(写真は、歌舞伎座タワー5階のギャラリーに展示されている『鰹』。
『髪結新三』では、この初鰹が舞台の空気を決定づける小道具となる)
昨日、国立劇場で菊之助の『髪結新三』を観た。
畏れ入りました!!
菊之助は近年、充実しすぎて「ヤバい」(笑)。
すらりとした立ち姿、妖しい眼差し、まろやかな声音、
それに程よく丸みの出て来た脚線美になんとも言えぬ色気があって、
ちょっとこれまで観たこともないほど美しい新三だった。
最初に新三が髪結の小道具を下げて舞台下手から出て来たとき
菊之助の目つきが、今までの彼にはなかった、
「美貌の小悪党」然としたものであることに、まず強く感心させられたが、
その次に、朝湯帰りという設定で新三が手拭い・浴衣姿で花道に登場した場面、
私はその、匂い立つ全身の美しさに心射貫かれた思いがした。
更に、閻魔堂の場で、侠客となった姿で舞台上手から姿を現したときの菊之助も
その体じゅうから発散される空気に、昏い紅色が漂うような印象があり、
ひとつひとつ、研鑽を積んだ菊之助が身につけてきたものが
こういうかたちになったのかと、強く打たれ、目を見張った。
役と向かい合う際の菊之助の、妥協を許さぬ徹底的な姿勢と、
限りなく謙虚な学び取り方を、目の当たりにした思いだった。
常に音羽屋としての正しさを高め、追求し続け、
丁寧に厳格に積み重ねてきたものが、今や豊かに実って、
いよいよ、瑞々しい大輪の花になろうとしている、と思った。
そして、我々は今ここで「芸の継承」を現在進行形で目撃している!
という手応えをひしひしと感じた。
私は長く菊五郎のファンであり続けているのだが、
息子の菊之助が、菊五郎の新三をまさに超えんとしていることを
心から嬉しく、感慨深く思っている。
菊五郎は、なんと見事な後継者を育ててくれたのだろうか!
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