いつのことだったか、もう、2ヶ月くらいは過ぎただろうか。
自然音の専門家で、野口体操の仲間の高野昌昭さんから、連絡をいただいたのは……。
「末期の癌で、今年の11月か12月ごろまでだと宣告されましてね」
骨シンチとPSA(前立癌用の血液検査)で、580という高いPSA値が出たという。
「手術はもうできません。手遅れですって、主治医がいったんです」
電話の向うの声は、実に張りがある。
「何かの間違いじゃないんですか」
思わず発してしまった言葉だった。
抗癌剤治療は、していないのだという。
先日も、電話で話をした。元気なのだ。
「痛みがないので、助かりますよ」
「じゃ、やっぱり、何かの間違いじゃないんですか」
同じことばを言ってしまった。
しかし、癌を罹患していることは間違いなさそうだ。
一昨日送られてきたコピーは、」「がんサポート」第33号 2006年7月号だった。
高野さんを取材して、6ページにわたる大きな記事になっていた。
「よく『がんと闘ってください』と人は言うよね。僕も『がんは悪い奴だ』と思っていた。でも考えてみたら、僕が死ぬときはがんも死ぬんだな。がんは自分自身なんですよ」
痛みがないという言葉にほっとした。
高野さんは現在西洋医学に頼らない方法も試しつつ、がんの治療を続けていると、冊子コピーには書かれていた。
もうそろそろ黙るのだそうだ。
編集後記を記しておきたい。
「……自然音の専門家、高野昌昭さん。スタジオにお邪魔した際、高野さんの作品を実際に見学させていただいた。記事中のモノクロ写真では伝わりきらないが、「星のカーテン」が、音を奏でながら風に揺れてきらめく様は、まさに星空。実際に聴いたことはないが、きっとこれが星空の音なのだろうと感じた」
「おーい、がんよ、もっと話し合おうよ」という表題が、高野さんらしいと思った。
シリーズ がんと生きるー25(がんサポート 株式会社エビデンス社 03(3526)5022 発売:株式会社創英社 三省堂書店)
父も5年間、肺癌・大腸癌・肝臓癌を患った。
「苦しくないときは、もっと生きたいと思うよ。でも、苦しい日は、早く楽になりたい」
人の死というものは、「だいたい何時ごろ」と命の期限が切られても、なかなか死なないような気がする。そして、ある日突然に息を引きとるとしか思えない。
思い残すことはないといえば嘘になる。しかし、穏やかな表情の父と最期の別れをしたとき、高野さんがおっしゃるように「癌もいっしょに死んでくれたのだ。やっと楽になれたのね」しみじみと思った。
人は何処から来て、何処に行くのか。
そうだ、「星空の音」を聴かせていただこう。
自然音の専門家で、野口体操の仲間の高野昌昭さんから、連絡をいただいたのは……。
「末期の癌で、今年の11月か12月ごろまでだと宣告されましてね」
骨シンチとPSA(前立癌用の血液検査)で、580という高いPSA値が出たという。
「手術はもうできません。手遅れですって、主治医がいったんです」
電話の向うの声は、実に張りがある。
「何かの間違いじゃないんですか」
思わず発してしまった言葉だった。
抗癌剤治療は、していないのだという。
先日も、電話で話をした。元気なのだ。
「痛みがないので、助かりますよ」
「じゃ、やっぱり、何かの間違いじゃないんですか」
同じことばを言ってしまった。
しかし、癌を罹患していることは間違いなさそうだ。
一昨日送られてきたコピーは、」「がんサポート」第33号 2006年7月号だった。
高野さんを取材して、6ページにわたる大きな記事になっていた。
「よく『がんと闘ってください』と人は言うよね。僕も『がんは悪い奴だ』と思っていた。でも考えてみたら、僕が死ぬときはがんも死ぬんだな。がんは自分自身なんですよ」
痛みがないという言葉にほっとした。
高野さんは現在西洋医学に頼らない方法も試しつつ、がんの治療を続けていると、冊子コピーには書かれていた。
もうそろそろ黙るのだそうだ。
編集後記を記しておきたい。
「……自然音の専門家、高野昌昭さん。スタジオにお邪魔した際、高野さんの作品を実際に見学させていただいた。記事中のモノクロ写真では伝わりきらないが、「星のカーテン」が、音を奏でながら風に揺れてきらめく様は、まさに星空。実際に聴いたことはないが、きっとこれが星空の音なのだろうと感じた」
「おーい、がんよ、もっと話し合おうよ」という表題が、高野さんらしいと思った。
シリーズ がんと生きるー25(がんサポート 株式会社エビデンス社 03(3526)5022 発売:株式会社創英社 三省堂書店)
父も5年間、肺癌・大腸癌・肝臓癌を患った。
「苦しくないときは、もっと生きたいと思うよ。でも、苦しい日は、早く楽になりたい」
人の死というものは、「だいたい何時ごろ」と命の期限が切られても、なかなか死なないような気がする。そして、ある日突然に息を引きとるとしか思えない。
思い残すことはないといえば嘘になる。しかし、穏やかな表情の父と最期の別れをしたとき、高野さんがおっしゃるように「癌もいっしょに死んでくれたのだ。やっと楽になれたのね」しみじみと思った。
人は何処から来て、何処に行くのか。
そうだ、「星空の音」を聴かせていただこう。