「バンド・オン・ザ・ラン」はポールの最高傑作だと言われている。私にとっても「ラム」と並ぶ超愛聴盤だし、総合的な完成度で言えば「ラム」をも凌駕している。中身の音楽はもちろんだがジャケットがこれまたカッコ良くて、このアルバムは名盤の必要十分条件をすべて満たしているように思う(^o^)丿 “完全無欠の” っていう形容詞はこのアルバムのためにあるようなものだ。
当初、アルバムの制作過程はスムーズにはすすまなかった。まずレコーディングの行われるナイジェリアのラゴスへの出発直前になってギタリストとドラマーが脱退、まぁウイングスはポールのワンマン・バンドなのでファンとしてはポールとリンダがいればあとは誰でもエエというのが本音だが、それにしても出鼻をくじかれるとはこのことだろう。しかも治安の悪いラゴスで強盗に襲われるわ、現地のミュージシャンとトラブるわでまさに踏んだり蹴ったりのレコーディングだったらしいが、そのような逆境がプラスに作用したのかアルバム全体に緊張感が漲り、それまでとは違う辛口のポールが楽しめるのだ。個々の楽曲の充実はもちろんのこと、「ワイルド・ライフ」、「レッド・ローズ・スピードウェイ」と比べてみて何よりも素晴らしいのは躍動感溢れる多彩なマッカートニー・ミュージックが絶妙なアレンジで並んでいること。全9曲が完璧にプロデュースされ音に格段の厚みが増しているにもかかわらず、無駄な音が全く入っていないのは凄いとしか言いようがない。まるでビートルズのアルバムを聴いているような充実感だ。
アルバム・タイトル曲の①「バンド・オン・ザ・ラン」は気だるいムーグ・シンセサイザーとギターのサウンドが支配するスローな前半部から少しテンポ・アップして力強いヴォーカルが聴ける短い中盤部を経て、オーケストラが入りノリの良いアコギのリズミカルなサウンドがたまらない後半部と、異なる曲想を巧く融合させた3部構成は唯一無比で、これぞ天才ポールの真骨頂といえるキラー・チューンだ。この曲の素晴らしさにについてはまだまだ言い足りないが、先に進まなくてはいけない(^.^)
②「ジェット」はまずその風雲急を告げるようなイントロでガツン!とやられる。ギターのカッティングもシビレるし、ポールの乾いたドラミングも素晴らしい。疾走感を更に加速させるようなコーラス・ワークも絶品だ。1分58秒と2分58秒で右チャンネルから炸裂する火の出るようなピアノを始め、隅々まで様々なアイデアが詰まったこの分厚い音は圧巻だ。まさにヒット曲のお手本のようなカッコ良いロックンロール・ナンバーだと思う。因みに私はこの曲のおかげ(?)で lady suffragette(婦人参政権論者)などという大学入試にも出てこないような難しい単語を知っていたヘンな中学生だった。
③「ブルーバード」はポールお得意のアコギを使ったスロー・バラッドだが決して甘さに流されていないところがこの時期のポールの充実ぶりを示している。温か味溢れる間奏のサックスとコーラスの絡みなんか、絶頂期のポールならではの余裕を感じさせる見事なアレンジで、聴いていて心にポッと灯がともるような感じがする。ロマンチスト、ポールの面目躍如たる素晴らしいラヴ・ソングだと思う。
④「ミセス・ヴァンデビルト」は “ホッ ヘホッ♪” という掛け声が耳に残る印象的なナンバーで、アフリカの民族音楽調の曲想が実にユニークだ。これ、理屈抜きで大好き(^o^)丿 絶妙なアコギのリズム・カッティングといい、ビシバシきめるポールのドラミングといい、ハウィ・ケイシーの怒涛のサックス・ソロといい、その全てが躍動感に溢れ、音楽ってエエなぁ... と実感させてくれる。何よりも楽曲全体を引き締めるポールのベースが圧倒的に、超越的に素晴らしい!!!
⑤「レット・ミー・ロール・イット」は一転してキーボードとヘヴィーなギターというまるでプラスティック・オノ・バンドのようなシンプルなオケをバックに堂々たる歌声を聴かせるポールはジョン・レノンを意識しているようにも聞こえるのだがどうだろう?
⑥「マムーニア」はいかにも “アフリカしてる” 感じが伝わってくるホノボノ・タイプのナンバーで、アコギの音色が清々しい風を運んできてくれるユニークな1曲だ。⑦「ノー・ワーズ」は何となくジョージっぽい曲想(イントロのギターといい、“ノーワーズ フォー マァイ ラァ~ヴ♪”のパートといい、「ギヴ・ミー・ラヴ」の頃のジョージしてないですか?)の穏やかなナンバーだが、中盤のファルセット・ヴォイスやエンディングのギター・ソロはポールならではだ。トニー・ヴィスコンティのストリングス・アレンジも光っている。
⑧「ピカソの遺言」は “Drink to me, drink to my health♪” というサビのメロディーの単調な繰り返しからテンポ・チェンジ、途中ケイト・ブッシュの「魔物語」を想わせるリズム・ボックスをバックに「ジェット」のフレーズが再登場したり、エンディングは「ミセス・ヴァンデビルト」のフレーズでフェイド・アウトしたりとトータル・アルバムを意識した構成で楽しませてくれる。
⑨「西暦1985年」はこのアルバムの中で私が最も好きな曲で、そのダイナミックな曲想といい、緊張感溢れるサウンドを生み出すピアノ連打のリフといい、ポップでありながらプログレッシヴという難題を軽くクリアしている。ムーグとホーンで盛り上げる後半部も凄まじく、ピアノ、ギターにストリングスも加わった重厚なサウンドは圧巻の一言。エンディングで“バァ~ ドォン ザラァ~ン♪” と①のサビが流れてくるところなんかもう鳥肌モノだ。
天才ポールがその持てる才能を存分に発揮し、全編を通してまったくダレることなく力強さと躍動感に溢れたスリリングなマッカートニー・ミュージックが楽しめるこのアルバムは、ビートルズ各メンバーのソロ作品の中で、いや、70年代にリリースされたすべてのポップ/ロック・アルバムの中で最高峰に位置する1枚だと思う。
Nineteen Hundred and Eighty Five by Paul McCartney and Wings
当初、アルバムの制作過程はスムーズにはすすまなかった。まずレコーディングの行われるナイジェリアのラゴスへの出発直前になってギタリストとドラマーが脱退、まぁウイングスはポールのワンマン・バンドなのでファンとしてはポールとリンダがいればあとは誰でもエエというのが本音だが、それにしても出鼻をくじかれるとはこのことだろう。しかも治安の悪いラゴスで強盗に襲われるわ、現地のミュージシャンとトラブるわでまさに踏んだり蹴ったりのレコーディングだったらしいが、そのような逆境がプラスに作用したのかアルバム全体に緊張感が漲り、それまでとは違う辛口のポールが楽しめるのだ。個々の楽曲の充実はもちろんのこと、「ワイルド・ライフ」、「レッド・ローズ・スピードウェイ」と比べてみて何よりも素晴らしいのは躍動感溢れる多彩なマッカートニー・ミュージックが絶妙なアレンジで並んでいること。全9曲が完璧にプロデュースされ音に格段の厚みが増しているにもかかわらず、無駄な音が全く入っていないのは凄いとしか言いようがない。まるでビートルズのアルバムを聴いているような充実感だ。
アルバム・タイトル曲の①「バンド・オン・ザ・ラン」は気だるいムーグ・シンセサイザーとギターのサウンドが支配するスローな前半部から少しテンポ・アップして力強いヴォーカルが聴ける短い中盤部を経て、オーケストラが入りノリの良いアコギのリズミカルなサウンドがたまらない後半部と、異なる曲想を巧く融合させた3部構成は唯一無比で、これぞ天才ポールの真骨頂といえるキラー・チューンだ。この曲の素晴らしさにについてはまだまだ言い足りないが、先に進まなくてはいけない(^.^)
②「ジェット」はまずその風雲急を告げるようなイントロでガツン!とやられる。ギターのカッティングもシビレるし、ポールの乾いたドラミングも素晴らしい。疾走感を更に加速させるようなコーラス・ワークも絶品だ。1分58秒と2分58秒で右チャンネルから炸裂する火の出るようなピアノを始め、隅々まで様々なアイデアが詰まったこの分厚い音は圧巻だ。まさにヒット曲のお手本のようなカッコ良いロックンロール・ナンバーだと思う。因みに私はこの曲のおかげ(?)で lady suffragette(婦人参政権論者)などという大学入試にも出てこないような難しい単語を知っていたヘンな中学生だった。
③「ブルーバード」はポールお得意のアコギを使ったスロー・バラッドだが決して甘さに流されていないところがこの時期のポールの充実ぶりを示している。温か味溢れる間奏のサックスとコーラスの絡みなんか、絶頂期のポールならではの余裕を感じさせる見事なアレンジで、聴いていて心にポッと灯がともるような感じがする。ロマンチスト、ポールの面目躍如たる素晴らしいラヴ・ソングだと思う。
④「ミセス・ヴァンデビルト」は “ホッ ヘホッ♪” という掛け声が耳に残る印象的なナンバーで、アフリカの民族音楽調の曲想が実にユニークだ。これ、理屈抜きで大好き(^o^)丿 絶妙なアコギのリズム・カッティングといい、ビシバシきめるポールのドラミングといい、ハウィ・ケイシーの怒涛のサックス・ソロといい、その全てが躍動感に溢れ、音楽ってエエなぁ... と実感させてくれる。何よりも楽曲全体を引き締めるポールのベースが圧倒的に、超越的に素晴らしい!!!
⑤「レット・ミー・ロール・イット」は一転してキーボードとヘヴィーなギターというまるでプラスティック・オノ・バンドのようなシンプルなオケをバックに堂々たる歌声を聴かせるポールはジョン・レノンを意識しているようにも聞こえるのだがどうだろう?
⑥「マムーニア」はいかにも “アフリカしてる” 感じが伝わってくるホノボノ・タイプのナンバーで、アコギの音色が清々しい風を運んできてくれるユニークな1曲だ。⑦「ノー・ワーズ」は何となくジョージっぽい曲想(イントロのギターといい、“ノーワーズ フォー マァイ ラァ~ヴ♪”のパートといい、「ギヴ・ミー・ラヴ」の頃のジョージしてないですか?)の穏やかなナンバーだが、中盤のファルセット・ヴォイスやエンディングのギター・ソロはポールならではだ。トニー・ヴィスコンティのストリングス・アレンジも光っている。
⑧「ピカソの遺言」は “Drink to me, drink to my health♪” というサビのメロディーの単調な繰り返しからテンポ・チェンジ、途中ケイト・ブッシュの「魔物語」を想わせるリズム・ボックスをバックに「ジェット」のフレーズが再登場したり、エンディングは「ミセス・ヴァンデビルト」のフレーズでフェイド・アウトしたりとトータル・アルバムを意識した構成で楽しませてくれる。
⑨「西暦1985年」はこのアルバムの中で私が最も好きな曲で、そのダイナミックな曲想といい、緊張感溢れるサウンドを生み出すピアノ連打のリフといい、ポップでありながらプログレッシヴという難題を軽くクリアしている。ムーグとホーンで盛り上げる後半部も凄まじく、ピアノ、ギターにストリングスも加わった重厚なサウンドは圧巻の一言。エンディングで“バァ~ ドォン ザラァ~ン♪” と①のサビが流れてくるところなんかもう鳥肌モノだ。
天才ポールがその持てる才能を存分に発揮し、全編を通してまったくダレることなく力強さと躍動感に溢れたスリリングなマッカートニー・ミュージックが楽しめるこのアルバムは、ビートルズ各メンバーのソロ作品の中で、いや、70年代にリリースされたすべてのポップ/ロック・アルバムの中で最高峰に位置する1枚だと思う。
Nineteen Hundred and Eighty Five by Paul McCartney and Wings