[ニュース分析]世紀の会談の成否わける4つのポイント
CVID-体制保証の「ビッグディール」盛り込んだ共同声明が最大の関心事
憎悪と不信で綴りあわされた70年間の歳月を後にし、朝米首脳が12日午前9時(韓国時間10時)、シンガポール・セントーサ島のカペラホテルで「世紀の会談」を開く。この首脳会談はこれまで類を見ない独特な会談に挙げられる。ドナルド・トランプ大統領は、これについて「未知の領域」と表現しており、北朝鮮の「朝鮮中央通信」も「全世界の関心と期待の中、歴史上初めて進められる」と報じた。実務レベルで合意した結果を確認する“外交儀式”にとどまる一般的首脳会談と異なり、結果が一寸先も見通せない「霧の中」という点も、今回の会談の大きな特徴だ。それだけに、注目すべき“観戦ポイント”も多い。
1.共同声明は出るだろうか?
朝米が大胆な合意をした場合、9・19共同声明+αを盛り込む見込み
2.拡大会談の陪席者は?
両首脳会談の後、金英哲・ポンペオが調整
3.実務昼食会はいかに進めるか?
トランプ大統領の公言通り“ハンバーガー昼食会”になるかに関心集まる
4.儀典の一つ一つが新しい歴史
世紀の握手しながら交わす挨拶とは?
最初の核心関心事は、会談の成果を盛り込んだ共同声明が出るかどうかだ。一応、シンガポールで流れるニュースは肯定的だ。ホワイトハウスは11日夕方8時に声明を発表し、トランプ大統領が会談を終えて「明日、シンガポールを出発する前、記者会見(media availability)に出席する」と明らかにした。朝米はこの日2回にわたった最後の実務接触でかなりの意見折衷を行っており、メディアに公開できるほどの合意に到達したとものと見られる。
今回の会談は、実現されるまであらゆる紆余曲折を経たが、「失敗しないだろう」という見通しが優勢だった。両方とも会談を白紙化するには政治的負担が大きく、今後、交渉の動力を回復することも容易ではないからだ。さらに、トランプ大統領は8~9日、主要7カ国(G7)首脳会議で、貿易の懸案をめぐりカナダや欧州など伝統的同盟国側と大きく対立した。このような状況で、会談が成果なく終われば、11月の中間選挙を控えて大きな政治的危機を迎えざるを得ない。トランプ大統領は今回の会談が金正恩委員長にとって「ただ一度のチャンス」と述べたが、彼にも同じだった。
朝米実務会談の事情に詳しいある消息筋は11日、ハンギョレに「米国は9・19共同声明(第4回6カ国協議に関する共同声明)に北朝鮮が同意することを目標に、交渉を重ねてきた」と話した。2005年9月、6カ国協議を通じて合意された同文書は「北朝鮮がすべての核兵器と現存する核計画を放棄すること」を条件に、米国は「関係正常化のための処置」を取るという内容を盛り込んでいる。同文書は4・27板門店(パンムンジョム)宣言に盛り込まれた「朝鮮半島の完全な非核化」をもう少し具体化したものだと言える。つまり、今回の会談が成功し、共同声明が出た場合、9・19共同声明の内容を朝米が再び確認した後、互いが短期的にやり取りできる非核化と見返りの初期行動「プラスアルファ」を付け加える形になるものと見られる。米国のマスコミも米政府当局者らを引用し、「事態がうまく進めば、共同宣言が出る可能性もある」という見通しを示した。
共同声明が出れば、その中に米国が今回の会談の目標で何度も強調してきた「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)がいかに反映されるかが、最大の関心事になるものと見られる。トランプ大統領がこれまで、繰り返しその可能性を言及してきた第2、第3の追加協議の場所や時期も重要な観戦ポイントだ。スタンフォード大学のロバート・カーリン研究員は11日、ハンギョレに「重要なのは信頼構築だ。実務レベルでは信頼を構築するのが難しい。次回の会談場所や日程を決めるだけでも良いだろう」とし、今回の首脳会談の重要性を強調した。
二番目の関心事は「会談の形式」だ。 ホワイトハウスは同日発表した声明で、「トランプ大統領が金正恩委員長と通訳だけを陪席させた一対一の会談を行う」と明らかにした。一対一の会談は、トランプ大統領と金正恩委員長という二つの強力な指導者の決断によって行われる今回の会談の特徴を最も象徴的に示すものだ。トランプ大統領は今月9日の記者会見で、自分は金正恩委員長が(非核化に)真剣かどうか、「最初の1分で気づくだろう」とし、「それは私の感触で、私の感覚だ。それは私がいつもすること」だとして、自信を示した。
一対一の会談後に続く拡大会談の米国側出席者は、今回の協議の事実上主役のマイク・ポンペオ国務長官、ジョーン・ケリー大統領秘書室長、サラ・ハッカビー・サンダース大統領報道官、実務会談を率いてきたソン・キム駐フィリピン米国大使、マシュー・ポッティンジャー・アジア担当先任補佐官などだ。会談に大きな障害だったジョン・ボルトン国家安保補佐官も出席者名簿に名を連ねた。
北朝鮮側参加者は公開されていないが、ポンペオ長官と協力して今回の会談を実現させた金英哲(キム・ヨンチョル)労働党副委員長兼統一戦線部長の同席が確実視される。その外に朝米外交現場で経験を重ねてきた老練な「外交の担い手」であるリ・スヨン労働党副委員長、リ・ヨンホ外務相、ソン・キム大使の実務交渉の相手だったチェ・ソ二外務省副相などが出席するものと見られる。金正恩委員長の妹の金与正(キム・ヨジョン)労働党第1副部長が陪席するかどうかも関心事だ。金副部長は、南北首脳会談の時も、兄の金委員長を密着随行した。
三番目の関心事は拡大会談後に行われる「業務昼食会」(working lunch)のメニューだ。トランプ大統領はこれまで協議がうまくいかなければ「直ちに会談場を後にする」と述べてきたが、その可能性は消えてしまった。ホワイトハウスが拡大会談後、「業務昼食会を開催する」と発表したからだ。トランプ大統領は2016年6月の大統領選挙運動の際、「私は誰とも対話できる。私は彼(金正恩委員長)に公式晩餐会を提供するつもりはない。我々が会議席上でハンバーガーを食べながら話し合うこともできるだろう」と述べた。両首脳が本当にハンバーガーを食べるかどうかも興味深い。
最後の関心事は些細なようで意味深長な様々な儀典要素だ。両首脳の中で誰が先に会議場に入場し、相手を待つか、その時、いかなる挨拶の言葉をかけるか、プレゼントをやり取りするか、いかなる呼称で呼び合うか、会談場に国旗は置かれるかなど、この日行われるすべての行動が「新しい歴史」になる。特に、金委員長がトランプ大統領と握手や抱擁などのような身体接触をするかにも関心が集まっている。金委員長は文在寅(ムン・ジェイン)大統領と4月27日と5月26日、二回にわたる南北首脳会談の際は、抱擁する姿を見せたが、中国の習近平国家主席と会った時は二人が抱擁する場面は公開されなかった。朝日新聞はトランプ大統領と金委員長は「身長の差が20センチもあるため、2人が抱擁すればトランプ大統領が金委員長を見下ろすような印象を与える」とし、抱擁は行われないだろうと予測した。握手をする場合、トランプ大統領がこれまで他の首脳らを困らせたように、金委員長の手を強く握って力自慢をするのかも、興味深い観戦ポイントだ。