羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

星空の音

2006年06月21日 20時40分02秒 | Weblog
 いつのことだったか、もう、2ヶ月くらいは過ぎただろうか。
 自然音の専門家で、野口体操の仲間の高野昌昭さんから、連絡をいただいたのは……。
「末期の癌で、今年の11月か12月ごろまでだと宣告されましてね」

 骨シンチとPSA(前立癌用の血液検査)で、580という高いPSA値が出たという。
「手術はもうできません。手遅れですって、主治医がいったんです」
 電話の向うの声は、実に張りがある。
「何かの間違いじゃないんですか」
 思わず発してしまった言葉だった。

 抗癌剤治療は、していないのだという。
 先日も、電話で話をした。元気なのだ。
「痛みがないので、助かりますよ」
「じゃ、やっぱり、何かの間違いじゃないんですか」
 同じことばを言ってしまった。

 しかし、癌を罹患していることは間違いなさそうだ。
 一昨日送られてきたコピーは、」「がんサポート」第33号 2006年7月号だった。
 高野さんを取材して、6ページにわたる大きな記事になっていた。
「よく『がんと闘ってください』と人は言うよね。僕も『がんは悪い奴だ』と思っていた。でも考えてみたら、僕が死ぬときはがんも死ぬんだな。がんは自分自身なんですよ」

 痛みがないという言葉にほっとした。
 高野さんは現在西洋医学に頼らない方法も試しつつ、がんの治療を続けていると、冊子コピーには書かれていた。
 もうそろそろ黙るのだそうだ。
 編集後記を記しておきたい。
「……自然音の専門家、高野昌昭さん。スタジオにお邪魔した際、高野さんの作品を実際に見学させていただいた。記事中のモノクロ写真では伝わりきらないが、「星のカーテン」が、音を奏でながら風に揺れてきらめく様は、まさに星空。実際に聴いたことはないが、きっとこれが星空の音なのだろうと感じた」

「おーい、がんよ、もっと話し合おうよ」という表題が、高野さんらしいと思った。
 シリーズ がんと生きるー25(がんサポート 株式会社エビデンス社 03(3526)5022 発売:株式会社創英社 三省堂書店)
 
 父も5年間、肺癌・大腸癌・肝臓癌を患った。
「苦しくないときは、もっと生きたいと思うよ。でも、苦しい日は、早く楽になりたい」
 人の死というものは、「だいたい何時ごろ」と命の期限が切られても、なかなか死なないような気がする。そして、ある日突然に息を引きとるとしか思えない。
思い残すことはないといえば嘘になる。しかし、穏やかな表情の父と最期の別れをしたとき、高野さんがおっしゃるように「癌もいっしょに死んでくれたのだ。やっと楽になれたのね」しみじみと思った。

 人は何処から来て、何処に行くのか。
そうだ、「星空の音」を聴かせていただこう。
コメント (1)
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