転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



5月12日(日)は広島交響楽団の演奏会に行った。
マルタ・アルゲリッチが客演したからだ。
指揮はクリスティアン・アルミンク。
午後3時開演、会場は広島文化学園HBGホール。

プログラムは前半が2曲続けてのアダージョで、
日本初演アレクサンドル・ゴノボリン『弦楽のためのアダージョ』、
次がマーラー『交響曲第10番へ長調「アダージョ」』。
このうえなく繊細に真摯に、音と音を重ねて行くという音楽で、
目下の世界情勢を踏まえ、被爆都市・広島から平和への祈りを捧げる、
……といった趣の2曲だったと感じられた。

アルゲリッチの登場は後半で、
プロコフィエフ『ピアノ協奏曲第3番ハ長調作品26』。
アルゲリッチ82歳、歩く姿はさすがに年齢を感じさせたのだが、
演奏になると軽々というか何というか、もう、自由自在、
まさに闊達、良い意味での「弾き飛ばし」。
実に無造作にテキトーに鍵盤に触れるだけで、
信じられないような鮮やかな音楽が紡ぎ出され、
アルゲリッチにとってピアノの「技巧」などというものは
存在していないも同然のように見えた(汗)。

会場は総立ちの大興奮で、アルゲリッチも笑顔で拍手に応え、
アンコールが3曲も。
シューマン『夢のもつれ』、バッハ『イギリス組曲第3番ガヴォット』、
そして広響とともに再びプロコフィエフ『ピアノ協奏曲第3番第3楽章』。
いやはや、どんな様式の曲も、たちどころに思いのままに傑作に仕上がる、
マルタ・アルゲリッチ様なのであった。

私の席が悪かったのかもしれないが、音響の面では、
オケが若干前に出すぎで、アルゲリッチのニュアンスが聴き取りにくい、
と感じた箇所が、特に1楽章にはいくつかあった。
当日のアルゲリッチは演奏会後、ホールに満足していなかった、
と又聞きで耳にしたので、その厳密な真偽はおくとしても、
そういう話が出て来るところをみると、
やはり多少、会場の音響に問題があったのではないかという気は、した。
せっかく地元オケがあるのだから、今後は広島に是非、
演奏会に特化した、新しい良いホールを建設して貰いたいものだ。
そして、近い将来、そうしたホールが完成したならば、
広島交響楽団の平和音楽大使であるアルゲリッチに再び客演して貰い、
盛大な杮落とし公演のソリストを、務めて戴きたいものだと思った。


追記:この日、開場になった途端、皆に取られて当日のチラシが尽きてしまい、
更に、売場にあったアルゲリッチのCDも、瞬く間に完売してしまった。
主催者(およびCD販売業者?)は、マルタ・アルゲリッチというものの威力を
いかになんでも甘く見過ぎであった(^_^;。

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