羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

「ことば」と「からだ」『原初生命体としての人間』から「おきなわ」丸木美術館

2023年06月30日 13時47分06秒 | Weblog
『原初生命体としての人間』第五章「ことばと動き」を読んだとき、これが体操の教師が書いたものなのか、と天地がひっくり返る驚きを覚えた。
こんなことを言う人にはじめて出会った。


野口体操に、いや 野口三千三に惚れてしまった。
いつの頃からか気がつくと、周りの心配をよそに「野口体操ファーストの人生」を歩きはじめていた。

それはそれとして、2017年から『野口三千三伝』の本格的に資料を集め、ゆかりの人に会い、野口が生きた場所を巡っている。
ところが、一昨年からは『「野口体操」ふたたび。』の執筆と昨春の出版、その年の秋から今春の『早蕨 特別号「野口三千三先生を偲ぶ」』の編集と発行で「三千三伝」に集中できなかった。

疲れたー!
でも、そろそろ歩き出さなくちゃ。
勢いつけに6月最後の日曜日、鍵本景子さんの紙芝居『おきなわ 島のこえ』丸木俊 丸木位里作 を見せてもらうことにした。
紙芝居がおわってから、初めて出会った方々と話を交わすことができた。
行ってよかった。その思いを胸に夜10時過ぎの中央線で帰宅した。

その週の水曜日、この機を逃してはいけないとばかりに、埼玉県東松山市唐子「丸木美術館」を訪ねた。

美術館に寄せられた祈りのことば

池袋から東武東上線に乗り、森林公園駅を下車しタクシーに乗りこんだ。
何気なく窓から外を眺める。
「ずいぶんと一戸建てやアパートが多く建っているんですね」
思わず運転手さんに尋ねた。
「ここに住んでいる人たちは、どこに勤めているんですか」
「この先に工業団地があるんですわ。百社はくだらないかなー」
5分もしないうちに、綺麗に舗装された道の両脇に、次々と会社名の入った工場が現れる。
「昔、ここは陸軍の松山飛行場だったんですよ。飛行場として使われる前に終戦になちゃったんですけどね」
「陸軍ですかー、その後は工業団地に」
「いえいえ、戦後は農地として開拓されたんです。でも日本が工業化に突き進んだ時代に工業団地に転用されていったんです」

戦中、戦後の歴史がそのままここにはある。
そうこうするうちに、美術館のある唐子地区に差し掛かると景色は一転。
雑木林や長く伸びた夏草に囲まれた細い土の道に分け入っていく。
車は急にスピードを落とす。
そこからは数分だろうか。
美術館に到着した。

美術館を取り巻く自然 鶯が鳴く比企丘陵 
 この空間に気持ちがほぐされる
 平和のありがたさが身に染みる

あの日から、今日で三日。
明日と明後日のレッスンの準備も兼ねて、『原初生命体としての人間』「ことばと動き」に野口が引用した部分を、木下順二『沖縄』の台本に探した。
ページをめくる。
鉛筆で引かれた何本もの線は、野口の情動をそのままに、曲がり活字にかぶさっている。几帳面な野口とは思えない勢い余った手の動き。

台本は文字だけ(当然だけど)だから、鍵本さんが紙芝居に仕立てた『おきなわ 島のこえ』の絵も、美術館に展示されていた「原爆の図」も貴重なのだ。

野口三千三は戦地には行かなかった。
戦争の悲惨は、東京大空襲の後片付けに出向いた東京体育専門学校の生徒を引率した時に経験した。その悲惨な情景を野口は語らなかった。その時の様子は、体専の生徒たちの手記で私は知った。

台本を繰っていく。
「においまでがー」
「沖縄」に引かれた最初の棒線に、頭が真っ白になって教師としての体面を保とうと必死だった自分がいた、という野口の言葉を思い出した。

〈一年の始まりは正月ではなくて8月15日だ〉
終戦ではなく「敗戦」と言い続けた野口にとっての戦争体験をわずかでも想像したくて出かけていった美術館だったなぁ〜。



喘いでいる。
ため息をついている。

「三千三伝」を今書き始めるには、エネルギー不足かも。
とんだ男に惚れてしまった!
「後悔してる?」
「いや それはない。たぶん(小声で)」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

紙芝居『おきなわ 島のこえ』から「生命を想う 絵画の旅 原爆の図 丸木美術館」へ

2023年06月28日 14時31分34秒 | Weblog
長いこと年賀状だけの縁だった鍵本景子さんから、紙芝居のお知らせもらった。
鍵本さんは、北新宿の野口三千三先生の体操教室に参加されていた。
そのころ今再放送中のNHK朝ドラ「ひらり」の主人公の姉・みのり役で出演されていた女優さんである。

「早蕨」特別号「野口三千三先生を偲ぶ」を丁寧に読んで、嬉しくなる感想をもらった。
そのメールに、第12回「かぎもと景子さんの”紙芝居”「おきなわ 島のこえ」のことが添付されていた。

久しぶり 会いたい!
そう思った私は、25日(日)小平市鷹の台の喫茶店を訪ねて紙芝居を見せてもらった。
気を衒わず、淡々と、お母さんが子供に読みきかせるように。
あたたかな朗読に好感が持てた。
実際にもいいお母さんになられたのだろう、きっと。
紙芝居の絵が素晴らしい!
丸木俊 丸木位里 「ヌチドゥ タカラ〈いのちこそ たから〉」
丸木夫妻が平和への祈りを込めた絵本を、著作権継承者の丸木ひさ子さんのご好意で紙芝居に使わせてもらえるようになった、と。
想像だけれど、鍵本さんはどれほどの誠意と熱意を持って、ひさ子にお願いしたことだろう。


彼女の紙芝居を通した表現は、ひそやかで たおやかで やさしいのだけれど、ひめられた一途な思いは揺るぎない。
私は半ば打ちのめされた。

そうだ、原爆の図が展示されている「丸木美術館」を訪ねよう。
善は急げ、とばかりに東武東上線の小川行きに飛び乗ったのは今朝のこと。
池袋から一時間。
着いた森林公園駅からタクシーに乗って10数分。
豊かな自然の中にその美術館は佇んでいた。

展示室に一歩入ると、巨大な絵のエネルギーに呼吸が止まる。
丸木夫妻って、日本が産んだすごい画家さんだ。
どれほどの執念を燃やして筆を走らせたのだろう。
痛み 苦しみ 悔しさ 
数えきれないほどの死者が夫妻にとりすがって描かせた絵だ。
来てよかった。
訪ねてよかった。
言葉にならない犠牲を思うと、息が苦しくなる。

一部屋 一部屋を目を凝らして見て回った。

画題
「灯籠流し」 お母さん お父さん 文字が描かれている。 
「署名」 原爆やめよ、水爆やめよ、戦争やめよ。
東京・杉並のお母さんたちの叫び 声なき声が声となり、署名が集まっていく。

ここまできて、ようやく息を大きく吐き、たっぷり息を吸うことができた。

外に出て、私は 美術館に手を合わせた。
館内とは打って変わった夏の自然が私を迎えてくれた。
丸木夫妻はここに住っていたという

緑蔭のもと腰掛けたベンチからの眺め

鳥が囀る
風が樹木の間をぬう
夏の匂い
この心地よさ

平和はそうたやすいものではないことを思いしらされた。
戦争を鋭い感性で苦しみながら描きとめた人がいて、後に生きる人間にただ事でない現実を突きつけてくれる。
覚醒する。

景子さん 生の声で 静かに語り 紙芝居の紙を一枚一枚丁寧にめくる行為を続けてほしい。
比企丘陵の自然の中で、ふたたびあなたの思いを受け止めています。
ありがとう。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エンディングノート書きはしばしおあずけ 

2023年06月22日 15時37分31秒 | Weblog
夏至の翌日 
肌寒い一日

降りそうで降らない雨
空を眺めて
もうそろそろいいかな!

一ヶ月余り 
体を労わることを心がけ
ボッーと のんびり過ごした
 
術後の白湯期間を終了
三日前からカフェインを摂っている
少しずつやる気が

もらったエンディングノートをパラパラとめくり
 
 今はまだ何も決められないー
これに書き込む前にしておくことが・・・・・

手始めに
PC内に散らばっている「三千三伝」原稿を整理
一つのファイルにまとめる

「野口体操の会」会報「早蕨」Vol.1 ~6 に載せた「群馬編」
昨年 上梓した『「野口体操」ふたたび。』第四章 野口三千三の足跡
会報「早蕨 特別号 野口三千三先生を偲ぶ」野口三千三とプロレス

書きかけの東京編
1、体育の本流 東京体専 終戦直前〜終戦後
2、江口隆哉との出会いとGHQ 教育改革 ダンスを体育の指導要綱へ
3、東京芸大へ転任
4、モダンダンス〜美容体操〜ボデイビル
5、サーカスの人々との出会い〜
6、対談「ボデイ・ビルから人間変革という考え」
7、野口三千三とプロレス
8、演劇編−1 岡倉士朗さんのお嬢さん

これから順々に
「沖ヨガ」から「呼吸」、演劇−2スタニスラフスキー(竹内敏晴)、演劇−3演劇(人)との出会い、「奇跡の人」、1968年「原初生命体としての人間」への道筋、

その後〜
時間をください!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

雨の東京巡り報告 概略〜

2023年06月13日 13時30分12秒 | Weblog
NHK放送博物館〜浜離宮恩賜庭園〜竹芝埠頭〜浅草

6月11日(日)9時30分に、愛宕NHK放送博物館で、Sさんと待ち合わせた。
『VRでよみがえるガウディ サグラダファミリアの秘密』を見るためである。
一日12回の上映なのだが、朝10時にその日の全回整理券を渡すことになっている。
日曜日のこと、見学希望者が多い予想から早めに到着。
当日は、願い通りの雨降りであった。
一組の先着があるだけで、10時10分からの回が取れた。

私にとっては二度見のガウディである。
流石に前回見落としていたところに気付かされた、とだけここでは書いておきたい。(詳しくは日を改めて)

見終わって放送博物館の中を見て回った。
とりわけ興味を惹かれた展示は二つ。
一つ目は、1945年8月15日 昭和天皇の終戦のお言葉が書かれた写しに放送局が準備した原稿のコピー。録音機とレコード、マイクなどが展示されている。
本で読んだり写真で見るのとではわからない生々しさが伝わってくる。
一枚のレコードを守ろうとする人、奪還しようとする反対派の人の息遣いまで伝わるような錯覚を抱く。

二つ目は、有楽町の街頭テレビが映し出している鮮明に加工された動画と集まっている人々の模様の再現コーナー。

 プロレス テレビ実況放送

 力道山+木村雅彦&シャープ兄弟
  


大きなパネル写真で囲われたドームの中。
ガラスで覆われた空間にテレビ受像機とその前で見る多くの人の写真が設置されている。
入っていくと、見る自分が人々の真ん中に立って放送を見るように工夫されている。なかなかのアイデアであると感心しながら楽しむことができた。

さてと、何時の回が取れるか皆目見当がつかなかったので、ここからの予定は未定。
行き当たりばったり、思いつきに任せようと、最初からSさんとは意見が一致していた。
まずは、腹ごしらえ。
放送博物館を出て、近くのコヒー店で軽い昼食を取った。

話し合って、タクシーで浜離宮恩賜庭園に行くことを決定。
旧稲生神社


   想像を超えて広々した庭園
隅から隅までしっかり手入れされていて、都立文化財9庭園の一つだけのことはある。(詳しくは日を改めます)

それから、庭園を出て竹芝埠頭に向かうことに。
庭園脇の都心環状線道路沿いを歩く。
庭園内の空気は清々しく樹木の香りに満たされて全身で呼吸して大満足だったが、木々のバリアーの外側の道路は、ひっきりなしに通る車の排気ガスに覆われる。
樹木が環境にとっていかに大事であるかを実感した。
アトレ竹芝 WATERS takeshiba 劇団四季「秋」「春」のホールを通り越して、竹芝アトレ二階でお茶しながらたっぷりおしゃべり。
QRコードで注文しロボットが運んでくるという展開に、昭和生まれの74歳、時代の先端を味わったことも書いておきたい。

その後、16時すぎに東京水上ラインに乗船して浅草へ向かう。
つづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

愛宕神社参拝

2023年06月07日 15時15分00秒 | Weblog
愛宕神社・男坂「出世の石段」

振り返ってパチリ! 標高25・7m
愛宕山・天然の山で東京23区内最高峰
江戸時代から信仰と山頂からの江戸市街の景観の素晴らしさで、皆に親しまれた。
創建は江戸の防火のために徳川家康の命で祀られた神社だ。
別名「天下取りの神」「勝利の神」と言われ、井伊直弼を桜田門外で襲った水戸藩浪士は、ここ愛宕山に参ってから江戸城に向かったという。


             

現在は、「御創建四百二十年記念 境内整備中」ということで女坂は封鎖中。
また、至る所工事中である。
『「愛宕山に残された緑と歴史的・文化的環境の保全と整備」を目的とした地域再開発に併せ、境内整備を行う。完成は令和六年三月予定』

 愛宕神社と地続のNHK放送博物館
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

NHK放送博物館 VR体験 サグラダ・ファミリア

2023年06月07日 13時49分43秒 | Weblog
場所は、港区愛宕 NHK放送博物館。
VR体験は、およそ15分間。
教会堂制作の作業を、彼の弟子たちとなった私たちに、死の床にあるガイディが説明するという仕掛け。
ガウディの声は三宅アナウンサーで、最後まで彼の顔が浮かんでガウディというより三宅さんだった(笑)。

さて、この仮想空間に、ベッドに横たわっているガウディ、彼の工房、ガイディが作った他の建築物、彫刻(身体研究もされた)等々。
次々に現れては消える。

ネタバレになるのだが、私が見たかったものが目の前に現れて興味深かった。それは、塔の形を決めるために、綱(紐)に砂袋を吊り下げたとき、重力でできる自然の角度を足下の鏡に映して見せる映像だった。




2枚目は砂袋が重さで描く形に反転した写真

仮想空間では、最後にサグラダ・ファミリアの教会堂の内部に立つのだった。
まだ完成に至っていないながらも美しい造形に、やっぱり直に見たい!
ここで(そこで)フォーレのレクイエムを聴きたい!

なかなかおもしろい体験で、来年、アップルが発売する新製品もこんな感じなのか、と思いつつの疑似体験であった。
はじまってすぐにも、脳はめくるめく状況に置かれる。
もし、長時間この中にいると、幻想の中で現実感が失われるかもしれない、と老婆心。
こうした時空を超えた体験は、展開される内容にもよるけれど、一歩先は危うさの淵かもしれない。
その危険を考慮してか、子供の入場は13歳以上。
途中で気分が悪くなった人には、スタッフがすぐさま対応してくれる、と前置きがあった。

6名のアバターの方々と、一緒に見たサグラダ・ファミリアは、それなりに面白体験であったが、幼少期からの生の感覚体験をたっぷりしておくことが重要という思いを抱いたという私は、時代遅れの人間だろうか、と疑問符が。
ゲーム映像に慣れている人(子供)には違和感なく没入できる時空なのではないか、と。

そんな思いに駆られて、身体感覚、実体験として放送博物館隣接する愛宕神社へと歩みを進めた。
一旦は、エレベーターで1階に降りて、あらためて愛宕神社の「出世の階段」を登ってお参りすることにした。

次につづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「らんまん」石板印刷

2023年06月07日 13時23分34秒 | Weblog
「らんまん」6月6日、7日の二日間で、石板印刷の細かな過程を丁寧に辿って見せてくれた。
本日の石板の盤面を磨く(削る)作業が興味深った。
「ドイツのバイエルン ゾルンフォーフェンの石灰石・・・・・」
鳥の化石が出たところ、という台詞も聞いた。

ゾルンフォーフェン・この地名は、野口三千三先生が大量の「模樹石・デンドライト」通称「ピクチャーストーン」」を集められた時に聞いた地名だった。
真っ平な特徴を持った石が切り出せる地方名だ。
あれから何十年過ぎただろう。

デンドライト 化石ではあありません

これは静な海に砂が降り積もって「砂岩」となったものが隆起した。
そこに流れ込んでいた二酸化マンガンが蒸着して樹形を描いた石。
中まで深く染み込んではいません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする