転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



23日(木)は昼の部観劇。
最初は『おしどり』、松也・尾上右近・萬太郎。
前半長唄、後半常磐津の舞踊劇。
右近が美しかった。松也も歌舞伎座に似合う貫禄が出てきたと思った。
萬太郎は達者に演じてくれるからこその敵役なのだと思うが、
設定が、やられるし・フられるしで、可哀想(^_^;だった。
総じて、若い人たちは体が利くので、踊りが冴えていて、
かたちが美しく、目の保養の舞台だった。



次が四世市川左團次一年祭追善狂言で『毛抜』。
左團次のおハコで、息子の男女蔵の堂々たる晴れ姿、感無量であった。
あれは15年くらい前の博多座だったと思うのだが、
『曾我対面』で近江小藤太を務めていた男女蔵があまりに左團次に似ていて、
私は思わずガン見して、前方席だったせいで男女蔵と目が合ってしまい、
しばらく見つめ合っていたことが、未だに忘れられない(汗)。
しかし今回の粂寺弾正は、左團次生き写しとまでは感じなくて、
むしろ男女蔵ならではの一幕を見せて貰えた手応えがあり、嬉しかった。
なんとものびのびとした気持ちの良い舞台姿で、
声も伸びやかによく通り、おおどかな主役ぶりであった。
役付に関して、左團次は息子を甘やかさなかった、と私は感じているのだが、
その父のもとで、男女蔵がこれほどまっすぐに精進し力を蓄え、
見事な役者に成長していたとは、本当に嬉しい発見であった。
今回の『毛抜』の成果で、これから更に大きな役が来ると良いなと思っている。
左團次の孫・男女蔵の息子の男寅が、可憐な錦の前を務めていて、
これもなかなか美しくて良かった。

小野春道に菊五郎。
短い出番ではあったが、朗々たる台詞はまさに旦那さんの真骨頂。
立って、歩いて進む出方で、お御足のほうも万全ではないにしても
ご回復傾向かなと嬉しく思った。
盟友・左團次の嫡男の晴れの日とあって菊五郎の出演が叶ったほか、
時蔵・鴈治郎・萬次郎・又五郎と、重量級の豪華な顔ぶれであった。
最後の花道では、市川宗家として團十郎が後見につく贅沢さ。

昼の部最後は、團十郎の『極付幡随長兵衛』。
すっかり手の内に入って、余裕のある大きな主役姿であった。
女房お時が児太郎で、大柄なのだが團十郎と並ぶとなかなか見応えがあり、
息の合ったところを感じた。
悪役の菊之助は私には久しぶりだったのではないかと思うが、
姿が良いので敵役もまたお似合いであった。
松緑などが演じるような不良少年っぽさは無かったが、
若さや位取りなど、團十郎の長兵衛とのバランスが大変良かった。
なつおちゃん(先代の團十郎)が居なくなり、
『幡随長兵衛』はいつしか、名実ともに当代團十郎の役になったのだなあ、
という時の流れを感じ、感慨深く思った。

  

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今回、両日とも一番後ろの席を会員先行の段階で率先して取ったのは
「できるだけ周囲に煩わされず集中したい」
という、私にとって大切な團菊祭ならばこその、理由があったからだった。
2013年に歌舞伎座が新しくなってからこれまで十年余、
1階から3階の様々な場所、2階3階桟敷、幕見、
と随分いろいろ試してきて、臨場感重視か・贔屓注視か・全体像把握かと
自分なり・演目なりの欲求を満たす席位置について研究を重ね(笑)、
ついに、還暦目前にして快適さ最優先で落ち着いたのが、「最後列の端」。
よほどの完売公演でない限り、隣が居らず、平日なら高確率で前も空いており、
周辺の私語や物音に煩わされず、ひじかけを両側ともに存分に独占できる。
更に、自分の居る場所がいちばん後ろであるため、
前のめりどころか立ち上がってもOKで、自由な姿勢で花道が覗ける。
ストレスフリーで舞台全景が堪能できる最高の席は最後尾の端、
と私はついに、悟ったのである。

結果として、観劇に関しては二日間とも大いに満足できたのだが、
ひとつ、わかったことがあった。
それは、2階のいちばん後ろの端というのは、空いていることが多いせいか、
ほかのお客さん方から、いとも気軽に扱われている、ということだ。
まず、開演前に、私が着席したら、前方から全然知らない人がやってきて、
『きょう都合で最後まで居られないことになってしまったので、
前方○列一等席の私の席と、この最後列の端の席とを、
よかったら交換して貰えませんか』
と申し入れられた。
丁寧に言って下さったし、さぞやお困りなのだろうとは察せられたのだが、
私としても松竹歌舞伎会先行予約で最初から思い定めて取った席なので、
自分にとってはここが良い理由があるのでと、お詫びして、お断りをした。
本当に申し訳なかったが、ここしかなくて仕方なく買った席ではないし、
私は常日頃から、「前方席ほど良い」という感覚では席を取っていないので。

そのあと、幕間になって席を立って、食事を済ませコーヒーを買って戻って来たら、
なんと、私の席に、見知らぬ人が座り、その隣の席には荷物を置き、
ゆっくりとお弁当を広げて、御食事の真っ最中であった。
完全に間違えて着席されているのかと思い、私は寄っていって自分の券を見せ、
すみませんがここは私の席だと思うのですが、……と控えめに声をかけた。
するとその方は、はじめ私の話がうまく理解できない様子だったが、
次第に大変に驚かれ、
『空いている席だとばかり思ってて。
自分の席が狭いので、ここでお弁当を食べれば良いと思っていた』
という意味のことを言われ、片付けて、立って行かれた。

そして、その次の休憩時間に、私が化粧室に行ってから戻って来たら、
またしても、私の席とその隣の席とに、知らない人達が座っていて、
活発にお喋り中であった。
私が今度も、自分のチケットを見せ、
『すみませんが、ここは私の席なので……』
と話しかけたら、果たしてその方々もまたとてもビックリされた様子で、
『空いていると思い込んでいた』というようなことを言いながら去って行かれた。

皆さん、これが1階最前列だったら、いや1階17列であったとしても、
見た感じ人が居ないからって、そんなに気軽に座らないですよね?
2階最後尾は自由にみんなで使っていい、というその感覚は、一体どこから???
私のように、是非ともそこが良いという理由があって、
先行発売初日に買っている人間もいるのだ。
幕見とは違う、というか、ここは指定席であり二等席なのございますよ(^_^;。
どうかよろしくお願いしますね?

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