転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



尾上菊之助が来年5月「8代目菊五郎」襲名
当代菊五郎も名前変わらず、歌舞伎史上初の大名跡「菊五郎」2人に
(スポーツ報知 2024年5月27日 15時0分)
『松竹は27日、都内で会見し、歌舞伎俳優・尾上菊之助(46)が、来年5月に「尾上菊五郎」の8代目を襲名することを発表した。「菊五郎」は歌舞伎最高峰の「市川團十郎」に次ぐ大名跡。これに伴い、菊之助の長男、尾上丑之助(10)が「尾上菊之助」の6代目を継ぐ。』『長男、孫が襲名する流れで、菊之助の父で当代尾上菊五郎(7代目、81)の芸名に注目が集まるが、変えることなく、そのまま「菊五郎」を全うする。同時期に同じ大名跡の役者が2人存在するのは約400年の歌舞伎史でも前例がなく、初めてのことだ。』『襲名披露興行は来年5、6月の東京・歌舞伎座から2026年6月の博多座まで。演目は5月が「二人道成寺」「口上」「弁天娘女男白浪」、6月が「菅原伝授手習鑑」の「車引」「寺子屋」、「口上」、「連獅子」となる。』

なんと、團菊祭千秋楽のあと、こういう発表が控えていたのか。
菊五郎襲名は、興行的には團十郎襲名が一段落ついてからだな、
と去年あたりから思っていたが、年齢的にも舞台成果からしても、
菊之助の菊五郎襲名は、既に満を持してという状態だったから、
あとは具体的に「いつになるか」だけと、心待ちにしていた。
来年の團菊祭が大いに楽しみになったな。

一方、菊五郎がどうするのかは、長らく私の関心事だった。
菊五郎の俳名が梅幸だから、これを使うのかな?と思ったりしていたのだが、
ふたり菊五郎、などという離れ業があり得たとは。
まあ、今の歌舞伎界の頂点が菊五郎だから、御本人の意向とあらば、
これはもう、異を唱える人など居ないよね(^_^;。
襲名興行からは、七代目!八代目!で区別することになるのね。
また現実的には、菊五郎の足腰の状態では襲名狂言に何か出すのも難しいだろうから、
何も襲名しないという選択もありだったかな、と思ったり。

菊之助のほうは、この名前は幼名ではないという前提が私にはあり、
少なくとも高校生くらいになってから襲名するものだろう、
という感覚でこれまでは見ていたのだが、
今の丑之助の実力は既に子役の域には収まらないから、
いっそ小学生の菊之助が誕生しても、この際、良いかもしれない。
ひとつひとつ着実にやってきている丑之助なので、
菊之助としての時間がたっぷりとあるのは、きっと良いことだ。
音羽屋の家の芸を、これからも丁寧に受け継いで行って貰いたいものだ。

こりゃ来年はえらいことだな。
私も、長年の音羽会会員としまして、やはりここはお祝いをせねば(^_^;。
そして、残る関心事は、左近の辰之助襲名がいつになるかという………。
三之助(市川新之助・尾上菊之助・尾上辰之助)のうち、
辰之助だけがまだ居ないということになるじゃないか(^_^;。
この春の名題試験にも受かったことだし、左近もそろそろ……。
ああ、團菊左(市川團十郎・尾上菊五郎・市川左團次)で言えば、
左團次も居て頂かなくてはねえ。こうなったら早く(笑)!


尾上菊五郎2人体制へ 歌舞伎史上初
菊之助が菊五郎、丑之助が菊之助襲名へ 現在の菊五郎はそのまま
(スポニチAnnex 2024年5月27日 15:00)
『七代目どうするんだと言う言葉があると思いますが、私も52年間名乗らせてもらった名前を今更変える気はなくて、七代目菊五郎も歌舞伎人生を全うしたいと思いますので、それまでは私も負けずに努めてまいりたいと思います。たまには菊五郎同士が舞台でバッティングするかもしれませんが、そのときは七代目、八代目と呼んでいただければと思っております』


【ライブ】尾上菊之助さん「八代目・尾上菊五郎」襲名 尾上丑之助さん「六代目・尾上菊之助」襲名 襲名披露会見 TBS NEWS DIG(YouTube 2024年5月27日)
↑丑之助がやたらとしっかりしている(汗)。10歳だよね??


尾上菊之助が八代目尾上菊五郎、尾上丑之助が六代目尾上菊之助を襲名(ステージナタリー)
2025年5月 東京・ 歌舞伎座
昼の部 「二人道成寺」
白拍子花子:尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎
白拍子花子:尾上丑之助改め六代目尾上菊之助

夜の部 襲名披露口上
「弁天娘女男白浪」〈浜松屋・極楽寺屋根〉
弁天小僧菊之助:尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎
「弁天娘女男白浪」〈稲瀬川勢揃い〉
弁天小僧菊之助:尾上丑之助改め六代目尾上菊之助

2025年6月 東京・歌舞伎座
昼の部 「『菅原伝授手習鑑』車引」
梅王丸:尾上丑之助改め六代目尾上菊之助
「『菅原伝授手習鑑』寺子屋」
松王丸:尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎

夜の部 襲名披露口上
「連獅子」
狂言師右近後に親獅子の精:尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎
狂言師左近後に仔獅子の精:尾上丑之助改め六代目尾上菊之助

Trackback ( 0 )




23日(木)は昼の部観劇。
最初は『おしどり』、松也・尾上右近・萬太郎。
前半長唄、後半常磐津の舞踊劇。
右近が美しかった。松也も歌舞伎座に似合う貫禄が出てきたと思った。
萬太郎は達者に演じてくれるからこその敵役なのだと思うが、
設定が、やられるし・フられるしで、可哀想(^_^;だった。
総じて、若い人たちは体が利くので、踊りが冴えていて、
かたちが美しく、目の保養の舞台だった。



次が四世市川左團次一年祭追善狂言で『毛抜』。
左團次のおハコで、息子の男女蔵の堂々たる晴れ姿、感無量であった。
あれは15年くらい前の博多座だったと思うのだが、
『曾我対面』で近江小藤太を務めていた男女蔵があまりに左團次に似ていて、
私は思わずガン見して、前方席だったせいで男女蔵と目が合ってしまい、
しばらく見つめ合っていたことが、未だに忘れられない(汗)。
しかし今回の粂寺弾正は、左團次生き写しとまでは感じなくて、
むしろ男女蔵ならではの一幕を見せて貰えた手応えがあり、嬉しかった。
なんとものびのびとした気持ちの良い舞台姿で、
声も伸びやかによく通り、おおどかな主役ぶりであった。
役付に関して、左團次は息子を甘やかさなかった、と私は感じているのだが、
その父のもとで、男女蔵がこれほどまっすぐに精進し力を蓄え、
見事な役者に成長していたとは、本当に嬉しい発見であった。
今回の『毛抜』の成果で、これから更に大きな役が来ると良いなと思っている。
左團次の孫・男女蔵の息子の男寅が、可憐な錦の前を務めていて、
これもなかなか美しくて良かった。

小野春道に菊五郎。
短い出番ではあったが、朗々たる台詞はまさに旦那さんの真骨頂。
立って、歩いて進む出方で、お御足のほうも万全ではないにしても
ご回復傾向かなと嬉しく思った。
盟友・左團次の嫡男の晴れの日とあって菊五郎の出演が叶ったほか、
時蔵・鴈治郎・萬次郎・又五郎と、重量級の豪華な顔ぶれであった。
最後の花道では、市川宗家として團十郎が後見につく贅沢さ。

昼の部最後は、團十郎の『極付幡随長兵衛』。
すっかり手の内に入って、余裕のある大きな主役姿であった。
女房お時が児太郎で、大柄なのだが團十郎と並ぶとなかなか見応えがあり、
息の合ったところを感じた。
悪役の菊之助は私には久しぶりだったのではないかと思うが、
姿が良いので敵役もまたお似合いであった。
松緑などが演じるような不良少年っぽさは無かったが、
若さや位取りなど、團十郎の長兵衛とのバランスが大変良かった。
なつおちゃん(先代の團十郎)が居なくなり、
『幡随長兵衛』はいつしか、名実ともに当代團十郎の役になったのだなあ、
という時の流れを感じ、感慨深く思った。

  

**********************

今回、両日とも一番後ろの席を会員先行の段階で率先して取ったのは
「できるだけ周囲に煩わされず集中したい」
という、私にとって大切な團菊祭ならばこその、理由があったからだった。
2013年に歌舞伎座が新しくなってからこれまで十年余、
1階から3階の様々な場所、2階3階桟敷、幕見、
と随分いろいろ試してきて、臨場感重視か・贔屓注視か・全体像把握かと
自分なり・演目なりの欲求を満たす席位置について研究を重ね(笑)、
ついに、還暦目前にして快適さ最優先で落ち着いたのが、「最後列の端」。
よほどの完売公演でない限り、隣が居らず、平日なら高確率で前も空いており、
周辺の私語や物音に煩わされず、ひじかけを両側ともに存分に独占できる。
更に、自分の居る場所がいちばん後ろであるため、
前のめりどころか立ち上がってもOKで、自由な姿勢で花道が覗ける。
ストレスフリーで舞台全景が堪能できる最高の席は最後尾の端、
と私はついに、悟ったのである。

結果として、観劇に関しては二日間とも大いに満足できたのだが、
ひとつ、わかったことがあった。
それは、2階のいちばん後ろの端というのは、空いていることが多いせいか、
ほかのお客さん方から、いとも気軽に扱われている、ということだ。
まず、開演前に、私が着席したら、前方から全然知らない人がやってきて、
『きょう都合で最後まで居られないことになってしまったので、
前方○列一等席の私の席と、この最後列の端の席とを、
よかったら交換して貰えませんか』
と申し入れられた。
丁寧に言って下さったし、さぞやお困りなのだろうとは察せられたのだが、
私としても松竹歌舞伎会先行予約で最初から思い定めて取った席なので、
自分にとってはここが良い理由があるのでと、お詫びして、お断りをした。
本当に申し訳なかったが、ここしかなくて仕方なく買った席ではないし、
私は常日頃から、「前方席ほど良い」という感覚では席を取っていないので。

そのあと、幕間になって席を立って、食事を済ませコーヒーを買って戻って来たら、
なんと、私の席に、見知らぬ人が座り、その隣の席には荷物を置き、
ゆっくりとお弁当を広げて、御食事の真っ最中であった。
完全に間違えて着席されているのかと思い、私は寄っていって自分の券を見せ、
すみませんがここは私の席だと思うのですが、……と控えめに声をかけた。
するとその方は、はじめ私の話がうまく理解できない様子だったが、
次第に大変に驚かれ、
『空いている席だとばかり思ってて。
自分の席が狭いので、ここでお弁当を食べれば良いと思っていた』
という意味のことを言われ、片付けて、立って行かれた。

そして、その次の休憩時間に、私が化粧室に行ってから戻って来たら、
またしても、私の席とその隣の席とに、知らない人達が座っていて、
活発にお喋り中であった。
私が今度も、自分のチケットを見せ、
『すみませんが、ここは私の席なので……』
と話しかけたら、果たしてその方々もまたとてもビックリされた様子で、
『空いていると思い込んでいた』というようなことを言いながら去って行かれた。

皆さん、これが1階最前列だったら、いや1階17列であったとしても、
見た感じ人が居ないからって、そんなに気軽に座らないですよね?
2階最後尾は自由にみんなで使っていい、というその感覚は、一体どこから???
私のように、是非ともそこが良いという理由があって、
先行発売初日に買っている人間もいるのだ。
幕見とは違う、というか、ここは指定席であり二等席なのございますよ(^_^;。
どうかよろしくお願いしますね?

Trackback ( 0 )




5月22日(水)23日(木)の一泊二日で、歌舞伎座に行って来た。
團菊祭で、四世市川左團次一年祭追善狂言もあった。
22日に夜の部『伽羅先代萩』『四千両小判梅葉』、
23日に昼の部『おしどり』『毛抜』『極付幡随長兵衛』。
夜の部は一階最後尾、昼の部は二階最後尾の席で、それぞれ、観た。

『伽羅先代萩』は菊之助の政岡、2017年の團菊祭のときとは異なり、
今回は「まま炊き」をすべて丁寧に演じたが、
炊けた御飯を握っておむすびにするところは屏風の陰で行い、見せなかった。
やってやれなくはなかったと思うが、手の白粉がついてしまうので、
それを子役に食べさせるのは――という配慮であっただろうかと思われた。
その子役たち、今回は、鶴千代君に種太郎、千松に丑之助という配役で、
二人がいずれ劣らぬ大変な名演で、かつ主従としてのバランスも絶妙で、
政岡ひとりの力演という舞台ではなく、『御殿』の場面としての、
自然な感情の起伏や迸りにつながり、とてもとても良かった。
「まま炊き」の場面は正直に言って長いのだが、
ここが巧く流れるかどうかは、政岡の演技や手技だけでなく、
子役たちの芝居に負うところが大きいのだと、今回よくわかった。

栄御前に雀右衛門。
存在感が大きく、品格あり貫禄十分で、敵方の頭、……と感じさせるのだが、
役の設定としては、この栄御前というのは大事なところで勘違いをする御方(^_^;。
なんとなく憎めないというか(^_^;。
敵役の八汐は、本役の歌六が病気休演をしたため、
私の観た日はなんと、芝のぶ代役!
女形の演じる八汐を観たのは、初めてだったかもしれない。
女形の八汐は美貌で、リアルで、ストレートに怖いと思った。
いや、それこそが芝のぶの芝居ということなのかも…?
團十郎が仁木弾正で、素晴らしい迫力であった。
台詞ひとつなく、花道に登場し、蝋燭の灯りの中で去って行くだけなのだが
この舞台の成否は、仁木弾正の退場の場面にすべてかかっていると思った。

後半が、松緑の『四千両小判梅葉』。
松緑は、しみじみ良かった。私はこの人の芝居が年々好きになる。
姿勢がピタリピタリと決まり、芝居には篤い情があり、
声が素晴らしく通って、言葉の音ひとつひとつが私好み!
菊五郎の台詞の深みとは趣が違うのだが、あらしちゃんの日本語には
実に歌舞伎らしい美しさがあって、私は大好きだ。

富蔵が護送されていく場面では、橘太郎が憎々しい演技で大活躍。
浜田左内の権十郎も、良い味わい。
私は昔からこの人の声も大好きで。
何年か前の一時期、咽喉が悪かったのか、声が荒れていたことがあったが、
最近は冴え渡っていてとても嬉しい。

……しかしこの芝居、私は多分、観るのは三度目だったと思うのだが、
牢に入った途端、なぜ、かくも様式美に貫かれた、格式高い世界になるのか、
誰のを観ても、不思議な気分になってしまう(^_^;。
四千両を盗んだ富蔵は、罪人仲間の中では破格の英雄なので(爆)
「日本一!」の歓声に送られて、ハリツケになるのだが、
偉いのね?いいのね?という……、やたらと格好良くて困るよね(大汗)??

梅枝が女房おさよ、これがまた震えが来るほど良くて、
Xのポストでも見た表現だが、まさにトップ待ちオーラ!?
左近がなかなかシュっとした姿の美少年、
でももうワルで札付きなのよね、牢屋に来ちゃった子なのだから。
あの、片方の足首の上にもう片方の足の爪先を載せる跪(ひざまづ)き方、
なんという名称なのだろうか。左近少年のがとても妖しくて良かった(^_^;。
最初の四谷見附の場で、おでんと酒を機嫌良く楽しんでいた咲十郎と松悟も、
やっぱり牢で再会する展開で、皆さん、ヤっちゃったんですねぇ(^_^;と。

牢内は名優揃いで、しかもこの様式は、当時の牢の作法を
河竹黙阿弥が聴き取り調査で記録・再現したものだそうで、圧巻だった。
大昔、初代辰之助が、隅の隠居を演っていたんだよぉ(T_T)、
と思い出したりしたが、ここで團蔵の冴えた演技を観られたことが
今回とても嬉しかった。声も所作も渋くて絶品!
牢名主は、休演の歌六の代役で、彌十郎。
富蔵の義父の六兵衛との二役で、彌十郎の引き出しの多さが実感できた。
それにつけても、松江のスッテン踊り……(爆)!!シぬかと!!

お裁きの場面では、鷹之資が堂々たる姿と台詞で締めてくれたし、
楽善の貫禄にも満足した。
藤十郎の梅玉、脚本上は前半はひたすら小物な殿様だったが(汗)、
最後に富蔵と並んで言い渡しを受け、刑を受け入れるところは
目の覚めるような立派な立ち姿で、やっぱりカッコ良かった、という…。
極悪人の大泥棒の門出を褒め称えてどうするよ、と思いつつ、
客席もまた、天晴れ!日本一!と心の中で大喝采を送ってしまうのであった。


(続)

Trackback ( 0 )