殿は今夜もご乱心

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行いと運命・6

2019年11月18日 21時11分50秒 | 前向き論
企業と義父、双方の会社が存続する限り


半永久的に続くはずだった大口取引は


C社に奪われて泡と消えた。




最初は自分の娘を守るために執行された


義父のいじめだったが


次は浮気のゴタゴタで当たるようになり


今度は仕事を奪われたイライラを


私にぶつけるようになった。


遊びに夢中で工場長とC氏の計画に気づかず


みすみす利益を失った無念が


そのまま私への口撃に成り代わったのだ。


結局、どうあっても私は彼から罵られる運命らしい。



そのC社は、順調に稼動していた。


なにしろ工場の庭に住んでいるようなものなので


よく見える。


企業舎弟の立場をひけらかして工場を見張り


仕事に口を出して、自分の会社のように運営していた。



だが、強行策だけではない。


工場の主立った人たちへの細やかな接待を始め


盆暮れの小遣いや、お年玉までふるまって


飴と鞭を上手に使い分けた。



反抗すれば、組から怖い人が飛んで来る‥


言うことを聞けば小遣いがもらえる‥


これが工場の人々に定着すると、C氏は次の行動に出る。


「工場の排気で、家族が喘息になった」


と言い出して補償を要求。



工場長は当惑した。


排気を気遣って、人家の無い場所を選んだのに


そこへ自ら引っ越しておきながら


具合が悪くなったと言われても困るというものだ。



そこでC氏は折衷案を提示した。


工場から電力を引いて、C氏の自宅と会社の電気代を


工場持ちにすることや


C社の重機を工場へ貸し出し


毎月レンタル料が入る契約を結ぶことなどで


慰謝料に替えるというものである。



逆らったら怖い人たちが来て困るし


小遣いをもらっていることを本社にバラされたら


もっと困る。


工場長は苦渋の選択で、この要求を呑んだ。


C氏と手を携え、仲良くやって行くはずが


工場長は最初からC氏に操られていたのだった。



C氏は電気料金がタダになり、重機のレンタルも好調。


なにしろ相場の3倍のレンタル料金をふっかけている。


寝ていても毎月入る、安定収入だ。


笑いが止まらないとは、このことだろう。



この時以来、工場長を始めとする工場の上役たちは


C氏の要請で月に何度か、彼の家に呼ばれて


仏壇にお参りするのが恒例となった。


実際にお参りしていた人から聞いたが


工場の排気で喘息にさせてしまったことを


C氏のご先祖様に謝罪するのだそう。



この意味がわかるだろうか。


飲食やゴルフの接待を受け、小遣いをもらい


時に組の人にすごまれて


工場の人たちは言われるままにするしかない。


先祖に謝ったとなると、健康被害を認めたも同じだ。


C氏は被害者としても、強い立場を得たことになる。


お参りの習慣は歴代の上役に引き継がれ、長きに渡って続いた。




さて、今度は義父の方だが


仕事を奪われてほどなく、再び大仕事の話が持ち上がる。


さほど遠くないD市の山中に


マンモス霊園を造成するというものだ。


山を切り崩して造成するとなると、向こう10年は仕事に困らない。


義父は、自身の強運に有頂天だった。




この話を持ち込んだのは、因縁の人物。


一騎打ちの選挙が元で


友人だったB氏から大口の仕事を切られた話をしたが


その時、義父が応援して選挙に負けた元議員E氏である。



現職でありながら新人に敗北した彼は


落選後、返り咲きを狙わず


なんだかよくわからない会社を経営しながら


色々な投資や儲け話に関わって食い繋いでいた。


そしてこのたび、奥さんの実家が所有する山林を


霊園にすることを発案し、出資者を集めていたのである。



その元議員E氏は、義父の親友。


義父はそのためにこの議員を応援して


B社の仕事を失ったのだった。



当時、B氏は仕事を切っただけでなく


義父の会社のメインバンクにも手を回した。


「うちの預金を全部、よその銀行へ移す」


支店長にそう言い渡し


義父の会社との取引を止めるよう迫ったのだ。


義父はこのことを支店長から直接聞かされた。


親切心ではない。


資産家のB氏が預金を引き上げたら、支店長の首が危ないのだ。


つまり支店長は、「もうお宅とは付き合えない」


と言いたいのだった。



うちのような手形商売は、手形という紙切れを


銀行で現金に換えることで成り立っている。


メインバンクが「付き合えない」と言うのは


「今後、手形の換金をしない」と同義語。


すると当然、手形の換金に支障が出る。


換金が遅れたり、換金できなくなると


お金が回らなくなって倒産する。


B氏は仕事を切っただけでなく


義父の再起を封じて、完全に葬るつもりだったのだ。


うなるほどの金持ちにしかできない技だが


これぞ「大人のやり方」というものである。



その時の義父は、さすがに凹んでいた。


しかし数日後には別の銀行が手を差し伸べ


メインバンクをそちらに変えて、ことなきを得た経緯がある。


義父は仕事を切られたことよりも


この件を何より深く、そして長く根に持ち続けていた。



これら苦い経験の原因になった、元議員のE氏が


ボロ儲けを引っさげて再び近づいてきたのだ。


友情のために飲んだ苦杯が、今度は美酒に変わるかもしれない‥


義父がそれに賭ける気持ちは、わかるような気がした。




義父はE氏と、霊園の造成工事を一手に引き受ける契約を交わした。


同時に大口の出資者になり、着工の日を心待ちにしていた。


《続く》

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6 コメント

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ハラハラドキドキ (kotobuki)
2019-11-18 21:45:17
え~
まだ続くんかいな~
ひっぱるの~

じいじの一生も波乱万丈~
「行いと運命」どう展開するのか、目が離せまっせ~ん

次回も楽しみィ ♪
(外野席にてゴメンナサイ)

返信する
Unknown (モモ)
2019-11-19 02:04:16
霊園造成・・・何かみりこん姉さんの話で聞いたことがあるような❓️

心の弱い、というよりはイライラを押さえる習慣が無い人は、いつまでも変わらす 、目先の自分の感情、勘定に振り回されて、運を食い潰していくのでしょうか。
返信する
続くんよ〜 (みりこん〜kotobukiさんへ)
2019-11-19 08:33:52
引っ張って申し訳ないです〜。

そういや、じいじの人生って波瀾万丈ですね!
会社を経営していると、浮き沈みが激しくなりがちで
どうしても波瀾万丈になるものですが
彼の場合、波乱の元はいつも他者の関与。
しんどい人生だったんだなあと、しみじみ思います。

楽しみにしてくださって、ありがとうございます。
返信する
そうです (みりこん〜モモさんへ)
2019-11-19 08:40:46
よく覚えててくださって、ありがとうございます。
あの霊園です。

イライラを抑えるのは理性であり
理性が発達してない人は
変わることができないのだと思います。
目先の感情で勘定に振り回されるって
深いですね。
自分ではしっかり勘定をしているつもりが
人から勘定されてしまいがち。
でも彼の口癖は「計算せえ!」でした。
返信する
モモ (Unknown)
2019-11-20 01:01:10
アツシさんの口ぐせが「計算せえ‼️」

(笑)マジですか!

すかさず「おまえもな」と、言いたい(笑)
返信する
マジです笑 (みりこん〜モモさんへ)
2019-11-20 08:36:28
アツシは暗算が得意だったので
現実的な数字の計算はもとより
営業的な駆け引きや世渡りについても
夫を始め家族に向けて
毎日のように言っていました。

「おまえもな」
そりゃもう言いたかったですよ〜。
お陰で数字の計算が早いことと
経営能力は別ものということだけは
よ〜くわかりました。
返信する

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