羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

iPS細胞の実用化を考える資料提供

2012年10月28日 09時58分15秒 | Weblog
 朝日カルチャーセンター「野口体操講座」の前回のレッスンから、iPS細胞についてテーマにしている。
『iPS細胞とはなにか』朝日新聞大阪本社科学医療グループ 講談社BLUE BACKS B1727 を読んだことがきっかけだった。
 30年もたたないうちに、日本の医療・治療の様相が、劇的な変化をとげるだろう、と衝撃を受けたからだ。細部に映像が浮かぶわけではない。ボンヤリしたイメージでしかない。しかし、とんでもなく変化することだけは明確な輪郭をもってせまってきた。

 iPS細胞の実用化は、臓器移植が行われるようになって起こった問題を解決する一つの変革である事は間違いない。例えば、臓器売買の南北問題、免疫問題、etc.
 そしてなにより、今、現在、治療法がなく病に苦しんでいる患者にとっては、光が見え始めたことに違いない。
 だからこそ私たちが、からだについて、病について、生命について、生きる価値観について、考えておかなければならないことが山積していると思う。

 今までに経験したことがない、むしろ「神の領域」踏み込んでいく問題だから、すっきりした結論はだせなくともとにかく問題提起だけはしておきたいと思う。
 そこで、昨日は、久しぶりにMac Book Airとスーパードライバー(DVD再生用)とPC携帯用BOSEのスピーカーを持参した。
『DVDブック アーカイブス野口体操 野口三千三+養老孟司』のなかに収録しなかった一部をみていただいた。
 養老先生が語られた「臓器がどのようにつくられるか」から「臓器移植」についての話の部分で、一般には思いもつかない発想だ。
 ということで、昨日のレジュメをここに添付しておきたい。

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2012年10月27日(土)朝日カルチャー 

■テーマ*「iPS細胞2」 臓器移植と「ES細胞・iPS細胞」から人工臓器を作る実用化の問題。

※『野口三千三授業記録1991年1月 《 野口体操を解剖する 》 養老孟司氏を迎えて ……生 と死のコラージュ ……』DVD記録から 養老孟司 ソロ『「解剖」を語る』より
*臓器はバラバラにできることを医者が気づいてしまった。
*野口三千三語録
『生物と無生物の別なく、すべての自然現象は、それ自体(自分自身)を生成発展させようとすることと、破壊滅亡させようとすることと、この相反する現象の間の「ただよひ(ゆり、ふり、ゆらぎ、揺、振、震、漂、)である。この原理は、今、ここにある自分自身のからだの裏で、からだを包むすぐ外側で、また遠い遠い湾岸の地方でも……、メービウスの環の多重構造のように働いている』注:湾岸戦争の年に行われた公開講座
※『この一冊でiPS細胞が全部わかる』青春出版 石浦章一監修 金子隆一 新海裕美子著 
「151㌻~ 3D臓器をつくる」より 
「組織培養技術でつくられるものは平面に広がる細胞シートのみである」
*iPS細胞を誘導して臓器をつくろうとするとき立体的な臓器にはならない。そこで3D臓器をつくる、インクジェットプリンターで“臓器を印刷”?!とは。パソコン用のインクジェットプリンターと同じ印刷機をつかってさまざまな種類の細胞を培養地に吹き付ける。印刷を重ねていくと最終的に立体的な臓器をつくりあげるという技術。2001年富山大学生命工学科教授中村真人。市販のインクジェットプリンターのノズルの直径がヒトの赤血球の大きさとほぼ同じであることに気づいた。インクの代わりに赤血球を培養した液で字が書けるかを試作。
※生命倫理の議論、法整備、全てが後回しで、実用化ばかりが先行する社会になるおそれを感じるが、それでいいのか?
※北村昌陽さんからのメールと添付資料
*『「出逢いの演出家」に徹して脳の発生を再現』笹井芳樹 ES細胞を使って、神経系の組織を試験管内で再生する研究者。科学雑誌『nature』日本語版。以下、いただいたメールを添付↓

羽鳥先生

北村です。こんにちは。

科学雑誌natureの日本語版に、iPS細胞と関連がある
非常におもしろい日本人研究者の話が載っていました。
PDFを送りますのでご覧ください。

この人は、ES細胞を使って、神経系の組織を
試験管内で再生する研究をしているのですが、
海外のライバルたちが、細胞の挙動をなんとかして
制御しようという発想で実験を組み立てるのに対して、
彼は、いかに細胞の本性を邪魔しないか、と考えているそうです。
細胞の中には、生き物の形を作り出す性質が宿っていて、
うまく育つ環境さえ準備すれば、あとは自然にうまくいく、と。

科学者の中にも、日本人特有のこんな世界観が
息づいていたのかと、非常におもしろく読みました。

そう思ってみるからかもしれませんが、この先生の顔や姿は
とても肩の力が抜けて、しなやかに見えます。

北村

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 このテーマは、しばらく続けてみたいと思っています。



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ある女性脳科学者の希有な体験

2012年10月20日 12時08分14秒 | Weblog
 かめいどさんから知らされた動画見ました。
「ジル・ボルト・テイラーのパワフルな洞察の発作」、女性脳科学者が脳卒中に見舞われたときの体験を語っています。
 人の命の不可思議さ、生命の力強さを感じます。
 命は驚きに満ちている、まさに語りです。
 日本語字幕付き。
 
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デジタル情報選択の安全弁

2012年10月18日 08時37分40秒 | Weblog
 Mail、Home page 、Blog、Twitter、 Facebook、 YouTube 等々、今や誰でもが接することができる情報源は溢れている。瞬時にして知りたいことが検索できる便利さに慣らされている。
 人で言えば、たくさんの情報がデジタル空間に流れている人は、存在感がしっかり構築されているというわけだ。
 
 野口体操のホームページを始めた1998年(平成10年)時点で、インターネット空間で交わされる情報が、これほど凄まじい量になることが想像出来た人が何人いただろうか。
 当時、日本の有名大企業などは、ホームページをひらくこと自体に躊躇っていた。
「インターネットは弱者の表現手段」という村上龍さんの記事が日経新聞に載ったのもこの頃だった。
 たかだか十五年ほどの間に、大きな変化が起きた。今ではちゃんとしたホームページを持っていない会社は、なんとなく怪しげな印象を与えてしまう。しかし、会社に限らず個人も含めて、ホームページを持たなくてもよい仕事をしている会社や個人は多い。
 
 とはいえデジタル情報があればそれを頼るのが人情というもの。となるとその中から選び出す目利きが必要となる。とんでもない情報を事実と誤認し、真実と思い込んでしまう危険があるからだ。

 こうした事態のなかで、直接交流のある人間関係こそ大切であると最近、とくに感じたことがある。
 ひとつは10月6日と8日に開催された文科省委託事業「高齢者の体力つくり支援事業」で、大阪と東京で行われたパネルディスカッションにパネラーとして呼ばれた時のこと。
 中に入ったイベント会社との細かなやり取りは全てメールで行われた。事前に紙の資料は一枚ももらわなかった。最初に依頼してくださった方は信頼でき、十年来の付き合いがあり、電話での声から顔がしっかり浮かんだので、安心して話をすすめていった。今回は問題は一切なかった。
 しかし、“なりすまし”や“詐欺”には絶対にあわないという保証は一つもない、と思う。

 またもう一つは、先週、発売になった『野口体操 マッサージから始める』ちくま文庫版で、坂本龍一氏との対談のなかで、小見出し「ゆらぎとデジタル」話題のキッカケは、撫明亭のご亭主からいただいた話が元になっている。
「坂本さんは日本人作曲家のなかでもいち早くデジタルに関心を持った方」という情報をいただいて、調べてみるとYouTubeにはたくさんの演奏記録やNHKで放送された番組記録があり、そのほか多量の情報をデジタル空間から引き出すことができた。
 たまたま私自身が音楽を専門としていたこともあって、その中から必要な情報を選び出すことができたが、門外漢のことになると、相当に注意深く慎重に選択眼を光らせないと、とんでもないことにもなりかねない。

 たとえば最近では就職活動で、OBを直接訪ねて話を聞くことを学生がしなくなったと聞く。人間を介さないでパソコンやスマホで調べ、それを鵜呑みにしてしまうことは危うさがあることすら、想像の外のようだ。

 これまでになくメールやインターネットを通して、ものごとのやり取りや情報を得るのに便利な時代になった。だからこそ大事なのは、日頃から人との直接交流が情報選択の安全弁なのだ、ということを実感している。
 声を聞いて顔が浮かぶ。文章を読んでその人らしさが直感できる。
 つまり発信者の生の情報とデジタル情報の間をつなぐ「ある種の感覚」を育てたい。
 まずは長の無沙汰を謝り、手紙の一通でも、電話の一本でもかけることからはじめようと思うこのごろである。
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『驚きの生命史』を読んで……。

2012年10月16日 11時03分27秒 | Weblog
 iPS細胞研究の山中教授がノーベル賞を受賞したことは、閉塞感ただよう日本にとっては明るいニュースだった。
 しかし、その後、同じ日本人が人への応用をすでにはじめている、云々、というせっかくのよきニュースに泥を塗りかねない話が数日間取沙汰されいるのは、残念の極みだ。

 さて、『太古のDNAが明かす 驚きの生命史!』更科功著 講談社現代新書2166 を読んで思ったことがある。副題に「ネアンデルタール人の謎からジュラシックパークまで」とあるように、化石に残された遺伝子を研究する分子古生物学の入門書である。
 
 ざっと一読しただけでは理解がついていかない。何度か繰り返して読まなければならない、と思っている。
 ただ、以前読んだ「全球凍結」ー地球の表面すべてが凍りつく時代がカンブリア紀以前に何回かおこり、六億年前にマリノアン氷河期が終わったあとに、カンブリア紀の爆発的な生物の出現が起こった。
 エディアカラ化石群の発掘によっても、生きものの歴史がより豊かになっていったが、生命の歴史というのは地球規模の空間・時間からみたとき、想像を超えた出来事に彩られていることを知った。
 
 それはそのまま遺伝子進化の歴史であることが、この『驚きの生命史』によって解き明かされる。
 何処までが事実なのか、定かではないとしてもまったくのでたらめの歴史ではないと思う。

 なかでも第七章「カンブリア紀の爆発」のなかから「失楽園」は、現代のバイブルとなる発想だった。
 つまり、私たちのからだの大部分はタンパク質などの有機物でできた柔らかい組織だが、骨や歯は少し変わった組織だ。このような鉱物でできた硬い組織を、いろいろな動物の仲間がカンブリア紀の爆発で、一斉に発明した、という。このように硬組織の発明によって地球上の世界は一変したと著者は言う。
《それまでの平和なのんびりした世界から、残酷なシーンがしょっちゅう見られる激しい食う食われる関係が成立し、地球上は騒がしくなった。そうなると、もう二度と、平和なエデンの園に戻れない。カンブリア紀の爆発は、そして硬組織の発明は、生物にとっての失楽園であった》
 原罪があるとすれば、この時代まで遡ることになる!?わけだ。

 この大変化、硬組織をどのようにつくっていったのか、どんな遺伝子がはたらいたのかを知ることが生物の本質を解き明かす第一歩となるに違いないと考えられる。
 この遺伝子進化の出来事は、自然が自然のままに成り行きからそうなったこと。
 そこで、最初の話に戻ると、iPS細胞の人への臨床応用は、慎重であって慎重でありすぎることはない、と思う。
 それを安易に動物実験を飛ばして、人に移植して治療に役立てた、という言が事実であるならば、あまりにも危険だと小学生でも理解するだろう。
 新しい治療法や新薬の開発に関して、アメリカでは国家の威信をかけて行っている大きな事業らしい。
 そして臨床でいかされることを一日もはやく望む方々の思いは理解できる。
 しかし、遺伝子を人工的に操作する技術というのは、「遺伝子進化の時計」を狂わせる大きなリスクを伴っていることを知らなければならない、とこの本を読みながら思った。
 生命の操作は相当な覚悟のうえで「神の領域を冒す行為」だと心得ておきたい。
 日本人医療従事者が、何のためか真意のほどはまだ分からないが、嘘の報告をしたとすれば、(きちんと報告できない形で実際に一例でもおこなったとすれば)許し難い。日本の医学教育のいちばん根本のところで、いちばん大切な何かが、ザックリ抜け落ちている恐さを感じている。
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店頭に並ぶのは12日だそうです

2012年10月10日 11時16分06秒 | Weblog
 一つ前のブログに本日発売と書きましたが、店頭に並ぶのは10月12日だそうです。
 編集者のTwitterで、今、知ったところです。
 amazonも筑摩書房のホームページも10日になっていましたので、まぎらわしいですね。
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本日発売のお知らせ、実は店頭には12日だそうです!

2012年10月10日 05時05分02秒 | Weblog
『野口体操 マッサージから始める』ちくま文庫は、本日(10月10日)発売になりますが、店頭には12日並ぶのは12日。
 文庫版まえがき+「文庫版のための対談 野口三千三氏の思い出」坂本龍一 × 羽鳥操が、新しく入りました。
 まずはお知らせです。書店で見かけたら、手にとってみてください。
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文部科学省委託・高齢者の体力つくり支援事業

2012年10月09日 08時39分33秒 | Weblog
 10月6日(土)は大阪・御堂会館ホール、8日(月)体育の日は東京銀座・ブロッサムホールの二カ所で、『ニューエルダーのための「人生を愉しむカラダ学」』のパネラーとして、お話をさせていただいた。
 大阪の基調講演は、立原啓裕さん。お笑い系の語り口で、高齢者に運動の大事さと運動をするときの心得を話して、会場を一気に盛り上げた。東京は椎名誠さん「世界で見てきた笑顔について」というテーマで、豊富な旅のエピソードが、文化の多様性の大切さを伝える素晴らしい話。
 第二部のパネルディスカッションのテーマは「カラダの教養が高まるとなぜ人生は楽しくなるのか?」「カラダの教養とは」だった。コーディネーターは大阪が立教大学の松尾哲矢教授。東京が武井正子順天堂大学名誉教授。
 パネリストは筋生理学の石井直方東大教授と私、羽鳥でした。

 二カ所で同じテーマで行っても、まったく印象の異なるステージであったと思います。
 超高齢化した日本の今と将来、「カラダ」への知識と無理をしない運動を普及するための支援事業でした。
 主催は公益財団法人日本レクリエーション協会。共催は大阪と東京の各レクリエーション協会。

 パネルでスカッションの中身は、「カラダの教養とは何か」「カラダの教養と高めるには」「カラダの教養が高まるとなざ人生は愉しくなるのか」。
 55分でこれらについて3名が語るわけで、あっという間に時間は終わります。
 それぞれが用意していったパソコンを操作しながら、話の流れにそって瞬間的に継ぎに話すことをパワーポイント(Keynote)の中から探し出し、それを示しながら即興的に話をする、というスリリングな体験をさせてもらいました。
 石井先生も20枚くらい用意されていたなかから数枚しか使われず、私も15枚ほどの中からやはり数枚を選び出して話をつなげて、話を終えました。
 コーディネーターの先生が、野口体操を知らない人に説明をしてほしいということと動きを見せて欲しいこととできれば会場の皆さんにも体験してほしい、というふりをくださる。
 ここで登場するのが『3分CM 人物映像度キュメンタリ- 野口三千三編』。話を聞くことでカラダが固まっている皆さんには、野口先生の語りと動きとBGMにホッとほぐされるようでした。
 それを受けて私が「上体のぶらさげ」「やすらぎの動き」をさっとご覧に入れたときのインパクトは実に大きかったようでした。
 
 筋生理学の石井先生は本当のジェントルマンで、コーディネーターの先生も含めて、それそれが全く異なった主張をしつつも、全体としては一つの流れをつくりあげることが出来たのは、驚異かもしれません。
 報告したい事は数々あるので、このブログにもおいおい書き込みをしていきたいと思っています。
 先週末からの強行軍を無事に終えられたこと、皆様に感謝です。
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