殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

始まりは4年前・1

2024年07月30日 09時33分59秒 | みりこん流

コメント欄でモモさんから、お題をいただいた。

『もし、お嫌でなければ、また継母さんの事件や日常を、記事にして下さい。

過去の記事でちょっとキツイ人なのかな・・・とは思いましたが

今回入院のきっかけになった、専門の医師がみたら判るという

日常でおきる問題行動などを教えて頂けたら、とおもうのですが』

 

少し前、実家の母が入院したことは記事にした。

その時はまだ、私も何が何やらわからない状態だったので

入院という曖昧な表現にとどめ

詳しいことは時期を見て、お話ししようと思っていた。

その時期とは、彼女がこの世を去った後である。

 

が、日本は今、高齢化社会だ。

今現在、老親の処遇に困っておられる方や

モモさんのように何らかの情報を

早めに得ておきたい方もいらっしゃると知った。

 

けれども老人の問題行動や医師の診断だけを切り取って

簡潔に話すのは難しい。

なぜなら老人はある日突然、変わってしまうのではないからだ。

各々の持つ個性や習慣によって違いはあれど

ずいぶん前から伏線は敷かれている。

そこから伝えた方が、先で何らかのお役に立てそうな気がするので

長くなると思うが、お話ししたいと思う。

 

 

ということで、母は6月下旬より市外の精神病院へ入院中。

補足になるが、私の実の母は6年生の時に37才で病死した。

ここでいう母は、同じ年に見合いで迎えた父の後妻である。

 

母の入院先は市外とはいえ、地元からひと山越えた所なので

さほど遠方ではない。

我々が子供の頃、そこはキ◯◯イ病院と呼ばれ

おかしなことを言ったりやったりする人がいるとすぐ

「◯◯病院へ行け」などと揶揄していた、馴染み深い老舗の病院である。

 

そして母もまた、ことあるごとに私に言っていた。

「児童相談所か、◯◯病院へ入れる」

父と結婚した翌年、38才で生んだ自分の娘に

継子の私が危害を加えないか、疑心暗鬼になっていたのだ。

 

私は児童相談所はどんな所か知らなかったので反応薄だったが

◯◯病院は怖かった。

小さい頃から、車でそこを通ることがあったからだ。

人里離れた寂しい田舎にあり、窓という窓に

頑丈な鉄格子がはめてある大きな病院に、恐怖を覚えたものである。

6月末、母は自分が言っていた、その病院へ入院した。

 

『兆候』

20年前に父が急死して以降、母は気丈に一人暮らしを続けていた。

趣味はコーラスと俳句、そして編物。

どれも老人の暇つぶしではない。

長年に渡って本気で取り組み、研鑽を積んできたものだ。

父亡き後は、それらにいっそう打ち込み

地元の同窓会や公民館などのイベントにも積極的に参加して

忙しくも楽しそうだった。

 

しかし父が他界して車を運転する者がいなくなり

買い物の足に不自由するようになったのは確か。

ドライブの好きな母のため、我々夫婦は月に一、二度

市外の大型スーパーや近場の観光へ連れて行ったり

年に2〜3回あるコーラスの発表会を見に行くようになった。

 

あと先は、たまに電話やメールをする程度で

手がかかるという部類ではなかった。

母は早くから携帯を使っていて、絵文字入りのメール送信もできる。

頭はハッキリ、身体は並外れて頑丈…

肩こりすら知らない、パワフルなお婆ちゃんだったので

心配する必要は無かった。

このユルいペースは、16年ほど続いた。

 

そして4年前の夏…

当時は、母が言い出した墓じまいの作業が完了した時期だった。

やれやれ、と思った途端、母は道路で転倒。

何の段差も無い歩道で、いきなり転んだそうだ。

数日前のことで、その時は怪我も痛みも無かったため

放っておいたら、打ったアゴ全体が黒くなったという。

 

ちょうど買い物に連れて行く日だったので

マスクに隠された現物を見た。

アゴ全体が、ブドウみたいに見事な黒紫色で

ギョッとするような光景になっている。

アゴが黒くなって驚いた母は、慌ててかかりつけの医院へ行ったが

怪我ならともかく、アザは治しようが無いと言われたそうで

この世の終わりのように嘆いた。

 

そこで買い物に行った時、薬局で漢方薬に詳しい薬剤師にたずねて

あれは何と言う薬だったか…

黒アザが早く消えるというカネボウの漢方薬を紹介してもらった。

打ってすぐに飲む薬と、日数が経ってから飲む薬は違うそうで

転んでから日数が経っていた母は、後者である。

飲み始めると、数日で黒アザは綺麗に消えた。

 

ともあれ転倒を知った時、私にはピンとくるものがあった。

「転んだら近い」

我々同級生で結成する5人会では、これが合言葉になっているからだ。

 

近いのは自宅介護か、病院か、施設か、あの世かは不明。

とにかく老人の転倒は、脳と身体の衰えが表面化した結果であり

それに伴って我々の生活が変化せざるをえない、その合図だと

経験者のけいちゃん、マミちゃん、モンちゃん、ユリちゃんから聞いていた。

つまり5人会のメンバーで私以外は皆、「転んだら近い」を経験しているのだ。

 

しかし彼女らの親や姑は、揃って大腿骨やヒザの骨折だ。

そりゃあ、入院や施設入りで生活も変わるだろう。

一方、母はアゴが黒くなっただけで無傷。

この場合、どうなるのだろうと考えたが、その時はわからなかった。

《続く》


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