shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Red Rose Speedway / Paul McCartney & Wings

2009-09-03 | Paul McCartney
 “勝手にポール祭り” も3日目に突入した。ポールのアルバムはそれこそレコードが擦り切れるくらい聴いてきたが、このように時系列に沿って、しかも集中して聴いたことはなかったので、改めて色んな発見があって中々楽しい。同じレコード、CDでも聴き方を変えるだけでこんなに色々楽しめるのだから音楽って面白いなぁと改めて実感させられる。特にポールの場合はもう30年以上の付き合いで、隅々まで聴いて分かっていたつもりだったが、以前あまりピンとこなかった曲が久しぶりに聴くとめちゃくちゃ良かったりとか、とにかく天才ポールはまだまだ奥が深いのだ。
 この「レッド・ローズ・スピードウェイ」がリリースされた1973年というのはまだリアルタイムで楽しんでいたわけではないので当時の状況は後追いで知るしかなかったのだが、とにかくこの時期、マッカートニー夫妻に対する風当たりは相当強かったらしく、「マッカートニー」や「ワイルド・ライフ」はもちろんのこと、あの「ラム」ですらケチョンケチョンに酷評されていたらしいのだ。稀代のスーパー傑作アルバムを評して “チープなポップンロール” やとぉ...? 耳に虫でも湧いとるんちゃうか??? そしてそんな世間の悪評に対してポールが “これでどーよ!” とばかりに反撃を開始したのがちょうどこの頃で、次々とシングル・ヒットを連発するのだ。
 まずは胸のすくようなロックンロール・ナンバー「ハイ・ハイ・ハイ」でロッカーとしての存在をアピールし、続いてはポールお得意の激甘ラヴ・ソング「マイ・ラヴ」で全米№1をゲット、更に007シリーズの主題歌「リヴ・アンド・レット・ダイ(死ぬのは奴らだ)」でも全米2位を記録するなど、 “上等じゃ、やったろーやないか!” というポールの気迫が伝わってくるような怒涛の快進撃なのだ。そんな時期に出されたアルバムがこの「レッド・ローズ・スピードウェイ」である。
 ①「ビッグ・バーン・ベッド」はちょうど「ラム」のエンディングのフレーズ “Who's that comin' round that corner?” をすくい上げてそこから曲想を膨らませて出来たようなファンキーな曲で、そのノリの良さはアルバム冒頭を飾るに相応しい。①が終わると間髪を入れず②「マイ・ラヴ」のイントロが聞こえてくるのだが、霧の中から巨大な何かが浮かび上がってくるようなこの瞬間がたまらない。行間からリンダへの愛が滲み出るこの曲はもう何の説明も不要なくらい有名なポールの傑作バラッドで、今やポップス・スタンダードとしてカヴァーされるほどの名曲だ。③「ゲット・オン・ザ・ライト・シング」はこの時期のポールが目指していたバンド・サウンドを具現化したような快活なナンバーで、続く④「ワン・モア・キス」もいかにもポールらしいほのぼの系ソング。この①→②→③→④という流れは前作に欠けていた “アルバムとしての作り込み” の成果だと思う。
 しかしAラスの⑤「リトル・ラム・ドラゴンフライ」からB面アタマの⑥「シングル・ピジョン」、⑦「ホエン・ザ・ナイト」、そしてムーグ・シンセサイザーを使ったインスト・ナンバー⑧「ループ」にかけては割と地味な曲が並んでいて少し中弛みして聞こえてしまう。だからこのアルバムの素直な感想としては “エエねんけど、あと一歩何かが足りない” というのが正直なところ。もしこれらをシングルの「ハイ・ハイ・ハイ」や「死ぬのは奴らだ」、それにシングルB面で埋もれさせてしまうには惜しすぎる名曲「C ムーン」や「ザ・メス」、「カントリー・ドリーマー」なんかと差し替えたらめちゃくちゃ凄いアルバムになってたと思うのだが...(^.^)
 ⑨「メドレー:ホールド・ミー・タイト~レイジー・ダイナマイト~ハンズ・オブ・ラヴ~パワー・カット」はこのアルバムで私が最も感銘を受けたトラックで、ポールの天才メロディー・メイカーぶりが如何なく発揮されている。とにかく4つの名曲が絶妙に溶け合っており、10分12秒や10分25秒でメドレー前半の曲のフレーズを巧く織り込みながら大団円へともっていくあたり、さすがという他ない。「アビー・ロード」B面後半のメドレーを彷彿とさせる名曲名演だ。このメドレーだけでもこのアルバムを買う価値があると思うのは私だけだろうか?

HANDS OF LOVE /POWER CUT - Paul McCartney
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