転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



きょうは、娘の部屋に、おひな様を飾った。
娘の初節句に実家の両親から贈られた親王飾りだ。
今年もまた、こうしてお人形を飾る日常があるなんて、
考えてみたらとても有り難いことだ。
感謝しなくてはと思った。

さて、前々から書こうと思っていたのだが、
私は、うちのひな人形を箱から出すとき、いつも、
山岸凉子さんの三十年くらい前の漫画『ゆうれい談』を
思い出さずにいられない。

物語は、山岸先生が実際に体験なさった心霊現象が中心で、
何種類か、怖い話や幽霊目撃談などが収録されているのだが、
その中で、山岸先生が九州にお出かけになったとき、
たまたま宿泊先となった友人宅で、夜中に目覚めると枕元に、
『手ぬぐいを顔に巻きつけて、じっと座っているモノ』が見えた
というのがあるのだ。

それは普通の大人くらいの大きさだったようなのだが、
まともな人間が、深夜、自分の顔に布などをぐるりと巻いて
人様の枕元にただ黙って座っているわけがないから、
山岸先生の恐怖は、察するにあまりある(汗)。
漫画によると、それが何であったのか、
どういう理由で出現したのか、詳しいことは不明で、
ほとんど一瞬でその姿は消えていたということだった。

私は、どうもこれが、ひな人形、
それも、男雛のほうだったのではないか、という気がする。
勿論、その『ゆうれい談』で描かれているモノは、
もっと右手を上まであげて、どこかを指さすようなポーズで、
しかも顔に巻いていたのは、豆絞りの手ぬぐいだったようなので、
厳密にいうと、うちのおひな様とそっくり同じではない。

でも私は、毎年、箱の中の、一年ぶりのお内裏様を見るたびに、
『アレって、こんな感じじゃなかったのかなあ?』
と思ってしまうのだ。
おひな様を片付けるとき、顔の部分に柔らかい紙を巻いて保護し、
ずれないようにお人形の後頭部あたりで端をひねって固定する。
それは、人の顔に手ぬぐいを巻いて後ろで縛った姿にとても似ている。
人形の面紙が古くなり、たくさん紙魚(しみ)がついたりすれば、
もしかして豆絞りの模様に見えることもあるのでは、とか。
シャクを持たない時、男雛の右手はただ緩やかに上がっているから、
下から見上げると、虚空を指しているような感じではないか、とか。

『山岸先生の枕辺にいたのは、その家に古くからあった、
ひな人形か何かの霊魂ではなかったか?』
『それはもしかしたら、長い間かえりみられていない等と、
苦情を言いたくて、出たのではないか?』
などなどと、私は勝手に想像してみるのだが、違うかな。

Trackback ( 0 )