羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

「三千三伝」のために比較して読みはじめた本のこと

2023年08月28日 10時04分46秒 | Weblog
「スタニスラフスキーの本が、ぽっと一冊だけ出てきたんです。戦中だったか、戦前だったか・・・随分と昔のことなので、正確な年月日は失念してます」
コロナ前のこと『野口三千三伝』を書き始めるに当たって、九州・鹿児島在住の演出家・貫見忠司氏(当時94歳)を訪ねた時に聞いた第一声である。
貫見氏は、何かあったら訪ねるようにと、野口からすすめられていた方。
「本を読んで、頭の理解は出来たような気がしていたのです。ですが実際の動きに関しては当時の演劇人の誰もが全くダメ状態でした。そんな時、学校演劇関係の合宿で、野口さんの動きを見た瞬間に、これだ!と電撃が走ったんです。私だけではありませんでしたよ。スタニスラフスキーの言っている動き(体操)に通じるんじゃないか、と思ったんです」

そもそも野口が日本の新劇界に引き出されたきっかけは、演出家の岡倉士朗氏が娘さんから知らされた野口の藝大での体育授業内容(体操)が、スタニスラフスキーシステムを理解する手掛かりになるに違いない、という直感が発端となった。そう野口から聞いていた。

2018年早春、インタビューに快く応じてくれた貫見氏の言葉に、“やはり、そうか”と納得したのだった。

それ以来、このシステムのことを調べ始めていた。
「三千三伝」を書くからには、スタニスラフスキーのことを調べなければいけないと思い続けていたが、本腰を入れたのは『スタニスラフスキーとヨーガ』の著者セルゲイ・チェルカッスキー氏のワークショプを見学し講演を聞いてからだった。

以前から思ってはいたものの、著作に使われる野口言葉(思想)と、行動・情動の発露としての話し言葉、双方の間に強い“違和感”を強く感じるようになった。

その違和感を、理路整然と言葉にのせるのは難しい。
「三千三伝」を書き始めた頃は、漠然とした違和感にすぎなかった。
今では、その違和感がもっと膨らんでいる。

それでも 不器用ながら違和感を言葉にしてみると・・・・・。
野口三千三の出自、育ち方、受けた教育、ついた職業、本来の性質。
60代半ばから83歳で亡くなるまで間、私が直接知っている野口の言動・行動から受ける印象と『原初生命体としての人間』における文体・語彙・内容との間に横たわる溝、違和感はいかにも大きすぎる。

野口に限らず、著書を読んで著者に会ってみると、あまりの印象の違いに愕然とするというようなことは往々にしてある。

それはそうなのだけれど・・・・。
野口の場合は、そうなのだけれどのままにはしておきたくない。
そこを掘り下げることが、野口三千三・野口体操を理解する鍵と鍵穴になるのではないだろうか、と思っている。
そのことを解くために最初に選んだのはこの2冊である。
山田肇訳 スタニスラフスキー『俳優修行』
向かって右は、1943(昭和18)年 9月15日発行 道統社版
向かって左は、1975(昭和50)年 5月10日新装第一刷発行 未來社
       2005(平成17)年 11月10日第18刷発行  

日本でいち早くスタニスラフスキーシステムに関わりを持った二人がいる。そのうちの一人は、八田元夫氏で劇団・東演。
一方の山田肇氏は「ぶどうの会」。岡倉士朗、山本安英、木下順二に実践面においてサジェストを与えた功労者である。
野口は、演出家の岡倉氏によって「ぶどうの会」に関わりを持つようになった。

遠回りになる恐れは十分にあるのだけれど、まずは山田氏が最初に英語版から翻訳した版と、数十年後に新装版として翻訳出版した日本語を比較して、野口の言語世界に与えた影響を探ってみることにした。

加えて『俳優の仕事』第1部 岩田貴・堀江新二・浦雅春・安達紀子訳 未來社 2008(平成20)年6月30日初版 2015(平成27)年1月20日 初版第3刷発行 ロシア語版からの言葉と内容を比較する。

そのことを土台に、1950(昭和30)年代以降、新劇の人々や新劇人を通じて野口が出会った何人かの文化人の言語世界を多少なりとも調べる必要がある。
そのことはじっくりやり続けるしかなさそうだ。

 いちばんのキーポイントになる本
この本に書かれていることをヒントに読み込み、調べてみると、ある程度具体的に見えてくることがありそうだ、とだけ今は書いておきたい。
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8月最後の朝カル リアル・レッスン

2023年08月27日 12時38分06秒 | Weblog
納涼も兼ねて「脳内レクリエーション・裸眼立体視(3D)」を楽しんでもらった。
   出かける前に選ぶものたち

3D本、団扇、下敷き、佐治嘉隆さん撮影ポストカード、努力せずに見られる3D
カセット、極め付け手書き3D・DNAを選び出す。

 ポスターはホワイトボードに
あっという間に一時間が経過
「これも体操!」
「いっとき暑さ忘れますー」
そんな声も聞こえてきました。
「見えた時の感動と見えた時のお疲れー」

集中した後はほぐしたくなって、体操も集中と相成りました。
「眞の動き(胎児の動き)」と「腕立てバウンド」に苦戦していた女性に特訓。他の方々は私とのやりとりから見取り稽古。

こんなにコツを教えてしまっていいのかな?
いいんです!
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明治大学シェイクスピアプロジェクト 原稿締め切り

2023年08月23日 15時41分20秒 | Weblog
毎年11月中旬に、明治大学では学生によるシェイクスピア作品を上演している。
今年の出し物「ハムレット」。
稽古は、例年通り8月初旬から始まった。

公演は5ステージ。
3,000数百人を超える観客を迎えている、と聞く。

私は、非常勤で野口体操を正課体育で伝えていた時からワークショップを行っている。このプロジェクトは定年には関係ないので、通算10数年は悠に超えて関わってきている。
  
昨年は母が危篤になって見ることができなかったので
    一昨年のプログラム


明大の学生総勢百数十人が関わって、何から何まで学生が手作りで舞台をつくり繰り上げる。
プログラムも然り。
毎年コメント(300〜350文字)を書いている原稿は、本日が締め切り。
なんとか間に合った。

今年は、客席で見ることができますように、学生の健闘を祈りながらメール添付した。
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8月18日 記事 お詫び 訂正・加筆

2023年08月21日 05時41分35秒 | Weblog
訂正:タイトルの「富岡八幡宮の正式参拝に三本締め」 豊岡→富岡

加筆:江東区門前仲町富岡

加筆:写真転載は「深川バロン倶楽部」FBより

訂正:三代→三大

ご指摘いただきありがとうございます。
訂正してお詫びします。
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富岡八幡宮の正式参拝に三本締め

2023年08月18日 09時43分45秒 | Weblog
深川バロン倶楽部の奉納演舞が行われたのは、江東区門前仲町富岡にある「富岡八幡宮」の境内だった。
この神宮には、江戸期に紀国屋文左衛門によって奉納された日本一の大神輿があったという。残念なことに関東大震災で全てを消失。

現在、鎮座している大神輿は平成になって復活した、と記されている。
ガラス越しではあるがこの大神輿を目の前にすると、度肝を抜かれる。
「立派」という言葉は、この大神輿のためにあるのではないかとすら思える。

さて、ガムラン奉納演舞が始められる前に、関係者・演者・参詣人全員で、宮司さんによるお祓いを受ける参拝の儀が行われた。
言葉は相応しくないかもしれない。これほど華やかな正式参拝は生まれて初めて。

その後に行われた奉納舞は一時間余。
    最後に三本締め

 写真は深川バロン倶楽部FBより転載

異国の歌舞音曲によってもたらされた高揚感のまま、ホンモノの三本締めに気持ちはキリリ!
ときおりの雨に濡れた服や靴もなんのその、芯から湧き上がる熱気で全身が温められたまま帰途に着くことができた。

これを至福と言わずしてなんと言おうか。
   
 三大祭 一夜の夢か

              鳳凰を戴いた大神輿
           
               日暮れ前に撮影
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富岡八幡宮例大祭 5日目締めの奉納 深川バロン倶楽部

2023年08月17日 10時08分56秒 | Weblog
ときに強く
 ときに弱く
ときに速く
 ときに緩く

渦巻くガムランは
祭禮に集う人々を
ことごとく包みこみながら
物語世界へと引き込んでいく

 少女→精霊たちの優雅な舞〜邪魔 善悪を超越する舞へ
 

そして
聖獣・バロン 子バロンが親バロンを迎える
         
邪神の現れ 白い毛の鬼ランダ・邪悪神
終わりなきたたかい
無限回廊の音と極彩色の輝きに包まれて

芸術か 宗教か
そんなことはどちらでもいい
この世とあの世をつなぐ架け橋が現れ
エクスタシーへと

ときおり天から涙がその場を浄める
ここは深川
八幡さまの境内に降り立った異国の祀り
懐かしい既視感
絶妙なる調和感
生と死が絡み合った祈りの刻は過ぎていく

こんな素敵な宇宙を作り出すのは
   深川バロン倶楽部
  特等席をありがとう 深謝!
野口三千三先生の縁に導かれた夜祭体験

同行してくれた宮守乙十葉さんから教えてもらいながらのFBライブ動画・実況中継初体験も愉快・快感でありました!
コメント (2)
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夏休み お盆 素麺パーティ

2023年08月14日 13時52分30秒 | Weblog
日頃お世話になっている方を迎えて素麺パーティを開いた。
いつもの助っ人、宮守乙十葉さんの力を借りて、美味しく楽しく過ごしました。

      すべて手作り
              
        
母の新盆に先祖供養
野口体操の会の存続
来年は野口三千三先生生誕110年
ここまでよく生きてきました!

いろいろを兼ねて素敵な午後でした。
最後に素麺を食したのですが撮影を忘れました。

ゆっくり過ごして最後は皆さんでお片付け
一気に片付きました!
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神楽坂で妖精に出会って!

2023年08月12日 03時53分09秒 | Weblog
ワッペン
 親指ピアノ
小さな指輪やペンダント 
  レース 織物 ビーズ 
岩塩 砂 水晶  たくさんの石たち
   貝殻
とうもろこし 敷物 

壁には現地の人たちとの思い出写真
たくさん たくさん あってね

神楽座坂で妖精たちの歌をきいた
とおり過ごしてしまいそうなビルの中で物語をきいた

白日夢 
 夢じゃない
  幻じゃない

何年ぶり 何十年ぶり 
お日様に妖精たちがごあいさつ
みんなキラキラしてる
遠い日本まで連れてきてもらってありがとう 

旅人 愉開ゆかりお姉さんの周りで輪になって
踊って 歌って 笑って 繋がって
笑顔がこぼれる

三千三先生が悔しがっている
三千三先生が嬉しがっている
自分を超えてくれてありがとう

佐治さんも 井上さんも もちろん 三千三先生もお連れしたわ

ごめん
写真撮るの忘れた
せめて案内状だけ

すてきな出会いがありますように・・・


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明治大学シェイクスピアプロジェクト2023年ワークショップ「上質なアイスブレイク」

2023年08月04日 15時20分40秒 | Weblog
今年もこの季節が巡ってきた。
本日は、明治大学シェイクスピア・プロジェクト野口体操ワークショップ一日目。
2023年度の稽古が始まってまだ三日目だ、と事前に制作部の学生からメール連絡をもらっていた。

そこで、学部も学年もまちまちのメンバーで、11月の本番までまったく知らない学生たちが一つの舞台を作り上げる。そのためにお互いの垣根を取り払うためのワークショップをしようと考えた。
思いついたのが、“如意棒遊び”である。


家に残していった如意棒と兵児帯一部

ただ、問題がある。
連日、猛暑。
無理は無理だ。
如意棒の重さは生半可ではない。
20本もの如意棒を持って、36度の暑さの中、電車を乗り継いで移動するのはキツすぎるー。
とはいえやるからには、出し惜しみはしたくない。
自分のからだにきいてみる。
「老体に鞭打つ覚悟はある?」
「ある!」
答えが返ってきた。

そこで知恵をふり絞った。
「そうだ学生を二手に分けて、10本の如意棒と10枚の兵児帯遊びを同時にしてもらったらどうかしら」
名案だ、と思った。
すぐさま心配になった。
性質の違う道具を一部屋で展開することができるのか。
性質が違うから、うまくいったら面白いことになるかも。
賭けに出た。

「はたして、結果は・・・・・」
若いって凄い。
遊びは、まさしく創造である!
交代してやってもらっているうちに、如意棒グループ、兵児帯グループ、共に予想を超えた動きが次々現れる。
“上質なアイスブレイク”どころ話でなくなった。

後半1時間の体操は、最近の私の気づきをしっかり織り込んだ。
学生に、野口体操を手渡せた手応えが得られた。

「羽鳥先生、ホントにホントにありがとうごいました!」
拍手が鳴り止まなかった。
こわいくらい。
上出来すぎるー。

次回まで、チャットGTPでは答えが出せない問題を学生に残して、校舎を出た。

真昼間の太陽はジリジリと肌を焼いてくるのだが、来た時とは打って変わって10年も20年も若くなっている自分を感じ愛おしさが沸沸と・・・・。
次回、どうする。
学生は、期待してくるよねー。あぁあぁぁ。
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ドキュメンタリー映画「天空のサマン」

2023年08月02日 14時10分35秒 | Weblog
リズムは音楽である
 音楽は祈りである
祈りは言葉である
 言葉は生命である

うねる太鼓とどこまでも終わりを知らない祝詞が全編にわたって鳴り響く

天空への架け橋と思しき長白山
畏れを抱かせる青い天池

中国北東部 雄大な自然に生きる人々は
鮮やかを超えて賑やかな色彩を纏う
神々を讃えるアジアの色である


《満州族のシャマニズムを主題とする民族文化の貴重な映像である》
民俗学者・荻原眞子さんの解説文冒頭である。

『ラストエンペラー』では、紫禁城や絢爛豪華な宮廷文化が描かれた。その帝国を築いたのが満州族。(私、恥ずかしながら、何も知らなかった)
現在の人口1100万人で消滅の危機にあって、満州語を話せる人はもはや数十名だという。(この話に至っては、ほんと、驚き)

さて、紹介が遅くなりました。
この映画監督金大偉氏は、清王朝のファースト・エンペラーでもあるヌルハチにはじまる系譜を引き継ぐ満州族の父と日本人の母との間に生まれた。
この映画では、彼の出自とアンデンティティの探究と自覚の深まりを通して、彼自身の独自の立ち位置を発信した、とは鎌田東ニ氏の言葉。

私は、ロビーのベンチに腰掛けてプログラムを読んでいた。
終わりに近づいたページの写真見て、アッと声を上げた。
野口三千三民族コレクションの中の鈴を思い出したのだ。
その鈴には、根拠なしに中国の鈴だと思い込んでいた。

写真の鈴とよく似ている!

果たして同じものだろうか。
客席について映画を見ながら、祈りの儀式の場面ではサマンが腰につけている鳴物を必死で凝視した。そうするうちに、画面には殷代の甲骨文がおどりはじめる。
犠牲の意味も、血による浄化の意味も、これなのか!
果たして、あの撮影現場では、どんな匂いがするのだろう。
崇高な自然に対して、人々の暮らしや儀式から発せられる匂いは・・・・。

強烈な音とリズム。
鮮烈な色。
想像できないながらも匂いからは、さらなる忘我・法悦が・・・・・。

帰宅して鈴を探し出し、鳴らしてみた。
これまでとはまったく違う音色が聞こえてくる。
天と地の霊との交流を促す音だ、と。

原初の祈り行為は、国境を越え民族を超え、今を生きる私の中にもあるに違いない。
そして野口三千三先生は、この感覚を目覚めさせたくて、これらの鈴を手に入れ、繰り返し鳴らし、味わったに違いない。
愛おしく狂おしく、原初生命体の祈りを、夢中になった甲骨文から喚起される世界を伝えたくて、一心不乱に体操のレッスンに臨まれていたこともあったはず。

思わず、膝を打った夜は、更けていった。

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