shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

White Album (Disc 2) / The Beatles

2009-09-29 | The Beatles
 今日も昨日の続きで「ホワイト・アルバム」の後編である。C面に入ってもポールは相変わらずの絶好調ぶりで、いきなりノリノリのロックンロール①「バースデー」で幕開けだ。もう完全にイケイケ状態ですな。リンゴの強烈なフィルインから全員が一丸となって疾走するその様は圧巻で、全編を通して聴けるリンゴのハイ・テクニックを駆使したドラミングや、0分56秒からギターが鋭く切り込んできてお約束のハンド・クラッピングが加わり、ジョンの “イェスウィ ゴーイントゥア パーティパーティ...” 3連発が炸裂するところなんか血沸き肉踊る超スリリングな展開で、このどんちゃん騒ぎ曲が持っているお祝い気分を大いに盛り上げている。やっぱりビートルズは別格やね。尚、イーグルスのアルバム「ザ・ロング・ラン」に入っていた「グリークス・ドント・ウォント・ノー・フリークス」にこの曲のリフがそのまんま出てきた時はワロタ(^.^)
 ポールの残る2曲③「マザー・ネイチャーズ・サン」と⑥「ヘルター・スケルター」は同じ人間が書いたとは思えないぐらい好対照をなすナンバーで、牧歌的な雰囲気がたまらない癒し系の極北③に対し、暴力的なまでにラウドなロック⑥での無軌道ぶりは尋常ではない。そのテンションの高さは凄まじく、喉も張り裂けんばかりにシャウトするポールのヴォーカルを始め、荒れ狂うギター・リフ、暴れ回るベース、親の仇でも取るかのように連打されるドラムスと、ありとあらゆる音が大量投下された破壊的なナンバーで、ヘヴィー・メタルの先駆け的作品と言われるのも当然だ。それにしてもこの時期のポールって向かうところ敵なし、って感じがするなぁ... (≧▽≦)
 ジョンの3曲②「ヤー・ブルース」、④「エヴリバディーズ・ガット・サムシング・トゥ・ハイド・エクセプト・ミー・アンド・マイ・モンキー」、⑤「セクシー・セディ」ではワイルドなロックンロールが爆裂する④がダントツに好きで、イントロから終始一貫してカッコ良いリズムを刻み続けるギターや2分3秒から唐突に大噴火するポールのベース・ラインも刺激的。リンゴのドラミングは相変わらず最高だ。②はまさにビートルズ版ブルースで、後の「コールド・ターキー」の原型と言えるようなヘヴィーなナンバーだ。揺れるようなピアノのイントロが耳に残る⑤はマハリシを糾弾する辛辣な歌詞をオブラートで包んでシンプルなバラッドとして提示したもので、C面に来てジョンが息を吹き返したかのようだ。ジョージのリリカルな⑦「ロング・ロング・ロング」はほとんど話題に上らない不憫なナンバーだが、私は結構良い曲だと思っている。ただ、衝撃的な「ヘルター・スケルター」の後という箸休め的な配置なので、印象が薄いのもしゃあないか。
 D面は良くも悪くもジョン・サイドと言っていいだろう。まず①「レヴォリューション1」は最初、同曲シングル・ヴァージョンのスロー&アコースティック版だと思っていたが、実際はこちらが先で、シングルの方は一般ウケするようにテンポを上げ、ラウドなエレクトリック・ヴァージョンに仕上げたとのこと。レイドバックしたアコギがジョンのアンニュイなヴォーカルやユル~いシュビドゥワ・コーラスと見事にマッチして絶妙な緊張感を醸し出している。「ホェン・アイム・64」の流れを汲む②「ハニー・パイ」は今にもフレッド・アステアが出てきそうな20年代風バンド・サウンドをフィーチャーしたノスタルジックなナンバーで、ポール版「踊るリッツの夜」といった塩梅だ。
 私がD面で一番好きなのが何を隠そうこの③「サヴォイ・トラッフル」で、イントロで聴けるリンゴのスネアのカッコ良さに始まり、ウキウキするような心地良いノリを持ったメロディーやサウンドに厚みを持たせて見事なグルーヴ感を生み出しているホーン・アレンジ、更に歌詞の中にさりげなく「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」が入っていたりと、もう楽しさ満載だ。誰も褒めないのが不思議なぐらいの名曲名演だと思う。④「クライ・ベイビー・クライ」はアコースティックなバラッドで、旋律はシンプルで単調ながらジョンのヴォーカルだけで聴かせてしまうところが凄い。ピアノやオルガンが隠し味的に効果的に使われているのも◎。エンディングにポールがくっつけた鼻歌みたいなパートが何故かしっくりと収まっているのが不思議だ。
 ⑤「レヴォリューション№9」はワケのわからんサウンド・コラージュで、前衛音楽嫌いの私としてはパス。ビートルズ・ファンでこんなん聴きたい人、いてるんかいな?そしてそんな気まずい空気を打ち消すようにこの超大作を締めくくるのはゴージャスな⑥「グッド・ナイト」。ジョンがジュリアンのために書いた壮大なバラッドで、なぜか自分が歌わずリンゴがオーケストラをバックに単独録音したという異色のナンバーだ。
 こうやって聴いてくると実にヴァラエティー豊かな面白いアルバムだなぁと改めて感心してしまう。そのせいか、オープン・トップのUKオリジナル・モノ盤はオークションでの入札競争が熾烈を極め、良いコンディションの盤を手に入れるのに77ポンドもかかったが、耳慣れたステレオ・ミックスとは違うテイクも多く、十分にその価値はあったと思っている。
 「ペパーズ」を整然とした高級ブランド・ショッピング・モールだとすれば、この「ホワイト・アルバム」は何でもアリの精神で様々な商品が雑然と積み上げられているドンキホーテに似たワクワクドキドキ感がある。庶民派の私にとって、ビートルズのありったけの魅力を無節操に詰め込んだこのアルバムは、掘り出し物が一杯の音楽玉手箱みたいな面白さで、「ペパーズ」よりもターンテーブルに乗る回数が遙かに多い超愛聴盤なのだ。

Beatles- Birthday