
太陽系から約4.3光年(約40兆km)の距離にある、最も近い恒星系「アルファ・ケンタウリ」に超小型の宇宙船を送りこむプロジェクトが「ブレークスルー・スターショット」です。2016年に始動したもののまだ実現に至ってはいないこのプロジェクトですが、この度「新しい帆」のコンセプトが完成したことが報告されました。
ブレークスルー・スターショット計画を簡単に説明すると、大きさ数mm、重さ数g程度の探査機に3mほどの帆を取り付け、帆にレーザー光線を照射し続けることで探査機を加速させ、アルファ・ケンタウリに到達させるというものです。
レーザー照射により探査機は光速の20%にまで加速し、通常のロケットであれば数万年かかるところをわずか20年でたどり着けるというわけ。物理学者のスティーヴン・ホーキングらが立ち上げたこのプロジェクトにはマーク・ザッカーバーグ氏や投資家のユーリ・ミルナー氏らが多額の寄付を行っており、実現に向けて着々と準備が進められています。
しかし、このプロジェクトにはさまざまな課題が存在します。1つは「レーザー照射を帆に当て続けることが困難だ」というもの。総量1GWにもなるレーザー照射をわずか3mの帆に当て続けるのは至難の業であり、さらに地球を覆う大気が誤差を生み、加速力を大幅に低下させる可能性があるとも考えられています。
これに関しては、2021年に「人工衛星を使ってレーザーを補正する」というアイデアが提案されています。このアイデアは、人工衛星から地上に向けてレーザーを発射することで大気によって生じる誤差を測定し、その後に本格的な照射を行うというものです。アイデアが実現するかどうかを確認するため、実験室レベルでテストを行う計画が立てられています。
もう1つの課題が「大出力のレーザー照射に耐える帆が必要だ」というものです。仮にレーザー照射がうまくいっても、それを受ける帆が溶けたり破れたりしてしまっては加速力を得ることができません。そのため、レーザー照射に耐える耐久力の高い帆の開発が進められていました。
そして今回、ペンシルバニア大学のイゴール・バルガティン氏らが新しい形状の帆のコンセプトが完成したと発表しました。コンセプトデザインは以下のようなもの。 酸化アルミニウムと二硫化モリブデンでできており、1枚の紙の1000分の1の薄さに仕上がっているとのことです。
バルガティン氏らは「薄い帆は非常に波打ちやすいというのが特長です。そのため、私たちが求める帆がどのような構造をとるのかについて複雑な計算を行った結果、平らな形状ではなく湾曲した構造に仕上がりました」と述べています。
さらに、レーザー照射により帆が加熱されて溶けてしまうことを防ぐため、一定の間隔で穴が空いた構造になっているとのこと。これにより帆の熱放射が最適に行われ、レーザー照射を最大限に行えるとのことです。
@昔、夢は夜開くという歌が流行りましたが、戦争で使うエネルギーを全宇宙に向ければ、それこそ光速の5割くらいは克服できるような気がします。最後は、光を超越する量子もつれ(ベルの不等式の破れ)ですです。