えするカッコ良いナンバーだ。小粋な⑩「サン・フェリー・アン」はアルバム「ロンドン・タウン」のB面にジャジーなアレンジを施したような雰囲気が◎。これ、結構好きです(^.^) ③「シーズ・マイ・ベイビー」はジョー・イングリッシュの刻む律儀なリズムに乗った軽妙洒脱なポールのヴォーカルがエエ感じだし、⑪「ウォーム・アンド・ビューティフル」はポールなメロディーが横溢する隠れ名曲だ。
 ポール以外の歌でいうとデニー・レインの⑧「タイム・トゥ・ハイド」がすごく良い曲で、「USA ライヴ」のヴァージョンも忘れ難い。あとの曲は特に言うことはないのだが、ジミー・マッカロックの⑤「ワイノ・ジュンコ」は最初カタカナの日本語タイトルを見て “ワイの淳子???” (←そんなはずあらへんやろが!)と勘違いしていたが、よくよく調べてみると wine の junky 、つまりアル中の歌だった。ジミーは前作でも「メデシン・ジャー」を歌っていたが、ドラッグ・ソングばっかりやん(>_<) リンダ姐さんの⑦「クック・オブ・ザ・ハウス」はハッキリ言ってご愛嬌。彼女の声はコーラス・ハーモニーの要としてはウイングスになくてはならないものだが、リード・ヴォーカルは1曲で十分です(笑)
 このようにポールが半分くらいしか歌っていないことから過小評価されがちなこのアルバムだが、結構な佳作揃いなのでポール・ファンは聴いて損はない1枚だと思う。

Beware My Love
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