今朝、母の鏡台を粗大ゴミに出した。
雨に濡れるのがかわいそうな気がして、濡れないように工夫をした。
修復不可能なほど壊れているのだけれど、母の思いを想像した。
「羽鳥さんね」
二階に上がって、体操をはじめていた。
道路から男性の声が聞こえた。
階下におりてみると、鏡台はなくなっていた。
再び、二階に上がって体操を始めようとしたが、こみ上げるものがあって、部屋の柱に手を当て、さらに手の甲に額を乗せて、じっと堪えた。
しかし、悲しさに、しばし涙す。
これではいけない、とばかりに、吹っ切るように体操を再開した。
まず「やすらぎの動き」の姿勢をとった。
思い切り息を吐く。それを繰り返すうちに、からだの奥が静かになってきた。
「しばらく深い呼吸ができなかった。なのに……」
何ヶ月、いや、何年ぶりだろうか。
深い呼吸とともに、体操が続けられた。
“物の怪”とは、よくいったものだ。
ひとつ、母の代わりにしょっていたこだわりが、スーッとからだから抜けてくれたような気がした。
まだまだ新たな生活のリズムはつかめていない。
夜中に目覚めて体操をしたり、昼間に睡魔に襲われそうになったり、夜テレビを見ているといつの間にか居眠りをしたり、それなのにどんなに遅く寝ても陽が登る時間には目が醒めてしまう。
“ぐっすり眠れた感”がほしいなー。
まぁ、ぼちぼちですね。
慌てずにリズムをつかんでいきたい、と理屈で思うものの、ちょっと焦りっぽい自分を感じている。
無意識の緊張から、解放されるのは、いつのことだろう。
先日、母を訪ねた。
「今朝、はじめて私に笑ってくれました」
介護職員の女性が嬉しそうに話してくれた。
母の顔をみる。
目と頬のあたりに、入院以前の表情の片鱗をみつけた。
話をしているうちに、最近ではめっきり少なくなったという服を脱ぐスイッチが入った。
「あら、鉄火場の女みたいね」
「ほほほッ」
笑ってくれた。
「入れ墨はないけれどね」
肩脱ぎしている腕を袖に通している。
彼女もまた施設でのリズムがつかめるには、時間が必要だ。
生きているものには、自ずからのリズムがある。
生きているから、生命のリズムが生まれる。
そして、乱調もまたリズムのうちだ!
雨に濡れるのがかわいそうな気がして、濡れないように工夫をした。
修復不可能なほど壊れているのだけれど、母の思いを想像した。
「羽鳥さんね」
二階に上がって、体操をはじめていた。
道路から男性の声が聞こえた。
階下におりてみると、鏡台はなくなっていた。
再び、二階に上がって体操を始めようとしたが、こみ上げるものがあって、部屋の柱に手を当て、さらに手の甲に額を乗せて、じっと堪えた。
しかし、悲しさに、しばし涙す。
これではいけない、とばかりに、吹っ切るように体操を再開した。
まず「やすらぎの動き」の姿勢をとった。
思い切り息を吐く。それを繰り返すうちに、からだの奥が静かになってきた。
「しばらく深い呼吸ができなかった。なのに……」
何ヶ月、いや、何年ぶりだろうか。
深い呼吸とともに、体操が続けられた。
“物の怪”とは、よくいったものだ。
ひとつ、母の代わりにしょっていたこだわりが、スーッとからだから抜けてくれたような気がした。
まだまだ新たな生活のリズムはつかめていない。
夜中に目覚めて体操をしたり、昼間に睡魔に襲われそうになったり、夜テレビを見ているといつの間にか居眠りをしたり、それなのにどんなに遅く寝ても陽が登る時間には目が醒めてしまう。
“ぐっすり眠れた感”がほしいなー。
まぁ、ぼちぼちですね。
慌てずにリズムをつかんでいきたい、と理屈で思うものの、ちょっと焦りっぽい自分を感じている。
無意識の緊張から、解放されるのは、いつのことだろう。
先日、母を訪ねた。
「今朝、はじめて私に笑ってくれました」
介護職員の女性が嬉しそうに話してくれた。
母の顔をみる。
目と頬のあたりに、入院以前の表情の片鱗をみつけた。
話をしているうちに、最近ではめっきり少なくなったという服を脱ぐスイッチが入った。
「あら、鉄火場の女みたいね」
「ほほほッ」
笑ってくれた。
「入れ墨はないけれどね」
肩脱ぎしている腕を袖に通している。
彼女もまた施設でのリズムがつかめるには、時間が必要だ。
生きているものには、自ずからのリズムがある。
生きているから、生命のリズムが生まれる。
そして、乱調もまたリズムのうちだ!